2018年5月27日(日)



最近の69日間のコメントを踏まえた上で、記事を1つ紹介し、ここ5日間のコメントに追記をする形で、
「株主総会への出席人数」と「有価証券報告書の提出経路」について考察を行いたいと思います。

 


2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年5月26日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201805/20180526.html

までの一連のコメント

 


現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント

2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 

 



2018年5月22日(火)日本経済新聞
オリックス個人株主 3年で3倍に 3月末、29万人
(記事)




2018年5月9日
オリックス株式会社
定款一部変更に関するお知らせ
ttps://www.orix.co.jp/grp/company/newsroom/newsrelease/pdf/180509_ORIXJ2.pdf

(ウェブサイト上同じPDFファイル)




株式概要(オリックス株式会社)
ttps://www.orix.co.jp/grp/company/ir/stock/stock_info.html

>株主総数 299,722名

 

有価証券報告書(オリックス株式会社)
ttps://www.orix.co.jp/grp/company/ir/library/securities_report/index.html

 

有価証券報告書
(金融商品取引法第24条第1項に基づく報告書)
事業年度(第54期) 自  平成28年4月1日 至  平成29年3月31日
ttps://www.orix.co.jp/grp/pdf/company/ir/library/securities_report/2017J.pdf

(ウェブサイト上同じPDFファイル)


独立監査人の監査報告書及び内部統制監査報告書
(219/225ページ)

 



オリックスの個人株主が短期間(わずか数年間)の間に激増している、という記事です。
オリックスは、長期保有の個人株主の獲得が課題になっている、と記事には書かれており、
オリックスは意識的・意図的に個人株主の人数を増加させようと試みているようです。
記事によりますと、オリックスは、

>「個人の株主比率を今後とも継続的に引き上げたい」

という考えを持っているようです。
もう少し正確な情報を知りたいと思い、オリックスのウェブサイトの投資家情報のページを見てみました。
紹介しているオリックス株式会社の「株式概要」には、次のような棒グラフがあるのですが、
この棒グラフは「株主数」という観点から見ると読み間違えてしまうと思います。
この棒グラフは、「株主数」ではなく、株主の属性別の「持株比率」を表現した棒グラフです。

「株主の内訳および株主総数」


いずれにせよ、オリックスの株主総数がわずか数年の間に激増しているのが分かります。
ここまで株主の総数が増加するとなりますと、株主総会に参加する株主の人数もいきおい増加する、と考えられます。
株主が株主総会の会場に入れないという事態が生じては大変ですので、出席が見込まれる株主の人数を見積り、
会社は余裕を持って収用可能人数が大きめの会場を用意する必要があります。
オリックスでは、個人株主の増加に伴い、どれくらいの人数が株主総会に出席すると見積もることができるでしょうか。
以下、いくつかの合理的な前提を置き、株主総会への出席人数を計算してみたいと思います。

 



2018年5月19日(土)のコメントでは、会社法の教科書の記述を紹介し、過去最多の株主が出席した株主総会は、
2011年6月に開催された東京電力の株主総会(9,300人強)であった、と書きましたが、
東京電力では個人株主のうちどれくらいの割合が株主総会に出席しているのか、
東京電力のウェブサイト(IR情報)の数値を基にフェルミ推定を行ってみましょう。

株式等の状況(東京電力ホールディングス)
ttp://www.tepco.co.jp/about/ir/stockinfo/breakdown.html

「所有者別状況」

話の簡単のため、全株主のうち、機関投資家は全株主が株主総会に出席する、と仮定しましょう。
また、株主の人数や株主構成に大きな変動がない場合は、株主総会に出席する総数にも大きな変動はない、と仮定しましょう。
実務上、会社は年によって使用する会場の大きさを変更するということはしない(毎年同じ開催会場だったりもする)わけです。
つまり、会社は毎年同じような収容人数の会場を用意する、という実務上の慣例から、2つ目の仮定を置きました。
では、以上の仮定を置いた上で、個人株主の出席割合を計算してみましょう。
まず、2つ目の仮定より、東京電力の株主総会の出席人数は毎年9,300人と推定するのは合理的だと思います。
次に、1つ目の仮定より、架空の株主総会を開催したと想定して、計算を行っていきます。
2018年3月末の個人株主の人数は483,100人、2017年9月末の個人株主の人数は497,134人となっています。
そして、2018年3月末の機関投資家株主の人数は3,773人、2017年9月末の個人株主の人数は3,796人となっています。
したがって、2018年6月に開催された株主総会に出席した個人株主の割合は、
(9,300−3,773)÷483,100×100=1.144%、となります。
また、2017年12月に開催された株主総会に出席した個人株主の割合は、
(9,300−3,796)÷497,134×100=1.107%、となります。
よって、東京電力では、毎年、全個人投資家(人数)のうち1.1%強の株主(人数)が株主総会に出席している、と推定できます。
「個人株主は、そのうち1.1%強の割合が毎年株主総会に出席する。」というこの結論が、
全上場企業に普遍的に当てはまる命題かどうかは分かりません。
個人株主のうちどれくらいの割合が株主総会に出席するのかについては、
より直接的な株主総会の出席動機(書面による議決権行使ではなくなぜ会場にまで足を運び会に出席をするのか)を鑑みますと、
株主総会に出席する株主に贈呈するお土産の有無や株主総会後の親睦会の有無等により、
その結論(割合)は大きく変わってくることと思います。
また、個人株主の多い少ないに関しては、個人株主を対象とした株主優待制度の有無もその結論(割合)大きく影響してきます。
さらに言えば、会社が属する業種業界(消費者を顧客としているか企業を顧客としているのか、製造業か卸売業か小売業か等)
によっても個人株主の出席割合は大きく異なると言えるでしょう。

 


以上のように、現実には「個人株主の株主総会への出席割合」には非常に多くの変動要因があるは間違いないわけです。
東京電力とオリックスとでは、業種業界から株主優待制度の有無から、何から何まで相違点がありますので、
「個人株主の株主総会への出席割合」については実際には両社の間で大きな違いがあるとは思います。
単純に考えても、株主優待制度のみが目的の個人株主が増加すれば増加するほど、
「個人株主の株主総会への出席割合」は減少するわけです。
オリックスは、個人株主数が増加する直接的な誘引となりますが、近年、カタログギフトなど株主優待にも力を入れています。
東京電力の「個人株主の株主総会への出席割合」をオリックスにそのまま当てはめることは合理的ではない面は確かにあります。
しかし、ここでは、フェルミ推定ということで、
株主優待制度を目的にした個人株主の中にも株主総会に出席をする株主は平準的に一定割合いる、という仮定を置いてみましょう。
すなわち、オリックスに関しても、「個人株主は、そのうち1.1%強の割合が毎年株主総会に出席する。」
という結論が当てはまると仮定しましょう。
この結論は、完璧に正しいとは言えないまでも、不合理だとまでは言えないでしょう。
そうしますと、オリックスに関して計算をしますと、
2018年3月末の株主総数は299,722人であったわけですが、記事によりますと、うち個人株主は297,200人であるとのことです。
すなわち、2018年3月末の機関投資家の人数は2,522人であるわけです。
ここ5年間で株主総数が増加した要因は、個人株主を対象としたカタログギフトなど株主優待に力を入れた結果でありますから、
株主総数の増加人数は全て個人株主である(機関投資家はこの間増加していない)、と推定をすることができます。
一般的に言っても、機関投資家の人数は、短期間には増減はしません。
そうしますと、「個人株主は、そのうち1.1%強の割合が毎年株主総会に出席する。」という結論から
各年度の個人株主の株主総会への出席人数を割り出しますと、次のようになります。

2014年6月開催の株主総会 → (50,994−2,522)×1.1%=533人
2015年6月開催の株主総会 → (94,244−2,522)×1.1%=1,009人
2016年6月開催の株主総会 → (178,573−2,522)×1.1%=1,936人
2017年6月開催の株主総会 → (227,666−2,522)×1.1%=2,477人
2018年6月開催の株主総会 → (299,722−2,522)×1.1%=3,269人

個人株主の増加人数(5万人だ10万人だ20万人だというオーダー)から見ますと、
株主総会へ出席する個人株主の増加人数(500人、1000人、2000人というオーダー)は少ないと一見感じてしまいます。
「1.1%」という割合がそう感じさせるわけです(実は私も一瞬、「あれ?人数があまり増加しないな。」と思ってしまいました)。
しかし、「株主総会を開催する会場を用意する。」、という実務上の事務手続きからこの増加人数を見ますと、
これは現実には対応していくのが非常に難しい増加人数だ、ということが分かります。
会場の収容人数は、一般的には、500人であったり1,000人であったり2,000人であったりであるわけです。
3,000人を収用できる会場ですら、日本にそう多くはないと思います。
2018年6月開催の株主総会を招集する時は、前年度の株主総会よりも1,000人以上多くの人数を収容できる会場を用意しないと、
個人株主の株主総会への出席人数の増加に対応できない、ということになります。
なぜならば、個人株主だけで約800人株主総会への出席人数が増加すると推定できるからです。
オリックスは、2017年3月末から2018年3月末までの間に、個人株主が7万人以上増加しているわけですが、
実務上は、その増加にあわせ、株主総会に出席をする個人株主の人数も急増する、と推定しなければならないのです。

 



オリックスだけに会場の「リース」は慣れている(借りる側ですが)のかもしれませんが、
出席希望者が会社が用意した会場の収容人数を超えてしまいますと、当日会場に入場できない株主が現実に生じてしまいます。
その時、万が一会場に入れなった株主は、オリックスに対し、
"Don't leave me."(俺を残すんじゃない。)と、入場を申請することでしょう。
"I am just a shareholder."(俺は株主なんだ。)と会場に入場することを強く主張することでしょう。
"Could you please make arrangements for another place for the meeting immediately?
If it is a distance away, how about by way of a broadcasting satellite?"
(すぐに別の会場を手配していただけませんか。少し離れているのなら、放送衛星を通じてというのはどうでしょう。)
と、会場が別になってもよいから何とか株主総会に参加をしたいと主張する株主もいることでしょう。
あいにく近くに別の会場を手配できず、少し離れた場所にある会場を第2会場として株主総会を催すことになったわけですが、
移動することになった株主は不慣れな土地で場所が分からないため、会社側に、
"May I borrow a car navigator?"(カーナビ貸してくれませんか。)と主張することでしょう。
美人な(great beauty)受付嬢が対応してくれて、
"This is a product of superior quality."(この製品は上玉です。)
と言ってカーナビを株主に渡すことでしょう。
"Hi, I owe an investment trust."(あの、私投資信託負っているんですが。)と、
自分が負っている受託者責任を果たせないからと、会社側に強く主張する株主もいることでしょう。
最後の台詞があの「東進ハイスクール」という名称の由来です、というのは冗談です。
上玉、ではなく、冗談は置いておいて、
オリックスのウェブサイトを見てましたら、紹介しています「定款一部変更に関するお知らせ」というプレスリリースがありました。
ここ5日間、定款は会社制度上廃止し登記に一本化するべきだ、と書いたわけですが、
登記と有価証券報告書には社会制度上類似点がある、という点についても考察を行ったかと思います。
その考察の中で、「有価証券報告書を官報販売所で販売するのは法理的には間違いだ。」と昨日指摘しました。
この点について考えていますと、今日さらに別の論点に気付きました。
それは、「有価証券報告書は、発行者ではなく、会計監査人が当局に提出するものだ。」という理論上の結論です。
投資家保護を軸とした証券制度を鑑みますと、理論的には、発行者が有価証券報告書を当局に提出するのは、
矛盾とまでは言いませんが性善説に立った考え方であり、さらに、
会計監査人が有価証券報告書(正確に言えば「監査報告書」)を発行者に提出するのもまた、
矛盾とまでは言いませんが性善説に立った考え方なのです。
性悪説に立って考えますと、発行者が監査報告書を偽造する恐れが考えられるわけです。
会計監査人が監査を行った有価証券報告書を直接に(誰の手も経由することなく)投資家は閲覧する、
という状態が証券制度上担保されていなければならないのです。
したがって、理論的には、会計監査人は、
有価証券報告書(厳密には「監査報告書」)を発行者にではなく当局に提出しなければならないのです。
この論点に関する関係図を描きましたので参考にしていただければと思います。

「元来的・理論的な有価証券報告書の提出経路」

 



Institutional investors generally attend a meeting of shareholders, whereas personal investors generally don't.

機関投資家は通常株主総会に出席しますが、個人投資家は通常株主総会に出席しません。

 

Investors in the market peruse not only a securities report but also a corporate registration.

市場の投資家は、有価証券報告書だけではなく、商業登記簿謄本(登記事項証明書)も精読します。

 

Personal investors occupy 99.16% of all the shareholders in name,
whereas they own only 7.6% of all the voting rights of the company.

個人投資家は名義上全株主の99.16%を占めているのですが、会社の総議決権の7.6%しか占有していません。

 

Originally, a legal disclosure document such as a securities report used to be submitted
to the securities authorities directly by an accounting auditor.

元来的なことを言えば、有価証券報告書のような法定開示書類は、かつては会計監査人が証券当局に直接に提出をしていました。

 

Originally, a securities report didn't use to be delivered to investors in the market by way of any person.
Originally, a securities report didn't use to be delivered to investors in the market by way of even an issuer itself.

元来的なことを言えば、有価証券報告書は、かつては誰を経由することもなく市場の投資家の手に届いていました。
元来的なことを言えば、有価証券報告書は、かつては発行者自身を経由することすらなく市場の投資家の手に届いていました。

 

A legal mind in the securities investment world means
that you regard none of the interested parties including an issuer itself as trustworthy.
In the legal world, not trusting a person is a good thing.

証券投資の世界における法律の考え方とは、発行者自身を含む利害関係者の全員を信じない、ということなのです。
法律の世界では、人を信じないことは善なのです。