2018年6月22日(金)
2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html
から
2018年6月21日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180621.html
までの一連のコメント
現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント
2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html
「オークション方式」に関する過去のコメント
2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html
2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html
2018年6月22日
Tranzax株式会社
Tranzax、西武信用金庫と業務提携契約締結 受注時点での資金調達を可能にする「POファイナンスR」の導入決定
ttps://www.tranzax.co.jp/wp-content/uploads/2018/06/seibushinkinPOF_180621.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
2018年5月2日
Tranzax株式会社
Tranzax「POファイナンス」 導入1号に城南信金 中小向け融資 工事受注段階で可能
(日刊建設工業新聞 2018年5月2日付 掲載)
ttps://www.tranzax.co.jp/wp-content/uploads/2018/05/nikkankensetsu180502.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
昨年4月のTranzax株式会社の「POファイナンス」に関する記事↓
Tranzaxの「業界の垣根を越えた」電子記録債権の実証実験、中小企業庁の委託事業に採用決定
経済産業省、法務省、金融庁が導入の旗振り役を務め、2008年に法制化された「電子記録債権(電子債権)」は、
手形に代わる決済手段として急速に普及が進んでいる。しかし導入の主な狙いである「電子債権の担保活用」は、
現在のところあまり活用されていない。そんな状況に風穴を開けようとしているのが、
フィンテックベンチャーの「Tranzaxグループ」(東京都港区)だ。
同社は17年4月14日、電子債権を活用したPOファイナンス(Purchase Order
Finance)の実証実験を行うコンソーシアムが、
中小企業庁委託事業・次世代企業間データ連携事業
「中小企業等の業種の垣根を越えた企業間の電子データ連携に関する実証プロジェクト」に採用されたと発表した。
電子債権とは、売上債権(売掛金)や支払債務を電子データで決済する新しい金融インフラだ。
債権・債務の「登記所」ともいうべき「電子記録債権機関」の記録原簿に当事者が電子的な記録を行うことによって、
債権発生や債権譲渡などの効力が生じる。柔軟度を高めるため、電子記録債権機関は国の指定する民間組織に委ねられる。
17年4月現在、全国銀行協会、3大メガバンク、そしてTranzaxグループが設立した5機関体制となっている。
今回発表されたPOファイナンスは、これまで困難だった「商品・サービスが提供される以前の受注段階の債権を担保化する」、
世界でも初めての取り組みだ。
中小企業が直面する問題として、新しいサービスを開発・生産するための予算が確保できないという点がある。
通常は売り上げが立たないと債権を担保できなかったものが、このスキームによれば商品・サービスが提供される以前の
受注段階の債権を担保化することが可能となる。
例えば、発注者(債務者)が大企業または国、地方団体で、納品業者(債権者)が中小企業だとしよう。
中小企業は発注者の売掛金(売掛債権)をもっている。
従来の金融スキームだと、債権の存在・帰属が不明確で二重譲渡のリスクがあった。
これに対して電子債権は、代金を機関の原簿に記録するので、債権の存在・帰属が可視化される。
しかも電子債権の発生時期を納品検収時よりも早められるので、中小企業はそれを担保活用することができ、
しかも低金利で資金調達できる可能性が出てくる。
金融機関にとってもメリットは少なくない。電子債権をEDI(電子発注)システムと組み合わせることで
事業性評価を行いやすくなり、事務・審査コストを抑えながら融資を行うことができる。
Tranzaxグループが実施するPOファイナンスの実証実験は、板金加工やパイプ曲げ加工を手がける武州工業(東京都青梅市)と
その取引企業、三井住友信託銀行、足利銀行、北陸銀行、北洋銀行、西武信用金庫、多摩信用金庫といった金融機関が共同で参加する。
企業が大口の資金調達を希望する場合、複数の金融機関(シンジケート団)が同一の条件・契約に基づき融資を行う
「シンジケートローン」(協調融資)という手法がとられることがある。電子債権は単なる権利関係だけでなく、
様々な情報を記載することが可能だ。金融機関が借り手である中小企業の返済能力を見極めたくても、
企業情報があまり開示されていなかったり、財務データが整備されていなかったりで、リスクが高いと見なされがち。
金の貸し先が見つからず困っている金融機関にとって、電子債権の普及は融資機会を拡大するチャンスとなり得るか。
(J-CASTニュース
2017/4/17 16:30)
ttps://www.j-cast.com/trend/2017/04/17295775.html
本日2018年6月22日にTranzax株式会社が発表しているプレスリリースが興味深いなと思いましたので、一言だけコメントします。
Tranzax株式会社は「POファイナンス」という新しい資金調達手法を開発したわけなのですが、その手法とは、簡単に言いますと、
「商品・サービスが提供される以前の受注段階の債権を担保にして企業が金融機関から資金調達をする。」という取り組みです。
中小企業が直面する問題として、新しいサービスを開発・生産するための予算が確保できないという点があるわけですが、
「注文を受注したこと」を根拠・原資として企業が金融機関から資金を借り入れる、
という新しいスキームをTranzax株式会社が開発したわけです。
一般に、売り上げが立たないと(売り上げが実現しないと、収益が認識されないと)債権が発生しないわけですが、
「POファイナンス」では、商品・サービスが提供される以前の受注段階の債権を言わば担保として金融機関から
資金調達をすることが可能となる、という仕組みになっています。
一般に、債権と言いますと確定した金銭債権(金額も弁済期日も弁済を受ける権利も確定している状態)を指すわけですが、
「POファイナンス」では、金額や法的権利という意味では「厳密には確定してはいない債権」を債権と表現しているわけです。
会計上・法律上は確定した金銭債権ではないが、今後進めていく工程と将来における納品とを(=「注文の遂行」を)根拠にして、
金銭債権の確定前に「推定債権」を見積もることで、金融機関がその「推定債権」を言わば担保にして企業に融資を行う、
というスキームに「POファイナンス」はなっているわけです。
「注文の遂行能力を鑑みれば、融資先は契約通り発注者に対し納品を完了し期日に金銭債権が無事発生するはずだ。」、
という見積りや推定や目利きを根拠にして、「POファイナンス」では金融機関は融資先に対し資金を貸し付けるわけです。
「POファイナンス」のスキームは確かに興味深いと思ったのですが、経営上や実務上のと言いますか、大きな視点から見ると、
少し異なった見方もできるなと思いました。
それは、「企業に対し資金を融通するのは、この場合は金融機関ではなく発注者であるべきだ。」という点です。
受注者は、注文の受注から目的物の完成までの工程を経て代金受領まで非常に長い時間を要することになることから、
資金繰りに困らないよう「注文を受注したこと」を根拠として金融機関から資金を借り入れようとしているわけなのですが、
端的に言いますと、受注者が資金繰りに困らないように資金を融通するべきなのは顧客である発注者自身であるべきなのです。
「目的物の完成までの工程」が非常に長い最も典型的な業種は「建設業」であるわけですが、
「POファイナンス」では「建設業」を第一の主眼としていると言えるわけです。
「POファイナンス」の導入第1号の記事が掲載されたのが「日刊建設工業新聞」であったのは決して偶然ではないわけです。
紹介している「日刊建設工業新聞」にも書かれていますが、顧客である発注者は受注者に対し、
着工時に工程を円滑に進めることができるよう資金を融通するようにするべきなのです。
紹介している「日刊建設工業新聞」には「前払金」についての言及がありますが、
まさに発注者は受注者に注文に関する「前払金」を支払うべきなのです。
受注者の立場から言えば、受注者は「前受金」を受け取るようにするべきなのです。
「POファイナンス」の問題点では、一言で言えば、「事業性評価」にあるわけです。
金融機関は、「事業性評価」を行った上で、「推定債権」を根拠とした融資に関する事務や審査を行うことになりますが、
煎じ詰めれば、その「事業性評価」が実務上極めて難しいわけです。
なぜならば、金融機関は、注文の発注者でもなければ受注者でもないからです。
「事業性評価」が実務上可能なのは(精度の高い評価を現実に行うことができるのは)、
取引の当事者である注文の発注者と受注者(もしくは、同じ業界における同業者等)だけなのです。
「推定債権」の金額や弁済可能性(さらには金銭債権の発生可能性)を評価するのは、第三者である金融機関には難しいわけです。
注文の受注者は、注文の遂行のための資金を、金融機関から借り入れるのではなく注文の発注者から前受けするべきなのです。
紹介している「日刊建設工業新聞」には、「POファイナンス」の本質部分について間違った記述があるように思います。
それは、「金融機関が受注者に対し資金を貸し付ける際の根拠」に関し、記事の真ん中辺りに書かれている次の文言です。
>発注者となる大手企業の信用力を生かした電子記録債権の活用を通じて、
「POファイナンス」では、実は「発注者の信用力」は議論の対象とはしていないのです。
もちろん、金融機関は、最終的には「受注者への発注者による代金の支払い」を引き当てとして受注者に融資を行いますから、
発注者が無事代金を支払わないことには貸出金の返済をも滞りかねません(一種の連鎖債務不履行が生じかねないわけです)。
それは確かにそうなのですが、「POファイナンス」の本質部分は、受注者の「注文の遂行能力」なのです。
「POファイナンス」において、金融機関は、受注者の「注文の遂行能力」を評価して、「推定債権」を見積もるわけです。
「POファイナンス」においては、発注者の信用力(支払能力)は問題としていないのです。
「POファイナンス」では、発注者は必ず債務を支払う(後に生じる確定債権は必ず履行される)ことが前提となっているのです。
確かに、実務上は金融機関は発注者の信用力(支払能力)も審査する(注文の代金を支払えるかどうかはもちろん審査する)
わけですが、「POファイナンス」の枠組み(スキーム)において本質的なのは、受注者の「注文の遂行能力」なのです。
この文脈における「事業性評価」とは、発注者の信用力(支払能力)の評価ではなく、
受注者の「注文の遂行能力」の評価なのです。
「POファイナンス」では、「確定債権」ではなく「推定債権」を根拠に金融機関は融資を行うわけですから、
受注者の「注文の遂行能力」が本質的に問題となるのです。
「確定債権」に関してはまさに発注者の問題(発注者の支払能力の問題)であるわけですが、
「推定債権」に関しては受注者の問題
(受注者は果たして無事注文を遂行できるのか、確定債権は本当に無事発生するのか、という問題)であるわけです。
「確定債権」の弁済可能性については金融機関で調査や審査ができるわけですが(まさにそれが金融機関の本業の1つでしょう)、
「確定債権」の発生可能性については金融機関で調査や審査(≒「事業性評価」)はできないのです(金融機関の本業外のこと)。
発注者は、受注者の「注文の遂行能力」を十分に理解しているからこそ、受注者に対し着工時点で「前払金」を支払うのです。
受注者の「注文の遂行能力」をも含めた「事業性評価」は、発注者にはできますが、金融機関には現実には難しいのです。
紹介している「日刊建設工業新聞」にも「前払金」について触れられていますが、
「推定債権」を根拠にした金融機関による融資と発注者による「前払金」の支払いには概念的には共通するものがあるわけです。
それは結局のところ、受注者が注文を遂行できるか否かをその根拠にしている、ということなのです。
「受注者は注文を遂行できるか否か?」について判断をすることができるのは、煎じ詰めれば発注者だけなのです。
金融機関は石橋をたたいて資金の貸し出しを行わねばなりませんが、
辞書を引きますと、「石橋をたたいて渡る」は英語で「make
assurance double sure」と表現されるようです。
「make assurance double
sure」とは、「保証を二重に確実なものとする」という意味合いだと思います。
「POファイナンス」では、金融機関は、実務上は、
発注者の信用力(支払能力)だけではなく、受注者の「注文の遂行能力」をも審査する必要があるのです。
発注者の信用力(支払能力)と受注者の「注文の遂行能力」の両方が「double
sure」の状態でなければ、
金融機関は実務上は「POファイナンス」による貸し付けを行えないのです。
ただ、重要な点なので繰り返しますが、理論的にはと言いますか、「POファイナンス」の基本的枠組み(基礎概念)としては、
発注者の信用力(支払能力)に問題はない(後に生じる「確定債権」は無事弁済される)、ということが前提となっているのです。
この場合、取引に関する金融リスクを引き受けるべきなのは、金融機関でも受注者側でもなく発注者側なのです。
In this case, from a standpoint of a person who accepts an order,
it
should not borrow money from a financial service but receive an "advance
payment" from a person who ordered.
この場合、受注者の立場から見ると、受注者は、
金融機関から資金を借り入れるのではなく発注者から「前渡金」を受け取るようにするべきなのです。
In the "PO finance," a financial service must make sure that assurances not
only concerning a person who places an order
but also concerning a person who
accepts an order are made double sure.
In other words, a financial service
must judge not only its obligor but also an obligor of its obligor.
Needless
to say, "its obligor" is a person who accepts an order
and "an obligor of its
obligor" is a person who places an order.
「POファイナンス」では、金融機関は、
発注者に関する保証だけではなく受注者に関する保証もが2つ一緒に確実になっているということを必ず確かめなければなりません。
他の言い方をすれば、金融機関は、自社の債務者について審査をするだけではなく、
自社の債務者の債務者についても審査をしなければならない、ということです。
言うまでもありませんが、「自社の債務者」とは受注者のことであり、「自社の債務者の債務者」とは発注者のことです。