2018年4月24日(火)


最近の36日間のコメントを踏まえた上で、「外国の発行者が発行した有価証券」の取り扱い(証券規制の方法)について、
一言だけコメントを書きたいと思います。

 

2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年4月23日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180423.html

までの一連のコメント

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 

 

昨日は、「預託証券の規制方法」について書きました。
本日2018年4月24日に、楽天株式会社が朝日火災海上保険株式会社の完全子会社化を完了したのですが、
楽天株式会社のサイトを見て初めて気付いたのですが(何か以前この点について少しコメントを書いたような気もしますが)、
楽天株式会社は米国において「米国預託証券」(American Depositary Receipt)を発行している、とのことです。
ちょうどいい機会ですので、今日は、楽天株式会社のサイトの記述などを題材にして、
日本国内における「米国預託証券」(American Depositary Receipt)と「外国の発行者が発行した有価証券」の
相違点や取り扱い(証券規制の方法)について、改めて考えみたいと思います。

 



2018年4月24日
楽天株式会社
朝日火災海上保険株式会社の完全子会社化に関するお知らせ
ttps://corp.rakuten.co.jp/news/press/2018/0424_02.html


2018年4月24日
朝日火災海上保険株式会社
楽天株式会社による弊社完全子会社化について
ttp://www.asahikasai.co.jp/news/tabid/84/Default.aspx?itemid=310&dispmid=750


H30.03.30 15:37
朝日火災海上保険株式会社
臨時報告書
(EDINET上同じPDFファイル) 


H30.04.02 15:34
朝日火災海上保険株式会社
臨時報告書
(EDINET上同じPDFファイル)  

 

楽天株式会社による朝日火災海上保険株式会社の完全子会社化についての過去のコメント↓

2018年1月30日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180130.html

2018年3月14日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180314.html

 

【どうでもいいコメント】
最近よく大学生の頃のことをよく思い出すのですが、大学4年生の4月、母から紹介された女性との結婚を断りましたところ、
結婚後に私の家に養子に来る予定となっている女の子の生みのお母さんや中学校の後輩の女の子が大学まで会いに来たりして、
非常に大変だったのです(なぜ結婚を勧めるのか全く分かりませんでした)が、私は行商をしてでも生きていくつもりでした。
私は今でも誰とも結婚する気はありません。

 


朝日火災海上保険株式会社への公開買付の成立の結果、楽天株式会社は、会社法第179条第1項に規定する特別支配株主となったため、
朝日火災海上保険株式会社に対し、会社法第179条の3第1項に規定による株式売渡請求を通知したのですが、
朝日火災海上保険株式会社の取締役会は本株式売渡請求を承認することを2018年4月2日付けで決議した、とのことです。
特別支配株主が本売渡株式を取得する日が、本日2018年4月24日であったわけです(本日付で全株式の取得が完了したわけです)。
ただ、このような場合、朝日火災海上保険株式会社が公告者となって、事前に「株式売渡請求の承認の係る公告」という公告を
日刊新聞紙等に掲載しなければならないはずなのですが、少なくとも日本経済新聞には公告は掲載されていなかったと思います。
楽天株式会社の投資家情報のページに「よくあるご質問」というページがあり、「ADRについて」の問答がありました↓。


よくあるご質問
ttps://corp.rakuten.co.jp/investors/faqs/

「ADRについて」

>Q: スポンサー付きレベル1ADRとは何ですか?
>A: スポンサー付き ADR (米国預託証券)とは、発行に当たって、原株の発行会社が特定の預託銀行と預託契約を締結し、
>   発行会社、預託銀行および投資家の権利義務を明確化した上で預託銀行が発行するプログラムです。
>   レベル1は店頭市場で売買される非上場プログラムです。

”店頭市場で売買される非上場プログラム”というのがやはりよく分からないなと思いました。
また、次のようなQ&Aもありました。

>Q: ADRを購入したいのですが、手続きを教えてください。
>A: ADRの購入については、お取引のある証券会社にお問い合わせください。

証券会社の対応次第では、日本国内においても投資家はADRを購入できるようです。
2018年3月22日(木)のコメントで、教科書をスキャンして紹介していますので、この時の教科書のスキャンを見て下さい。
また、2018年3月23日(金)のコメントでも関連する内容を書いていますので、読んでいただけばと思います。
ADRは、日本の金融商品取引法における「有価証券」の定義で言えば、「S預託証券(DR)(20号)」に該当するのではなく、
「P外国または外国の者の発行する1〜9号、12号〜16号までの性質を有するもの(17号)」に該当します。
文脈に即してより正確に言えば、ADRは、定義17号において「外国の者の発行する受益証券発行信託の受益証券」に該当します。
日本の金融商品取引法における定義である「M受益証券発行信託の受益証券(14号)」は、
日本の発行者が発行する受益証券のみを指しており、外国の者の発行する受益証券はこの定義14号に含まれないわけです。
日本の金融商品取引法における「有価証券」の定義で言いいますと、
包括規定のような意味付けにある21号は除きます(この定義は「その他」であり、種々雑多な有価証券を含めて定義しています)と、
1号〜16号、19号、20号は、全て日本の発行者が発行した有価証券を指しているわけです。
17号と18号のみが、外国の発行者が発行した有価証券を指しているのです。
日本の金融商品取引法における「有価証券」の定義で言えば、そのように分類されると言わねばならないわけです。
日本の金融商品取引法は、そもそも日本の発行者が発行する「有価証券」を定義するものだ、と言わねばならないわけです。

 


2018年3月22日(木)のコメントでは、次のように書きました。

>現行の金融商品取引法における「有価証券」(金融商品取引法の適用を受ける有価証券)の定義によりますと、
>「サウジ・アラムコ株式」は、「株券」(「9号」)でありかつ「外国の者の発行するもの」(「17号」)に該当します。

この記述は厳密に言いますと実は間違いであり、正しくは、
「サウジ・アラムコ株式」は日本の金融商品取引法の「株券」(「9号」)には該当しない、ということになります。
教科書の245ページには、「株券」(「9号」)は株式会社の発行する株式です、と書かれていますが、
正確には、「株券」(「9号」)は日本の株式会社の発行する株式のことです、と言わねばならないのです。
「サウジ・アラムコ株式」は、サウジアラビアの会社法におけるジョイント・ストック・カンパニーの発行する株式ですので、
経営上や証券投資上の分類では「株券」と言えば紛れもなく「株券」に分類されるのですが、
法律上の定義としては、日本の金融商品取引法の「株券」(「9号」)には該当しない、ということになります。
したがって、「サウジ・アラムコ株式」は、日本国内においては、「株券」(「9号」)としてではなく、
「外国の者の発行するもの」(「17号」)として金融商品取引法の適用を受けることになるわけです。
日本の金融商品取引法上、「外国の者の発行するもの」(「17号」)について募集・売出し(公募)を行うことができるのか、
とふと思ったのですが、結局、発行者が日本の証券当局に有価証券届出書を提出すればできると言えばできるのでしょう。
逆から言えば、「外国の者の発行するもの」(「17号」)という定義が日本の金融商品取引法にあるからこそ、
日本において「外国の者の発行するもの」(「17号」)について募集・売出し(公募)を行うことができる、となるのでしょう。
「外国の者の発行するもの」(「17号」)という定義が日本の金融商品取引法がない場合(元来的・当初はなかったはずですが)は、
日本において「外国の者の発行するもの」(「17号」)について募集・売出し(公募)を行うことはできない、となるはずです。
なぜならば、その場合、それは「有価証券の募集・売出し(公募)」に該当しない行為だからです。
また、その場合、外国の発行者はそもそも日本の証券当局に有価証券届出書を提出できない、ということになると思います。
なぜならば、その場合、外国の発行者が発行したものは日本においてはそもそも有価証券ではないからです。
当初は、外国の発行者が日本で募集・売出しを行うとすると、必然的に違法な募集・売出しになってしまっていたわけです。
改めて考えてみますと、募集・売出し(公募)の規定は、市場法(取引所法)というより、業法の側面が強いのだと思いました。
募集・売出し(公募)はそもそも市場外の有価証券の取引という意味でそうなのですが、投資家保護の文脈では、
特に水際では、募集・売出し(公募)の適法な遂行は金融商品取引業者にかかっている部分がある、と思ったからです。
募集・売出し(公募)の規定は、発行者(情報開示を行う者)に対する規制と
金融商品取引業者(情報開示以外を行う者)に対する規制の両方の側面があるわけですが、
特に「外国の者の発行するもの」(「17号」)について募集・売出し(公募)が行われる場面では、
昨日の預託証券のあり方についてのコメントでも書きましたように、
金融商品取引業者(情報開示以外を行う者)に対する規制(業法による規制)により大きな重きを置くべきだと思いました。
窓口において、この募集・売出し(公募)は「外国の者の発行するもの」(「17号」)についての募集・売出し(公募)である旨、
顧客に十分に説明をする義務を、金融商品取引法は金融商品取引業者(情報開示以外を行う者)に課するべきなのです。
「外国の者の発行するもの」(「17号」)は、日本の証券当局から見ますと、本質的に「域外」のものであるわけです。
昨日書きましたような「国際証券規制機構」でも創設しない限り、外国の発行者に関しては、
発行者(情報開示を行う者)に対する規制は絵に描いた餅になりがちなのです。
したがって、投資家保護の観点からは、発行者(情報開示を行う者)に対する規制の代替的手段・補助的手段として、
金融商品取引業者(情報開示以外を行う者)に対する規制(すなわち、業規制)に重きを置く必要があるのです。

 


同じようなことを再度書きますが、理論的には、究極的なことを言えば、
日本の金融商品取引法で外国の発行者が発行する有価証券を定義することはできないのです。
これはどの国でも同じであり、たとえ米国であろうとも、
証券取引法で外国の発行者が発行する有価証券を定義することはできないわけです。
その理由は、法域("jurisdiction")の問題ももちろんあるのですが、
投資家保護の観点から言えば、そもそも証券取引法は国内に流通する有価証券を規制するためにあるからです。
その意味では証券取引法で外国の発行者が発行する有価証券を定義する必要は全くない、と言えるわけです。
なぜならば、日本国内において外国の発行者が発行する有価証券を投資家が購入するというのは、
本来的に自己責任の部分があるからです。
日本国内において日本の発行者が発行する有価証券を投資家が購入することに関して投資家保護を図るのが、
日本の金融商品取引法の役割であるわけです。
元来的には、外国の発行者が発行する有価証券が日本で流通することは日本の金融商品取引法では想定していない、
という言い方ができると思います。
ただ、近年では、投資銘柄の多様化・国際化を投資家が望むということもあるわけです。
その場合は、元来の市場法(取引所法)(=発行者に対する規制)では投資家保護を図りきれない部分がありますので、
業法(=金融商品取引業者に対する規制)で投資家保護を図っていくことになります。
業規制の文脈では、窓口規制を特段に強化する必要があることから、業規制を行うために(「業法」の側面において)、
外国の発行者が発行する有価証券を証券取引法で包括的に定義する必要があるのです。
結局のところ、日本におけるその包括的な定義が、
日本の金融商品取引法における「外国の者の発行するもの」(「17号」)であるわけです。
日本において「外国の発行者が発行する有価証券」について募集・売出し(公募)を行うためには、有価証券の定義として、
特段に「外国の者の発行するもの」(「17号」)という定義を日本の金融商品取引法に新たに設けねばならない、
ということになるわけです。
仮に、「外国の者の発行するもの」(「17号」)という定義を日本の金融商品取引法に新たに設けても、
昨日書きましたような「国際証券規制機構」でも創設しない限り、外国の発行者に関しては、
発行者(情報開示を行う者)に対する規制は絵に描いた餅になりがち(なぜなら発行者は外国にいるから)なのです。
ですので、日本国内において最大限投資家保護を図るために、
業法(=金融商品取引業者に対する規制)で投資家保護を図っていくことになるのです。

 

In a country, the Securities Exchange Act can't define securities issued by a foreign issuer.

どの国においても、証券取引法により外国の発行者が発行する有価証券を定義することはできないのです。


"ISRO" makes a foreign issuer "territorial."

「国際証券規制機構」により、外国の発行者が「域内」になるのです。