2016年3月13日(日)


昨日2016年3月12日(金)までのコメントに追記をしたいと思います。
主に以下の10日間のコメントに追記をする形になります。


2016年3月2日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160302.html

2016年3月3日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160303.html

2016年3月4日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160304.html

2016年3月5日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160305.html

2016年3月6日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160306.html

2016年3月7日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160307.html

2016年3月9日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160309.html

2016年3月10日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160310.html

2016年3月11日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160311.html

2016年3月12日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160312.html

 


今日も昨日までのコメントの続きになります。
まず、昨日書きました仕訳をもう一度書きたいと思います。

 

○時価よりも高い価額で資産を譲渡した場合

 

資産を取得する側(譲り受ける側)の仕訳


会社法上の仕訳

(資産) 200円 / (現金) 200円


法人税法上の仕訳

(資産) 100円   / (現金) 200円
(寄付金) 100円

 

資産を売却する側(譲渡する側)の仕訳


会社法上の仕訳

(現金) 200円 / (資産) 100円
              (売却益) 100円


法人税法上の仕訳

(現金) 200円 / (資産) 100円
              (譲渡益) 100円

 



○時価よりも低い価額で資産を譲渡した場合

 

資産を取得する側(譲り受ける側)の仕訳


会社法上の仕訳

(資産) 0円 / (現金) 0円


法人税法上の仕訳

(資産) 100円  / (受贈益) 100円

 

資産を売却する側(譲渡する側)の仕訳


会社法上の仕訳

(現金) 0円     / (資産) 100円
(売却損) 100円


法人税法上の仕訳

(現金) 0円     / (資産) 100円
(譲渡損) 100円

 



昨日のコメントの最後に、”説明がまだ不十分なところがありますので、明日また続きを書きます。”
と書いたわけですが、昨日の最後に書きました仕訳にしましても、率直に言えば私個人の独自理論の部分があるわけです。
それで、自分で書いていて、意味が伝え切れていない、と感じているところです。
”時価という考え方を行うと、このような問題が生じるのではないか。”
ということを指摘してみようと思いながら書いていますので、
どうしても私個人の独自理論・独自の会計処理方法(以下、「参謀試案」)について書く、ということになってしまうわけです。
できる限り意味が伝わるよう、できる限り具体例を設け、議論を進めていきたいと思います。
それで、昨日私が書きましたコメントの前半部分はふむふむという感じで読んでいただけるのではないかと思うのですが、
やはり後半部分(最後)に書きました仕訳がなかなかすぐにピンとはこないのではないかと思います。
私が最後に書きました仕訳を再度書きますと、次のようになるわけです。


法人税法上の仕訳

(寄付金) 100円   / (資産) 50円
(現金) 0円
(譲渡損) 50円     
                (受取寄付金) 100円


上記の仕訳は、昨日も書きましたように、現行の法人税法の規定に従った仕訳では全くありません。
ですので、非常に分かりづらい面があると思います。
特に、貸方勘定「(受取寄付金) 100円」が非常に分かりづらいかと思います。

 


現行の法人税法の規定を見てみますと、現行の法人税法には、組織再編成税制について規定があり、
その組織再編成税制の規定の中に、「資産調整勘定」と「負債調整勘定」という勘定科目が設けられているようです。
「資産調整勘定」と「負債調整勘定」はそれぞれ、将来の損金そして将来の益金、という取り扱いになるようです。
そして、この「負債調整勘定」については、「退職給与負債調整勘定」、「短期重要負債調整勘定」、「差額負債調整勘定」
の3つに分けられており、それぞれ法令に定義が設けられているようです。
もちろん、私が昨日書きました上記仕訳はそもそも現行の法人税法の規定に従った仕訳ではありませんので、
貸方勘定「受取寄付金 100円」は現行法人税法でいう「負債調整勘定」には全く該当しないわけですが、
この貸方勘定「受取寄付金 100円」は現行法人税法でいう「差額負債調整勘定」のようなものだとイメージしていただければ、
私が書いた仕訳で何を表現したいのかが伝わるのではないでしょうか。
資産を無償で贈与を行った者に受取寄付金という益金が認識される、という点には大きな違和感があるかと思うわけですが、
「差額負債調整勘定」のようなものだと考えてみると、何となく意味が伝わるのではないでしょうか。
仕訳で書くと次のようになります。


法人税法の規定を参考にしたイメージ上の仕訳

(寄付金) 100円   / (資産) 50円
(現金) 0円
(譲渡損) 50円     (差額負債調整勘定) 100円
              



次に、先ほどの仕訳や考え方の続きになるのですが、条件設定を少しだけ変更してみましょう。

【設例@】
時価100円の資産を、代金60円を受け取って相手方に譲渡した。資産の帳簿価額は50円である。

この時の、法人税法上の仕訳と、参謀試案の仕訳(法人税法の規定を参考にしたイメージ上の仕訳)は次のようになるわけです。


法人税法上の仕訳

(現金) 60円 / (資産) 50円
              (譲渡益) 10円


参謀試案の仕訳(法人税法の規定を参考にしたイメージ上の仕訳)

(寄付金) 100円 / (資産) 50円
(現金) 60円      (譲渡益) 10円
                (差額負債調整勘定) 100円


法人税法上の仕訳を基に考えると、資産を譲渡した者には法人税法上60円の益金が認識されます。
参謀試案の仕訳を基に考えると、
資産を譲渡した者には法人税法上合計110円(譲渡益10円+差額負債調整勘定100円)の益金が認識されます。

 



まず、法人税法上の仕訳について考えてみましょう。
帳簿価額50円の資産を代金60円を受け取って譲渡したのだから、譲渡益は差し引き10円、というだけではないか、
と思われると思います。
しかし、これでは、「資産の時価は100円」という部分が全く譲渡人に・仕訳に反映されていないわけです。
資産を取得した者は、金額にして時価の資産を取得したわけです。
そして、資産を取得した者は、時価未満の金額しか代金を支払っていないわけです。
それで、支払った代金と時価の差額については受贈益を計上し収益(益金)を認識する形で
”時価で資産を取得した”という体裁を整えているわけです。
逆から言えば、資産を譲渡した者は、所有している資産を、
”公正とされる価額”未満の金額で譲渡したにも関わらず、譲渡益が計上されているわけです。
100円のものを60円で譲渡したのだから、40円の譲渡損が計上されないとおかしいのではないでしょうか。
と同時に、資産の帳簿価額は50円なのだから、その資産を60円で譲渡したら10円の譲渡益が計上される、
という考え・仕訳もやはり正しいわけです。
時価という考え方を用いますと、譲渡を行ったその資産の価値は、100円なのか、それとも60円なのか、
不明であるということになると思うわけです。
取引の結果が、譲渡損40円になるのも正しいと思いますし、譲渡益10円になるのも正しい、ということになるわけです。
時価という考え方・概念を用いますと、実は損益額の説明すら付けられないように思います。
やはり、時価という考え方・概念はない(もしあると取引が著しく歪められる)、ということなのだと思います。
この「説明が付けられない取引」をまた他の観点から見ますと、次のような説明が可能なのだと思います。
”仮に、取引に先立ち、予め決められた時価と呼ばれる価額があるとすれば、それは時価での買い手がいる、ということだ。
売り手は資産を譲渡するに際し、譲渡益の金額を最大化しようとする。
それならば、その売り手は、60円で資産を譲り受けたいと申し出ているその買い手ではなく、
時価すなわち100円で資産を買うと言っている買い手の方に資産を譲渡するはずだ。”
簡単に言えば、自分が所有しているある資産を、100円で買いたいと言っている人と60円で買いたいと言っている人がいる時に、
60円で買いたいと言っている人に売る人はいない、ということです。
その理由は、60円で買いたいと言っている人に資産を売っても、売り手の利益は最大化されないからです。
さらに事態を簡略化して言えば、「時価未満の価格で資産を売る人はいない。」ということです。
なぜなら、時価で買ってくれる人がいるからです。

 


商取引や税務に関する理論上は、「時価未満の価格で資産を売るということ」は想定されない、ということだと思います。
それで、時価未満の価格で資産を売ることについて説明が付かないのではないでしょうか。
仮に、ある人が相手方に時価未満の価格で資産を売るのだとしたら、それはその時点で寄付・贈与なのではないでしょうか。
別の人に100円で売ることができるにも関わらず、敢えて60円でその相手方に資産を売ったのだから、
それは寄付的行為・贈与的行為だ、という考え方になってくるのではないでしょうか。
こう書きますと、だから現行法人税法では受贈益を認識することになっている、と思われると思います。
ところが、ここから先は取引の捉え方・概念的な話・独自考察になってしまいますが、
別の人に100円で売ることができるにも関わらず、敢えて60円でその相手方に資産を売った、という時点で、
取引全体が寄付的行為・贈与的行為であるように思えるわけです。
すなわち、時価100円と代金60円の差額である40円が受贈益なのではなく、その資産の時価全てが受贈益、
というような捉え方になってくるように思うわけです。
そして代金60円というのは、資産の贈与を行ってくれたことに対する謝礼のような位置付けになるように思うわけです。
他の言い方をすれば、代金60円は資産の取得原価を構成しないように思うわけです。
すなわち、支払ったお金60円というのは、資産譲渡のお礼のような意味合いはあるにしても、寄付に過ぎないのです。
さらに他の言い方をすれば、支払ったお金60円というのは、資産との等価交換の部分ではないわけです。
支払ったお金60円というのは、謝礼("thanks")であって、資産の対価("acquisition cost")ではないわけです。
この理由は、支払った代金の金額に関わらず・代金の金額とは無関係に、資産の取得価額は一意に時価になるからです。
極端な言い方をすれば、時価がありますと、支払った代金と資産の取得価額とが関係がないかのようになるわけです。
買い手の立場からすると、
「本来ならば、別の人にその資産を100円で売ることができるにも関わらず、
60円しか支払わないと言っている私にその資産を売ってくれてありがとうございました。」
ということになるわけです。
この場合でも、買い手の資産の取得価額は100円なのです。
支払ったお金60円は、資産の対価ではなく謝礼ということで、寄付金なのです。

 



以上の論理展開を踏まえますと、この場合・この解釈における資産の買い手と売り手の仕訳はそれぞれ次のようになるわけです。

【設例@】
時価100円の資産を、代金60円を受け取って相手方に譲渡した。資産の帳簿価額は50円である。

この時の、法人税法の考え方を参考にした参謀解釈の仕訳は次のようになります。


買い手の仕訳

(資産) 100円  / (受贈益) 100円
(寄付金) 60円    (現金) 60円


売り手の仕訳

(寄付金) 50円  / (資産) 50円
(現金) 60円       (受取寄付金) 60円

 


この参謀解釈では、買い手には、法人税法上100円の益金が認識されます。
支払った現金60円は取得原価を構成せず、寄付金(損金不算入)になります。
また、売り手には、法人税法上60円の益金が認識されます。
そして、現行の法人税法の規定では、買い手には40円のみの益金(時価100円−支払った対価60円)が認識されます。
売り手には、10円のみの益金(譲渡価額60円−帳簿価額50円)が認識されます。
この参謀解釈では、現行の法人税法の規定に比べ、税務上は買い手・売り手どちらにとっても非常に不利になるわけですが、
それは、「売り手にとって有利な譲渡価格である時価があるにも関わらず、
売り手は敢えて不利な価格ある時価未満の価格で資産の譲渡を行った。
これは、収益の獲得(利益の最大化)を目的とした行為とは呼ばず、商取引でない。」
ということが理由になります。
売り手にとって買い手から受け取った現金が寄付金なのであれば、買い手にとっても売り手に支払ったその現金は寄付金です。
取得原価ではありません。
これもまた取引の対称性です。
売り手にとって買い手から受け取った現金が資産の対価なのであれば、
買い手にとっても売り手に支払ったその現金は資産の取得原価なのです。
買い手からすると、
「60円は謝礼ではなく資産の対価の意味合いで支払ったのですから、
(買い手である)私だけは受贈益は40円ということにしてくれませんか。」
と主張したくなるのは分かります。
しかし、売り手はやはり譲渡ではなく寄付を行った(支払った40円は譲渡の対価ではなく寄付の対価)、ということになりますので、
参謀解釈ではその主張は認められません。
買い手はあくまで、敢えて不利な資産の譲渡を行ってくれた売り手に対して謝礼を支払っただけだ、
という解釈になります。
ですから、買い手が支払った60円は、資産の対価・資産取得の対価(取得原価)ではなく、謝礼の支払い(寄付金)に過ぎず、
したがって、買い手には受贈益(益金)100円が認識されるのです。
この場面で売り手が買い手に対し行った行為というのは、法律上(会社法上や民法上)は定義としては譲渡の一類型なのでしょうが、
商取引という文脈では決して譲渡ではなく、あくまで寄付という行為に過ぎないのです。
ですので、売り手に譲渡益や譲渡損は認識されないのです。
説明がまだ不十分なところがありますので、明日また続きを書きます。