2016年3月10日(木)



昨日2016年3月9日(水)までのコメントに追記をしたいと思います。
主に以下の7日間のコメントに追記をする形になります。


2016年3月2日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160302.html

2016年3月3日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160303.html

2016年3月4日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160304.html

2016年3月5日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160305.html

2016年3月6日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160306.html

2016年3月7日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160307.html

2016年3月9日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160309.html


昨日2016年3月9日(水)のコメントの最後に以下のように書きました。

>"All cash can know is a value as of now."(現金には今現在の価値しか分からないのです。)
>
>現金には今現在のことしか分からず、そして、資産の今現在の価値を測る尺度を提供することが現金が果たすべき役割の全てである、
>という点は、必ず理解しておくべき極めて重要な概念になります。
>この点を踏まえた上で、続きはまた明日書きたいと思います。

昨日のコメントを踏まえながら、今日はこの続きを書きたいと思います。

 



機能のコメントを簡単にまとめますと、以下のようになります。


会社が国債を無償で取得した場合、取得した国債の額面金額に関わらず、会社法上は会社は以下の仕訳を切ります。

(国債) 0円 / (現金) 0円   ・・・@


会社が取得した国債の額面金額を100円だとしますと、現行の法人税法の規定に沿った仕訳は以下のようになるわけです。

(国債) 100円 / (受贈益) 100円   ・・・A


会社が現金100円の贈与を受けた場合は、会社法上、会社は以下の仕訳を切らなければなりません。

(現金) 100円 / (受取寄付金) 100円   ・・・B


そして、会社が現金100円の贈与を受けた場合は、法人税法上、会社には受取寄付金100円の益金が認識されることになります。
会社が現金100円の贈与を受けた場合は、会社法上の取り扱いと法人税法上取り扱いは全く同じと言っていいでしょう。
昨日のコメントでは、国債と現金について無償で贈与を受けた時の仕訳と取り扱いについて考えたわけです。

 



では今日はその続きとして、土地について無償で贈与を受けた時の仕訳と取り扱いについて考えてみましょう。
土地の価格というのは、国が決めています。
国が決めた土地の価格のことを、土地の時価と呼びます。
”この土地の価格はこの価格である。”というふうに、土地の価格(土地の時価)は予め決められているわけです。
すると、時価100円の土地を会社が無償で贈与を受けた場合、会社法上の仕訳はどのようになるでしょうか。
時価100円の土地を会社が無償で贈与を受けた場合、会社法上は会社は以下の仕訳を切ります。

(土地) 0円 / (現金) 0円   ・・・C

会社は土地を無償で取得した以上、取得した国債の貸借対照表価額は「0円」なのです。
これは、現行の会社法においても、無償取得した土地の貸借対照表価額は「0円」になるのです。
ところが、現行の法人税法上は、会社は土地を”時価”で贈与を受けたもの、という取り扱いになります。
つまり、会社が支払った対価の金額と時価との差額は、現行の法人税法上は贈与(益金)もしくは寄付金(損金不算入)となる、
という取り扱いになります。
したがって、会社が取得した土地の時価を100円だとしますと、現行の法人税法の規定に沿った仕訳は以下のようになるわけです。

(土地) 100円 / (受贈益) 100円   ・・・D

現行の法人税法上、会社が時価100円の土地を無償で譲り受けた場合は、会社には100円の益金が認識されるわけです。
現行の法人税法上の取り扱いを仕訳で表現すれば、この上記「仕訳D」になるわけですが、
会社法上、この「仕訳D」を切る、という点についてはどのように考えるべきでしょうか。
仮に、会社法上もこの「仕訳D」を切るとなりますと、会社の貸借対照表に取得価額100円の土地が計上されることになります。
取得した土地の貸借対照表価額は「100円」になるわけです。
また、土地を無償取得した事業年度に、受贈益100円が損益計算書に計上されることになります。
世間一般ではむしろ、会社法上の仕訳も当然にこの「仕訳D」になるのではないか、という考えの持ち主が多いと思います。
どのような仕訳になるか、身近にいるのであれば、税理士や役場等の税務相談員や税務署職員等に聞いてみてはいかがでしょうか。
おそらく、この場合は「仕訳D」になりますよ、と答えると思います。
ひょっとしたら、公認会計士でも、この場合は「仕訳D」になりますよ、と答えるかもしれません。
会社分野が専門の弁護士や司法書士や不動産鑑定士が何と答えるかは分かりません。
ただ、少なくとも私の理解としては、
現行の法人税法上の取り扱いとしては100円の益金を認識するのだが、会社が切るべき仕訳は「仕訳C」になる、
となります。
会社法上、実は会社は「仕訳D」の仕訳を切ることはできないのではないか、と思います。
なぜなら、現行の会社計算規則の第五条「資産の評価」には、 ”資産については会計帳簿にその取得価額を付さなければならない。”
と定められているわけですが、この場合、「土地の取得価額」は「0円」だからです。
「取得価額」とは、「資産を取得するために会社が支払った対価の金額」という意味ではないでしょうか。
この場合、会社は対価を1円も支払ってはいないのではないでしょうか。

 



では次に、建物について無償で贈与を受けた時の仕訳と取り扱いについて考えてみましょう。
建物の時価というのは、所有者(取引という場面では「売り手」)の法人税法上の帳簿価額、という考え方になります。
所有者(取引という場面では「売り手」)の法人税法上の帳簿価額のことを、土地の時価と呼びます。
”この建物の価格はこの価格である。”というふうに、建物の価格(建物の時価)は予め決まっているわけです。
すると、時価100円の建物を会社が無償で贈与を受けた場合、会社法上の仕訳はどのようになるでしょうか。
時価100円の建物を会社が無償で贈与を受けた場合、会社法上は会社は以下の仕訳を切ります。

(建物) 0円 / (現金) 0円   ・・・E

会社は建物を無償で取得した以上、取得した建物の貸借対照表価額は「0円」なのです。
これは、現行の会社法においても、無償取得した建物の貸借対照表価額は「0円」になるのです。
ところが、現行の法人税法上は、会社は建物を”時価”で贈与を受けたもの、という取り扱いになります。
つまり、会社が支払った対価の金額と時価との差額は、現行の法人税法上は贈与(益金)もしくは寄付金(損金不算入)となる、
という取り扱いになります。
したがって、会社が取得した建物の時価を100円だとしますと、現行の法人税法の規定に沿った仕訳は以下のようになるわけです。

(建物) 100円 / (受贈益) 100円   ・・・F

現行の法人税法上、会社が時価100円の建物を無償で譲り受けた場合は、会社には100円の益金が認識されるわけです。
現行の法人税法上の取り扱いを仕訳で表現すれば、この上記「仕訳F」になるわけですが、
会社法上、この「仕訳F」を切る、という点についてはどのように考えるべきでしょうか。
仮に、会社法上もこの「仕訳F」を切るとなりますと、会社の貸借対照表に取得価額100円の建物が計上されることになります。
取得した建物の貸借対照表価額は「100円」になるわけです。
また、建物を無償取得した事業年度に、受贈益100円が損益計算書に計上されることになります。
世間一般ではむしろ、会社法上の仕訳も当然にこの「仕訳F」になるのではないか、という考えの持ち主が多いと思います。
どのような仕訳になるか、身近にいるのであれば、税理士や役場等の税務相談員や税務署職員等に聞いてみてはいかがでしょうか。
おそらく、この場合は「仕訳F」になりますよ、と答えると思います。
ひょっとしたら、公認会計士でも、この場合は「仕訳F」になりますよ、と答えるかもしれません。
会社分野が専門の弁護士や司法書士や不動産鑑定士が何と答えるかは分かりません。
ただ、少なくとも私の理解としては、
現行の法人税法上の取り扱いとしては100円の益金を認識するのだが、会社が切るべき仕訳は「仕訳E」になる、
となります。
会社法上、実は会社は「仕訳F」の仕訳を切ることはできないのではないか、と思います。
なぜなら、現行の会社計算規則の第五条「資産の評価」には、 ”資産については会計帳簿にその取得価額を付さなければならない。”
と定められているわけですが、この場合、「土地の取得価額」は「0円」だからです。
「取得価額」とは、「資産を取得するために会社が支払った対価の金額」という意味ではないでしょうか。
この場合、会社は対価を1円も支払ってはいないのではないでしょうか。

 


昨日書きましたと全く同じ論点になるわけですが、
会社法上、もしくは貸借対照表の概念として、収益を相手方として資産を計上することはできない、と考えなければなりません。
会社が取得した資産が国債であれ土地であれ建物であれ、会社は収益を相手方として資産を計上することはできないのです。
それから、無償取得のある意味正反対になりますが、
会社が時価よりも高い価格で資産(国債や土地や建物)を取得した場合についても考えてみましょう。
資産(国債や土地や建物)の時価を100円、会社がそれら資産の取得の対価として相手方に支払った金額を200円だとしましょう。
この時の、会社法上の仕訳と、法人税法上の取り扱いを仕訳で表現した場合の仕訳は、それぞれ次のようになります。

 



○時価100円の国債の場合

会社法上の仕訳

(国債) 200円 / (現金) 200円   ・・・G

法人税法上の仕訳

(国債) 100円  / (現金) 200円   ・・・H
(寄付金) 100円


○時価100円の土地の場合

会社法上の仕訳

(土地) 200円 / (現金) 200円   ・・・I

法人税法上の仕訳

(土地) 100円  / (現金) 200円   ・・・J
(寄付金) 100円


○時価100円の建物の場合

会社法上の仕訳

(建物) 200円 / (現金) 200円   ・・・K

法人税法上の仕訳

(建物) 100円  / (現金) 200円   ・・・L
(寄付金) 100円

 



会社法上の仕訳は、上記「仕訳G」、「仕訳I」、「仕訳K」になります。
全ての資産(国債、土地、建物)について、取得価額(資産を取得するために会社が支払った対価の金額)が付されているわけです。
資産の貸借対照表価額は取得価額となっているわけです。
会社法上は、資産の取得に際し、損益は一切計上されません。
一方、法人税法上の取り扱いを仕訳で表現すると、上記「仕訳H」、「仕訳J」、「仕訳L」になります。
全ての資産(国債、土地、建物)について、会社は時価で資産を譲り受けたもの、という取り扱いがなされるわけです。
つまり、会社が支払った対価の金額と時価との差額は、現行の法人税法上はこの場合、寄付金(損金不算入)となる、
という取り扱いになるわけです。
昨日の無償取得の場合は、法人税法上、資産の取得に際し、益金が認識されたわけですが、
上記の設例では、昨日の無償取得の場合とは異なり、法人税法上は、資産の取得に際し、損金は認識されません。
その理由は、端的に言えば、寄付金は損金不算入だからだ、ということになります。
法人税法から見ると、会社が資産取得のために支払った対価の金額として法人税法上認めることができるのは、時価の金額までだ、
時価の金額を超える金額(対価の支払い)は寄付金に過ぎない、という見方になるわけです。
他の言い方をすれば、時価100円のものに100円以上の対価を支払うはずがない、という見方に法人税法からはなるわけです。
「人は、時価100円のものには100円の対価しか支払わないものだ。」、という理論的前提を法人税法では置いているわけです。
法人税法上は、「ある資産の時価が100円である」とは、「その資産には今現在100円の価値がある」という意味です。
法理的なことを言えば、ある資産に今現在いくらの価値があるかは、まさに取引の当事者が決めることなのです。
取引の当事者はある資産には100円の価値があると判断した、だから、取引の当事者はその資産を100円で譲渡した、
という取引の流れ・資産の価格決定の過程があるわけです。
ところが、法人税法では、資産の換金性の高さ・国が資産の現金との交換を保証していることをその根拠として、
国債や土地や建物については、資産の価値が先に決まっているのだ、資産の今現在の価値はこの価額である、
というふうに、「資産には時価がある。」ということを前提にしているのです。

 



資産の換金性の高さ・国が資産の現金との交換を保証していること(時価100円の資産は必ず現金100円と交換できる)を鑑みると、
時価以外での取引(取引の結果、譲渡価額・取得価額が時価とは異なる価額となる取引)は考えられない・経済的に合理性を欠く、
という捉え方に法人税法ではなるわけです。
したがって、買い手が資産の取得の対価として売り手に支払うとしたらそれは時価の金額までである、
また逆に、売り手が資産の譲渡の対価として買い手から代金を受け取るとしたらそれは少なくとも時価以上の金額である、
という価格形成メカニズムが働くことになりますから、結果、時価100円の資産の譲渡価額・取得価額は100円になるわけです。
概念的には、国債や土地や建物という資産については、現金と同じである、というふうな考え方を法人税法では行っているわけです。
現金100円の価値はまさに100円であるように、時価100円の資産(国債や土地や建物)の今現在の価値は100円である、
という捉え方を法人税法では行っているわけです。
ですので、法人税法から見ると、
会社が相手方に支払った金額のうち、時価の金額を超える金額は資産取得の対価とは認められない、という見方になりますし、
また逆に、会社が相手方から受け取った金額に関し、時価の金額を下回っている金額(差額)については
資産取得の対価として不足しているものだ(時価100円の資産の譲渡において10円しか対価を受け取らないという場合は
差額90円は不足していても構わないと考えたということ、すなわち寄付だ)、という見方になるわけです。
時価100円の資産を取得した場合は対価として必ず100円を支払わなければならず(仮に差額がある場合はその部分は対価ではない)、
時価100円の資産を譲渡した場合は対価として必ず100円を受け取らなければならない(仮に差額がある場合はその部分は対価ではない)、
という捉え方を法人税法では行っているのです。
以上が、法人税法でいう「時価」の考え方です。
続きは明日書きたいと思います。