2018年4月13日(金)



ここ25日間のコメントを踏まえた上で、金融商品取引法の教科書をスキャンして紹介し、一言だけコメントを書きたいと思います。

 

2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年4月12日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180412.html

までの一連のコメント

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 

 

「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第5章 機関投資家と議決権行使
1. 機関投資家の意義と役割
(2) コーポレート・ガバナンスにおける役割
株主アクティビズムの手段
【株主提案制度の日米比較】
「145〜146ページ」

 


昨日は、ルネサスエレクトロニクス株式会社の役員報酬の上限の引き上げの事例を題材に、
会社法上の役員報酬の規定(第三百六十一条)について見てみました。
今日は、「株主は株主総会でどのような事柄について決議を取ることができるのか?」について考えてみたいと思います。
実のところ、「株主が株主総会で決議をすることのできる事項」は、会社法規定の「法定決議事項」のみとなっているのです。
会社法で規定されている株主が決議をすることができる決議事項(「株主総会の法定決議事項」)は、取締役会設置会社では、
実は、具体的には大きく分けると下記の7項目しかないのです(下記以外の事柄について決議を取ることはできないと言ってよい)。

@会社機関(取締役や監査役や会計監査人等)の選任・解任、及びそれら会社機関の報酬額の決定
A剰余金の配当の決定
B定款の変更の決定
C組織再編行為(合併、会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転)の承認
D資本金・資本準備金の減少の決定
E自己株式の取得の決定
F募集株式の有利発行の承認

上記の「法定決議事項」以外の事項(議案)について株主総会で決議を取っても、会社法上は無効(全く意味がない)なのです。
紹介している教科書の文言を用いれば、「法定決議事項」以外の事項(議案)は、会社法上は正規の議案ではないのです。
「法定決議事項」以外の事項(議案)について株主総会で過半数の支持を得られたとしても、参考意見にしかならないのです。
したがって、例えば、会社法規定の「法定決議事項」ではない「買収防衛策の導入」について株主総会で決議を取ったとしても、
会社法上は全く意味がないと言いますか、株主総会決議を取って導入した「買収防衛策」なのだから有事の際にはその公正さが
市場内外でさらには裁判上無条件に認められるというわけではない、という解釈に法理上はなると思います。
要するに、法理上は、有事の際には、その「買収防衛策」について株主総会決議を取っていないことと同じ取り扱いになるのです。
「株主総会は会社の最高意思決定機関である。」という表現がなされますが、「委任」を根幹として会社制度が構築されているため、
会社法上は、株主総会で決議を取ることができる事柄は実際には著しく限定されている、と考えなければならないのです。
個人的には、定時・臨時問わず、株主総会というのは創立総会の補助的な(secondary)位置付けのものだと考えています。
アメリカの事例について、教科書には次のように書かれています。

>アメリカでは、正規の議案ではありませんが、株主総会において役員報酬に関する株主の意見表明の機会を与える
>say on pay と呼ばれる制度が広まり、2011年のドッド・フランク法(the Dodd-Frank Act)により、
>上場企業に採用が義務付けられました(証券取引所法14条A項)。
>なお、アメリカでは、配当に関する議案は、正規の総会議案にならないだけではなく、株主提案としても不適切であるとして、
>SECにより排除されます。

アメリカの上場企業では、現在、参考意見ではあるものの、役員報酬に関する議案について決議を取らなければならないようです。
また、アメリカの上場企業では、現在、証券制度上、株主から利益配当の増加等を求める株主提案がなされることはないようです。


Generally speaking, at a meeting of shareholders,
shareholders can make a resolution on only a few restricted matters prescribed in the Companies Act.

全般的に言って、株主総会においては、株主は会社法の定められた少数の限られた事柄についてのみ決議を取ることができます。