2018年6月21日(木)
2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html
から
2018年6月20日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180620.html
までの一連のコメント
現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント
2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html
「オークション方式」に関する過去のコメント
2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html
2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html
2018年6月20日(水)日本経済新聞
■三菱重、損失なしで資産を減額 MRJ 消えた4000億円 会計基準変更、市場困惑も
(記事)
H30.06.21 14:11
三菱重工業株式会社
有価証券報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)
第16回 IFRSの初年度適用
(監査法人A&Aパートナーズ IFRSコラム)
ttp://www.aap.or.jp/knowledge/column-ifrs/ifrs16/
>まず、IFRSの「初度報告日」と「移行日」が違うことに留意して下さい。
>例えば、2015/3期末日がIFRSの「初度報告日」の場合は、2013/4期初日(2013/3期末日)がIFRSの「移行日」となります。
>つまり、上記の例だと、IFRSの「初度報告日」において開示が求められている貸借対照表は、2015/3期末、2014/3期末、
>2013/3期末の3期分となり、そのうち一番古い2013/3期末からIFRSの適用が求められているのがポイントです。
>移行日からIFRSを適用するというニュアンスではなく、移行日時点の貸借対照表を構成する各項目について、
>その発生年度まで遡及してIFRSを適用するというニュアンスなので、ちょっと(というより、かなり)面倒な感じになります。
>三菱重工業が開発を進める国産初のジェット旅客機「MRJ」の資産約4000億円が唐突に消えた。
>資産の価値を引き下げる会計ルールに従えば損失を伴うはず。三菱重工が最終赤字になってもおかしくないが、
>損失を計上せずに懸案事項を処理できた。何が起きたのか。
記事全体を読みますと、損失が発生しなかった理由は採用する会計基準を日本基準からIFRSへ変更したことであるとのことです。
本来なら4000億円が発生したのだが、今期は移行初年度であるため、前期と比較した資産価格の差が発生せず、
損失を計上せずに済んだ、と記事には書かれています。
IFRSに移行する初年度であれば損失を計上せずに済むとはどういうことだろうかと思い、
「ifrs 減損損失 初年度」というキーワードで検索してみました。
すると、非常に数多くの様々な解説記事がヒットしたわけですが、
自分が知りたい情報(なぜ減損損失は計上されないのか?)は紹介しているサイトに簡潔にまとまっているなと思いました。
要するところ、三菱重工業は、2019年3月期にIFRSを適用した財務諸表を初めて作成・開示するわけですが
(つまり、2019年3月末が「初度報告日」)、IFRSを適用した2019年3月期の財務諸表を開示する際には、
2018年3月期の貸借対照表と2017年3月期の貸借対照表も併せて開示しなければならない、ということであるわけです。
そしてこの場合、2017年3月末が「移行日」、ということになるわけです。
簡単にまとめれば、「初度報告」を行う際には、「初年度の財務諸表+過去2年度分の貸借対照表」の開示が求められるわけです。
三菱重工業の事例に即して言いますと、三菱重工業は、IFRSを適用した財務諸表を作成する中で、
実際には2018年3月期に件の4000億円の減損損失を計上したわけです。
つまり、IFRSを適用した2018年3月期の損益計算書には現に4000億円の減損損失が計上されているわけです。
4000億円の減損損失を計上した結果、IFRSを適用した2018年3月期の損益計算書では過去最大の巨額の最終赤字になっています。
ところが、三菱重工業は、2018年3月期の決算の開示に関しては、日本基準を適用した財務諸表を開示することになっているわけです。
実際、三菱重工業は、決算短信にも有価証券報告書にも日本基準を適用した財務諸表を記載しているわけです。
日本基準では2018年3月期に4000億円の減損損失を計上する必要はない、との判断になっているのでしょう。
そして、次の会計期間である2019年3月期からはIFRSを適用して財務諸表を作成・開示することになるわけですが、
IFRSを適用して財務諸表を作成する場合は、2018年3月期に4000億円の減損損失を計上する必要があるわけです。
ですので、IFRSを適用した三菱重工業の2018年3月期の損益計算書には4000億円の減損損失が計上されているわけです。
しかし、4000億円の減損損失が計上されている2018年3月期の損益計算書が開示されることはないわけです。
なぜならば、「初度報告」を行う際、2018年3月期の損益計算書を開示する必要はない(貸借対照表のみの開示でよい)からです。
記事では、適用する会計基準の変更に関連して4000億円の減損損失を計上せずに済んだ、という論調になっていますが、
実際には三菱重工業は2018年3月期に4000億円の減損損失を計上しているのです。
しかし、三菱重工業は、「初度報告」を行う際には2018年3月期の損益計算書を開示しなくてよい規定にIFRSではなっているため、
三菱重工業が開示している財務諸表を比較・分析しても、4000億円の減損損失が計上されている損益計算書がない
(その損益計算書がそもそも開示されていない、投資家が損益計算書を見ることがない)、
という状態(情報開示に関するパラドックス)が発生してしまうのです。
ですので、三菱重工業は、減損損失を計上せずに済んだのではなく、減損損失を計上した損益計算書を開示せずに済んだ、
というのが事の真相なのです。
この問題の解決策は、簡単に言えば、「初度報告」を行う際には、「初年度の財務諸表+過去2年度分の財務諸表」の開示を
求めることなのです。
そもそもの話をすれば、過去2年度に関しては貸借対照表の開示だけという規定になっていることが間違っているのです。
In this case, the imparment loss has already been recorded
in the
undisclosed profit and loss statement of the past accounting period.
この場合、件の減損損失は、未開示となっている過年度の会計期間の損益計算書に既に計上されているのです。