2015年11月1日(日)


2015年11月1日(日)日本経済新聞 公告
資金決済に関する法律第二十条第一項に基づく前払式支払手段の払戻しのお知らせ
株式会社道とん堀
(記事)





【コメント】
昨日のHappy Elements株式会社の「資金決済に関する法律に基づく払戻しのお知らせ」と意味・内容としては全く同じかと思いますが、
株式会社道とん堀が「資金決済に関する法律」に基づいて前払式支払手段の払戻しを行う、公告になります。
昨日のコメントでは、前払式支払手段(一種の前払金)やその払戻し、そして資金決済に関する法律を所与のこととして、
コメントを書いたわけですが、今日は債権という考え方について説明し、昨日よりも少しだけ民法よりの説明を行いたいと思います。
今日の株式会社道とん堀からの公告「資金決済に関する法律第二十条第一項に基づく前払式支払手段の払戻しのお知らせ」にも、
前払式支払手段の未使用残高について、払戻しを行うので、

>お申し出期間内にお申し出をお願い致します。

と書かれています。
これは、会社は、前払式支払手段の未使用残高を保有している消費者に申し出を呼びかけているわけです。
それで、私が昨日書きましたように、この期間内に申し出ない場合は、
消費者は前払式支払手段の未使用残高の払戻しを受けられない、ということになるわけです。
これは、基本的には、会社側に申し出れば、消費者は未使用残高の払戻しを受けられる正式な債権者になれる、
という意味だと思います。
公告によりますと、「払戻しのお申出期間」は「平成二十七年十一月一日(日)から平成二十八年一月三十一日(日)まで」
と書かれていますが、
実際の未使用残高の払戻し日(決済日、現金受け渡し日)は、例えば「平成二十八年二月一日(月)」、
というような流れではないかと思います。
申し出た未使用残高保有者は、申出日に正式な債権者(決済期日も金額も確定)になり、
その日以降決済期日までは債権者のままであり、そして決済期日に決済を受ける、ということではないかと思います。
公告にも、

>道とん堀グループ各店舗にて払戻しの受付は行っておりません。

と書かれています。
例えば、大幅な遅延が発生した場合のJRの特急料金の払戻しであれば、みどりの窓口でその場で払戻しを受けられるわけですが、
払戻しに関しては会社の管理本部で一括して取り扱うという場合ですと、各消費者の申出毎に払戻しを行うという形ではなく、
「払戻しのお申出期間」終了後速やかに一括して払戻し(現金による決済)を行う、という形が多いのではないかと思います。
特急料金の払戻しの場合は、大幅な遅延が発生した時点で正式な債権者になる(払戻しを請求しないこと自体は自由)わけですが、
「資金決済に関する法律に基づく払戻し」の場合は、JR等とは異なり、申し出ない限り、債権者にはならない、
ということになると思います。

 



仮に、みどりの窓口同様、道とん堀グループ各店舗にて払戻しの受付を行っている(店舗でその場で払戻しを受けられる)としても、
結局、申し出ない限り、「会社から見れば払戻しを行う対象者ではない」という意味において、
前払式支払手段の未使用残高保有者はやはり債権者ではない、ということになると思います。
これが、JR等の特急料金の払戻しと、「資金決済に関する法律に基づく払戻し」の、本質的な相違点であろうと思います。
要するに、「債権の発生のポイント(発生のタイミング)」の問題と言えばいいでしょうか。
もしくは、「何を原因として債権は発生するのか」の違い、と言えばいいでしょうか。
特急料金の払戻しは、全乗客が自動的に払戻しの対象と言っていいわけです。
一方、前払式支払手段の払戻しは、所定の期間内に申し出た人のみが払戻しの対象、という違いがあるように思うわけです。
ひょっとすると、特急料金の払戻しにも有効期間があって、大幅な遅延が発生した日から何ヶ月以内、と決められているかもしれません。
その場合は、特急料金の払戻しも概念的には「資金決済に関する法律に基づく払戻し」に近くなってくるかとは思います。
しかし、仮に、特急料金の払戻しには特段の有効期間はないという状態を想定してみますと、
「全乗客が自動的に払戻しの対象」か「所定の期間内に申し出た人のみが払戻しの対象」かの違いは本質的であると言っていいでしょう。
この場合、特急料金の払戻しには、民法の原則規定が適用され、特急料金の払戻しの有効期間は遅延が発生した日から10年間、
という考え方になるのかもしれません。
いずれにせよ、「申し出なくても債権が発生する」と「申し出ないと債権は発生しない」の違いは決定的と言ってもいいでしょうし、
ひょっとしたら、民法(原則規定)における債権の考え方と資金決済に関する法律における債権の考え方の違いが、
ここに表れているという言い方をしてもいいのかもしれません。
民法(原則規定)では10年間で債権は消滅するという定めになっていますが、
仮にこの消滅時効の定めがないと想定してみますと、両者の違いが際立ち、私が今何を言いたいか伝わるのではないかと思います。
また、この論点は、「債権の発生のポイント(発生のタイミング)」の問題でもあるわけです。
「特急料金の払戻し」の場合は、遅延が発生したことだけで(遅延が発生した瞬間に)債権が発生するわけです。
一方、「前払式支払手段の払戻し」の場合は、当初のサービスが終了したというだけでは債権は発生せず、
申し出があって初めて(申し出があった瞬間に)債権が発生するわけです。
当事者間の関係だけ見ると一見どちらも同じではないかと思えるかもしれません(申し出があれば払い戻す、なければ払い戻さない)が、
概念的な話になりますが「何を原因として債権は発生するのか」の違いが両者にはあると思います。
特急料金も前払式支払手段も、サービスを受けるつもりでお金を支払ったのだが結局受けられなかった(だから払戻しを受ける)、
という点で両者は類似しているわけですが、債権発生のタイミングや原因が両者は大きく異なるわけです。

 


それで、民法の一般論になりますが、民法における債権の考え方について一言だけ書きます。
実は以上の議論が参考になるのではないかと思いますが、
本来は、「債権者は決済期日に債務者に請求を行う。」という考え方はないと思います。
なぜならば、「債務者が債権者に対し期日に決済を行うこと」は決まっていることだからです。
「債務者が債権者に対し期日に決済を行うこと」が決まっているいるから、債権(債権債務関係)なのです。
債権者が決済期日に改めて債務者に請求をする、という考え方はないわけです。
金銭の請求自体は取引時(債権発生時)に既に行っていることなのです。
その既に行った請求の決済日が所定の決済期日というだけであるわけです。
ですから、”決済期日に請求をする”という考え方自体がないと言っていいと思います。
他の言い方をすれば、「代金請求日」と「代金決済日」との間に時間的な間がある状態のことを「債権」と呼ぶのだと思います。
現金取引と対比させて考えてみると、その違いが分かるでしょう。
現金取引の場合は、「代金請求日」と「代金決済日」とが同じ日であるわけです。
代金の請求自体は取引時(商品納入時・目的物の引渡し時等)に行っている、という点では、掛取引と現金取引とで同じなのです。
そういったことを考えますと、民法の規定・条文そのものにけちをつけている形になりますが、
債権に消滅するという概念があるのか、という気がします。
債権のことを”請求権”というふうに捉えると、確かに”消滅”ということがあり得るわけです。
一定期間請求しなかったから権利が消滅する、と言われれば確かにそうだと思います。
しかし、債権というのは、そもそも”請求権”ではありません。
債権というのは、”請求権”ではなく、ただ単にその日に代金を受領する、というだけのことであるわけです。
債権者がその日に代金を受領することは既に決まっている(その日に代金を受け取ることになっている)、と言えばいいでしょうか。
債務者の立場から言えば、決済期日に代金を支払わなかったならば、それは即債務不履行を意味するわけです。
債権者から決済期日に請求されなかったら債務不履行にはならない、という考え方は間違いであるわけです。
決済期日、債権者は債務者に請求する必要はありませんし、債務者は債権者からの請求を待つ必要はありません。
正確に言えば、請求自体は既に取引時に終わっていることですから、後は決済期日に決済を行うというだけのことなのです。
民法の条文に債権の「行使」という文言がありますが、率直に言えば債権は「行使」するものではないのです。
そういったことを考えますと、債権の消滅時効が10年間だ2年間だ、というのは、
債務不履行が生じている状態が10年間だ2年間だと言っていることと同じであるように聞こえるわけです。
少なくとも、概念的には、決済期日に決済がなされなかった時点で債務不履行の状態です。
ただ、無理やり実務上のことを考えますと、決済期日に債務者が債務を決済せず、債権者の方も決済期日のことを忘れていた、
というようなことも考えられるかとは思います。
その場合は、当初の決済期日後、債権者が債務者に対し改めて請求を行うことができる期限というものを、
民法で「消滅時効」という形で定めているだけなのだと思います。
現実には、債権者が決済期日に決済を受けないということ自体が生じない(もし生じれば債務不履行です)かと思います。
売上債権(売掛金)が発生しているということは納入先に請求を行ったという意味ですし、
仕入債務(買掛金)が発生しているということは仕入先から請求を受けた、という意味です。
代金請求に関するお互いの意思表示は既に終わっている(請求があったから買掛金が発生した)、と理解しなければならないと思います。

 

 



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