2018年6月23日(土)

最近の96日間のコメントを踏まえて、関連する記事を1つ紹介して建設業に関する昨日のコメントに一言だけ追記をします。

 


2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年6月22日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180622.html

までの一連のコメント

 


現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント

2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 

 



2018年6月23日(土)日本経済新聞
大手ゼネコン 下請け資金支援 鹿島も手形決済を短縮 人手不足解消狙う
(記事)




昨日は、主に建設業界で活用されることが今後見込まれる「POファイナンス」という新しい資金調達手法について書きました。
「POファイナンス」の基本的枠組み(基礎概念)と実務上の問題点について昨日は書いたわけですが、
昨日は書きませんでしたが、仮に金融機関が「POファイナンス」の手法を活用して資金を貸し出すのならば、
金融機関は受注者に対してではなく発注者に対して資金を貸し出すべきではないかと思いました。
発注者は、金融機関から借り入れた資金を受注者に前渡金として支払うようにすればよいのではないかと思いました。
これならば、金融機関が実務上苦手とする「事業性評価」の問題点(受注者の「注文の遂行能力」に関する判断)は解決します。
金融機関は、発注者の信用力(支払能力)のみを審査すればよい(与信管理は金融機関が最も得意とする分野です)わけです。
実務上は、「POファイナンス」における債務の弁済の最終的な引き当ては、発注者の信用力(支払能力)であるわけですが、
それならば始めから金融機関は発注者に対して資金を貸し出す、という融資方法の方が早くなおかつ安全だと思ったわけです。
私が今提案しているのはもはや「POファイナンス」でも何でもないと言わねばならないかもしれませんが、
特に金融機関の立場(貸付金の貸し倒れは実務上絶対に避けたいという思い)から見ると、
金融機関にとって実務上は発注者となる大手企業の信用力が「POファイナンス」における最終的な引き当てだというのならば、
金融機関は直接に発注者に対して資金を貸し出すべきだ(貸出金の使途は「受注者への前渡金」です)と思いました。
「POファイナンス」では、「受注者がいかに金融機関から資金を借り入れるか?」が問題となるわけなのですが、
昨日も書きましたように、金融機関が「事業性評価」を行う(受注者の「注文の遂行能力」に関する判断を行う)のは、
現実には非常に難しいわけです。
金融機関としては、「事業性評価」(受注者の「注文の遂行能力」に関する判断)は発注者に依存する、
ということでよいのではないかと思いました。
「事業性評価」(受注者の「注文の遂行能力」に関する判断)のリスクは発注者に負ってもらい、
金融機関は発注者の信用力(支払能力)の審査に専心する、という役割分担(一種の分業、それぞれ得意分野のリスクのみを負う)
を行う方がより論理的であり実務上も有益だ(特に金融機関にとって)、と思いました。
受注者が資金を借り入れる場合と比較すると、発注者が金利の支払いを負担をせねばならないわけですが、
その点については工事代金を支払利息の金額の分だけ減額するといった形で受注者と調整をすれば解決するでしょう。
「もちはもち屋」と言いますが、リスクを引き受ける分野を分けることで、文字通り「もちはもち屋」を実践するわけです。
「もちはもち屋」は英語で"Every man to his trade."と言いますが、
この文脈における"trade"は「本業」と訳すことできると思います。
工事の「事業性評価」(受注者の「注文の遂行能力」に関する判断)しかり借入人の与信管理(融資の審査)しかり、
それぞれを「本業」とする当事者がそれぞれのリスクを背負う形で取引を進めていけばよい、と私は思いました。
確かに、「POファイナンス」の基本的枠組み(基礎概念)としては、
金融機関が「事業性評価」(受注者の「注文の遂行能力」に関する判断)を行うからこそ「POファイナンス」なのですが、
特に金融機関の立場から見ると、背負うのは借入人の与信管理(融資の審査)のリスクのみにしたいと実務上感じるのではないか、
と思いましたので、金融機関は受注者に対してではなく発注者に対して資金を貸し出すべきではないかと思いました。

 


それで、関連する論点になりますが、今日紹介している記事が一連の論点の理解の参考になるのではないかと思いますが、
先ほど「発注者は、金融機関から借り入れた資金を受注者に前渡金として支払うようにすればよい。」と書きました。
今日紹介している記事は、ゼネコンが下請け建設業者への支払手形の決済期間を短縮する方向に向かっている、
という内容になるわけですが、下請け建設業者への資金繰りの支援という意味では、支払手形の決済期間の短縮以前に、
ゼネコンはそもそも「前渡金」を下請け建設業者へ支払うべきだ、という考え方になるわけです。
今日紹介している記事では、「前渡金」については一切言及はないわけですが、
工事期間が長期間に及ぶ建設業において施工業者に対する「前渡金」の支払いは商慣習として定着していると言えるわけです。
発注者にとって、会計慣行上計上する「建設仮勘定」とは煎じ詰めれば「前渡金」のことなのですから。
発注者がゼネコンに「前渡金」を支払い、ゼネコンがその「前渡金」を下請け建設業者に支払う、
という取引の様子が頭に浮かんだわけですが、このことは、
金融機関が発注者に資金を貸し付け、発注者はその資金を「前渡金」として受注者に支払う、
という取引の様子と共通するもの(取引の全体図に類似性がある)があると思ったわけです。
抽象的に言えば、「前渡金」は「マイナスの支払手形」(現金を先に相手方に支払う。まさに「現金の先払い」)であるわけです。
下請け建設業者への資金支援という意味では、ゼネコンからすると「前渡金」がまさにその中心にあるべきものだと思いました。
発注者とゼネコンと下請け建設業者との関係を図に描きましたので参考にして下さい。

 

「ゼネコンが前渡金の部分で利益を得ることはない。」

発注者はゼネコンに対して工事の施工を発注する。
工事契約は、発注者とゼネコンとの間で締結する。
その上で、ゼネコンは下請け建設業者に対して自分が請け負った工事の施工を発注する。
ゼネコンと下請け建設業者との間でも工事契約を締結する。
下請け建設業者はゼネコンに対し完成した工事を引き渡し、ゼネコンは下請け業者から引渡しを受けた工事を発注者に対し引き渡す。

理論的には、「C対価の金額<E対価の金額」である。
簡単に言えば、C対価とE対価の差額がゼネコンの利益。
前受金は対価の一部を構成するが、注意点が1つある。
理論的には、「@前渡金の金額=A前渡金の金額」である。
なぜなら、前渡金には金融支援の意味合いしかないから。
前渡金は総収益額の一部を構成するに過ぎない。
前渡金以外の収益の構成要素の一部がゼネコンの利益になる。

 


【収益に関する備忘ノート】
収益の金額=目的物の対価の金額=@前受金の金額+A目的物の引渡し時に受け取る現金の金額+B売上債権の金額


(前受金)    aaa / (売上高) ddd
(現金)        bbb
(売上債権)  ccc


「ddd=aaa+bbb+ccc」という関係になるが、「ddd」が総売上高(対価の合計金額)。
aaa(前受金)とbbb(現金)とccc(売上債権)の全てが売上高の構成要素(これら3つの全てが対価の金額を構成する)。
aaa(前受金)は目的物の引渡し前に受け取る対価であり、bbb(現金)は目的物の引渡しと同時に受け取る対価であり、
ccc(売上債権)は目的物の引渡し後に受け取る対価である(対価を受け取るタイミングが異なるだけ。全てが対価を構成する)。
ゼネコンとしては、bbb(現金)とccc(売上債権)の部分で利益(良い悪いは別にして仲介業者としての「差額」)を得ればよい。
ゼネコンとしては、aaa(前受金)の部分で利益を得る必要は全くない。
むしろ、aaa(前受金)の部分で差額を得てしまうと、工事の施工に差し障りが生じる。
ゼネコンとしては、「工事の施工」に必要な資金はそのまま下請け建設業者に渡すというだけである。
ddd(売上高)を分析すると、そのまま下請け建設業者に渡す部分とゼネコンとしての差額を得るべき部分とに分けられる。

 

 

Ultimately speaking, the purpose of an "advance payment" is purely financial aid
because it doesn't produce any effects on a company's profits and losses as at the payment.

究極的なことを言えば、「前渡金」の目的は純粋に金融支援なのです。
なぜならば、「前渡金」は支払いの時点では会社の損益に一切影響を及ぼさないからです。