2017年7月26日(水)



2017年7月26日(水)日本経済新聞 大機小機
出光興産の新株発行を巡って
(記事)




主要目的ルール(ウィキペディア)
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E8%A6%81%E7%9B%AE%E7%9A%84%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB


募集株式の不公正発行について(東京証券代行株式会社)
ttp://www.tosyodai.co.jp/topics/nakamura/063/

 


過去の関連コメント

2017年7月4日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170704.html

2017年7月10日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170710.html

2017年7月11日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170711.html

2017年7月14日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170714.html

2017年7月19日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170719.html

2017年7月20日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170720.html

2017年7月24日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170724.html

 


【コメント】
紹介している記事では「主要目的ルール」という概念(判断基準)が中心議題になっています。
新株発行が認められるか否かについて争う場面では、「主要目的ルール」に基づき判断されることになっています。
なぜ「主要目的ルール」という概念(判断基準、判例)が作られてきたのかと言えば、
その原因は記事の次の1文に集約されています。

>取締役会の判断で株主の持ち株比率が低下することは、法が予定するところであり、

新株発行については株主総会で決定するということであるならば、
「主要目的ルール」は始めから作られはしない(不公正な新株発行か否かは始めから争点とならない)、ということになります。
「主要目的ルール」については、インターネットで検索してもたくさん解説記事がヒットするのですが、
会社法の教科書から「主要目的ルール」についてのコラムをスキャンし紹介します。

「割当自由の原則と主要目的理論」

このコラムの内容を要約しますと、
@新株発行においては「割当自由の原則」がある。
A裁判所は、第三者割当増資が支配権の維持を目的に含むものであっても、主たる目的が資金調達である場合には許されるとする。
となります。
逆から言えば、「現経営陣の支配維持を『主要な目的』とする場合」は増資(新株発行)は認めらない、ということになります。
「主要目的ルール」という概念(判断基準、判例)は比較的最近世に出てきた(昭和25年等ではない)のではないかと思うのですが、
インターネット上の解説記事などを読みながら、「主要目的ルール」について考えてみたのですが、
考え方を整理してみると、ある結論に辿り着きました。
それは、「第三者割当増資は株式譲渡の強制と同じである。」という結論です。
この結論には、「資金調達」の論点を度外視することで辿り着きました。
資金調達の必要性や資金需要、合理的な事業計画などと言い出すと、それは裁判所の判断の範疇を超えるものだと思ったわけです。
そこで、議論の焦点を絞るために、「資金調達」の論点を度外視して考えてみたのですが、
すると「議決権の異動」のみが問題となることが浮き彫りとなったのです。
株主間で株式の譲渡をしても、会社には1円も資金は入ってきません。
しかし、「議決権の異動」は間違いなく生じるのです。
つまり、ここではそもそも「議決権の異動」(誰が大きな議決権割合を持っているのか)が問題になっているわけなのですから、
特定の人物が新株式を引き受けることと特定の人物が発行済株式を新たに取得することとは同じだ、と気付いたわけです。
そして、いみじくも記事に書かれていますように、取締役会決議で新株式を発行できることは法が予定しているのですから、
すなわち、取締役会決議で議決権を異動させることができることは法が予定しているのですから、
第三者割当増資を法が認めている以上、株式譲渡の強制もまた法が認めている(ことと概念的には同じだ)、
という考え方になるなと思いました。
公募増資に関しても、募集に応募しない限り全ての既存株主の保有議決権割合は低下しますので、
株主の意思・意向とは無関係に、「議決権の異動」が必然的に生じることに変わりはありません。
「会社が株式の譲渡を強制することを法は認めている。」、授権資本とは概念的にはそのような制度であると言わねばならないのです。

 


The "allocation of new shares to a third party" is equal to
the compulsion of a transfer of shares issued to a specific investor.
That is to say, if the point "financing" is left out of consideration,
the fact that a company allots new shares to one specific investor is equal to
the fact that a company compels some shareholders to transfer their shares to one specific investor.

「第三者割当てによる新株式の発行」とは、特定の投資家に発行済株式を譲渡することを強制することと同じなのです。
すなわち、「資金調達」の論点を度外視すれば、
会社がある特定の投資家に新株式を割り当てるとは、
会社が株主の何人かに所有株式をある特定の投資家に譲渡するよう強制していることと同じなのです。

 


Concerning the recent case, all Idemitsu Kosan Co.,Ltd. has to do is compel the founder shareholder
to transfer their shares to one or some shareholders in favot of the merger with Showa Shell Sekiyu K.K.
That is to say, if the compulsion is wrong, the "allocation of new shares to a third party" is also wrong.

今般の事例に関して言えば、出光興産株式会社は、昭和シェル石油株式会社との合併に賛成の株主に所有株式を譲渡するよう、
創業家に強制しさえすればよい、ということになります。
つまり、株式譲渡の強制は間違っているのなら、「第三者割当てによる新株式の発行」もまた間違っている、ということです。

 


When you leave the point "financing" out of consideration,
you can see that some kind of compulsion is hidden in the "allocation of new shares to a third party".
The well-known arguments that a company's main purpose is "financing"
have concealed the complusion in many judicial precedents up to this day, actually.
Neither a "main purpose" nor "financing" is an acquittal.
"Financing" has been a cloak for the compulsion.

「資金調達」の論点を度外視して考えてみると、
「第三者割当てによる新株式の発行」にはある種の強制が隠されていることが分かるでしょう。
これまでの数多くの裁判例では、「弊社の主要目的は『資金調達』であります。」という有名な主張によって、
その強制が実は隠されていたのです。
「主要目的」も「資金調達」も、免罪符ではないのです。
「資金調達」が株式譲渡の強制の隠れ蓑になっていたのです。