2018年3月14日(水)
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
H30.03.14 15:18
楽天株式会社
公開買付報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)
H29.06.29 14:22
朝日火災海上保険株式会社
有価証券報告書−第67期(平成28年4月1日−平成29年3月31日)
(EDINET上と同じPDFファイル)
楽天株式会社による朝日火災海上保険株式会社の完全子会社化についての前回のコメント↓
2018年1月30日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180130.html
「法定開示書類を『縦覧に供する場所』とはどこのことか?」、という点について考察した時のコメント↓
2018年2月22日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180222.html
甲種優先株式を普通株式に転換した後の上位10名の所有議決権割合=(9+10)÷(10+10)×100=95%
ということになると思います(転換前の発行済株式総数を10株とし、転換により株式が10株増加したと想定した)。
先ほどはあまり計算せずに約99%という数字を書いてしまったわけですが、非常に大まかにですが、より正確には、
甲種優先株式の転換を考慮すれば、この10名の株主だけで実は「所有議決権数の割合」は「約95%」を占めているわけです。
有価証券報告書の23/89ページの【所有者別状況】を見ますと、「個人その他」は134名しかいません。
つまり、朝日火災海上保険株式会社の一般株主(個人投資家)は134名しかいないわけです。
この134名の一般株主(個人投資家)も、ほぼ全員が公開買付に応募をした、ということだと思います。
いずれにせよ、楽天株式会社は公開買付により「99.30%」の議決権を取得することができたとのことで、
2018年1月30日(火)のコメントで書きましたように、買い付けることができなかった残りの対象者株式の全てを取得するために、
これから楽天株式会社は株式売渡請求権(会社法第179条)を行使する(9割以上の株式を取得できたので)ことになるわけです。
以下、プレスリリースや法定開示書類を見て気付いた点についてコメントを書きたいと思います。
「朝日火災海上保険株式会社株券等に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ」
T.本公開買付けの結果について
2.買付け等の結果
(4)買付け等を行った後における株券等所有割合
(3/7ページ)
最初に書きました論点(甲種優先株式を普通株式に転換した場合の所有議決権割合の計算)と関連があることなのですが、
プレスリリースと公開買付報告書に記載する「対象者の総株主の議決権の数」には、法令上の規定は調べていませんが、
転換後の議決権の個数を記載するべきなのかもしれないなと思いました。
少なくとも、「買付け等後における公開買付者の所有株券等に係る議決権の数」は、
転換後の議決権の個数を記載しているわけなのですから、議決権の個数に関する整合性を保つためにも、
「対象者の総株主の議決権の数」も転換後の議決権の個数を記載するべきだと思いました。
甲種優先株式は現時点ではまだ普通株式に転換していないからだと言われれば確かにそうなのですが、
この表記方法ですと、公開買付により買い付けた議決権割合が100%を超えてしまっているわけです(200%近くになっている)。
議決権割合というのは当然のことながら100%が上限なのですから、分母と分子の整合性は保つようにするべきだと思います。
上記の議論を踏まえますと、正しくは、次のように記載をするべきではないでしょうか。
「訂正『対象者の総株主の議決権の数』」
「朝日火災海上保険株式会社株券等に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ」
T.本公開買付けの結果について
4.公開買付報告書の写しを縦覧に供する場所
(5/7ページ)
>楽天株式会社(東京都世田谷区玉川一丁目14番1号)
>株式会社東京証券取引所(東京都中央区日本橋兜町2番1号)
法定開示書類を『縦覧に供する場所』について、2017年2月22日(木)のコメントでは次のように書きました。
>結論を一言で言えば、金融商品取引法に定義される種々の法定開示書類は全国の財務局において縦覧に供され、
>証券取引所が定める有価証券上場規定に定義される種々の開示書類(決算短信等)は当該証券取引所において縦覧に供される、
>というだけなのではないかと思います。
2017年2月22日(木)のコメントは基本的には正しいと思うのですが、今日は別の新たな点について気付くことができました。
それは、同じ「縦覧に供する」でも法定開示書類には「原本」と「写し」の2つがある、という点です。
本日楽天株式会社が提出した「公開買付報告書」に即して言えば、次のような分類・整理ができるのではないかと気付きました。
公開買付報告書の「写し」を縦覧に供する場所 → 公開買付者や対象者が上場している証券取引所、それぞれの本支店等。
公開買付報告書の「原本」を縦覧に供する場所 → 財務局
2017年2月22日(木)のコメントでは、「縦覧に供する場所」はそもそも財務局のはずだと思い、次のようなことすら書いたわけです。
>それとも、現在では、全国の財務局では有価証券報告書を閲覧できないのでしょうか(そんなはずはないと思いますが)。
今日は、本日楽天株式会社が提出した「公開買付報告書」を見て、「写し」か「原本」かが違うのだ、と気付きました。
財務局で法定開示書類を「縦覧に供する」のは証券制度上当たり前のことであるわけですが、
財務局で「縦覧に供されている」のは法定開示書類の「原本」なのです。
公開買付者や対象者が上場している証券取引所、そしてそれぞれの本支店等では、
法定開示書類の「写し」が「縦覧に供されている」のです。
公開買付報告書にも、【縦覧に供する場所】として、楽天株式会社と株式会社東京証券取引が記載されているわけですが、
結局のところは、これは「『全国の財務局以外の場所』において縦覧に供する場合」のことについて記載をしているわけです。
例えば、有価証券上場規定に定義される「決算短信」であれば、上場企業は証券取引所に「原本」を提出するわけです。
TDnet(東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス)では、投資家は「原本」を閲覧している、ということになるわけです。
そして、上場企業が自社ウェブサイト上にアップロードしている「決算短信」は、実は「写し」という位置付けになると思います。
法定開示書類で言えば、EDINET上の書類(ファイル)は「原本」であり、他の場所で閲覧できる同じ書類はやはり「写し」なのです。
次に、このたび実施された楽天株式会社による公開買付とは直接は関係がないことなのですが、
「自社株を対価とする公開買付」について一言だけ書きたいと思います。
「自社株を対価とする公開買付」は、証券制度としては(金融商品取引法の規定としては)2011年に解禁されたのですが、
先ほど金融商品取引法の条文を読んでいて初めて気がついたのですが、
「自社株を対価とする公開買付」は、金融商品取引法で言えば、
「第二十七条の四」(有価証券をもつて対価とする買付け等)に規定があるようです。
「公開買付者が公開買付につき有価証券をもつてその買付けの対価とする場合」についての規定がありました。
この「第二十七条の四」は、2011年施行の改正金融商品取引法で新たに盛り込まれたのだと思います。
所得税法もそして法人税法も、金融商品取引法の改正に合わせて、2011年に改正をするべきだったのではと思いました。
最後に、「子会社の異動について」について、プレスリリースには次のように書かれています(5/7ページ)。
>本公開買付けの結果、対象者は、平成30年3月30日(本公開買付けの決済の開始日)付で、
>公開買付者の連結子会社となる予定です。
異動の日程(予定)は、「平成30年3月30日(金曜日)(本公開買付けの決済の開始日)」であるわけです。
他の言い方をすれば、「公開買付決済日」に株式の所有権が応募株主から公開買付者に移転するということであり、
「公開買付決済日」に株主名簿の名義が応募株主から公開買付者に書き換えられる、ということであるわけです。
この点については、決済日に株式の所有権が移転すると考えるのが一番自然なのだろう、とは書いたのですが、
応募株主が株式売却益を計上することは確定している(公開買付者による株式取得が無効になることはもはやない)のだから、
確定債権が発生したということになりますので、
公開買付の「成立日」に応募株主には収益が認識される(すなわち、株式は「成立日」に譲渡したもの)、
という考え方が現代会計では(つまり、掛取引の考え方に基づけば)できるのではないか、と以前書いたと思います。
この考え方に基づくと、公開買付の「成立日」に株式の所有権が応募株主から公開買付者に移転し、
公開買付の「成立日」に株主名簿の名義が応募株主から公開買付者に書き換えられる、ということになるわけです。
応募株主から応募された対象者株式は、決済日まで公開買付代理人が保管しているわけです。
対象者株式の所有権は、決済日までの期間、公開買付代理人にないのは明らかかと思いますが、
応募株主にあるのかそれとも公開買付者にあるのかは判然としない(どちらも正しいと言える)部分があると思います。
株主名簿管理人は公開買付の成立日に対象者の株主名簿を書き換えなければならない、
という考え方は決して間違いではないと思います。
「対象者の総株主の議決権の数」は分母なのです。
This is not the current topic, but the "original" of a document is in the
custody of a public bureau in charge,
whereas a "copy" of the document the
other various places.
時事問題ではありませんが、ある書類の「原本」は政府の担当の部局において保管されるのですが、
その書類の「写し」は政府担当部局以外の様々な場所において保管されるのです。
For example, the "original" of a family register is in the custody of the
"Legal Affairs Bureau,"
whereas it is a copy of a family register and an
abstract of a family register that are available to citizens.
Citizens can't
acquire the "original" of a family register.
Concerning a real estate
register and a commercila register,
citizens can peruse the "original" of
these registers at the nearby "Legal Affairs Bureau,"
whereas they can't
acquire the "original" itself.
They can acquire only a copy of these
registers and an abstract of these registers.
Precisely speaking, the
"original" of these registers is available to citizens
at the nearby "Legal
Affairs Bureau" (that is to say, citizens can get the information),
whereas
citizens can't acquire the "original" itself.
例えば、戸籍の「原本」は法務局が保管しているわけですが、市民が入手できるのは戸籍謄本や戸籍抄本なのです。
市民が戸籍の「原本」を取得することはできないのです。
不動産登記簿と商業登記簿に関して言えば、市民は、最寄の法務局でこれらの登記簿の「原本」を閲覧することができますが、
「原本」そのものを取得することはできないのです。
市民はこれら登記簿の謄本や抄本を取得することしかできないのです。
正確に言えば、市民は、最寄の法務局でこれらの登記簿の「原本」を利用可能なのです(すなわち、情報を入手できる)が、
「原本」そのものを取得することはできないのです。
金融商品取引法上は、
「縦覧書類」の「原本」は各「財務局」において公衆の縦覧に供されるのですが、
「縦覧書類」の「写し」は例えば証券取引所や提出者の本店又は主たる事務所において縦覧に供されるのです。
Even though items mentioned in a "copy" of a document are quite the same as
those in the "original" of the document,
the "copy" is still different from
the "original."
Legally, a "copy" of a document is not equal to the
"original" of the document.
たとえ文書の「写し」の記載内容が「原本」の記載内容と全く同じであっても、
「写し」はやはり「原本」とは異なっているのです。
法律上は、文書の「写し」は「原本」と同一のものというわけではないのです。