2018年6月19日(火)



最近の92日間のコメントを踏まえた上で、記事を紹介しつつ、少しずつコメントを書きたいと思います。

 


2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年6月18日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180618.html

までの一連のコメント

 


現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント

2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html


 


2018年6月19日(火)日本経済新聞
アジア注目銘柄 クレタム(マレーシア)
―0.460リンギット(33.81%安) 同業による買収撤回 嫌気
(記事)


昨日は、「物言う株主(アクティビスト)」の投資行動について考察を行ったのですが、
近い将来に経営統合が予見される銘柄への投資について、昨日は次のように書きました。

>投資家としては、株式の売却がより容易(売却可能性がより高い)な株式へ投資を行うようにするべきなのです。
>特に経営統合絡みの銘柄の場合は投資家として株式投資上その点を決して忘れてはならないわけです。
>話を一般化して言えば、経営統合絡みの銘柄に関しては、親会社や存続会社ではなく子会社や消滅会社の方に投資をするのです。
>子会社や消滅会社の方に投資をしておけば、プレミアムや合併比率等を勘案すれば、通常は投資がより有利な投資に換わるのです。

「米ゼロックスコーポレーション(XC)の物言う株主」が、株式投資を行う時点で
富士フイルムホールディングス株式会社による米ゼロックスコーポレーション(XC)の連結子会社化を予見していたのかどうかは
分からないのですが、「オアシス・マネジメント・カンパニー」は、株式投資を行う時点で、
出光興産が昭和シェル石油と経営統合を行う計画を持っていることは予見できたのではないかと思います。
さらに言えば、出光興産と昭和シェル石油とが経営統合を行う計画については、両社から既に公表された後に、
「オアシス・マネジメント・カンパニー」は両社の両方もしくはどちらか一方に投資を行う、
という状態だったのではないかと思います。
すなわち、「オアシス・マネジメント・カンパニー」は、株式投資を行う時点で、
昭和シェル石油株式のみに投資を行うという選択をできたのではないかと思います。
長期的に見れば出光興産株式の方が株価がより上昇しより大きな投資利益を得られる(株式の売却可能性の点でも問題はない)、
という投資判断をしたということなのかもしれませんが、「オアシス・マネジメント・カンパニー」は、
実際には昭和シェル石油株式ではなく出光興産株式のみに投資を行っているわけです。
このたびの経営統合に関しては、「オアシス・マネジメント・カンパニー」は、たとえプレミアムや合併比率等を勘案しても、
子会社や消滅会社ではなく親会社や存続会社の方に投資をした方がより有益だ、という投資判断をしたのだと思います。
今日紹介している日本経済新聞の記事は、2月に株式取得計画が発表されていたのだが6月に入り計画の撤回が発表され、
その撤回発表を受けて対象会社の株価が急落した、という内容になります。
記事には、株価急落の原因として、次のように書かれています。

>高値での株式売却機会を見込んでいた投資家の手じまい売りが出た。

親会社や存続会社ではなく子会社や消滅会社の方に投資をしておけば儲かるというわけでは必ずしもない、という実例になります。
ただ、株式取得計画が株式市場に公表された後になって撤回されたとなりますと、それは投資判断のミスでも何でもないわけです。
一旦株式市場に公表した経営統合計画はその後絶対に撤回できない、という規制を証券制度上設けねばなりませんが、
そのような法制度は現実には設計しづらいとなりますと、実務上は「法定開示書類の提出」のみを判断基準とするしかありません。
理論上は、「法定開示書類の提出」以外のいかなる公表も信頼するに値しない、という捉え方を証券制度上行うべきなのです。

 

 


2018年5月18日(金)日本経済新聞
買収防衛策、廃止相次ぐ 導入企業、ピーク比3割減 投資家の批判強く
(記事)


2018年5月25日(金)日本経済新聞
統治改革銘柄に光明 防衛策廃止で株浮揚
(記事)


2018年6月19日(火)日本経済新聞
総会の焦点 C 買収防衛策
批判強く廃止相次ぐ
(記事)

 

「買収防衛策の導入」についての過去のコメント↓

2018年4月13日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180413.html

2018年4月14日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180414.html

 


買収防衛策の導入や廃止に関する記事を3本紹介していますが、買収防衛策の導入企業は近年は一貫して減少傾向にあるようです。
買収防衛策に関しては以前も考察を行いましたが、買収防衛策の導入についての株主総会決議は会社法上は全く意味がない、
ということをその時のコメントで書きました(法律上は、株主総会決議事項は会社法に規定がある事項のみだから)。
買収防衛策の導入について株主総会決議を取っても取らなくても、実は法律上は買収防衛策の有効性・無効性は全く同じなのです。
買収防衛策の導入について株主総会決議を取ると買収防衛策の有効性・適法性・正当性は高まる、という解釈は実は間違いなのです。
まず最初に定款変更を行い、「弊社では、買収防衛策の導入を株主総会決議事項とする。」という定めを定款に置き、
そして改めて株主総会決議を取ると買収防衛策の正当性が高まる、という手法が紹介されていたりしますが、それは全くのデマです。
ただ、その手法を1つの参考にして考えてみますと、買収防衛策の是非や正当性はともかく、証券制度上は、
「会社には買収防衛策が導入されている。」という事実について投資家や債権者に開示をすることは必要であり有用だと思います。
敵対的買収者の立場から見ても、対象会社に買収防衛策が導入されているか否かについて事前に開示がなされていないと、
買収を検討することもできませんし、また、先ほどの記事のマレーシアのクレタム社の事例も理解のヒントになるかと思いますが、
例えば、「2月にクレタム社の株式取得計画を公表した時は、クレタム社に買収防衛策が導入されていたとは分かりませんでした。
6月に入りクレタム社に買収防衛策が導入されていることが判明いたしましたので、公表していた株式取得計画を撤回いたします。」、
などと買収者に公表されても、株式市場の投資家が一番困る(それこそ株価が無意味に変動していまう原因になる)わけです。
ですので、会社制度上そして証券制度上買収防衛策を所与のこととしますと、
会社が買収防衛策を導入しているなら導入しているで、買収防衛策の導入の事実が株式市場に開示されていなければならない、
という考え方になるわけです。
そうでないと、買収予定者だけではなく、株式市場の投資家も困るわけです。
「対象会社に買収防衛策が導入されていることを知っていましたか?」、
などと後になって証券当局が買収者に詰問をしても、株式市場の投資家は救われないわけです。
ですので、「対象会社に買収防衛策が導入されていることは計画公表当時は知りませんでした。」という言い逃れをさせないために、
証券制度上は、「買収防衛策の導入の有無」を有価証券報告書の記載事項とする、と金融商品取引法に定めるべきなのです。
また、会社制度上は、買収防衛策が例えば債権者の利益とどれくらい関係があるかは分かりませんが、
「買収防衛策の導入の有無」を登記事項とする、と会社法に定めるべきなのです。
情報の開示という観点から言えば、一言で言えば、「定款に定められても社外の利害関係者には分からない。」わけです。
買収者に対し、「定款見てないんですか?」とは証券当局は言えないわけです。
現在では上場企業に関しては東京証券取引所のウェブサイト上で上場企業の定款を閲覧できますが、
定款というのはそもそも情報開示の内容や手段では全くなく、議事録やメモやせいぜい内規という位置付けに過ぎません。
情報開示という意味では、買収防衛策について定款に定めたり株主総会決議を取っても何の意味もないのです。
現時点でも、導入している買収防衛策の概要について有価証券報告書に記載・開示している企業も中にはあるとは思いますが、
現在の規定上は自主的な記載・開示に過ぎませんので、買収防衛策の詳細について有価証券報告書に記載することを
金融商品取引法上の義務とするという方法が一番現実的だと思います(情報開示という意味では理論的でもあると思います)。
「買収防衛策の査定の結果、弊社所有の現金では不十分で株式取得が遂行できない内容と判断した。」、
などと後になって買収予定者に言われても、投資家が一番困るのです。

 

One idea is that the fact that an anti-hostile-M&A policy has already been introduced is registered.

1つの案は、買収防衛策が導入済みである旨登記を行う、というものです。

 

 



2018年6月17日(日)日本経済新聞
社外取締役 再任基準を 経産省、指針改定へ 企業統治に実効性
(記事)




2018年6月18日(月)日本経済新聞
企業統治指針改定・会社法改正へ 投資家との溝、どう埋める 報酬開示や社外取締役・・・ 企業、裁量縮小を懸念
実のある株主総会へ議論 提案制限も焦点に
(記事)




2018年6月18日(月)日本経済新聞 私見卓見
経営コンサルタント 四方藤治
社外取締役への支援手厚く
(記事)


2018年6月19日(火)日本経済新聞
主要企業、取締役の人材多様に 外国人・女性 7割が起用 指針改定 投資家も後押し
(記事)



「実は、会社制度上は社外取締役という取締役はいない。」という点について書いたコメント↓

2018年6月8日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180608.html

 



2018年6月8日(金)のコメントでは、「実は、会社制度上は社外取締役という取締役はいない。」と指摘し、次のように書きました。

>会社法上は、「社外取締役」という通常の取締役とは異なる法的地位にある取締役がいるわけではありません。
>法的地位という意味では、「社外取締役」とはまさに取締役のことなのです。

2018年6月8日(金)のコメントを書いた後、社会人1〜2年目の時に、銀行に就職した高校の同期生から、
「商法上は『社外取締役』という取締役がいることになっているが、実は『社外取締役』には特に意味はない。
『社外取締役』も会社の業務執行を行うわけだから、債権者から見ると取締役も『社外取締役』も全く同じだ。
商法は債権者保護のためにあるので、株主から見ると『社外取締役』がいることになるが、債権者から見ると実はいないのだ。」、
という趣旨のことを聞いたことを思い出しました。
その時に聞いた話を思い出してみると、2018年6月8日(金)に書いたコメントは正しかったようだと自分で思いました。
2018年6月8日(金)のコメントでは、次のように書きました。

>世が世なら、通常の取締役同様、「社外取締役」は連帯債務者だったのです。

取締役が連帯債務者だった頃は、取締役会の決議要件は"solid"(満場一致の)だったともその時に聞きましたし、
取締役が連帯債務者だった頃は、商法上は債権者は取締役の誰に債務の履行を請求してもよかった、という話も聞きました。
取締役に国籍、性別、年齢、出自の多様性を求める債権者などいません。
債権者が会社に求めるのは、債務の履行だけなのです。
取締役の人材が多種多様になれば、債権者の利益は保護されるのでしょうか。
改めて考えてみますと、「社外取締役」という概念は果てしなく矛盾した概念なのだと思います。
紹介している2018年6月17日(日)付けの日本経済新聞の記事には、次のように書かれています。

>社外取締役は外部の視点で経営を監視する観点から活用が広がっている。

2018年6月8日(金)のコメントでも書きましたが、会社法上「社外取締役」はまさに業務を執行するわけです。
会社法上「社外取締役」は必ず「業務執行の決定」に関与する(必ず取締役会に出席し議決権を行使しなければならない)わけです。
記事には、「社外取締役」は社外の人物であるだの業務は執行しないだの書かれていますが、それは会社法上は完全に間違いなのです。
会社法上、「社外取締役」が「非業務執行者」であることはあり得ず、「社外取締役」は必ず「業務執行者」です。
「社外取締役」の役割は責任はある意味始めから明確であり、「社外取締役」の役割は責任は取締役のそれらと全く同じです。
「社外取締役」が会社の執行部と距離を置くことなど会社法上あり得ず、「社外取締役」はまさに会社の執行部の一員なのです。
例えば、取締役会の過半数が「社外取締役」であるという場合、「社外取締役」が会社の「業務執行の決定」を行っている、
ということになるわけですが、社外の専門家が会社の「業務執行の決定」を行っている、とは一体どういう意味なのでしょうか。
「業務執行の決定」を行う人物のことを社内の人物と呼ぶのではないでしょうか。
この議論を前向きに捉えるならば、一連の記事で言及している「社外取締役」とは、
「監査役」のことを意味していると考えると意味が通じるように思います(業務執行の監査を行うのがまさに監査役でしょう)。
また、一連の記事で言及している「社外取締役」とは、委員会設置会社における「取締役」と捉えても意味が通じると思います。
監査役設置会社と比較すると、委員会設置会社になりますと、会社法上の取締役の役割や責任が極端に・根本的に変わるわけです。
委員会設置会社における「取締役」の役割と義務は、まさに業務執行の監査であるわけです。
委員会設置会社における「取締役」は「業務執行の決定」に一切関与せず、「業務執行の決定」は専ら執行役のみが行うのです。
逆から言えば、委員会設置会社に移行せず、監査役設置会社のまま「社外取締役」だなどと言っても、何の意味もないのです。