2017年8月6日(日)
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2017年8月5日(土)
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昨日2017年8月5日(土)のコメントでは、株式会社大戸屋ホールディングスの事例を題材にして、
「株主提案権」の問題点について書きました。
「株主提案権」の問題点については昨日書きましたので、昨日のコメントを読んでいただければと思います。
私が昨日書きました「株主提案権」の問題点とは、昨日のコメントを引用すれば、一言で言えば、
>会社法に株主提案権がありますと、取締役は「フィデューシャリー・デューティー」を必然的に果たせなくなるのです。
となります。
その理由は、理論的には株主提案権と「フィデューシャリー・デューティー」とは互いに相矛盾するからです。
詳しくは昨日のコメントを読んで下さい。
さて、半年程前の記事になりますが、「株主提案権」に関する会社法の改正が法務省で検討されている、
という内容の記事を紹介します。
現在、法務省は株主総会で株主側から議案を提起する「株主提案権」の乱用的行使を防止するため、
新たな措置の具体的な検討に入っている、とのことです。
具体的には、1人の株主が大量の提案を出し企業の過度の負担をかける事例もあり、回数制限などが検討されている、とのことです。
2017年2月10日(金)日本経済新聞
株主提案権 乱用防ぐ 回数制限など 企業、負担軽く 会社法改正を諮問
(記事)
2017年2月10日(金)日本経済新聞
株主との対話、効果的に 提案権乱用防止 制限に慎重な声も
(記事)
2017年2月10日(金)日本経済新聞
きょうのことば
法制審議会 重要法などの見直し精査
(記事)
2017年2月11日(土)日本経済新聞 社説
株主との対話促す会社法に
(記事)
2017年2月10日(金)付けの日本経済新聞の記事には、「株主提案権」に関する実務上の問題点として、以下のように書かれています。
>現行では、総株主の議決権の1%以上、または300個以上の議決権を6カ月以上前から保有する株主に行使が認められ、
>提案数や提案内容に制限はない。
>企業側からは乱用的提案への規制を求める声が上がっていた。
>米国では提案を株主1人あたり1つに制限し、英国やインドやドイツでは明らかに乱用的な内容の議案を排除する規定を設けている。
>膨大な議案が提案され、他の株主が企業と対話する機会が奪われている
>企業は乱用的と見られる株主提案でも、訴訟リスクを恐れてそのまま招集通知に入れる場合が多い
>少数株主の権利を守る観点から提案権は非常に重要だ。乱用的でない提案権を制限する恐れがある。
さらに、2017年2月11日(土)付けの日本経済新聞の記事(社説)には、まさに、ズバリ、
>株主提案権は少数株主の声を経営に反映させる重要な手段だ。
と書かれています。
しかし、この指摘は実は間違いであり、昨日も書きましたように、
「株主提案権」の本質的問題点は、「少数株主による提案」ではありません。
正しくは、「支配株主による提案」なのです。
少数株主が議案を提案できなくても、理論上は少数株主の利益は一切害されません。
なぜならば、「全株主」からの受託者である取締役が少数株主の利益にも視界株主の利益にも中立な議案を作成するからです。
しかし、支配株主が議案を提案できるとなりますと、議案作成も決議(決定)もその支配株主の思うがままとなってしまいます。
すなわち、支配株主の一存により、取締役(受託者)が少数株主の利益を守ることができなくなってしまうわけです。
株主提案権は少数株主の利益を守るための手段である、などと思っているのなら、それは大間違いです。
話は正反対です。
株主提案権があるから少数株主の利益は害されるのです。
個人株主(少数株主)が議案を提案することなど、理論上は(実務上は事務負担が会社にかかりますが)大した問題ではないのです。
会社や他の株主にとって、非建設的であり非生産的であるのなら、その議案を否決すればよいだけのことだからです。
しかし、支配株主が自身の利益だけを考えた議案を提案してきた場合は、他の株主はその議案を否決できません。
乱用的と見られる株主提案であろうが支配株主が自身の利益だけを考えただけの株主提案であろうが、
「株主提案権」の趣旨を鑑みれば、取締役はその株主提案をそのまま招集通知に入れなければなりません。
なぜなら、取締役が株主提案の内容を吟味することは「株主提案権」そのものを否定していることになるからです。
株主提案を取締役が排除することは、制度上の矛盾と言っていいわけです(「株主提案権」を認めていないことになってしまう)。
結局のところ、理論的には、「取締役は始めから会社の利益を最大化させなおかつ少数株主の利益を守る議案を作成する。」
という考え方で議論の整理は付くわけです(「フィデューシャリー・デューティー」で全ての説明が付く。」と言っていいわけです)。
理論上の前提を言えば、株主はそのような取締役を会社制度上選任しているはずなのです。
As the proverb "You can't eat your cake and have it." goes, you can't trust
your person and half in doubt.
If you propse a subject for voting at a
meeting of shareholders,
it means that you don't trust a director whom you
yourself have trusted.
ことわざで「菓子は食べたらなくなる。(同時に両方よいことはできない)」というように、
人のことを信頼しながらも同時に半分は疑ってかかる、ということはできないのです。
株主総会で投票にかけるために議題を提案するとすると、それはあなた自身が信頼をした取締役を信頼していない、
という意味になってしまいます。
Originally, trusting a person means not demanding anything of the person.
元来的には、人を信頼するとはその人には何も要求はしないという意味です。
Yesterday, I said, "On the Companies Act, 'shareholders' right to
propose'
prevents a director from performing his 'fiduciary duty.'"
In
addition to this standpoint of a director, from a standpoint of minor
shareholders,
I must say, "On the Companies Act, 'shareholders' right to
propose'
prevents a director from protecting interests of minor
shareholders."
"Shareholders' right to propose" is inconsistent not only with
maximizing interests of a company
but also with protecting interests of minor
shareholders.
Both maximizing interests of a company and protecting interests
of minor shareholders
are naturally within the scope of a fiduciry duty.
A
director himself has already prepared each proposal which not only maximizes
interests of a company
but also protects interests of minor shareholders from
the beginning (i.e. "with a director's poropsal alone").
私は昨日、「会社法に『株主提案権』があると、取締役は『フィデューシャリー・デューティー』を果たせなくなるのです。」
と書きました。
この取締役の立場からの見方に加えて、少数株主の立場からの見方を言えば、
「会社法に『株主提案権』があると、取締役は少数株主の利益を守れなくなるのです。」
と私は言わねばなりません。
「株主提案権」は、会社の利益を最大化させることとも相矛盾しますし、少数株主の利益を守ることとも相矛盾するのです。
会社の利益を最大化させることも少数株主の利益を守ることも、
当然にフィデューシャリー・デューティーの範囲内のことなのです。
会社の利益を最大化させなおかつ少数株主の利益も守る議案というのは既に、
取締役自身によって始めから(すなわち、「取締役作成の議案だけで」)作成され終わっているのです。