2016年2月22日(月)



ここ9日間のコメントに一言だけ追記します。


2016年2月13日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201602/20160213.html

2016年2月14日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201602/20160214.html

2016年2月15日(月)
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2016年2月16日(火)
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2016年2月17日(水)
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2016年2月18日(木)
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2016年2月19日(金)
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2016年2月20日(土)
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2016年2月21日(日)
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昨日のコメントで、次のように書きました。

>では、「寄付金」と「交際費」はどのように違うのかと言いますと、
>端的に言えば、「会社が現金を支払う相手」が違うのです。
>得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対し会社が直接現金を支払った場合は寄付金、
>その人達に対する接待を行うために会社が料亭やクラブやゴルフ場に現金を支払った場合は交際費、
>という違い・区分があるわけです。

そして、「交際費等と寄附金との区分」という図を昨日描いたかと思います。
この図を叩き台として、「寄付金」と「交際費」についてもう少しだけ考えたいと思います。
「寄付金」と「交際費」の差異についての基本概念はこの図で正しいとは思うのですが、
もう少し細かく見ていくと、さらに議論が深まります。
今日は、「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対し会社が直接現金を支払う場合」について考えてみたいと思います。
昨日も書きましたように、「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対し会社が直接現金を支払う場合」は、
法人税法上は寄付金という取り扱いになり、損金不算入という取り扱いになるわけです。
ただ、この点について細かく見ていくと、
「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対し会社が直接現金を支払う場合」も寄付金(損金不算入)とは言い切れない場合が
実はあるのです。
結論を先に端的に言えば、「得意先や仕入先その他事業に関係のある者」が自然人(個人事業)の場合はやはり寄付金なのですが、
「得意先や仕入先その他事業に関係のある者」が法人の場合は寄付金とは言い切れない場合があるのです。
本質部分を浮き彫りにするために、また、取引(形態)を類型化するために、
「会社が商品を売る場合(会社が売り手の場合)」と「会社が商品を買う場合(会社が買い手の場合)」に分けて考えてみました。
この分類はそれぞれ、「接待相手が買い手の場合」と「接待相手が売り手の場合」に該当します。
また、ここでは”接待”とは書きましたが、今日の論点は料亭等でのおもてなしの場合ではなく、
「会社が直接現金を支払う」という場合について考えています。
ここでの「接待相手」とは、「現金の支払い相手」という意味です。
それでは、「会社が売り手の場合」と「会社が買い手の場合」に分けて図を描き、解説を書きましたので、
参考にしていただければと思います。

 


「会社が売り手の場合」



「@現金」は寄付金(損金不算入)だが、「A現金」は売上(益金)となる。
「@現金」と「A現金」は課税所得額の計算上通算はされない。
→実務上は、販売価格の「引き下げ」交渉を行うことになるであろう。


「@現金」は寄付金(損金不算入)だが、「A現金」は売上(益金)となる。
「@現金」と「A現金」は課税所得額の計算上通算はされない。
→しかし、個人事業主の場合とは異なり、接待相手が法人の営業担当者の場合は、実務上はこのような取引が行われ得る。
 つまり、販売価格の「引き下げ」交渉とは別に、営業担当者個人への寄付金の支払いが取引上効果的である場合がある。
 逆から言えば、販売価格を引き下げなくても営業担当者個人への寄付金の支払いだけで、収益が実現する場合もある。
 →この場合の寄付金の支払いは、収益の実現に著しく寄与しているため、損金として認めるべきではないだろうか?

 



砕けた言い方をすれば、個人事業主(個人事業の社長さん)が、
仕入先に対し「私にお金を寄付すれば、あなたから商品を買いますよ。」ということは絶対にあり得ないわけです。
しかし、法人の営業担当者が
仕入先に対し「私にお金を寄付すれば、あなたから商品を買いますよ。」ということは理論上はあり得るわけです。
営業担当者の倫理上そしてコーポレート・ガバナンス上の問題は別に論点としてあるのかもしれません(それは相手方の問題)が、
会社としては、「あいつにお金を支払えば商品を買ってくれるというのなら払おうじゃないか。
お金を支払わないと収益が実現しない。お金を支払った方が当社としては儲かる。」という場面は実務上あるわけです。
この場合、これはまさに「この現金支出を行ったからこそ収益が実現した。」という場面ですから、
その現金支出は法人税法上損金であるべきだ、という論理は成り立つわけです。
端的に言えば、個人事業主(個人事業の社長さん)に対する「@現金」の支払いは、やはり寄付金(損金不算入)であるわけです。
なぜなら、この場合は販売価格を引き下げさえすれば収益を獲得できたわけですから。
しかし、法人の営業担当者に対する「@現金」の支払いは、
「収益獲得のために必要な現金支出」ということで寄付金(損金不算入)とは言い切れない側面が出てくるわけです。
この問題の本質的原因は、「意思決定の所在」だと思います。
個人事業の場合は、個人事業の財産の所有者=個人事業主(個人事業の財産=個人事業主の財産)です。
したがって、取引先からのお金の受け取りが意思決定に影響を及ぼすことが起こり得ないわけです。
ですから、個人事業主への現金の支払いは寄付金(損金不算入)なのです。
一方、法人の営業担当者の場合は、法人の財産の所有者=法人(法人の財産≠営業担当者の財産)です。
したがって、取引先からのお金の受け取りが意思決定に影響を及ぼすことが起こり得るわけです。
”意思決定に影響を及ぼす”とは、法人の購買活動に影響を与える、という意味です。
これはまさにマーケティングであり、マーケティングにかかった費用は一般的に言えば販売促進費であるわけです。
マーケティングにかかった費用は、法人税法上損金という考え方でよいのではないかと思います。
ですから、法人の営業担当者への現金の支払いは寄付金(損金不算入)とは言い切れない部分が出てくるのです。
砕けた表現を使えば、個人事業主がリベートを要求することはあり得ません(支払ったお金は自分のお金だから)が、
法人の営業担当者がリベートを要求することは起こり得る(支払ったお金は自分のお金ではないから)わけです。

 


「会社が買い手の場合」



「@現金」は寄付金(損金不算入)だが、「A現金」は取得原価(損金)となる。
「@現金」と「A現金」は課税所得額の計算上取り扱いが完全に異なる。
「@現金」と「A現金」は別の取引。
→実務上は、販売価格の「引き上げ」交渉 を行うことになるであろう。


「@現金」は寄付金(損金不算入)だが、「A現金」は取得原価(損金)となる。
「@現金」と「A現金」は課税所得額の計算上取り扱いが完全に異なる。
「@現金」と「A現金」は別の取引。
→しかし、個人事業主の場合とは異なり、 接待相手が法人の営業担当者の場合は、実務上はこのような取引が行われ得る。
 つまり、販売価格の「引き上げ」交渉とは別に、営業担当者個人への寄付金の支払いが取引上効果的である場合がある。
 逆から言えば、販売価格を引き上げなくても営業担当者個人への寄付金の支払いだけで低廉取得が可能な場合も実務上は起こり得る。
 →この場合の寄付金の支払いは、少なくとも取得原価の低減に著しく寄与している。
  この低廉取得が、販売価格の低下を通じ、収益の実現にも著しく寄与していると考えれば、
  「@現金」は損金として認めるべきではないだろうか?

 



砕けた言い方をすれば、個人事業主(個人事業の社長さん)が、
得意先に対し「私にお金を寄付すれば、あなたに商品を売りますよ。」ということは絶対にあり得ないわけです。
しかし、法人の営業担当者が
得意先に対し「私にお金を寄付すれば、あなたに商品を売りますよ。」ということは理論上はあり得るわけです。
営業担当者の倫理上そしてコーポレート・ガバナンス上の問題は別に論点としてあるのかもしれません(それは相手方の問題)が、
会社としては、「あいつにお金を支払えば商品を売ってくれるというのなら払おうじゃないか。
お金を支払わないと商品を取得できないため、その後収益が実現しない。
また、営業担当者にお金を支払えば、本来の価格よりも(もしくは他の営業担当者を通じて買うよりも)商品を安く売ってくれる、
と言っている。営業担当者にお金を支払った方が当社としては安く買えて儲かる。」という場面は実務上あるわけです。
この場合、これはまさに「この現金支出を行ったからこそ収益が実現した。」という場面であり、また、
「この現金支出を行ったからこそ、商品の低廉取得が実現し、その分多くの金額の収益が実現した。」という場面であるわけです。
したがって、その現金支出は収益金額の増加に寄与しているため、法人税法上損金であるべきだ、という論理は成り立つわけです。
端的に言えば、個人事業主(個人事業の社長さん)に対する「@現金」の支払いは、やはり寄付金(損金不算入)であるわけです。
なぜなら、この場合は販売価格を引き上げさえすれば商品を取得できた(そしてその後収益を獲得できた)わけですから。
しかし、法人の営業担当者に対する「@現金」の支払いは、
「収益獲得のために必要な現金支出」ということで寄付金(損金不算入)とは言い切れない側面が出てくるわけです。
特に、法人の営業担当者にお金を支払えば、商品を安く買えるようになる、という場面では、
収益の実現との関連性が極めて強くなるわけです。
有名な「マイケル・ポーターの競争戦略」に「コスト・リーダーシップ戦略」があります。
この「コスト・リーダーシップ戦略」の本質は、「低コスト」にあるわけです。
「低コスト」だから、販売価格を低く抑えることができ、販売数量を増加させることができるわけです。
商品の仕入れであれば、商品をできる限り低価格で仕入れることが、「コスト・リーダーシップ戦略」の実現に必要不可欠なのです。
この時、商品を仕入れる側からすると、「単に商品を1000円で仕入れる」場合と、
「営業担当者に100円払いそして商品を800円で仕入れる」場合、後者の仕入れの方が商品の仕入れにかかるコストは小さいわけです。
そして、商品を安く仕入れた結果、より多くの収益を実現させることができるわけです。
経営上の態様を所与とすれば、「収益を実現させることができたのは低廉取得の結果である。」という論理は成り立つわけです。
商品を高く買っていれば、収益は実現しなかった(仮に実現しても少なくとも高く買った分収益の金額は少ない)わけです。
営業担当者へのお金の支払いは、低廉取得のために必要な現金支出であるわけです。
「マイケル・ポーターの競争戦略」の「5つの基本的競争要因」の1つとして、「供給業者(売り手)の支配力・交渉力」があります。
営業担当者へのお金の支払いは、この「供給業者(売り手)の支配力・交渉力」を弱める効果があるわけです。
それはイコール、収益の実現に寄与することであるわけです。
以上のようなことを踏まえますと、やはり、法人の営業担当者に対する「@現金」の支払いは、
「収益獲得のために必要な現金支出」ということで寄付金(損金不算入)とは言い切れない側面が出てくるわけです。

 



この問題の本質的原因は、「意思決定の所在」だと思います。
個人事業の場合は、個人事業の財産の所有者=個人事業主(個人事業の財産=個人事業主の財産)です。
したがって、取引先からのお金の受け取りが意思決定に影響を及ぼすことが起こり得ないわけです。
ですから、個人事業主への現金の支払いは寄付金(損金不算入)なのです。
一方、法人の営業担当者の場合は、法人の財産の所有者=法人(法人の財産≠営業担当者の財産)です。
したがって、取引先からのお金の受け取りが意思決定に影響を及ぼすことが起こり得るわけです。
”意思決定に影響を及ぼす”とは、法人の商品供給活動に影響を与える、という意味です。
これもまたまさにマーケティングであり、マーケティングにかかった費用は一般的に言えば販売促進費であるわけです。
マーケティングにかかった費用は、法人税法上損金という考え方でよいのではないかと思います。
ですから、法人の営業担当者への現金の支払いは寄付金(損金不算入)とは言い切れない部分が出てくるのです。
砕けた表現を使えば、商品の仕入れに際し、
個人事業主が一種のリベートを要求することはあり得ません(受け取ったお金はどちらにせよ自分のお金になるから)が、
法人の営業担当者が一種のリベートを要求することは起こり得る(納入した商品の代金は自分のお金にはならないから)わけです。

 


From a viewpoint of what you call an entertainment,
whether a guest is a natural person or a juridical person is decisively different.

いわゆる接待という観点から見ると、接待相手が自然人なのか法人なのかは決定的に違うのです。

 

In case a guest is a vendee or a buyer.

接待相手が買い手の場合

 

In case a guest is a vendor or a seller.

接待相手が売り手の場合

 

In the Income Tax Act of 1899, there didn't exist Philip Kotler nor Michael Porter.
But, in the Corporation Tax Act of today, there do exist both Philip Kotler and Michael Porter.
It means that the Corporation Tax Act presupposes the marketing theory and the management strategy.
In other words, the Corporation Tax Act presupposes the aspect of management.
If you learn and want to understand the Corporation Tax Act,
you must study not only the provisions themselves but also the marketing and the strategy,
not to mention accounting, I suppose.
This is only a suggestion, but the Income Tax Act of 1899 stands the opposite extreme.
The Income Tax Act of 1899 presupposes only the aspect of law.

明治三十二年所得税法には、フィリップ・コトラーもマイケル・ポーターもいませんでした。
しかし、今日の法人税法には、フィリップ・コトラーもマイケル・ポーターもいるのです。
法人税法はマーケティング理論や経営戦略を前提にしている、ということです。
他の言い方をすれば、法人税法は経営上の態様を前提にしているのです。
法人税法を学び理解したいのなら、条文だけを勉強するのではなく、マーケティングや経営戦略についても勉強しなければなりません。
言うまでもなく、会計についても、だと思いますが。
参考までに言いますと、明治三十二年所得税法はこの対極に立っています。
明治三十二年所得税法は、法律上の態様のみを前提にしているのです。