2018年1月28日(日)


「ゼミナール 会社法入門 (第7版)」 岸田雅雄 著 (日本経済新聞出版社)

第3章 コーポレート・ガバナンス
5 役員等の義務と責任
「役員等の会社に対する責任」1 

「役員等の会社に対する責任」2 

「役員等の第三者に対する責任」1 

「役員等の第三者に対する責任」2 

「Column「無過失責任制度と推定規定」」





証券制度上、大量保有者が会社法に規定のある『株主提案権』を行使するに際しては、
金融商品取引法上も一定の規制を課するべきだ(大量保有報告書への記載義務等)、という点について書いた7日前のコメント↓

2018年1月21日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180121.html

 

証券制度上、買収希望者が会社に対し「買収提案」を行うに際しては、買収希望者に一種の事前警告を義務付けるために、
金融商品取引法上も一定の規制を課するべきだ(大量保有報告書等への「買収意向」に関する記載義務・開示義務)、という点と、
「発行者の清算期日を定めないと投資家による業績予想に意味がなくなってしまう、という点について書いた6日前のコメント↓

2018年1月22日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180122.html

 

「株主から会社側への提案」には、「会社法の規定に基づく株主提案権の行使」と
株主提案権の行使以外の「任意の提案(要望やお願いなど)」の2つがある、という点について書いた5日前のコメント↓

2018年1月23日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180123.html

 


「会社法上の行為に対して規制を課するのが金融商品取引法である。」、という点について書いた4日前のコメント↓

2018年1月24日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180124.html

 

「金融商品取引法上定義される『重要提案行為』が『株式の本源的価値』に影響を与えることはない。」、そして、
「証券制度の構築・改善に際しては、受託者責任の遂行の担保に最重点を置くべきである。」、
という点について書いた3日前のコメント↓

2018年1月25日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180125.html

 

「株主総会というのは創立総会の補助的な(secondary)位置付けにあるものだ。」、という点について書いた一昨日のコメント↓

2018年1月26日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180126.html

 

「会社の業務執行者は、どのような場合でも(株主にとって最大限誠実な業務執行を行った場合であっても)、
会社債権者に対して無限責任を負う(債務者(会社)の債務は債務者の業務執行者が代わりに全額弁済しなければならない)。」、
すなわち、「会社の業務執行者は会社債権者に対して無過失責任で無限責任を負う。」、という点について書いた昨日のコメント↓

2018年1月27日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180127.html

 



【コメント】
今日は、会社法の教科書をスキャンして紹介し、昨日のコメントに一言だけ追記をしたいと思います。
今日の論点は、「会社の業務執行者が負うべき責任」についてです。
昨日のコメントの最後に、次のように書きました。
「会社の業務執行者は会社の債権者に対して無過失責任かつ無限責任を負う。」
昨日コメントを書きました後、この結論に関してさらに理詰めで考察を深めたのですが、
今日は新たに次の結論に辿り着きました。
「会社の業務執行者は会社の債務に対して連帯責任を負う。」
昨日書きました結論と今日書きました結論とは、表現が異なるだけであり、事実上同じ意味であると言っていいわけです。
理詰めで考えますと、「会社の債務は、そのまま会社の業務執行者の債務である。」、という考え方になるわけです。
別の言い方をすれば、「会社の業務執行者は会社の連帯保証人である。」、という考え方になるわけです。
その理由は、「会社に債務が発生した原因は、会社の業務を行った業務執行者にあるからだ。」、
というふうに会社債権者からは見えるからです。
法人というのは、煎じ詰めれば、意思決定を行ったり何かを執行したりということはできないわけです。
法人というのは、純粋に法律上の権利・義務の帰属主体というに過ぎないわけです。
事業遂行を行うのは、あくまでも自然人であるわけです。
取引行為の主体が法人というだけ(法人が購入した、法人が売却した、法人が所有している、というだけ)のことであり、
実際の取引行為はあくまで自然人の手によって行われていくわけです。
法人自身が取引行為を行うということは、当然のことながらできない(そのような状態を観念できない)わけです。
そうしますと、例えば「法人が負っている債務」という場合、その債務の法律上の債務者は確かに法人ではあるものの、
実際には「法人が負っている債務」が発生した原因は自然人(業務執行者)にあるわけです。
ですから、「法人が負っている債務」が発生する原因を生じせしめた自然人(業務執行者)にも債務を弁済する義務がある、
という法理につながっていく(論理のつながりがある)わけです。
極めて簡単に言えば、法人が自分で債務を作ることできないわけです。
法律上・形式上・外観上、会社の債務は法人が債務者となっているだけのことなのです。
会社のその債務が生じた原因は、自然人(業務執行者)にあるわけです。
ですので、会社の債務については、法人だけではなく、当然に業務執行者にも弁済する義務がある、と考えるわけです。
その場合の「弁済義務」については、結局のところ、「連帯債務」や「連帯保証」という概念の取り扱いになるかと思います。
まさに業務執行者の行為により法人に債務が発生したわけですから、法人の債務は業務執行者の債務と同じ、と考えるわけです。
法人の債務の位置付けに関しては、一般用語としては、業務執行者による「保証」というような言い方になるかもしれませんが、
法律上の位置付けとしては、法人の債務は業務執行者の債務そのもの(債権者から見ると連帯債務)、となるわけです。
昨日は、次のように書きました。

>観念的な言い方をすると、債権者から見ると、株主(委任者)と業務執行者(受託者)が同一人物に見えるわけです。
>なぜなら、業務執行者(受託者)は株主(委任者)の利益を代表している(on behalf of intersts of shhareholders)からです。

今日は、次のように書かなければなりません。

観念的な言い方をすると、債権者から見ると、会社(法人)と業務執行者(自然人)が同一人物に見えるわけです。
なぜなら、実際には業務執行者(自然人)が会社(法人)の取引行為を代表している(on behalf of a company)からです。

 



現行民法上の考え方(規定)を書きますと、通常の「保証」(債務保証)の場合は、
「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行する責任を負う。」という考え方である一方、
「連帯保証」の場合は、「保証人は、主たる債務者がその債務を履行するしないに関わらず、その履行する責任を負う。」
という違いがあります。
その意味において、「連帯保証人」と「連帯債務者」は同じ意味と言えるわけです。
「連帯保証」の場合、「保証」という文言は用いていますが、保証人の法的義務内容を鑑みれば、
それは「保証」という位置付けでは全くなく、実際には「連帯保証人は主たる債務者そのもの」という取り扱いになります。
通常の「保証人」の弁済義務はあくまで"secondary"(補充的な責任を負う)なのですが、
「連帯保証人」の弁済義務は"primary"(主たる義務を負う)である、という決定的かつ本質的な違いがあります。
昨日と今日私が書いています理論上の会社の業務執行者の義務に即して言えば、
「法人の債務の連帯保証人(業務執行者)は主たる債務者(法人)そのもの」という考え方になるわけです。
簡単に言えば、法人の債務の履行に関しては、「法人=業務執行者」、という義務を業務執行者は負っているわけです。
理論的には、法人の業務執行者は法人の連帯債務者なのです。
今般の(2017年5月成立の)民法の改正では、連帯保証に関する規定を見直す(削除するなど)、
という案もあった(改正の重要テーマの1つであった)ようですが、実際には、連帯保証に関する規定の削除には至っておらず、
連帯保証人の利益保護を図る規定が新たに盛り込まれただけのようです。
昨日と今日私が書いています理論上の会社の業務執行者の義務を鑑みると、昨今の時流や諸外国の民法の規定とは正反対に、
実は「民法上は連帯保証の規定が必要だ。」という結論になる気がします。
一個人としては、日常生活の上では、連帯保証という考え方は人間関係や約束事などになじまないと感じるわけですが、
「法人が負う債務」の取り扱いに関しては、逆に連帯保証という考え方が必要になると思いました。

A concept "juridical person" requires another concept "joint and several liability."
(「法人」という考え方をする場合は、「連帯責任」という新たな考え方をしていかなければなりません。)
(「法人」という概念が「連帯責任」という概念を必要とするのです。)

今日のコメントを書くに当たり、スキャンして紹介していますように、会社法の教科書を読みました。
現行の会社法では、業務執行者は、@「会社に対する責任」とA「株主に対する責任」とB「第三者に対する責任」の
3つの責任を負っている、という考え方になっていると分かりました。
そのうち、@「会社に対する責任」とA「株主に対する責任」に関する規定が非常に多い、ということも分かりました。
しかし、B「第三者に対する責任」に関する規定というのは、上記2つの責任と比較すると、皆無に等しいと思いました。
ここで言う「第三者」とは、主に「債権者」のことです。
教科書には、「取締役の委任契約は株式会社に対するものであるから、会社債権者などの第三者に対しては何ら責任を負わない。」
とまで書かれてあり、簡単に言えば、会社の債務に債務不履行が生じても取締役には一切責任はない、と書かれてあります。
会社の債務の名義は法人となっており、取締役は債権者に対して直接契約関係に立たないから、というのがその理由とのことです。
業務執行者が債権者と直接契約関係にない以上、契約責任(債務不履行)をもって理論構成することは不可能である、とのことです。
しかし、今日書きましたように、会社の債務の名義が法人となった原因がまさに業務執行者にあるわけなのですから、
すなわち、実際の取引行為者を鑑みれば、会社の債務の名義が法人となった原因は法人には一切ないわけなのですから、
業務執行者は直接に会社債権者に対して全面的な("comprehensive")責任を負う、と考えなければならないのです。
会社の業務執行者は、法人の連帯債務者なのです。

 


In theory, a person who executes operations of a company is responsible for interests of creditors of the company,
as well as for interests of shareholders.

理論的には、会社の業務執行者は、株主の利益に対して同様、会社債権者の利益に対しても責任を負うものです。

 

In theory, a person who executes operations of a company is charged with
both "liability without fault" and " "unlimited liability" for interests of creditors of the company.

理論的には、会社の業務執行者は、会社債権者の利益に対して「無過失責任」かつ「無限責任」を負っているのです。

 

In theory, however unfaithfully a fiduciary of shareholders executes operations of a company,
interests of creditors of the company will be perfectly protected as long as their receivables are fully settled.

理論的には、株主の受託者がどんなに不誠実に会社の業務を執行しようとも、
会社債権者の利益は、債権者保有の債権が満額弁済されさえすれば、完全に保護されるということになるのです。

 

Interests of creditors of a company are fundamentally different from those of shareholdes.

会社債権者の利益は、株主の利益とは本質的に別のものなのです。

 

In theory, a person who executes operations of a company
is charged with joint and several liability for debts of the company.

理論的には、会社の業務執行者は、会社の債務に対し連帯保証を負っているのです。

 

In theory, from a standpoint of creditors,
the cause for their receivables to accrue lies in a person who executes operations of a company.

理論的には、債権者の立場から見ると、自分が保有する債権の発生原因は会社の業務執行者にあるわけです。