2019年1月23日(火)

2019年1月17日(木)日本経済新聞 経済教室
伊藤 邦雄 一橋大学特任教授

企業統治、何が足りないか 上 役員報酬、「序列」から「誘因」型へ
指標や開示 統合的に改革

ポイント
○グローバル化で報酬制度の改革不可避に
○業績連動の株式報酬は比率高める方向へ
○資本生産性やESGなどの指標も考慮を
(記事)



 

2019年1月18日(金)日本経済新聞 経済教室
ニコラス・ベネシュ 会社役員育成機構(BDTI)代表理事

企業統治、何が足りないか 中 経営人材育つ人事・評価を
取締役の役割分担 明確に

ポイント
○企業統治改革は実績求められる新段階に
○外部のプロ人材を生かす仕組みも乏しく
○取締役会の監督機能強化には研修カギに
(記事)

 

 



2019年1月21日(月)日本経済新聞 経済教室
宮島 英明 早稲田大学教授
齋藤 卓爾 慶応義塾大学准教授

企業統治、何が足りないか 下 「社外取」増 業績改善に条件
市場規律弱い企業で効果

ポイント
○企業統治指針導入で社外取2人が標準に
○任意の報酬・指名委の設置で実質的効果
○社外取の適正人数・人選・兼任回避が課題
(記事)



 

2019年1月17日(木)日本経済新聞
「社外取締役の義務化」公表 会社法改正 法制審が要綱案 経営監視 実効性に課題
(記事)



 

でんさいネット
ttps://www.densai.net/


電子手形・電子記録債権のことなら「電手情報ポータルサイト」
ttp://www.den-te.com/


知っておきたい電手とでんさいの違い - 電子記録債権
ttp://www.electronicrec-saiken.net/basic_knowledge/type/dente.html

 

 


ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、有価証券の上場には4つのパターンがあるという資料を作成し、
「『米国預託証券』を通じた米国市場への上場を除いた、現在行われている外国市場への上場は全て純粋に域外上場である。」
という点について考察を行った36日前のコメント↓。

2018年12月18日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181218.html

 

「『売出し』や『募集』に申し込みをする投資家と株式市場で株式の取引をする投資家との間に情報格差があってはならない。」、
という点について考察を行った35日前のコメント↓。

2018年12月19日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181219.html

 

「現行の『売出し』と『募集』の制度(手続き、引受人の決定方法とその時の引受価格の決定方法)を所与のこととするならば、
『応募倍率』がちょうど『1倍』になる時、売出人の売却益と発行者の資金調達額は最大化される。」、
という点について考察を行った34日前のコメント↓。

2018年12月20日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181220.html

 

「証券会社が投資家から受け取るいわゆる取引手数料(株式売買委託手数料)は、
理論的には、価額(約定代金)ではなく株式数(売買株式数、最も典型的には単元数)に基づいて算定するべきである。」、
という点について考察を行った33日前のコメント↓。

2018年12月21日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181221.html

 

 



「『売出し』や『募集』への応募倍率が『公開価格』の高低の指標である。」、という点について指摘を行った32日前のコメント↓。

2018年12月22日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181222.html

 

「元来の証券取引制度(1893年〜1945年)と現行の証券取引制度(1948年〜)の相違点」について考察を行った31日前のコメント↓。

2018年12月23日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181223.html

 

「会計の人間にとっては非常に大きなインパクトのある出来事が、1948年(昭和23年)の証券取引法の制定であったのだが、
1948年(昭和23年)の証券取引制度の根本的変更は『証券民主化』という言葉で一般的に表現されている。」、という点と、
「『絶対的な保証』とは、当局が法定書類を作成することである。そうすれば、記載事項に誤記や虚偽は絶対的に生じない。」、
という点について考察を行った30日前のコメント↓。

2018年12月24日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181224.html

 

「公認会計士制度は、最も元来的には(1948年当時は)『公認会計士が発行者に常駐して有価証券報告書を作成する。』
という考え方であり、実は会計監査という考え方はなかった。」、という点と、
「監査制度という観点から言えば、証券取引制度は1966年(昭和41年)にも根本的な変更が行われたということになるのだが、
それは『有価証券報告書の作成者が公認会計士から発行者へと変更になった。』という抜本的な変更であった。」、
という点について書いた29日前のコメント↓。

2018年12月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181225.html

 

 



「会計監査の根源的限界は、証憑の確認ができないことである。」という点と、
「1948年の証券取引法の制定は、『当局は証券取引には関与しない。』という意味であるのだから、
1948年の時点で『上場審査』は証券取引所(証券会員制法人)自身が行うようにするべきだったのだ。」
という点について書いた28日前のコメント↓。

2018年12月26日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181226.html

 

「証憑から仕訳を書く。」と書いた27日前のコメント↓。

2018年12月27日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181227.html

 

「当事者であれば証拠はいらない。」と書いた26日前のコメント↓。

2018年12月28日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181228.html

 

「企業統治(コーポレート・ガバナンス)の向上のため、経営を第三者の視点で監視する会社機関を導入することを考えるならば、
『社外取締役』ではなく『監査役』の職務・権限を拡充する旨の会社法の改正が有効なのではないか。」という点と、
「会計用語としての『証憑』は『証拠』という意味合いではなく『伝票』という意味であり、
『伝票・証憑』には"memorandum"(メモ、覚え書き、備忘録)としての役割がある。
そして、会計用語としての『証憑』の英訳は、"evidence"では決してなく、"voucher"や"slip"という単語である。」
と書いた25日前のコメント↓。

2018年12月29日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181229.html



 


「米国で第1回公認会計士試験施行されたのは1934年だったのではないか。」という点と、
「『トラッキング・ストック』は、『本源的価値の算定ができない。』という根源的かつ致命的な問題点がある。」、
という点について書いた24日前のコメント↓。

2018年12月30日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181230.html

 

「会社が自社株を買うことは会社の残余財産の分配金額を減少させる。
この重要な財務上のインパクトは、現行の会社法下だけではなく、旧商法下においても当てはまる。」、
という点について書いた23日前のコメント↓。

2018年12月31日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181231.html

 

(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について その@)
「保有議決権割合の計算は郵便配達とは違う。」と書いた22日前のコメント↓。

2019年1月1日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190101.html

 

(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について そのA)
「日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドの発行済普通株式の7%を取得した時点では、
日本郵政株式会社の保有議決権割合は『0.747%〜7%』の間のいずれかの割合であり(他の株主の継続保有年数次第である)、
また、株式取得から4年後の時点では『7%〜42.94%』の間のいずれかの割合である(理由は取得時点の理由と同じ)。」という点と、
「極端な言い方をすれば、アフラック・インコーポレーテッドでは株主の保有議決権割合が株主名簿とは無関係なので、
株主が自分の保有議決権割合を自分で計算するのは事実上不可能である(保有議決権割合が他の株主の継続保有年数に依存する)。」
という点について書いた21日前のコメント↓。

2019年1月2日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190102.html

 

 



(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について そのB)
「特に海外への出資においては、出資している側が主導権を握って自社の製品や商品を出資先である外国で製造や販売していく、
という関係に出資と事業展開とがあるわけであるが、その一般的な姿とは正反対に、この事例における日本郵政株式会社には、
出資を通じて海外市場へ進出する・事業展開範囲を海外に広めるというシナリオは一切ない。」という点と、
「元来的には、保険会社は保険契約者から預かった保険料を手許に大切に保管しておかなければならなかった。」という点と、
「かの郵政民営化の際には、実は公正取引委員会は競争環境を歪めることを理由に郵便局の民営化に関する審査を行い、
承認するか否かについて十分に吟味しなければならなかったはずだ(公正取引委員会は民営化を差し止めることができたはずだ)。」
という点について書いた20日前のコメント↓。

2019年1月3日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190103.html

 

「日本国内の証券取引所に上場している日本企業は、自社の株主にどんなに外国人投資家が多かろうが、
株主総会招集通知や有価証券報告書や決算短信や適時情報開示を英文で作成する必要は一切ない。」という点と、
「日本の証券取引所とは異なり、現在のミャンマーとラオスとカンボジアの証券取引所における株式上場パターンは
『"Native Listing"or "Pure Territorial Listing"(「本来上場」もしくは「純域内上場」)』である。」
という点について書いた19日前のコメント↓。

2019年1月4日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190104.html

 

「投資家が市場に出す買い注文や売り注文や指値は同質であることが証券制度上の前提である。」
という点について書いた18日前のコメント↓。

2019年1月5日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190105.html

 

「日本企業は、日本会計基準を採用したまま、自社ADRを米国の株式市場に上場させることができる。」という点と、
「現在のミャンマーにおける外資規制の下では、『上場企業』は米国預託証券を発行できないのだが、
『非上場企業』は、ミャンマーの証券制度・証券規制とは全く無関係に、
現時点で米国預託証券を発行して米国市場に上場させることができる」、という点について書いた17日前のコメント↓。

2019年1月6日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190106.html

 

 



「米国預託証券に関して言えば、証券制度上日本における情報開示と米国における情報開示は全く別(両者は関係がない)なので、
米国における情報開示に際しては、日本企業として日本における法定開示書類を英文に翻訳するのではなく、
証券制度上の米国企業として始めから英文の法定開示書類を作成するようにしなければならない。」
という点について書いた16日前のコメント↓。

2019年1月7日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190107.html

 

「実務上も理論上も、日本の当局に提出する書類の監査と米国の当局に提出する書類の監査は全く関係がない独立した別の監査であり、
原株式の証券規制・上場制度とADRの証券規制・上場制度は全く関係がない独立した別の証券制度である。」、
という点について書いた15日前のコメント↓。

2019年1月8日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190108.html

 

「元来的には、監査に関する責任を負うのは監査法人ではなく公認会計士自身である。」、
という点について書いた14日前のコメント↓。

2019年1月9日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190109.html

 

「公認会計士は業務執行には一切関与してはならない(発行者からの独立性を保持しなければならない)という点から言っても、
内部統制の構築は明らかに受託者(取締役)が執行するべき業務の1つである以上、
公認会計士はむしろ内部統制に関しては一切意見表明をしたり判断をしたりはするべきはない。」、という点と、
「文書を書いた本人はその文書を"confirm"(確認)したりはしない。
文書を書いた本人はその文書を"look again"(見直しをする)だけである。」、という点について書いた13日前のコメント↓。

2019年1月10日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190110.html

 

 


「『確認書』にせよ"CERTIFICATION"にせよ、著名された文書に添付する文書としては明らかに『蛇足』である。」
という点について書いた12日前のコメント↓。

2019年1月11日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190111.html

 

「会社法は、株主間における議決権行使についての合意は考慮しない。」という点と、
「金融商品取引法では、投資家保護の観点から、間接保有や共同保有の考え方を広く定義している。」という点と、
「公開買付は市場外で行われるが、株式売渡請求権は株主総会外で行使される。」
という点について書いた11日前のコメント↓。

2019年1月12日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190112.html

 

「親会社による上場子会社の非公開化と昨今の『マネジメント・バイアウト』とには多くの共通点がある(概念的に非常に近い)。」、
という点について書いた10日前のコメント↓。

2019年1月13日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190113.html

 

「株式の将来の再上場が予定されているという状況下では、
会社は非公開化後も『ディスクロージャー』(情報開示)の継続義務を負うべきである。」、
という点について書いた9日前のコメント↓。

2019年1月14日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190114.html

 

 


「理論的には、証券制度は『新規上場』も『上場廃止』も前提とはしていない。」
という点について書いた8日前のコメント↓。

2019年1月15日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190115.html

 

「2種類の情報の中で、『A経済主体がおかれた特定の立場における経験や学習を通じて排他的に入手されるもの(私的情報)』
を起因として『情報の非対称性』が発生するだが、この『情報の非対称性』は本質的に解消することができない。
その理由は、『私的情報』はそもそもどのような手段を用いても他人に伝達することができない類の情報だからである。」
という点について書いた7日前のコメント↓。

2019年1月16日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190116.html

 

「訂正を行うことのメリットは上場廃止を行うことのメリットよりも大きい。」という点と、
「会計監査というのは、『確認』か何かではなく、どちらかと言えば、いわゆる『分析的手続』に主に依拠するべきである。」
という点について書いた6日前のコメント↓。

2019年1月17日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190117.html

 

「発行者は上場する前は紛れもなく非上場企業であった一方、市場の投資家は非上場株式の売買を行ったことなど
一度もない(そして事実上非上場株式の売買は行うことができない)。」という点と、
「日本とは正反対に、米国では『分析的手続』は会計監査を行う上で極めて重要な手続であると位置付けられている。」という点と、
「現行の監査制度では、実は公認会計士は真の意味の『実査』(実際に現場まで赴いて自分の目で確認をすること)すら行えない。」
という点について書いた5日前のコメント↓。

2019年1月18日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190118.html

 

 



「非常に大きな視点から見ると、自己株式の取得を行うと財務状況が悪化するが、社債の償還を行っても財務状況は悪化しない。」
という点と、「元来の商取引においても現代の商取引においても、仕入れ代金と販売代金との間に牽連性はない。」という点と、
「社債と仕入債務の違いは極めて本質的である。」という点と、
「会社が資本を払い戻してはならないのは、残りの株主が社内の現金量の減少を被るだけだからである。」という点と、
「理論上は、会社というのは予め清算期日を定めた上で設立し所定の期日まで事業を営むことが前提なのだ。」という点と、
「"terminate"の"term"は『期間』という意味のあの"term"が語源であることに辞書を読んでいて気が付いた。」
という点について書いた4日前のコメント↓。

2019年1月19日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190119.html

 

「特に、証券制度上『募集』という形で引き受け手を募って発行者が社債を発行した場合は、投資家保護の観点から、
期限前償還を行う発行者は同じく『公開された形で売却を募る』ということが証券制度上義務付けられるべきである。」
という点について書いた3日前のコメント↓。

2019年1月20日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190120.html

 

「原理的には、『手形』の支払いは銀行から受取人に対して現金で行われる。」という点と、
「『手形』用いて商取引を行っても、債務者(支払人)の支払能力それ自体(債務の弁済可能性)が向上するわけでは全くない。」
という点について書いた一昨日のコメント↓。

2019年1月21日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190121.html

 

「@『手形』の決済は全国銀行データ通信システム(全銀システム)を前提としている(『手形』の支払いは銀行振り込みである)
ということと、A債務者は手形を振り出したことについて取引銀行に対して通知をしなければならないということの2点は、
実は、世界的に見れば日本特有の商慣行である。」という点と、
「手形法と電子記録債権法は実は本質的に全く異なる法律である(電子記録債権の記録原簿は公正証書という取り扱いではない)。」
という点について書いた昨日のコメント↓。

2019年1月22日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190122.html

 

 



【コメント】
3日前2019年1月20日(日)と一昨日2019年1月21日(月)と昨日2019年1月22日(火)のコメントに一言だけ追記をします。
昨日のコメントの最後に、次のように書きました。

>手形法では実務上問題が生じるようになってきたので電子記録債権法が新しく導入されたと説明されていますが、
>おそらく手形法と電子記録債権法は本質的に異なる法律であるのではないかと思いました。

この点について追記をしたいのですが、先に結論を言いますと、手形法と電子記録債権法は本質的に異なる法律です。
今日になって思い出したのですが、電子記録債権の記録原簿はそもそも債務不履行時に「公正証書」という取り扱いを受けない、
という話を2004年に実際に聞きました。
電子記録債権の決済に関しては、債務者が債務不履行を起こした時、債権者は即時に強制執行ができるわけではないのです。
債権者の立場からすると、「手形」と電子記録債権は根源的に異なるもの(利益の保護に直結する問題)だと言わねばならないのです。
3日前の2019年1月20日(日)のコメントで紹介した2019年1月18日(金)付けの日本経済新聞の記事には、次のように書かれています。

>企業が振り出す「紙の手形」がなくならない。国と銀行がインターネット上で流通する「電子手形」を始めて10年以上たつが、
>紙の流通枚数の1割にとどまることが分かった。企業は印紙税を節約でき、保管する手間を省くことができる。

しかし、実務上のこと(法律の規定)を考えれば、企業が振り出す「紙の手形」がなくならないのは実は当たり前のことなのです。
なぜならば、「電子手形」は公正証書ではないから(債務不履行時に債権者は即時には強制執行ができないから)です。
記事や世間一般では、電子債権と電子手形は同じような意味の言葉として用いられていますが、
少なくとも紙の「手形」と電子手形とは根源的に異なるのです。
電子債権と比較すると、紙の「手形」を用いる場合は一定の手数料と印紙代がかかるわけですが、
債務不履行時に訴えを提起し確定判決を得る手間と時間と費用を考えれば、それらの費用はただみたいなものだと思います。
それらの費用は、債務不履行時に即時に強制執行を行うための保証料だと考えるべきなのです。
実は正確に言うと、手数料と印紙代を負担するのは債権者(受取人)ではなく債務者(振出人)の側であるわけなのですが、
要するに、債権者の立場から見ると、今までは紙の「手形」を受け取っていたのに今後は電子債権を受け取るとなりますと、
債務不履行時に即時に強制執行を行えなくなるため、債務の履行に関する信頼度が相対的に低下するように感じるわけです。
「万一私が債務不履行を起こした場合は、どうぞ即座に強制執行をなさって下さい。私が債務を履行しないことはありません。」
というアピールを債務者が債権者に対し行うために、債務者は電子債権ではなく紙の「手形」を振り出すべきなのです。
簡単に言えば、紙の「手形」に関する手数料と印紙代は、債権者から信頼してもらうための保証金だと考えるべきなのです。
わずかな手数料を削減しようと紙の「手形」を振り出すことをやめて電子債権(電子債務)を活用することにすると、
手数料の削減以前に仕入先そのものを失う(結果、お客様も失う)ことになり、かえって営業損益にマイナスの影響が生じます。
債権者の立場から見ると、紙の「手形」と電子債権とは「公正証書か否か?」という点において根源的に異なります。
債務者は、債権者の立場に立って、紙の「手形」を振り出すことをやめるのかどうかを決めなければなりません。

 

 


でんさいネットのサイトを見ていましたら、次のような記述がありました。

>手形の取引停止処分制度と類似の制度を整備。

この記述は、紙の「手形」が不渡りになった時は債務者(振出人)は銀行取引停止処分になるということと同じ制度を
電子債権制度でも整備をしている、という意味ではなく、おそらくですが、電子債権が債務不履行を起こした時は
その後は債務者は電子債権を新たに発行することができない、という制度を整備しているという意味だと思います。
しかし、考えてみますと、電子債権制度においても、債務不履行時に即時に銀行取引停止処分にするという制度は構築できると思います。
この点についてもう少し調べてみようと思い、でんさいネットのサイトを見ていましたら、次のようなページがありました。

支払不能処分制度とは何ですか。
ttps://www.densai.net/faq#qa_title_07

>Q.2.取引停止処分とは何ですか。
>A.債務者が6か月以内に2回以上支払不能でんさいを生じさせた場合に、
>当該債務者に対して@債務者としてのでんさいネットの利用、A参加金融機関との間の貸出取引を2年間禁止するものです。
>【詳細説明】
>手形の取引停止処分に類似の制度であり、取引停止処分を科す旨の通知は、全ての参加金融機関に対して通知されます。

このページを見ますと、紙の「手形」における銀行取引停止処分とは、紙の「手形」が不渡りになった場合は、
@債務者は紙の「手形」を振り出せなくなる、A全ての金融機関との間の貸出取引が行えなくなる、の2点を意味しているようです。
しかし、真の意味の銀行取引停止処分とは、債務者の銀行口座自体が全面的に凍結されることを意味するのではないかと思います。
簡単に言えば、銀行取引停止処分を受けると債務者は全ての金融機関の口座から1円もおろすことができなくなる、
という状態になることを銀行取引停止処分と呼ぶのだと思います。
債務者は紙の「手形」を新たに振り出せなくなることや新たな借り入れが行えなくなる、
ということを支払不能処分(銀行取引停止処分)とでんさいネットのサイトでは言っているようですが、
それは少なくとも元来の支払不能処分(銀行取引停止処分)とは異なります。
「手形」の不渡りが生じた場合は債権者はすぐに強制執行に入らなければなりませんので、
不渡りと同時に債務者の資産の凍結や資産の保全といったことをするようにしなければならないのです。
なぜそうしないのかは分かりませんが、制度設計次第では、電子債権制度においても、
債務不履行と同時に債務者の銀行口座を全面的に凍結する制度を構築することは全く可能なのだろうと思いました。

 

 


それから、「取締役は会社の債務の連帯債務者である。」という大昔の会社制度における「手形」の不渡り発生についてなのですが、
詳細な規定や説明は忘れましたが、確か、まずは会社の清算手続きの中で換金した財産を債務の弁済に充てていき、
その後、満額の弁済が不可能となった部分(額面金額との差額、弁済不足額)について取締役が弁済をする、
ということになるのではないかと思います。
取締役は、会社制度上(商法上の規定として)差額のみを弁済するという債務の履行方法となるということなのだとは思いますが、
民法上の連帯債務者は主たる債務者と全く同一の法的地位にある(債権者から見ると、連帯債務者=主たる債務者)わけです。
したがって、「手形」の不渡りが生じた場合は、理屈では、債権者は即時に取締役に対して履行を求めることができるはずですし、
債権者保護の観点に立てば、「手形」の不渡りと同時に取締役個人の銀行口座も凍結されなければならないはずです。
そうでなければ、取締役を連帯債務者としている目的が果たせない(取締役個人が不渡りを出したことと同じである)からです。
「手形」の制度では特段に弁済の即時性に重きが置かれていると思いましたので、上記のようなことを考えたわけですが、
今思い出したのですが、同じ連帯債務者でも民法上の連帯債務者と商法上の連帯債務者は少しだけ違う(商法上の特則がある)、
という話を以前聞いたことを思い出しました。
簡単に言えば、上記のように、商法の規定により会社清算後の債務について取締役は連帯債務を負う、
という取り扱い(連帯債務に関する商法上の特則)であったと思います。
債権者がいきなり取締役個人に債務の履行を請求することはできない、という取り扱いであったと思います。
しかし、確かに取締役個人に弁済してもらうのは会社清算後の債務のみ(差額のみ、弁済不足額のみ)でよいわけなのですが、
より債権者の立場に立ちますと、会社の「手形」の不渡りの後に連帯債務者である取締役個人の財産が減少・減滅・消失してしまう
という事態も会社制度上防がねばならないわけです。
その意味において、結局のところ、「手形」の不渡りと同時に取締役個人の銀行口座も凍結されなければならないはずなのです。
取締役個人に弁済してもらうのは確かに差額のみで構わないわけです。
しかし、連帯債務者である取締役個人が差額を弁済することができなくなることを最大限防止しなければならないわけです。
少なくとも債権者の立場から見ると、連帯債務者の資産の凍結は主たる債務者の資産の凍結と同じ意味を持つわけです。
そもそもの話をすると、「手形」が不渡りになった原因は取締役にあるわけです。
債権者保護の観点から言えば、即時に強制執行ができればそれでよいという話ではないわけです。
債権者が債務者に即時に行って欲しいのは、会社の清算ではなく、債務の弁済なのです。
その債務の弁済に最も重要なことは言うまでもなく債務者の「支払能力」であるわけですが、
この文脈においては、主たる債務者の「支払能力」だけではなく、連帯債務者の「支払能力」が本質的に重要なのです。
一言で言えば、連帯債務者の「支払能力」の低下を防止しなければならないのです。
確かに商法上の連帯債務者の法的地位は主たる債務者の後ではあります。
主たる債務者が債務を満額弁済し切れなかった場合にのみ連帯債務者が残りの債務を履行する、という法的立ち位置です。
しかし、連帯債務者が残りの債務を履行できるのは、連帯債務者に十分な「支払能力」がある場合のみです。
結局のところ、債権者の立場から見ると、
連帯債務者である取締役個人の財産の減少・減滅・消失・滅却は主たる債務者の財産の減少・減滅・消失・滅却と全く同じなのです。
会社制度上そして手形法上、主たる債務者の財産の減少・減滅・消失・滅却を防がねばならないならば、
会社制度上そして手形法上、連帯債務者である取締役個人の財産の減少・減滅・消失・滅却を防がねばならないはずです。
債権者の立場から見ると、たとえ主たる債務者に連帯債務者がいても、連帯債務者に十分な「支払能力」がなければ意味がないのです。
今思い出したのですが、この点についても、商法上そして手形法上は連帯債務者である取締役個人についての規定はない、
という話を以前聞いたような気がしますが、債権者の立場に立てば(満額の弁済のためには何が必要かを考えれば)、やはり、
「手形」の不渡りと同時に取締役個人の銀行口座も凍結されなければならない、という結論になると思います。
債権者の立場から見ると、「債務の弁済の原資」という点において、主たる債務者の資産と連帯債務者の資産は同じなのです。
旧商法の特則(の趣旨)は、あくまで弁済の負担の順番についてであって、弁済の金額の大小や弁済の可能性についてではないのです。