2019年1月6日(日)



2018年9月7日(土)日本経済新聞
ポイント還元 1200億円超 ドコモ 今期営業益1割に相当 自社サービスに誘導
顧客が使えば売り上げに 値引きより利点大きく
(記事)




 

「会計学辞典 第五版」 森田哲彌、宮本匡章 編著 (中央経済社)

「ADR」

>米国預託証券の略称。アメリカ以外の国で発行された株式を、アメリカの証券市場で直接売買する場合、
>株券の授受に時間がかかり、また配当金もUSドルで支払われるとは限らず、アメリカの投資家には不便が生じることになる。
>こうした不都合を排除するために、アメリカの銀行が預託機関となり、発行する記名式の預託証券がADRである。
>そのたADRは、アメリカ内の有価証券として取り扱われ、USドル建てで売買・決済され、
>配当金もUSドルで支払われ、株券同様の流通性がある。
>ADRの市場価格は、原則として本国の株式と連動するが、需給バランスによっては価格が乖離する場合もある。


注:
会計学辞典の上記の説明の最後の1文は間違っています。
ADRの市場価格は本国の株式とは全く連動しませんし、ADRの需給と本国の株式の需給とは全く関係ありません。
ADRの市場価格と本国の株式の市場価格とが乖離するはむしろ全く自然なことです(それどころか、同じになる理由が全くない)。
たとえ外国為替相場の変動を考慮に入れても、ADRの市場価格と本国の株式の市場価格とは一致しません。
「ADRの市場価格=本国の株式の市場価格×その時の為替レート」という関係には全くなりません。

 

 


ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、有価証券の上場には4つのパターンがあるという資料を作成し、
「『米国預託証券』を通じた米国市場への上場を除いた、現在行われている外国市場への上場は全て純粋に域外上場である。」
という点について考察を行った19日前のコメント↓。

2018年12月18日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181218.html

 

「『売出し』や『募集』に申し込みをする投資家と株式市場で株式の取引をする投資家との間に情報格差があってはならない。」、
という点について考察を行った18日前のコメント↓。

2018年12月19日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181219.html

 

「現行の『売出し』と『募集』の制度(手続き、引受人の決定方法とその時の引受価格の決定方法)を所与のこととするならば、
『応募倍率』がちょうど『1倍』になる時、売出人の売却益と発行者の資金調達額は最大化される。」、
という点について考察を行った17日前のコメント↓。

2018年12月20日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181220.html

 

「証券会社が投資家から受け取るいわゆる取引手数料(株式売買委託手数料)は、
理論的には、価額(約定代金)ではなく株式数(売買株式数、最も典型的には単元数)に基づいて算定するべきである。」、
という点について考察を行った16日前のコメント↓。

2018年12月21日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181221.html

 

 



「『売出し』や『募集』への応募倍率が『公開価格』の高低の指標である。」、という点について指摘を行った15日前のコメント↓。

2018年12月22日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181222.html

 

「元来の証券取引制度(1893年〜1945年)と現行の証券取引制度(1948年〜)の相違点」について考察を行った14日前のコメント↓。

2018年12月23日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181223.html

 

「会計の人間にとっては非常に大きなインパクトのある出来事が、1948年(昭和23年)の証券取引法の制定であったのだが、
1948年(昭和23年)の証券取引制度の根本的変更は『証券民主化』という言葉で一般的に表現されている。」、という点と、
「『絶対的な保証』とは、当局が法定書類を作成することである。そうすれば、記載事項に誤記や虚偽は絶対的に生じない。」、
という点について考察を行った13日前のコメント↓。

2018年12月24日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181224.html

 

「公認会計士制度は、最も元来的には(1948年当時は)『公認会計士が発行者に常駐して有価証券報告書を作成する。』
という考え方であり、実は会計監査という考え方はなかった。」、という点と、
「監査制度という観点から言えば、証券取引制度は1966年(昭和41年)にも根本的な変更が行われたということになるのだが、
それは『有価証券報告書の作成者が公認会計士から発行者へと変更になった。』という抜本的な変更であった。」、
という点について書いた12日前のコメント↓。

2018年12月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181225.html

 

 



「会計監査の根源的限界は、証憑の確認ができないことである。」という点と、
「1948年の証券取引法の制定は、『当局は証券取引には関与しない。』という意味であるのだから、
1948年の時点で『上場審査』は証券取引所(証券会員制法人)自身が行うようにするべきだったのだ。」
という点について書いた11日前のコメント↓。

2018年12月26日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181226.html

 

「証憑から仕訳を書く。」と書いた10日前のコメント↓。

2018年12月27日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181227.html

 

「当事者であれば証拠はいらない。」と書いた9日前のコメント↓。

2018年12月28日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181228.html

 

「企業統治(コーポレート・ガバナンス)の向上のため、経営を第三者の視点で監視する会社機関を導入することを考えるならば、
『社外取締役』ではなく『監査役』の職務・権限を拡充する旨の会社法の改正が有効なのではないか。」という点と、
「会計用語としての『証憑』は『証拠』という意味合いではなく『伝票』という意味であり、
『伝票・証憑』には"memorandum"(メモ、覚え書き、備忘録)としての役割がある。
そして、会計用語としての『証憑』の英訳は、"evidence"では決してなく、"voucher"や"slip"という単語である。」
と書いた8日前のコメント↓。

2018年12月29日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181229.html

 

 


「米国で第1回公認会計士試験施行されたのは1934年だったのではないか。」という点と、
「『トラッキング・ストック』は、『本源的価値の算定ができない。』という根源的かつ致命的な問題点がある。」、
という点について書いた7日前のコメント↓。

2018年12月30日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181230.html

 

「会社が自社株を買うことは会社の残余財産の分配金額を減少させる。
この重要な財務上のインパクトは、現行の会社法下だけではなく、旧商法下においても当てはまる。」、
という点について書いた6日前のコメント↓。

2018年12月31日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181231.html

 

(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について その@)
「保有議決権割合の計算は郵便配達とは違う。」と書いた5日前のコメント↓。

2019年1月1日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190101.html

 

(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について そのA)
「日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドの発行済普通株式の7%を取得した時点では、
日本郵政株式会社の保有議決権割合は『0.747%〜7%』の間のいずれかの割合であり(他の株主の継続保有年数次第である)、
また、株式取得から4年後の時点では『7%〜42.94%』の間のいずれかの割合である(理由は取得時点の理由と同じ)。」という点と、
「極端な言い方をすれば、アフラック・インコーポレーテッドでは株主の保有議決権割合が株主名簿とは無関係なので、
株主が自分の保有議決権割合を自分で計算するのは事実上不可能である(保有議決権割合が他の株主の継続保有年数に依存する)。」
という点について書いた4日前のコメント↓。

2019年1月2日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190102.html

 

 



(日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに出資をするという事例について そのB)
「特に海外への出資においては、出資している側が主導権を握って自社の製品や商品を出資先である外国で製造や販売していく、
という関係に出資と事業展開とがあるわけであるが、その一般的な姿とは正反対に、この事例における日本郵政株式会社には、
出資を通じて海外市場へ進出する・事業展開範囲を海外に広めるというシナリオは一切ない。」という点と、
「元来的には、保険会社は保険契約者から預かった保険料を手許に大切に保管しておかなければならなかった。」という点と、
「かの郵政民営化の際には、実は公正取引委員会は競争環境を歪めることを理由に郵便局の民営化に関する審査を行い、
承認するか否かについて十分に吟味しなければならなかったはずだ(公正取引委員会は民営化を差し止めることができたはずだ)。」
という点について書いた3日前のコメント↓。

2019年1月3日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190103.html

 

「日本国内の証券取引所に上場している日本企業は、自社の株主にどんなに外国人投資家が多かろうが、
株主総会招集通知や有価証券報告書や決算短信や適時情報開示を英文で作成する必要は一切ない。」という点と、
「日本の証券取引所とは異なり、現在のミャンマーとラオスとカンボジアの証券取引所における株式上場パターンは
『"Native Listing"or "Pure Territorial Listing"(「本来上場」もしくは「純域内上場」)』である。」
という点について書いた一昨日のコメント↓。

2019年1月4日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190104.html

 

「投資家が市場に出す買い注文や売り注文や指値は同質であることが証券制度上の前提である。」
という点について書いた昨日のコメント↓。

2019年1月5日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201901/20190105.html

 

 



【コメント】
昨日のコメントでは、ミャンマーの会社法制度と外資規制を理解のヒントにしながら、
外国人による株式の保有制限と上場制度との関係について考察を行いました。
日本においても全く同じような外資規制と上場制度に関連する法制度の移行がかつてあったわけですが、
外国人投資家が自国の証券取引所に上場している株式を購入することをその国の証券制度が認めるようになりますと、
外国人が上場企業の株式を大量に保有することの是非が国内で論じられるようになります。
外国人が上場企業の株式を保有するようになりますと、やれ安全保障だやれ言論の自由だやれ生活基盤の安定だ、
といった議論が国内で巻き起こり、外国人による大量保有を制限する動きが各国で見受けられます。
もちろん、安全保障政策、産業政策、経済政策などの観点から、一定の事業を営む会社に対して、
法令上、外国人等による議決権の取得・保有などを一定の範囲に制限することは、国家政策上あってよいわけです。
しかし、私が昨日主張したかったことは、少なくともそのような国家政策と上場制度とは矛盾する、ということなのです。
昨日私が書きましたコメントで「外資規制と上場制度との関係」については書き尽くしていると自分で思います。
昨日私が書きましたコメントを再度読み返していただければと思います。
昨日書きましたコメントを今日自分で読み返してみたのですが、昨日のコメントの本質を引用するならば、次の一文になります。

>概念的に言えば、投資家が市場に出す買い注文や売り注文や指値は同質であることが証券制度上の前提であるはずなのです。

一言で言うならば、株式市場で問われるのは、投資家の属性ではなく、売買の注文とその価格だけなのです。
注文に関連する事柄以外は全て度外視する(投資家間の差異は証券制度上ないものと考える)のが株式市場ではないでしょうか。
今日は、議論の題材として、2018年9月7日(土)付けの日本経済新聞の記事を紹介していますが、
NTTドコモは米国預託証券(American Depositary Receipt、ADR)を米国の株式市場に上場させています。
記事には、NTTドコモが顧客に付与している「dポイント」について説明がなされていますが、
「dポイント」の会計処理方法に関連して、NTTドコモは2019年3月期から国際会計基準(IFRS)を採用している、と書かれています。
企業が発行しているポイント制度に関しては、理論上の考え方を機会があれば書いていきたいと思っているのですが、
今日私が指摘したいのは、NTTドコモが米国市場にADRを上場させるに際してNTTドコモが米国会計基準や国際会計基準を
採用する必要は全くない、という点です。
NTTドコモは、日本会計基準を採用したまま、自社ADRを米国の株式市場に上場させることができます。
何が言いたいのかと言えば、NTTドコモが米国内において開示する財務諸表には米国会計基準を適用しなければならない、
というだけだ(NTTドコモは日本国内で開示する財務諸表に米国会計基準や国際会計基準を適用する必要は全くない)ということです。
日本人投資家は日本会計基準が適用され開示された財務諸表を用いて原株式の本源的価値を算定して日本市場で原株式の取引を行い、
米国人投資家は米国会計基準が適用され開示された財務諸表を用いてADRの本源的価値を算定して米国市場でADRの取引を行う、
というだけのことであり、「原株式の本源的価値の算定や取引」と「ADRの本源的価値の算定や取引」とは互いに全く別なのです。
それから、現在のミャンマーとラオスとカンボジアの証券取引所における株式上場パターンは
「"Native Listing"or "Pure Territorial Listing"(「本来上場」もしくは「純域内上場」)」であるわけですが、
現在のミャンマーとラオスとカンボジアにおける外資規制の下では、これら3国の上場企業は米国預託証券を発行できません。
なぜならば、これら3国の上場企業が米国預託証券を発行した時点で、上場企業には必然的に外国人株主が誕生するからです。
株主名簿上は米国の預託銀行が株主になるわけです(その後、取引につれ一般の米国人投資家が実質的な株主になっていくわけです)。
このことは逆から言えば、ある国の上場企業が米国預託証券を発行するためには、その本国の外資規制と証券制度がその前段階として
「"Imported Listing" or "Semiterritorial Listing"(「外来上場」もしくは「半域内上場」)」を認めなければならないのです。
また、例えばミャンマーの非上場企業は、2018年8月1日に施行された新会社法上の一連の外資規制に触れない限り、
ミャンマーの証券制度・証券規制とは全く無関係に、現時点で米国預託証券を発行して米国市場に上場させることができるのです。

 

 


With relation to an ADR, financial statements and an accounting standard applied to them in U.S.
are independent of those in Japan.
With relation to an ADR, even though an accounting standard applied to financial statements
disclosed to the market in Japan is changed from the Japanese one to the IFRS,
that in U.S. is not changed from the U.S. one to the IFRS or remains the U.S. one.
For example, concerning an ADR of NTT DOCOMO, INC.,
financial statements of NTT DOCOMO, INC. disclosed to the market in U.S. are different from those in Japan,
but the difference above is no problem on the securities system in U.S., not to mention on the one in Japan.
For investors in U.S. don't peruse financial statements of NTT DOCOMO, INC. disclosed to the market in Japan
from the beginning nor access a website of NTT DOCOMO, INC. through the internet from the beginning.

米国預託証券に関連して言えば、米国における財務諸表と財務諸表に適用される会計基準は、
日本における財務諸表と財務諸表に適用される会計基準からは独立しているのです。
米国預託証券に関連して言えば、たとえ日本の株式市場に開示される財務諸表に適用される会計基準が日本会計基準からIFRSに
変更になろうとも、米国の株式市場に開示される財務諸表に適用される会計基準は、
米国会計基準からIFRSに変更になることはない、すなわち、米国会計基準のままなのです。
例えば、株式会社NTTドコモの米国預託証券に関して言えば、米国の株式市場に開示される株式会社NTTドコモの財務諸表は、
日本の株式市場に開示される株式会社NTTドコモの財務諸表とは異なっているのですが、
この財務諸表の相違は、日本の証券制度上は言うまでもなく、米国の証券制度上は何らの問題もないことなのです。
というのは、米国の投資家は、日本の株式市場に開示される株式会社NTTドコモの財務諸表は始めから閲覧することはしませんし、
また、インターネットを通じて株式会社NTTドコモのウェブサイトにアクセスするということも始めからしないからです。

 


With relation to an ADR, as its intrinsic value, both a dividend and residual assets are paid to its holders in U.S.
with a currency denominated in the Japanese yen from an issuer in Japan.
But, a Depositary Bank in U.S. exchanges the Japanese yen received from the issuer in Japan for the U.S. dollar
for the sake of the investors in U.S.
Therefore, at least from a standpoint of investors in U.S., both a dividend and residual assets are paid in the U.S. dollar.
And, the market price of an ADR doesn't track that of the original share.
Supplies and demands on an ADR have nothing to do with those on the original share.
For the trading floor itself is different from each other.
To put it simply, an ADR is independent of the original share.
Merely the issuer of them is common.
The intrinsic value of an ADR is calculated in U.S. (i.e. by investors in the U.S. market)
on the basis of financial statements to which the U.S. accounting standards are applied and which are prepared by an issuer.
And, the intrinsic value of the original share is calculated in Japan (i.e. by investors in the Japanese market)
on the basis of financial statements to which the Japanese accounting standards are applied
and which are prepared by the same issuer, independent of the caluculation of the intrinsic value of the ADR.
An ADR is traded in the U.S. market and the original share is traded in the Japanese market.
The trading of an ADR is independent of that of the original share.
The reason why the market price of an ADR is different from that of the original share is
not that the foreign exchange rate is fluctuating in real time
but that participants (i.e. investors) in the respective markets themselves are different from each other.

米国預託証券に関連して言えば、その本源的価値としては、
配当も残余財産も米国内にいる保有者に対して日本円建ての通貨で日本にいる発行者から支払われるのです。
ただ、米国にある預託銀行が米国の投資家のために日本にいる発行者から受け取った日本円を米ドルに両替してくれるのです。
したがって、少なくとも米国内の投資家の立場から言えば、配当も残余財産も米ドルで支払われるのです。
そして、米国預託証券の市場価格は原株式の市場価格に連動はしません。
米国預託証券に対する需給は原株式に対する需給とは全く関係がないのです。
なぜならば、立会場そのものが異なっているからです。
簡単に言えば、米国預託証券は原株式からは独立しているのです。
ただ単にそれらの発行者が共通なだけなのです。
米国預託証券の本源的価値は、米国会計基準を適用して発行者が作成した財務諸表に基づいて
米国内で(すなわち、米国市場の投資家によって)算定されます。
そして、原株式の本源的価値は、米国預託証券の本源的価値の算定とは無関係に、
日本会計基準を適用して同一の発行者が作成した財務諸表に基づいて日本国内で(すなわち、日本市場の投資家によって)算定されます。
米国預託証券は米国市場で取引がなされ、原株式は日本市場で取引がなされます。
米国預託証券の取引は原株式の取引とは独立しているのです。
米国預託証券の市場価格が原株式の市場価格とは異なっている理由は、
外国為替相場がリアルタイムで変動しているからではなく、
各市場への参加者(すなわち、投資家)そのものが違うからなのです。