2017年7月24日(月)



2017年7月24日(月)日本経済新聞
出光 議論に一石 支配権争い時の増資 資金調達の合理性カギ 経営陣の説明責任増す
(記事)




株主総会(出光興産株式会社)
ttp://www.idemitsu.co.jp/ir/stock/meeting.html

 

 

過去の関連コメント

2017年7月4日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170704.html

2017年7月10日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170710.html

2017年7月11日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170711.html

2017年7月14日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170714.html

2017年7月19日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170719.html

2017年7月20日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170720.html

 


【コメント】
紹介している記事は、このたびの出光興産株式会社の事例の総まとめのような内容になっています。
私としましても、このたびの出光興産株式会社の事例は色々と勉強になったなと思っているところです。
「創業家は公募増資に応募することもできるし市場内で出光興産株式会社株式を買い増すこともできる」という論点に始まり、
「新株式発行に対する会社法からの見方と金融商品取引法からの見方」という論点や、
「金融商品取引法上の『募集』や『売出し』は市場外の取引である」という論点、
そして「裁判における『上訴の申立先』はどの裁判所であるべきか」といった論点、
さらには「訴訟判決」(「訴訟要件」がないことを理由とし、訴えを却下する判決のこと。)という専門用語についても、
話を整理しながら学ぶことができました。
詳しくは紹介している「過去の関連コメント」を見ていただければと思います。
記事を読んでいて気になった点について一言だけコメントします。
記事の冒頭には、

>出光興産は20日の払込日とする1200億円規模の公募増資を実施した。

と書かれています。
簡単に言えば、創業家は、公募増資に応募することにより、
400億円(発行される新株式の3分の1)を投じれば、3分の1超という議決権割合を今後も維持できた、ということになります。
その意味では、
「公募増資はそもそも大株主の影響力低下を目的とする増資方法とは言えない。」
という言い方ができると思います。
創業家は、公募増資に応募することにより、保有議決権割合をさらに増加させることすらできるわけです。
つまり、このたびの事例は、「支配権を巡る争いか否か」という点は実は全く争点にならない、と言わねばならないと思います。

 



それから、記事の真ん中あたりには、

>出光は株主総会の数日後の取締役会で増資を決めた。

>裁判所が『増資後直ちに合併承認議案を臨時株主総会に諮る恐れが高いと認められない』と判断する根拠となった

と書かれています。
前後を含めて何回読んでも、この文の意味するところが私には分からないと思いました。
出光興産株式会社は合併の承認議案が否決された株主総会の数日後に増資を行う意思決定を行った、ということで、
むしろ逆に、増資後直ちに合併承認議案を臨時株主総会に諮る可能性が高い、との判断になるのではないか、と私は思いました。
この文は一体どういう意味なのだろうかと思い、出光興産株式会社のウェブサイトの「株主総会」のページを見てみたのですが、
実は2017年6月29日に開催された第102回定時株主総会では、合併の承認議案は否決されてはいませんでした。
それどころか、合併の承認議案が株主総会に提出されたことすらこれまで一度もなかったようです。
考えてみますと、「合併に反対しているのは本当に創業家だけなのか?」という問いすら浮上してくるなと思いました。
出光興産株式会社はこれまで、「合併に反対しているのは創業家だけだ。」との主張を行っていたわけなのですが、
その主張の根拠というのは実はどこにもないわけです。
率直に言って、株主の議決権行使(投票)が集計されたことは実は一度もないのです。
出光興産株式会社は、「取引先は皆合併に賛成している。」などと喧伝し、
合併や創業家に対する印象操作を行っただけなのではないでしょうか。
一番極端な話をすれば、創業家は合併に反対しているという法的根拠もないわけです。
確かに、創業家の顧問弁護士が記者会見などをして、創業家は合併に反対している旨代弁していますので、
創業家が合併に反対していることは社会的・株式市場的には明白である(市場に公表されていること)とは言えますが、
少なくとも”創業家が合併の承認議案に反対票を投じたことは一度もない。”ことだけは紛れもない事実であるわけです。
「ペンは剣より強し」と言いますが、「議決権行使はカメラの前でのおしゃべりよりも強い。」と言ったところでしょうか。
いずれにせよ、先ほど引用しました記事中ほどの文の意味は依然として私には分からないままです。
出光興産株式会社がこれまで「合併に反対しているのは創業家だけだ。」との主張を繰り返してきたのは、
有り体に言えば「propaganda」(プロパガンダ、宣伝)であったと言わねばならないでしょう。
出光興産株式会社は、sales talk (セールス・トーク、(商品)売り込み(の口上)、口のうまい議論)はもうやめにして、
石油の販売業らしく、売るのは「propane」(プロパンガス)だけにしてはどうか、と思いました。