2019年1月13日(日)

「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第8章 支配株主が存在する上場企業と非公開化
3. 非公開化と少数株主の締出し
(1) 非公開化
会社法上の位置付け
金融商品取引法上の位置付け
(2) 支配株主による少数株主の締出し
フリーズ・アウトの意義と問題点
【アメリカにおける判例法の変遷】
日本における少数株主をフリーズ・アウトする法的手段
「230〜231ページ」

「232〜233ページ」

「234〜235ページ」 

「236〜237ページ」 

 

 


ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、有価証券の上場には4つのパターンがあるという資料を作成し、
「『米国預託証券』を通じた米国市場への上場を除いた、現在行われている外国市場への上場は全て純粋に域外上場である。」
という点について考察を行った26日前のコメント↓。

2018年12月18日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181218.html

 

「『売出し』や『募集』に申し込みをする投資家と株式市場で株式の取引をする投資家との間に情報格差があってはならない。」、
という点について考察を行った25日前のコメント↓。

2018年12月19日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181219.html

 

「現行の『売出し』と『募集』の制度(手続き、引受人の決定方法とその時の引受価格の決定方法)を所与のこととするならば、
『応募倍率』がちょうど『1倍』になる時、売出人の売却益と発行者の資金調達額は最大化される。」、
という点について考察を行った24日前のコメント↓。

2018年12月20日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181220.html

 

「証券会社が投資家から受け取るいわゆる取引手数料(株式売買委託手数料)は、
理論的には、価額(約定代金)ではなく株式数(売買株式数、最も典型的には単元数)に基づいて算定するべきである。」、
という点について考察を行った23日前のコメント↓。

2018年12月21日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181221.html

 

 



「『売出し』や『募集』への応募倍率が『公開価格』の高低の指標である。」、という点について指摘を行った22日前のコメント↓。

2018年12月22日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181222.html

 

「元来の証券取引制度(1893年〜1945年)と現行の証券取引制度(1948年〜)の相違点」について考察を行った21日前のコメント↓。

2018年12月23日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181223.html

 

「会計の人間にとっては非常に大きなインパクトのある出来事が、1948年(昭和23年)の証券取引法の制定であったのだが、
1948年(昭和23年)の証券取引制度の根本的変更は『証券民主化』という言葉で一般的に表現されている。」、という点と、
「『絶対的な保証』とは、当局が法定書類を作成することである。そうすれば、記載事項に誤記や虚偽は絶対的に生じない。」、
という点について考察を行った20日前のコメント↓。

2018年12月24日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181224.html

 

「公認会計士制度は、最も元来的には(1948年当時は)『公認会計士が発行者に常駐して有価証券報告書を作成する。』
という考え方であり、実は会計監査という考え方はなかった。」、という点と、
「監査制度という観点から言えば、証券取引制度は1966年(昭和41年)にも根本的な変更が行われたということになるのだが、
それは『有価証券報告書の作成者が公認会計士から発行者へと変更になった。』という抜本的な変更であった。」、
という点について書いた19日前のコメント↓。

2018年12月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181225.html

 

 



「会計監査の根源的限界は、証憑の確認ができないことである。」という点と、
「1948年の証券取引法の制定は、『当局は証券取引には関与しない。』という意味であるのだから、
1948年の時点で『上場審査』は証券取引所(証券会員制法人)自身が行うようにするべきだったのだ。」
という点について書いた18日前のコメント↓。

2018年12月26日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181226.html

 

「証憑から仕訳を書く。」と書いた17日前のコメント↓。

2018年12月27日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181227.html

 

「当事者であれば証拠はいらない。」と書いた16日前のコメント↓。

2018年12月28日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181228.html

 

「企業統治(コーポレート・ガバナンス)の向上のため、経営を第三者の視点で監視する会社機関を導入することを考えるならば、
『社外取締役』ではなく『監査役』の職務・権限を拡充する旨の会社法の改正が有効なのではないか。」という点と、
「会計用語としての『証憑』は『証拠』という意味合いではなく『伝票』という意味であり、
『伝票・証憑』には"memorandum"(メモ、覚え書き、備忘録)としての役割がある。
そして、会計用語としての『証憑』の英訳は、"evidence"では決してなく、"voucher"や"slip"という単語である。」
と書いた15日前のコメント↓。

2018年12月29日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181229.html

 

 


「米国で第1回公認会計士試験施行されたのは1934年だったのではないか。」という点と、
「『トラッキング・ストック』は、『本源的価値の算定ができない。』という根源的かつ致命的な問題点がある。」、
という点について書いた14日前のコメント↓。

2018年12月30日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181230.html

 

「会社が自社株を買うことは会社の残余財産の分配金額を減少させる。
この重要な財務上のインパクトは、現行の会社法下だけではなく、旧商法下においても当てはまる。」、
という点について書いた13日前のコメント↓。

2018年12月31日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181231.html

 

(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について その@)
「保有議決権割合の計算は郵便配達とは違う。」と書いた12日前のコメント↓。

2019年1月1日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190101.html

 

(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について そのA)
「日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドの発行済普通株式の7%を取得した時点では、
日本郵政株式会社の保有議決権割合は『0.747%〜7%』の間のいずれかの割合であり(他の株主の継続保有年数次第である)、
また、株式取得から4年後の時点では『7%〜42.94%』の間のいずれかの割合である(理由は取得時点の理由と同じ)。」という点と、
「極端な言い方をすれば、アフラック・インコーポレーテッドでは株主の保有議決権割合が株主名簿とは無関係なので、
株主が自分の保有議決権割合を自分で計算するのは事実上不可能である(保有議決権割合が他の株主の継続保有年数に依存する)。」
という点について書いた11日前のコメント↓。

2019年1月2日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190102.html

 

 



(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について そのB)
「特に海外への出資においては、出資している側が主導権を握って自社の製品や商品を出資先である外国で製造や販売していく、
という関係に出資と事業展開とがあるわけであるが、その一般的な姿とは正反対に、この事例における日本郵政株式会社には、
出資を通じて海外市場へ進出する・事業展開範囲を海外に広めるというシナリオは一切ない。」という点と、
「元来的には、保険会社は保険契約者から預かった保険料を手許に大切に保管しておかなければならなかった。」という点と、
「かの郵政民営化の際には、実は公正取引委員会は競争環境を歪めることを理由に郵便局の民営化に関する審査を行い、
承認するか否かについて十分に吟味しなければならなかったはずだ(公正取引委員会は民営化を差し止めることができたはずだ)。」
という点について書いた10日前のコメント↓。

2019年1月3日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190103.html

 

「日本国内の証券取引所に上場している日本企業は、自社の株主にどんなに外国人投資家が多かろうが、
株主総会招集通知や有価証券報告書や決算短信や適時情報開示を英文で作成する必要は一切ない。」という点と、
「日本の証券取引所とは異なり、現在のミャンマーとラオスとカンボジアの証券取引所における株式上場パターンは
『"Native Listing"or "Pure Territorial Listing"(「本来上場」もしくは「純域内上場」)』である。」
という点について書いた9日前のコメント↓。

2019年1月4日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190104.html

 

「投資家が市場に出す買い注文や売り注文や指値は同質であることが証券制度上の前提である。」
という点について書いた8日前のコメント↓。

2019年1月5日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190105.html

 

「日本企業は、日本会計基準を採用したまま、自社ADRを米国の株式市場に上場させることができる。」という点と、
「現在のミャンマーにおける外資規制の下では、『上場企業』は米国預託証券を発行できないのだが、
『非上場企業』は、ミャンマーの証券制度・証券規制とは全く無関係に、
現時点で米国預託証券を発行して米国市場に上場させることができる」、という点について書いた7日前のコメント↓。

2019年1月6日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190106.html

 

 



「米国預託証券に関して言えば、証券制度上日本における情報開示と米国における情報開示は全く別(両者は関係がない)なので、
米国における情報開示に際しては、日本企業として日本における法定開示書類を英文に翻訳するのではなく、
証券制度上の米国企業として始めから英文の法定開示書類を作成するようにしなければならない。」
という点について書いた6日前のコメント↓。

2019年1月7日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190107.html

 

「実務上も理論上も、日本の当局に提出する書類の監査と米国の当局に提出する書類の監査は全く関係がない独立した別の監査であり、
原株式の証券規制・上場制度とADRの証券規制・上場制度は全く関係がない独立した別の証券制度である。」、
という点について書いた5日前のコメント↓。

2019年1月8日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190108.html

 

「元来的には、監査に関する責任を負うのは監査法人ではなく公認会計士自身である。」、
という点について書いた4日前のコメント↓。

2019年1月9日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190109.html

 

「公認会計士は業務執行には一切関与してはならない(発行者からの独立性を保持しなければならない)という点から言っても、
内部統制の構築は明らかに受託者(取締役)が執行するべき業務の1つである以上、
公認会計士はむしろ内部統制に関しては一切意見表明をしたり判断をしたりはするべきはない。」、という点と、
「文書を書いた本人はその文書を"confirm"(確認)したりはしない。
文書を書いた本人はその文書を"look again"(見直しをする)だけである。」、という点について書いた3日前のコメント↓。

2019年1月10日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190110.html

 

 


「『確認書』にせよ"CERTIFICATION"にせよ、著名された文書に添付する文書としては明らかに『蛇足』である。」
という点について書いた一昨日のコメント↓。

2019年1月11日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190111.html

 

「会社法は、株主間における議決権行使についての合意は考慮しない。」という点と、
「金融商品取引法では、投資家保護の観点から、間接保有や共同保有の考え方を広く定義している。」という点と、
「公開買付は市場外で行われるが、株式売渡請求権は株主総会外で行使される。」
という点について書いた昨日のコメント↓。

2019年1月12日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190112.html



 


【コメント】
昨日は、オリックス株式会社が連結子会社である株式会社大京を完全子会社化するという事例を題材に、
金融商品取引法とは異なり、会社法では基本的には「間接保有」という考え方をしない、という点について考察を行いました。
金融商品取引法では保有議決権割合の計算に関して『自己による計算』という考え方に重きを置いている一方、
会社法では保有議決権割合の計算は専ら『株主名簿』に基づく、という考え方をします。
会社法第179条に基づく株式売渡請求権や「特別支配株主」について考察を行う中で、
会社法では「株主間における議決権行使についての合意」は考慮しない、という点について改めて理解を深めたところです。
今日は、昨日の議論と関連のある論点について、金融商品取引法の教科書をスキャンして紹介しています。
昨日のコメントでは、2018年11月9日(金)付けの日本経済新聞の記事を紹介したのですが、
経済産業省がMBO(経営陣が参加する買収)で社外取締役の関与を拡大する検討に入った、という内容になります。
記事には、MBO(経営陣が参加する買収)について、次のように書かれています。

>MBOはM&A(合併・買収)の一つで、経営陣が自ら所属する企業や事業部門を買収して独立する手法。
>経営陣が大株主になり、経営の自由度を高める利点がある。

この記事を読んでまず思ったのは、記事中の文言の「社外取締役」を「監査役」に置き換えるべきだ、ということです。
すなわち、MBOに関しては「監査役」の関与を拡大する会社法の改正が望まれる、と私は思いました。
「社外取締役」は法的地位としてはあくまで取締役です。
「社外取締役」は経営陣や業務執行から独立しているとは全く言えません。
経済産業省の目的を果たすためには、「監査役」の役割と権限を拡大・強化する会社法の改正が求められると私は思います。
それから、この2018年11月9日(金)付けの日本経済新聞の記事を昨日紹介した背景についてですが、
親会社による上場子会社の非公開化とMBOとには類似性があると思ったからです。
親会社による上場子会社の非公開化もMBOも、ある特定の事業部門を現経営陣が非公開化し非上場の状態で経営を行う、
という共通点があるわけです。
グループ経営戦略の観点から言えば、概念的には、親会社の経営陣=子会社の経営陣です。
親会社による上場子会社の非公開化は、言わば子会社の経営陣が自ら会社の非公開化を選択した、
という状況に概念的に近いと私は感じたわけです。
元来のMBOとは異なる点も確かに多いのですが、現在行われているMBOを鑑みれば、
親会社による上場子会社の非公開化とMBOとには共通点がある(概念的に非常に近い)のです。
スキャンして紹介している金融商品取引法の教科書を読みますと(230ページの冒頭に)、
「上場子会社の完全子会社化」と「マネジメント・バイアウト(MBO)」が並べて記載されているわけなのですが、
これは決して偶然ではなく、これら2つの行為は同種の類型として概念整理・分類されるからこそ並べて記載されているのです。
事業内容に極めて詳しい者が、というよりも、まさに業務を執行している者が会社の株式の取得を行う、という点においても、
「上場子会社の完全子会社化」と「マネジメント・バイアウト(MBO)」はどちらも証券制度上の問題があると言えます。
この文脈における非公開化の問題点は、証券市場で流通している株式の流動性の著しい低下ではありません。
そのことも問題点の1つですが、この文脈においては、情報の著しい非対称性が存在する中での株式の取得なのです。
最大限フェアな価格による株式取得が行われるよう、独立した第三者の意見を投資家が参照できるような証券制度の構築が
実務上求められる(例えば、米国では「フェアネス・オピニオン」の受領が証券制度上求められています)と思います。
また、昨日紹介した一連の記事を読みますと、オリックス株式会社の社長が投資家向け説明会で「将来の株式会社大京の再上場の
可能性は否定しない。」と発言したとのことですが、元来のMBOとは異なり、現在行われているMBOでは始めから将来の再上場を
念頭に置いた上で実施されることが多いのですが、「将来の再上場」という点でも今日論じた両者には一定の共通点があると思います。

 

 



In practice, there're some similarities
between a "management buy-out" and "a listed subsidiary company's going private" by a parent company.
The first reason for it is that, on the group management strategy,
the management of a subsidiary company is the management of a parent company.
The second reason for it is that, in practice, the subsidiary company can go public again after going private.
From a standpoint of an acquirer of shares, they or it can operate a specific business unit
away from the stock market or free from the pressure of driving investors.

実務上は、「マネジメント・バイアウト」と親会社による「上場子会社の非公開化」には互いに似ているところがいくつかあります。
その第一の理由は、グループ経営戦略上は、子会社の経営陣は親会社の経営陣と同じだからです。
その第二の理由は、実務上は、非公開化後その子会社は再び上場することがあるからです。
株式の取得者の立場から言えば、株式の取得者は、
株式市場とは距離を置いてすなわち短気な投資家からのプレッシャーから解放されて特定の事業部門を経営できるのです。

 


You may think it strange that a parent company makes its subsidiary company go public again
after it all the way makes its listed subsidiary company go private
or after it all the way acquires all of the shares of its listed subsiary company.
But, how about a "management buy-out"?
Many of the "management buy-outs" implemented these days presuppose the "future re-listing" from the beginning.
In my personal opinion, this presupposition implies
the fact that there exists the "striking asymmetry on information"
both in a "management buy-out" and in "a listed subsidiary company's going private" by a parent company, I suppose.

上場子会社をわざわざ非公開化した後ですなわち上場子会社の株式の全てをわざわざ取得した後で
その子会社を再び上場させるというのは奇妙に思えるかもしれません。
しかし、「マネジメント・バイアウト」はどうでしょうか。
今日行われている「マネジメント・バイアウト」の多くは、始めから「将来の再上場」を前提にしているのです。
私の個人的な見解になりますが、この前提は、
「マネジメント・バイアウト」においても親会社による「上場子会社の非公開化」においても、
「著しい情報の非対称性」が存在しているということを暗に意味している、と私は思います。