2016年3月12日(土)
昨日2016年3月11日(金)までのコメントに追記をしたいと思います。
主に以下の9日間のコメントに追記をする形になります。
2016年3月2日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160302.html
2016年3月3日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160303.html
2016年3月4日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160304.html
2016年3月5日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160305.html
2016年3月6日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160306.html
2016年3月7日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160307.html
2016年3月9日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160309.html
2016年3月10日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160310.html
2016年3月11日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160311.html
○時価よりも高い価額で資産を譲渡した場合
資産を取得する側(譲り受ける側)の仕訳
会社法上の仕訳
(資産) 200円 / (現金) 200円
法人税法上の仕訳
(資産) 100円 / (現金) 200円
(寄付金) 100円
資産を売却する側(譲渡する側)の仕訳
会社法上の仕訳
(現金) 200円 / (資産) 100円
(売却益) 100円
法人税法上の仕訳
(現金) 200円 / (資産) 100円
(譲渡益) 100円
資産を取得する側(譲り受ける側)の仕訳
会社法上の仕訳
(資産) 0円 / (現金) 0円
法人税法上の仕訳
(資産) 100円 / (受贈益) 100円
資産を売却する側(譲渡する側)の仕訳
会社法上の仕訳
(現金) 0円 / (資産) 100円
(売却損) 100円
法人税法上の仕訳
(現金) 0円 / (資産) 100円
(譲渡損) 100円
法人税法上の仕訳
(現金) 200円 / (資産) 100円
(譲渡益) 100円
昨日の設例では、「所有者の資産の帳簿価額を100円」という設定を置いたわけですが、
今日は「所有者の資産の帳簿価額を50円」という設定をおいてみましょう。
他の条件設定は昨日と同じだとします。
すると、「所有者の資産の帳簿価額を50円」の場合、法人税法上の仕訳は次のようになるわけです。
法人税法上の仕訳
(現金) 200円 / (資産) 50円
(譲渡益) 150円
この場合、譲渡益150円は法人税法上益金となるわけです。
つまり、この資産の譲渡の結果、資産を売却する側(譲渡する側)には法人税法上150円の益金が認識されるわけです。
基本的には上記の仕訳で正しいと思うわけですが、1点だけ、時価について考えることができる部分があると思います。
それは、「法人税法上、資産の対価であると認めることができるのは、資産の時価の金額までだ。」という考え方です。
この設例の場合、資産を売却する人は、資産売却の見返りとして合計200円の現金を受け取るわけです。
それで、譲渡した資産の帳簿価額との差額が譲渡益として認識されている、と考えるわけです。
ところが、法人税法上、資産には確たる時価がある、という考え方を行う場合は、
法人税法上、「資産の価額」の方が先に決まる(相手方の資産の取得価額は時価になると決まっている)ことになりますので、
資産を売却する人が資産売却の見返りとして受け取る合計200円の現金のうち、
「資産の対価」の部分は「時価の金額の分だけ」だ、という考え方が出てくるわけです。
このように考えますと、「資産の対価」の部分は資産の時価である100円だけだ、という捉え方になり、
時価を超える部分はただの寄付金に過ぎない、という捉え方が出てくるように思うわけです。
法人税法上の仕訳
(現金) 100円 / (資産) 50円
(譲渡益) 50円
(現金) 100円 (受取寄付金) 100円
すなわち、資産の譲渡益の金額は50円、受取寄付金の金額は100円、という取り扱いになるのではないか、と私は思うわけです。
譲渡益も受取寄付金もどちらも法人税法上は益金ですから、この取引の結果、資産を売却する人には合計150円の益金が認識されます。
私の解釈においても、法人税法上の益金額が変動するわけでは全くありません。
また、取引実施時、資産を売却する人は資産を取得する人から1度に現金200円を受け取るわけです。
100円ずつ、2回に分けて資産売却の見返りを受け取るわけではありません。
しかし、それでも、法人税法上「時価」という概念・考え方を用いる場合は、
取引の当事者の合意云々以前に、常に「資産の価額」が先に決まっている、という捉え方をしなければならないように思うわけです。
そうしますと、会社法上の取引としては「資産の引渡し1回・対価の支払い1回」(その場で同時に行う)という1つの取引なのですが、
法人税法上は、資産売却の見返りとして受け取る現金を、「資産の対価」部分と「寄付金の受け取り」部分とに
分けて考えなければならない、と思うわけです。
なぜならば、法人税法上は、「資産の対価」の金額が常に先に決まる・決まっているからです。
会社法上は、資産売却の見返りとして受け取る現金を、「資産の対価」部分と「寄付金の受け取り」部分とに分けられません。
法人税法で言うところの「寄付金の受け取り」部分も含め、資産売却の見返りとして受け取る現金の全額が「資産の対価」です。
ところが、法人税法上は、「資産の対価」部分の金額が先に決まる、というふうに考えなければならないと思うわけです。
なぜなら、資産を取得する人は、
まさにその「資産の対価」部分の金額でもって資産を取得する(資産の取得価額は常に時価)からです。
それが取引の対称性というものでしょう。
この場合、資産を売却する人の受取寄付金の金額は100円であるわけですが、私が最初に書きました仕訳を見てもらうと分かるように、
この時資産を取得する人が支払う寄付金の金額はまさに100円となっているわけです。
資産を取得する人は100円の寄付金を相手方に支払い、資産を取得する人は100円の寄付金を相手方から受け取る、
これで、やはり取引は完全に対称となっているわけです。
譲渡益も受取寄付金もどちらも法人税法上は益金なのだから、納税実務上はどちらでも同じではないか、と考えるのは間違いです。
譲渡益と受取寄付金とは、取引実態として異なるのです。
譲渡益は、資産の売却の結果獲得した売却益(資産の引渡しを伴っている・資産の引渡しの結果)です。
一方、受取寄付金は、何らの見返りもなくただ受け取ったというだけの収益です。
譲渡益と受取寄付金とは、税務理論上、根源的に異なるのです。
したがって、法人税法上は、たとえ行われた取引は1つ(1回)でも、上記のように仕訳(勘定科目)が分かれるのです。
では逆に、「時価よりも低い価額で資産を譲渡した場合」の「資産を売却する側(譲渡する側)の仕訳」の
「法人税法上の仕訳」はどのようになるでしょうか。
再度書きますと以下のような仕訳になるわけです。
法人税法上の仕訳
(現金) 0円 / (資産) 100円
(譲渡損) 100円
昨日の設例では、「所有者の資産の帳簿価額を100円」という設定を置いたわけですが、
先ほど同様、「所有者の資産の帳簿価額を50円」という設定をおいてみましょう。
他の条件設定は昨日と同じだとします。
ただし、昨日の議論を踏まえ、この場合は譲渡損(損金)ではなく寄付金(損金不算入)となる、という点を反映させます。
すると、「所有者の資産の帳簿価額を50円」の場合、法人税法上の仕訳は次のようになるわけです。
法人税法上の仕訳
(現金) 0円 / (資産) 50円
(寄付金) 50円
昨日の議論では、時価という考え方を所与のこととするならば、上記の仕訳になる、という結論になったわけですが、
機能の議論に加えさらに今日の議論を反映させますと、実は次のような仕訳が考えられるのではないかと思います。
法人税法上の仕訳
(寄付金) 100円 / (資産) 50円
(現金) 0円
(譲渡損) 50円
(受取寄付金) 100円
上記の仕訳は、一見して滅茶苦茶な仕訳だな、と思われると思います。
しかし、それなりに説明が付けられる仕訳です。
ここでは、法人税法上は資産には予め決められた時価がある、ということを前提に考えているわけです。
法人税法上は「資産には予め決められた時価がある」ということは、この場合、
「資産を取得した人は金額にして時価の寄付を受けたもの」ということです。
「資産を取得した人は金額にして時価の寄付を受けたもの」ということを取引の前提にして考えると、
資産をの譲渡を行った人は時価(ここでは100円)の金額の寄付を行った、という捉え方が先に来るわけです。
ですからまず最初に、借方に100円の寄付金勘定が来るわけです。
そして、引き渡した資産の帳簿価額は50円ですので、50円の資産勘定が貸方に来ます。
また、資産を引き渡した見返りとして現金は1円も受け取っていませんので、0円の現金勘定が借方に来ます。
そして、引き渡した資産勘定と見返りとして受け取った現金勘定の差額が譲渡損となるわけです。
この部分は、寄付金勘定ではなく、やはり譲渡損勘定になると思います。
なぜなら、「寄付を行ったもの」という部分については、既に100円の寄付金勘定で処理しています(時価の縛りはなくなった)ので、
資産の引渡しの部分に関しては、譲渡損(無償譲渡の結果)として処理するべきだと思うからです。
さらに、ここが一番意味不明だと思われるかもしれませんが、貸借の差額は受取寄付金勘定で処理しました。
上記のように順を追って処理を進めていくと、最後には貸借に差額が生じるわけですが、
これは金額としては純粋に差額に過ぎないわけです。
この金額(この場合100円)自体には意味は全くありません。
また、使用する勘定科目についても、「法人税法上規定がない収益に関しては包括的に寄付金を受け取ったものと取り扱う」
という考え方を行いまして、それで貸借の差額については受取寄付金勘定を用いました。
受取寄付金は益金です。
上記の仕訳で考えると、資産の譲渡を行った人には差し引き50円の益金が認識されます。
話をより一般化しますと、時価のある資産を無償で贈与を行った人には、「時価−帳簿価額」の金額の益金が認識される、
ということになります。
贈与を受けた人ではなく贈与を行った人に益金が認識される、ということになります。
以上私が書きましたことは、現行の法人税法の取り扱いとは全く異なります。
最初に、”上記の仕訳は、一見して滅茶苦茶な仕訳だな、と思われると思います”、と書きましたように、
現行の法人税法の規定から考えると全く滅茶苦茶久な仕訳になっています。
しかし、順を追って説明を書きましたように、各勘定科目や各金額が仕訳に記入される理屈はちゃんとあるわけです。
仕訳に受取寄付金勘定が出てきますので、会計・税務の詳しい人ほど直感的に意味不明だと感じてしまうだけであって、
上記の仕訳になる理屈は説明の通りあることはあるのです。
上記の仕訳の一番のポイントは、
「資産の引渡しを受けたものは資産を時価で取得したのだ」という観念が取引において一番最初に来る、
という点なのです。
この観念が一番最初に来るものですから、そこから悪く言えば辻褄合わせのようなことを考えていかねばならなくなるわけです。
このこともまた、法人税法上資産には「時価」と呼ばれる予め決められた価格がある、という考え方が原因になっているのです。
時価という考え方を所与のこととしますと、法人税法上は、「資産の取得価額が先に決まる」ということになります。
したがって、資産の取得価額から逆算するかのようなことを考えていかねばならなくなるわけです。
説明がまだ不十分なところがありますので、明日また続きを書きます。