2017年8月2日(水)
昨日のコメントに一言だけ追記をします。
過去の関連コメント
2017年7月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170725.html
2017年7月27日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170727.html
2017年7月28日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170728.html
2017年7月29日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170729.html
2017年7月30日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170730.html
2017年7月31日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170731.html
2017年8月1日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201708/20170801.html
【コメント】
昨日、「デット・エクイティ・スワップ」について書きましたが、
今日も「デット・エクイティ・スワップ」を題材にして一言だけ書きたいと思います。
昨日のコメントと若干関連する内容になるのですが、
「デット・エクイティ・スワップ」について興味深いサイト(解説記事)がありましたので紹介します。
連結 デットエクイティスワップ(DES)をした場合の投資と資本の相殺消去
(監査であそぼ。(会計であそぼ。))
ttp://kansa-kansa.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/des-b0c5.html
以下、このサイト(解説記事)の内容を所与のこととしてコメントを書きたいと思います。
まず、「デット・エクイティ・スワップ」の会計処理についてですが、解説記事には、
>DESを実行して、債権を株式に交換した場合、債務者側では、債務が純資産に簿価で振り替わるが、
と書かれていますが、この文の最後の部分は、現物出資なのですから
「債務が『資本金』勘定に簿価で振り替わる」、と考えるべきだと思います。
また、次の部分は今日私が書きたいことと関連がある部分なのですが、
「デット・エクイティ・スワップ」における債権者側の会計処理について次のように書かれています。
>債権者側では、債権が当初の債権額以下の金額で株式に振り替わることとなり、
>債権者側で増加する株式金額より、債務者側で増加する純資産金額の方が大きくなる。
>つまり、投資と資本の金額に差異が出ることとなるのだ。
それで、このサイトを見て私が昨日書いたコメントと少しだけ関連がある(昨日は連結の話は一切していない)
と言える記述がありまして、それはまさに以下の記述です。
>この点、DES前と後で、連結上の経済実態は変わらないため、
連結財務諸表もDES前とDES後では、同じ結果にならなければならない。
昨日は個別上(特に会社清算や残余財産の分配等)の話しかしていないわけですが、
このサイトのこの記述を読んで、連結上(親子会社間でのデット・エクイティ・スワップ)でも、
DES前とDES後では連結財務諸表は同じ結果にならなければならない、という考え方はあるなと思いました。
それで、このサイトでは、連結上のこの貸借の差額について、以下のように結論付けています。
>つまり、上記仕訳だけだと、DES前と後で、引当戻りの分だけ差異が出ることになる。
>よって、この差異を解消するように、純資産増加は、引当戻しで消去すれば良いと結論付けられる。
>
> 純資産増加100 /
引当戻入 100
>
(前期以前の繰入なら期首剰余金)
この点に関する私なりの見解を述べますと、借方勘定科目は「純資産増加」と漠然とした書かれ方がなされていますが、
上の方で書きましたように、この場合の借方勘定科目はまさに「資本金」勘定なのだと思います。
ただ、子会社の資本金の増加額と親会社の子会社株式の追加取得金額(追加取得分の取得価額)との間に差額がある、
という状態ではないかと思います。
理論的には、親会社が取得する子会社株式の価額は債権の簿価(額面金額)を引き継ぐべきという考え方になるのではないか、
という気がしますが、例えば当期もしくは前期以前に減損処理をしていた場合はどうするかという問題もあるわけです。
端的に言えば、「子会社株式の時価」と言ってもこの場合答えはないわけです。
ですので、理論上どのような考え方が正しいのかは分かりませんが、
例えば、債権の減損処理後の帳簿価額を子会社株式の取得価額とするならば、
DESに伴う子会社の資本金の増加額と親会社の子会社株式の追加取得金額(追加取得分の取得価額)との間の差額は、
負ののれん(もしくは、負の連結調整勘定や負の投資差額)と捉えるべきではないだろうかと個人的には思います。
この考え方に基づきますと、この部分に関する連結上の仕訳を書きますと以下のようになります。
(資本金) 100 / (負ののれん) 100
当期中に子会社が第三者(親会社以外の者)を相手に100増資を行ったのだが、
その子会社株式を当期中に親会社が無償取得した(子会社株式を無償で追加取得した)、
と考えると上記のような仕訳になるように思いました。
実際には当期中に子会社は第三者と取引(第三者を相手とする増資)など行っていないわけなのですが、
親会社の子会社株式の取得価額を所与のものとするならば(子会社株式の価額は経営上先に決まっているものと考えるならば)、
子会社の資本金の増加額と親会社の子会社株式の追加取得金額(追加取得分の取得価額)との間の差額は、
負ののれん(もしくは、負の連結調整勘定や負の投資差額)で処理することになるのではないかと思いました。
例えば、子会社に対する貸付金なのだから、親会社としては債権放棄をしても構わないと考えているのだが、
いざ債権放棄をすると、自社には税務上損金とはならない債権放棄損失が計上される上に
子会社には税務上益金となる債務免除益が計上されてしまうため、
とにかく貸付金の返済だけはしなくてよい状況にしたいと考えて、デット・エクイティ・スワップを実施することにした、
という場合、親会社としてはその貸付金の価値ははっきり言ってゼロだと考えているのだから、
当然のことながら、貸付金の代わりに取得する子会社株式の価値もゼロだ、と経営上考えることになるわけです。
このような場合、「追加取得分の子会社株式の取得価額(貸借対照表価額)はゼロだ。」ということが
経営上は先に決まる、ということになるわけです。
客観的な数値(種々の「実際の取引値」)はない中、「貸付金や子会社株式の時価はいくらだ?時価を決めろ。」と言われれば、
そうしていなければ子会社は倒産していたわけなのですから、
経営上は貸付金や子会社株式の時価は0円と判断するしかないわけです。
そうしますと、連結上、子会社の資本金の増加額と親会社の子会社株式取得価額との間に差額が生じますので、
子会社株式の追加取得に際し投資差額が生じた場合に準じた会計処理を行うことになるのではないかと思いました。
関連する論点に関して言いますと、「親会社の子会社株式に対する減損処理は連結会計上内部取引に該当するか否か?」
という点1つ挙げてみましても、連結貸借対照表上親会社は当然のことながら子会社株式を所有していないのだから、
内部取引として修正消去する必要がある(連結上は子会社株式に対する減損処理自体が発生しない)、という考え方もありますし、
また逆に、親会社はただ単に所有している資産の減損(所有資産の価値の減少)を認識しただけなのだから
全く内部取引ではない(連結上減損損失を修正消去する必要はない)、という考え方もあると思います。
理論上、どちらの考え方にも一定以上の分があると思います(理論上も答えはないと思います)。
紹介しているサイトの結論に関して言えば、
連結財務諸表がどのような状態になっていれば、DES前とDES後で同じ結果になっている、
と言えるのかに答えがないように思いました。
連結財務諸表に全く変動がない状態のことをDES前とDES後で同じ結果になっていると表現してももちろんよいわけですが、
デット・エクイティ・スワップを実際に行ったのにDES前とDES後で同じ結果になる、
というのはそれはそれでおかしいようにも思いました。
これは別種の新しい「連結基礎概念」と言ってもよいのではないかと思いますが、連結財務諸表と呼ばれるものを考える際に、
@「相対的に親会社を中心に据える」のか、それとも、A「相対的に連結の範囲で1つだと捉える」のか、
で理論上の答えが変わるように思います。
@「相対的に親会社を中心に据える」概念では、親会社の個別上の取り扱いが中心であり、
子会社株式や子会社に対する貸付金であろうが、親会社所有の資産に変わりはないため、
所有資産の価値の減少を認識したならばそれらの減損損失も連結上計上する(修正消去しない)、という結論になるでしょう。
また逆に、A「相対的に連結の範囲で1つだと捉える」概念では、あくまでも連結の範囲で1つの事業体であると捉えますので、
連結の範囲内において親会社は子会社株式や子会社に対する貸付金を所有していない(減損損失は当然修正消去することになる)、
と考えていくことになります。
連結基礎概念には、「親会社説」と「経済的単一体説」とがありますが、私案や独自説になりますが、
今日私が書きました連結基礎概念は、「親会社単体中心説」と「連結範囲中心説」とに分かれる、と表現できると思います。
私の言う「連結範囲中心説」では、実際に親子会社間で行われた取引を過度に度外視することになると私は思うわけです。
「親会社単体中心説」は換言すれば「子会社単体中心説」でもあります。
また、「親会社単体中心説」は、他の観点から言えば、他方と比較すると相対的に「法人税法寄り」であると表現できるでしょう。
親子会社間で行われた取引を連結財務諸表に反映することも時に必要なのではないかと思いました。
この点についての理論上の結論を言えば、連結会計はそもそも法人・法人格を度外視して構築された理論ですので、
連結財務諸表では法人税法(法人税額との整合性等)も当然に度外視する、との考え方に理論上はなると言えると思います。
実際に親子会社間で行われた取引を中心に企業活動を見ていけば、
結果的に、「親会社単体中心説」では相対的に法人税との整合性が強い連結財務諸表が作成されることになる、
と表現できると思います。