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【コメント】
昨日、「デット・エクイティ・スワップ」の理論上のおかしさについて書きましたが、
転換社債(新株予約権付社債)に関する記事がありましたので紹介し、一言だけコメントします。
2017年3月16日(木)日本経済新聞
銘柄診断 九州電
一時9%安 CB発行を嫌気
(記事)
記事には、転換社債(新株予約権付社債)の発行が株主に与える影響について、次のように書かれています。
>潜在的な株式数増加につながるCbの発行は既存株主に嫌気されやすい。
一般に、転換社債(新株予約権付社債)の発行に伴い、1株当たり価値の希薄化が懸念されると言われます。
しかし、転換社債(新株予約権付社債)が株式(資本金)に転換されたからと言って、
必ずしも「1株当たりの当期純利益額」が減少するとは限りません。
転換の結果、確かに発行済みの株式数は増加するわけですが、株式数の増加以上に利益額が増加する可能性もあるからです。
このことは、通常の新株式発行による資金調達(通常の増資)の場合でも論点は全く同じです。
転換社債(新株予約権付社債)の発行(そしてその後の転換)であれ通常の新株式発行による資金調達(通常の増資)であれ、
増加した株式数以上に利益額が増加すれば、「1株当たりの当期純利益額」は逆に増加するわけです。
結局のところ、簡単に言えば、1株当たりの利益額の増減は調達した資金の運用(設備投資等)次第、ということになります。
端的に言えば、資金の調達源泉(負債か資本か)は利益額を決めない、という結論になると思います。
また、この結論と関連のあることですが、記事には、資産運用会社の証券マンからの話として、次のように書かれています。
>普通社債ではなくCBを選んだことについて「痛んだ財務基盤の強化を優先したのだろう」と推察する。
確かに、会社が資本のみで資金を調達する限り、負債を返済できないという状況は絶対に生じません。
逆に、会社が負債で資金を調達する限り、負債を返済できないという可能性は常に残ります。
その意味では、言うまでもありませんが、負債の金額が少なければ少ないほど会社が債務不履行を起こす可能性は低いと言えますし、
例えば自己資本比率が高ければ高いほど会社の財務基盤は強固である(倒産可能性は低い)、という言い方はできるわけです。
それはそうなのですが、やや現実離れした話になってしまうわけですが、
理論上は「上場企業は債務不履行を起こさない。」ということを前提に理論が構築されているように思います。
他の言い方をすると、債務不履行を考慮し出すと理論の話をする上で議論の妨げになりますので、
議論の焦点を絞るために、会社が債務不履行を起こさない状態を想定した上で企業財務の理論は構築されているわけです。
そこで、理論上の話をしますと、「企業の財務基盤は株式投資に際して考慮しなくてよい。」という結論になりますので、
例えば自己資本比率は考慮したりする必要はない、という結論になるわけです。
「負債の金額や自己資本比率等は残余財産の分配額とは無関係である。」
(PDFファイル)
(キャプチャー画像)
The amount of residual assets distributed to shareholders depends
not on
an equity ratio nor the amount of debts but only on "the total residual assets
minus the amount of debts."
株主に分配される残余財産の金額は、自己資本比率や負債の金額で決まるのではなく、
「残余財産の総額から負債を控除した金額」のみで決まるのです。
In theory, a listed company in the market presupposes that it never goes into bankruptcy.
理論上は、株式市場における上場企業は決して倒産しないということが前提になっているのです。
Conceptually speaking, a bond is cash, whereas a capital is never
cash.
Therefore, a bond is never converted into a capital.
概念的に言えば、債券は現金なのですが、資本金は現金ではないのです。
したがって、債券が資本金に転換されることは決してないのです。