2018年11月17日(土)
ここ5日間のコメントを踏まえ、
2018年11月5日(月)と2018年11月6日(火)と2018年11月9日(金)と2018年11月15日(木)と2018年11月16日(金)のコメントに
に一言だけ追記をしたいと思います。
今日は、昨日紹介した会計学辞典を題材にして、「清算」と「破産」について一言だけ書きたいと思います。
「現実には、有価証券の譲渡に関して言えば、発行者による『情報開示』によって当事者の利益を保護できるのは
『市場の投資家と市場の投資家との間の取引』に関してのみである。」、という点について書いた5日前のコメント↓。
2018年11月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181112.html
「債権は債務者との関係に依拠するが、物権は担保物件との関係のみに依拠する。(物権は人との関係ではない)」という点と、
「『債権の譲渡は、担保が付いている債権についてのみ認める。』という証券制度や民法の規定も考えられる。」という点と、
「債権では相手方を信頼することが前提なのに会社制度上『債権者保護』の手段を講じるというのはある意味矛盾である。」という点と、
「委任者保護は観念できないように債権者保護も観念できない。」という点と、
「株式市場における株式の譲渡とは、出資額の回収ではなく、あくまで株式の本源的価値に関して投資家間で競い合うことである。
例えば担保を活用することで出資額の回収を保証することが株式の譲渡における『投資家保護』ではない。」という点と、
「株式市場における投資家保護の本質は、『株式の本源的価値を算定できること』にある。」、
という点についてコメントを書いた4日前のコメント↓。
2018年11月13日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181113.html
「現行法上は『法人が事業を営む中で取引先から受け取る受取手形』は金融商品取引法の適用を受ける有価証券ではないのだが、
投資家の利益を保護することを考えれば、「法人が事業を営む中で取引先から受け取る受取手形」も
当然に金融商品取引法の適用を受ける有価証券でなければならない。」
という点についてコメントを書いた3日前のコメント↓。
2018年11月14日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181114.html
「一般にはそう解釈されていないかもしれないのであくまで個人的な見解になるのだが、
『明瞭性の原則』は『貸借対照表原則』であり、『費用・収益対応の原則』は『損益計算書原則』である。」という点と、
「理論的には、『保守主義の原則』の目的は『元手を分配しないこと』である。」
という点についてコメントを書いた一昨日のコメント↓。
2018年11月15日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181115.html
「法制度上商人に対し作成と保存を要請しなければならないのは、実は仕訳帳のみである。」という点と
「理論上は債権者保護は観念できないのだが、やはり会社制度は現実には債権者保護をも目的としている。」
という点についてコメントを書いた昨日のコメント↓。
2018年11月16日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181116.html
「企業会計上は、貸借対照表価額は必ずしも真の取得価額(原始取得原価)とは限らない。」、と書いた時のコメント↓。
2018年11月5日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181105.html
「複式簿記とは、貸借対照表と損益計算書は同時に作成することである。」、と書いた時のコメント↓。
2018年11月6日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181106.html
「『企業会計原則』と証券制度(上場制度)上の財務諸表監査は、理論的には直接的なつながりはない。」、と書いた時のコメント↓。
2018年11月9日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181109.html
【コメント】
今日は「清算」と「破産」について一言だけ追記をしたいのですが、
まず最初に、
「会計学辞典 第五版」 森田哲彌、宮本匡章
編著 (中央経済社)
から「清算」と「清算貸借対照表」と「破産」の項目をスキャンして紹介したいと思います。
そして、清算時や破産時に清算人や破産管財人が作成する貸借対照表について説明してある部分を引用したいと思います。
「清算貸借対照表」("Balance Sheet on Liquidation")
「清算」について↓
>会計に関して清算人には、清算開始時の財産目録・貸借対照表の作成(会492)、
>清算中の各年度(清算事務年度)の貸借対照表・事務報告・附属明細書の作成(会494)、
>清算事務終了時の決算報告の作成(会507)、および会社の帳簿および重要資料の10年間の保存(会508)が義務付けられている。
「清算貸借対照表」について↓
>通常貸借対照表に対する非常貸借対照表の1つであって、清算開始の時点で作成を求められる清算開始貸借対照表と
>清算手続中の各事務年度末に作成を要する清算年度貸借対照表がある。
>すなわち、会社法は、清算人は、就任後遅滞なく、財産目録および貸借対照表を作成しなければならないとし(会492T)、
>また、清算期間中の各事務年度に係る貸借対照表その他の書類を作成しなければならないと規定している(会494T)。
>清算貸借対照表は、企業の継続を前提とせず、その解体を前提とした財産状態を示すもの
「破産」について↓
>破産手続の中で特に会計に関しては、破産管財人による破産手続開始時の財産目録・貸借対照表の作成(破産法153)をはじめ
>債権者集会に対する破産財団の状況等の報告(破産法159)
>および任務終了時における裁判所への計算の報告書の提出(破産法88)が規定されている。
清算貸借対照表や破産貸借対照表に計上する資産の価額についてですが、この辞典には(条文にそう定められているのでしょうが)、
清算開始貸借対照表に記載する財産の価額はその処分価額による、と書かれていますし、また、
破産貸借対照表には破産財団の構成する資産すなわち破産手続開始時に破産者が有する差押え可能な資産を売却時価で計上する、
と書かれていますが、清算の開始時や破産の開始時に資産の処分価額は当然に分かりません。
清算人や破産管財人は、手続きの中で資産の買い手を探して資産の処分を進めていくことになるわけです。
率直に言えば、清算手続きや破産手続きは、実は「資産の買い手探し」から始まるのです。
したがって、理論的には、清算貸借対照表や破産貸借対照表に計上する資産の価額は債務者の取得原価による、というだけなのです。
手続きにおける資産の実際の処分価額については、各事務年度の事務報告と各事務終了時の決算報告に記載をすることになります。