2017年10月10日(火)
2017年9月30日(土)日本経済新聞
人気作曲家の著作権相続 相続税発生し収益にも所得税
(記事)
大物作家の相続は大変 相続税・所得税で二重課税?
(NIKKEI
STYLE マネー研究所 2017/8/11)
ttps://style.nikkei.com/article/DGXMZO19779960Y7A800C1000000
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>「土地」を相続して相続税が課税され、一度時価課税されているのにその後売却したら所得税の対象となる。
>年金形式で受け取る生命保険金について、相続時には「定期金に関する権利」として相続税が課税されているのに、
>年金を受け取るつど所得税の対象となる。(これに関しては最高裁で『二重課税だ』として課税を取り消された例がある)
>定期預金については、相続時点で解約した場合の利息(既経過利息)を含めた金額で相続税が課税されているのに、
>利息を受け取った段階で所得税の対象となる。
これは非常に興味深い論点だと思います。
これは実務上そして学界等において、有名な「二重課税」に関する問題なのかもしれません。
以下、この点について少し考えてみましょう。
これらの課税が二重課税に該当するか否かについては、「譲渡」を対比する取引として想定してみるとよいと思います。
「相続」という場面(取引)では、所得税法上は、著作権の相続税評価額として、
「過去3年の平均印税収入の額×0.5×評価倍率(基準年利率による複利年金現価率)」という計算式に基づくようですが、
では、単純に「著作権を譲渡する」という場合、上記の計算式に基づいて譲渡価額を決めなければならないのかというと、
全くそうではないわけです(所得税法上も、「著作権」の低廉譲渡や無償譲渡や高額譲渡も全く自由のはずです)。
「著作権」の譲渡価額は、将来に渡り発生する著作権使用料を両者で協議した上で、当事者間で自由に決めればよいわけです。
「著作権」の譲渡金額に、低廉や高額という概念はない(高い安いの基準自体がない)わけです。
譲渡金額と何かの金額(例えば直近の市価や相続税評価額)との差額は寄附と見なす、という考え方は著作権にはないわけです。
「著作権」の価値・価額は当事者が決める以外ないわけです。
上記のことを鑑みますと、税務当局としては、「相続人は今後これだけの著作権使用料を受け取るであろう。」と言って、
将来の受け取り金額の合計(収入・キャッシュフローの合計)について相続の時点で「所得」に対し課税を行っているのですから、
相続人がその後実際に著作権使用料を受け取った時に所得税を負担するのは、明らかに「二重課税」であるわけです。
「著作権」から発生する所得に関しては、税目名こそ異なります(「相続税」という税目名ではあります)が、
相続時に”所得税”を支払い済みだ、という考え方になるわけです。
この点については、相続時の課税関係としては、「著作権」の相続は、
「著作権そのものの相続(相続税評価額としては「0円」)+将来の著作権使用料の合計(将来の所得の合計)に対する課税」、
という捉え方をすればよいのだと思います(「著作権」そのものの取得原価自体は「0円」と考えるべき)。
計算式を鑑みますと、「著作権」の相続に関する相続税の課税では、あくまで「所得」に関して課税をしているわけです。
だから二重課税なのです。
話を整理しますと、相続税法上、「相続税評価額」という場合、経済学っぽく言いますと、
@「ストックに関する評価額」とA「フローに関する評価額」の2つがあるということなのだと思います。
土地の相続税評価額という場合、それはまさに@「ストックに関する評価額」ということになります。
土地の相続税評価額は、国税庁から公表される「路線価」が基準になるわけですが、
「路線価」というのは、@「ストックに関する価値・価額・評価額」表すわけです。
「公示地価」や「基準地価」も「路線価」と全く同じであり、これら2つも@「ストックに関する評価額」を表します。
@「ストックに関する評価額」というのは、「この土地を所有すれば将来これだけの収入がある。」ということを
意味しているわけでは全くなく、天下り的に「この土地の資産価値はこれである。」と言って決めた評価額であるわけです。
@「ストックに関する評価額」に、財産の取得に伴う将来の収入額(将来のキャッシュフローの金額)は全く関係ないのです。
逆に、「著作権」の相続税評価額という場合、その評価額というのはA「フローに関する評価額」ということになります。
簡単に言えば、税務当局が、「この『著作権』を取得・所有すれば将来これだけの収入がある。」と言っているわけです。
だから、その収入に相続時に課税をする、と税務当局は言っているわけです。
「著作権」そのものの価値については、税務当局は何も言っていない、と言っていいわけです。
税務当局の頭にあるのは(課税の根拠は、仮想的な課税標準は)、フロー(将来に渡り受け取る著作権使用料)であるわけです。
A「フローに関する評価額」とは、まさに財産の取得に伴う将来の収入額(将来のキャッシュフローの金額)であるわけです。
結局のところ、相続時点において、A「フローに関する評価額」に基づき相続税(実質的に所得税と言ってよい)を負担したのに、
その後実際に著作権使用料を受け取った際にも所得税を負担する(再び同じ「フロー」に関して課税がなされる)、
というのはまさに「二重課税」であるわけです。
結論としては、「ストックに対し課税+その後フローに対し課税」(例えば、相続時に土地の相続税評価額に基づき相続税を負担し、
その後相続したその土地の賃貸収入に対し所得税を負担する等)は全く「二重課税」ではないのですが(課税の根拠が全く異なる)、
「フローに対し課税+その後フローに対し課税」は明らかに「二重課税」である(課税の根拠が全く同じ)ということになります。
To put it abstractly, "a flow plus a flow" is clearly "double
taxtion,"
whereas "a stock plus a flow" is never "double taxtion."
抽象的に言えば、「フローそしてその上フロー」は明らかに「二重課税」なのですが、
「ストックそしてその上フロー」は決して「二重課税」ではないのです。