2018年4月14日(土)
ここ26日間のコメントを踏まえた上で、参考資料を紹介し、「買収防衛策の導入」について一言だけコメントを書きたいと思います。
2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html
から
2018年4月13日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180413.html
までの一連のコメント
「オークション方式」に関する過去のコメント
2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html
2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html
平成17年5月27日
経済産業省・法務省
企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の策定について
ttp://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/shishin_sakutei.html
本文
(日本語)
ttp://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/3-shishinn-honntai-set.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
W 趣旨
>上記の「法定決議事項」以外の事項(議案)について株主総会で決議を取っても、会社法上は無効(全く意味がない)なのです。
「法定決議事項」以外の事項(議案)は、会社法上は正規の議案ではなく、たとえ決議を取っても「参考意見」に過ぎないのです。
そして、「買収防衛策の導入」については、そもそも会社法規定の「法定決議事項」ではないため、
たとえ株主総会で「買収防衛策の導入」について決議を取ったとしても、株主総会決議を取っていないことと同じだと指摘しました。
簡単に言えば、会社法上は、「買収防衛策の導入」について株主総会で決議を取ることはできないわけです。
より実務的に言えば、「買収防衛策の導入」を株主総会の決議で決定しようが取締役会の決議で決定しようが法律上は同じなのです。
指針の8/19ページには、「@
株主総会の決議に基づき導入する場合」について次のように書かれています。
>株主総会は、株式会社の実質的所有者である株主によって構成される最高意思決定機関として、株主共同の利益の保護のために、
>定款変更その他の方法により買収防衛策を導入することができる
また、紹介しました教科書には、「株主総会決議による買収防衛策の導入」について、次のように書かれています(180ページ)。
>総会決議による場合、本来は、まず定款を変更して、防衛策の導入を株主総会決議事項と定め、
>しかる後に総会決議で導入を決議しなければなりません
しかし、指針や教科書に記載されているこれらの記述は間違いです。
民法の世界に「物権法定主義」という言葉がありますが、この「物権法定主義」になぞらえて言うならば、
会社法は「株主総会決議事項法定主義」だと表現しなければならないわけです。
会社法で認められていない事項(議案)や会社法の規定と異なる内容の事項(議案)を当事者(会社と株主)の合意によって
創設することはできない、と考えなければならないわけです。
すなわち、「弊社では、買収防衛策の導入を株主総会決議事項とする。」と定款に定めること自体ができないわけです。
「株主総会決議事項」は、始めから会社法に定められており、
会社法の規定にある「株主総会決議事項」が「株主総会決議事項」の全てなのです。
簡単に言えば、定款に定めることにより新たな「株主総会決議事項」を創設することはできないのです。
また、他の観点から言っても、「買収防衛策の導入」が「株主総会決議事項」であるのはおかしいと言えます。
仮に、定款に「弊社では、買収防衛策の導入を株主総会決議事項とする。」と定めることを考えた場合、
定款におけるその記載事項は、@絶対的記載事項でもなければA相対的記載事項でもなく、
B任意的記載事項という位置付けになるわけです(定款の記載事項には上記3種類しかないわけです)。
しかし、B任意的記載事項というのは、そもそも「定款に記載しなくても効力が生ずる」類のものであるわけです。
定款のB任意的記載事項に記載して初めて効力を持つ事項というのは、会社や会社法にはないわけです。
定款(のB任意的記載事項)に「弊社では買収防衛策の導入する。」と定めること自体は全く自由(まさに任意)なのですが、
経営戦略か内規か何かで「弊社では買収防衛策の導入する。」と決定しても、法律上の位置付け(効力等)は全く同じなのです。
@絶対的記載事項もA相対的記載事項も会社法に明確に規定があります(それこそ記載事項を新たに創設することはできません)。
したがって、以上の様々な意味において、定款に「弊社では、買収防衛策の導入を株主総会決議事項とする。」と定めることには
意味が全くない(すなわち、会社法上は「買収防衛策の導入」に株主総会決議は全く関係ない。取締役会決議でも同じこと)のです。
「定款自治」という言葉は、あくまで「会社法に規定のある範囲内で当事者間で自由に決めることができる。」という意味なのです。
「買収防衛策」というのは、端的に言えば、「会社法上設けられている制度(条文・規定)を用いること」であるわけです。
法律的見地から言えば、会社法上設けられている制度(条文・規定)を用いる限りその「買収防衛策」は適法であり、
会社法上設けられている制度(条文・規定)以外の手法を用いる場合はその「買収防衛策」は違法である、というだけなのです。
「買収防衛策の導入」は適法か否かという点は実は全く問題にならないのです(それは会社法の規制の範疇のことではない)。
「買収防衛策で用いられる手法」は適法か否かという点のみが問題になるのです(そしてのその適法性は条文のみで一意に決まる)。
指針には、”買収防衛策の適法性を高めるための工夫を講じる必要がある”といった文言や
”買収防衛策の公正性を高める”という文言や”公正性が高まる”といった文言が書かれていますが、
法律的見地から言えば、少なくとも「適法性」に高いも低いもない(「適法性」に度合いや程度という概念はない)わけです。
法律的見地から言えば、物事には「適法」か「違法」かのどちらかしかないわけです(法律にグレーゾーンという概念はない)。
法律的見地から言えば、乱暴に言えば、買収防衛策の導入や発動に際し、
@株主平等の原則やA財産権の保護やB経営者の保身のための濫用防止等に配慮する必要は全くないのです。
なぜならば、それらについては会社に規定があるか否かで適法か否かが決まるからです。
むしろ、@株主平等の原則やA財産権の保護やB経営者の保身のための濫用防止等に配慮するためにあるのが
会社法という法律でしょう。
会社法を遵守していさえすれば、会社や経営者は自動的に、
@株主平等の原則やA財産権の保護やB経営者の保身のための濫用防止等に配慮していることになるのです。
会社や経営者は会社法を遵守しているにも関わらず、買収防衛策の導入や発動に際して、
@株主平等の原則やA財産権の保護やB経営者の保身のための濫用防止等がないがしろにされている、
などということはあり得ないのです。
少なくとも法律的見地から言えばそうなのです。
「買収防衛策」が適法か否かは、
「会社は会社法上設けられている制度(条文・規定)を用いているか否か」だけで決まるのです。
裁判や判例法理と言いますが、ある行為が会社法の規定に沿っているか否かを判断することが裁判官の職務の全てのはずなのです。
裁判例により新たな法理・考え方・基準が創設されるというのは、やはり元来的・理論的には間違いなのだろうと思います。
In the law world, an act is only either legal or illegal.
There doesn't
exist a concept "the degree of legality" at all in the law world.
法律の世界には、ある行為については適法か適法ではないかしかありません。
「適法性の程度」という概念は、法律の世界には一切ないのです。
When an article is prescribed so that an act is permitted in the
Companies Act,
a person is permitted to do the act.
Law is no more than
that and no less than that.
ある行為を行うことができると会社法の条文に定められていれば、人はその行為を行うことができるのです。
法律というのは、それ以上でもなけばそれ以下でもないのです。