2018年6月24日(日)



最近の97日間のコメントを踏まえて、銀行業に関する記事を4本紹介して、一言だけコメントをしたいと思います。

 


2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年6月23日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180623.html

までの一連のコメント

 


現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント

2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 

 


2018年6月8日(金)日本経済新聞
意見対立続く地銀再編 政府会議で調整へ
(記事)


2018年6月14日(木)日本経済新聞
地銀の越境融資 最高に 残高の35%超 県外で稼ぐ 再編議論に影響も
「県内シェア」薄まる意味 競争の舞台、広域に
「統合に政府指針を」 地銀協 柴戸新会長が要望
(記事)


2018年6月14日(木)日本経済新聞
調査結果「月内に」 ふくおかFG社長 統合巡る借り換え意向
(記事)


2018年6月23日(土)日本経済新聞
地銀再編 「来月、公取と大詰め交渉」 十八銀、株主総会で説明
(記事)

 


信用金庫(ウィキペディア)
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E7%94%A8%E9%87%91%E5%BA%AB

>営業地域が一定の地域に限定された、中小企業ならびに個人のための専門金融機関。
>大企業や営業地域外の企業・個人には融資ができないという制限がある

>出資できる会員資格も特定地域の中小企業や一般個人に限定されている。

 


一昨日2018年6月22日(金)と昨日2018年6月23日(土)に「POファイナンス」という新しい資金調達手法について書きました。
一昨日2018年6月22日(金)には「POファイナンス」のの基本的枠組み(基礎概念)と問題点について書き、
昨日2018年6月23日(土)には特に金融機関側から見た「POファイナンス」の問題点やその解決方法について書きました。
「POファイナンス」という新しい資金調達手法では、「受注者がいかに金融機関から資金を借り入れるか?」が問題となっている
わけなのですが、「POファイナンス」を金融機関の立場から見ると少し違って見える、と昨日は指摘をしました。
本質的に、金融機関は借入人の信用力(支払能力)の判断(融資の審査)以外のことは苦手であるわけです。
工事の「事業性評価」(受注者の「注文の遂行能力」に関する判断)は金融機関ではなく発注者が行うべきである、
という観点に立ち、昨日は「前渡金」との類似性についても考察を行いながら、融資についてコメントを行ったわけです。
それで、「POファイナンス」を開発したTranzax株式会社のウェブサイトには、
2018年5月2日付けの日刊建設工業新聞の記事がPDFファイルで掲載されており、
Tranzax株式会社が「POファイナンス」に関する業務提携契約を城南信金と締結した、という内容が紹介されているわけです。
また、2018年6月22日には、Tranzax株式会社が「POファイナンス」に関する業務提携契約を西武信用金庫と締結した、
というプレスリリースを紹介しました。
Tranzax株式会社は、「POファイナンス」に関しては信用金庫とばかり業務提携を行っているな、と思いました。
最初に、記事と同時にウィキペディアから「信用金庫」の解説ページを紹介していますが、
融資という観点から言えば、一般の銀行とは異なり、信用金庫は営業地域(貸出可能地域)が明確に制限されています。
信用金庫の理念と信用金庫法の規定により、信用金庫は本店所在地の都道府県内でしか営業を行えないわけです。
過去に実施された信用金庫の経営統合は、基本的には信用金庫同士の合併ばかりです。
法律上は、信用金庫から銀行への転換や、逆に、銀行から信用金庫への転換、が可能であるようですが、
機械的に組織形態を転換できるというわけではないといえるほど、信用金庫と株式会社は組織形態が異なると思います。
2018年6月現在でも、信用金庫同士の合併が何例か予定されており、今後も信用金庫の数は減少していく見込みとなっています。
信用金庫は、表向きは”会員の出資による営利を目的としない協同組織の地域金融機関”という触れ込みであるわけですが、
信用金庫を営むためには現実には本支店や従業員が必要であるわけですから、
一定度の営業費用(主には人件費等)が必要となるわけであり、現実には貸出金の利息で営業費用を賄う必要はあるわけです。
個人的には、「貸出金利息−営業費用」は利潤と言えば利潤だと思います。
信用金庫は法人税率が銀行に比べて優遇されているようですが、法律上は信用金庫から株式会社への組織変更が可能なほど、
利息を受け取る仕組みや営業のために必要となる費用は同じ(煎じ詰めればどちらも銀行業という共通点がある)であるわけです。
株式会社にとってそれは利益だが信用金庫にとってはそれは利益ではない、というのは論理的ではないと思います。
信用金庫は法人税率が銀行に比べて優遇されている理由は、営業可能地域が限定されていることの見返りなのか、それとも、
非営利組織という建前なのか、私には分かりませんが、法人である以上は存続のために一定以上の利益が実務上求められます。
「法人なのに非営利組織である。」というのは矛盾なのです(法人で非営利活動を行うことは理論的にはできないと言ってよい)。
それで、信用金庫の営業地域は限定されていると聞いて頭に思い浮かぶのが昨今話題の地方銀行の再編問題です。
昨今話題の地方銀行の再編問題に関しては、2018年6月6日(水)に銀行業における貸出金の他行への譲渡に関する記事を紹介しました。
2018年6月6日(水)にはこの問題についてあまりコメントは書かなかったわけですが、
「譲受銀行は、譲渡銀行から譲渡を受けた貸出金が返済されるまで繋ぎの融資として日本銀行から特別融資を受ける。」、
という案を提案いたしました。
以下、「貸出市場シェアを意図的に低下させることの是非と実務上の問題点」について、一言だけコメントを書きたいと思います。

 



貸出市場シェアを意図的に低下させるために譲渡銀行が譲受銀行へ貸出金を譲渡するとなりますと、
譲受銀行には貸出金を受け入れるだけの十分な現金がありませんので(取得する貸出金の対価を相手方に支払えないので)、
論理的には、貸出金の譲渡と同時に譲渡銀行は譲受銀行へ預金も譲渡しなければならない、ということになるわけです。
しかし、それでは実務上あまりに事務処理量が増大する(預金者が一番不利益を被る)ことになりますので、
預金は移転させず、替わりに、一定期間のみ譲受銀行が日本銀行から特別融資を受ける、という方策が考えられるわけです。
貸出市場シェアを意図的に低下させるための手法として、借入人に他行への借り換えを促すという案も提案されていますが、
その場合も事の問題点は全く同じであり、高シェア銀行からの借り換えに応じようと思っても、
借り換え先の銀行に十分な現金がなければ、その銀行は借り換えに現実に応じられないわけです。
借り換えとは言いますが、借り換え先の銀行の立場からすると、それは純粋に新規の貸し出しに過ぎません。
当局からの借り換えの斡旋により、新規の顧客(借入人)を獲得することはできるでしょうが、
そもそもその銀行に現金がなければ借り換え希望者に現金を貸し出すことは現実にはできないのです。
当局が借入人に借り換えを斡旋する場合も、借り換え元から借り換え先へ預金も一緒に移転させなければ、
借り換え先はその借入人に現金を貸し出すことができないのです。
結局この場合も、預金の大量移転という非現実的な作業は預金者の利益を鑑みればするべきではありませんので、
「借り換え先は、当局から斡旋を受けた借り換え元から借り換えを行った借入人に対する新規の貸出金が返済されるまで
繋ぎの融資として日本銀行から特別融資を受ける。」、という現実的対応(資金の工面・融通策)が求められるわけです。
貸出金の譲渡と借り換えの斡旋は、手許現金という観点から言えば、特に譲受銀行や借り換え先の立場から見ると全く同じです。
譲受銀行や借り換え先に余剰の手許現金があるということを前提に話をするのはやめていただきたいと思います。
世が世なら、「銀行業が分かっていない者は黙っておれ。」と叱責されたことでしょう。
貸出金の譲渡も借り換えの斡旋も、譲受銀行や借り換え先に余剰の手許現金があるということが前提条件になります。
譲受銀行や借り換え先に余剰の手許現金がない場合は、貸出金の移転と同時に預金をも移転させるか、
さもなくば日本銀行から特別融資を受けるしか方法がないのです。
県内の競争環境だ貸し出しシェアの調整だ越境融資だ収益水準の試算だ百年の計だと小難しい話ばかりを皆がしていますが、
誰もが目の前の銭勘定をできていないように思います。
大上段に構えた難しい議論をする前に、銀行内にある現金額を数えてみたらどうか、と私は思っているところです。
「実務上そのようなことが本当にできるのか?」という議論はぜずに、宙に浮いた話ばかりを皆がしているわけです。
銀行同士が合併をするのにお金はいりませんが、貸出市場シェアの意図的な引き下げには大なり小なりの資金調達が必要です。
貸出市場シェアの意図的な引き下げには、預金の大量移転という資金調達か日銀特別融資という名の資金調達が必要なのです。
社債の発行による資金調達という手もありますが、少なくとも他行からの借入はあり得ません。
なぜなら、他行にも余剰な手許現金はないからです。
日本銀行は、最後の貸し手なのです。

 


Concerning the subject discussed recently, lendings must parallel cash.
"Cash" in this context means deposit accounts or new borrowing accounts such as a special loan from the Bank of Japan.

昨今議論されています話題では、貸出金は現金と平行・同時でなければなりません。
この文脈における「現金」とは、預金勘定や日本銀行からの特別融資のような新たな借入勘定を意味します。