2018年5月25日(金)



最近の67日間のコメントを踏まえた上で、「定款の変更」に関するプレスリリースを2つ紹介し、
「定款」の旧商法における位置付けと現会社法における位置付けの相違点について参考資料を紹介し、
ここ3日間のコメントに一言だけ追記をしたいと思います。

 


2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年5月24日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201805/20180524.html

までの一連のコメント

 


現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント

2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html


 



2018年5月25日
株式会社JCU
定款一部変更に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1592911

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2018年5月25日
藤倉ゴム工業株式会社
商号の変更および定款の一部変更に関するお知らせ
ttp://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS07330/be0dae5b/99ab/416d/b515/de8c91df90c4/140120180521442734.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




誰でも見れるわけではない??定款の閲覧について
(シルスフィア税理士事務所 2016年7月7日)
ttp://silsphere.jp/archives/3637

 


上場会社の定款の閲覧
(大和総研 2006年12月6日)
ttps://www.dir.co.jp/report/research/law-research/law-others/06120601commercial.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




会社・法人登記関係の手数料について(法務局)
ttp://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-2-1.html

 



昨日は、「定款」と「登記事項」の相違点について、次のように書きました。
「定款は会社の内規の1つに過ぎない一方、登記事項は縦覧に供される。」
「定款は人に見せるものではない。」
今日改めて、この点について考えを深めてみようと思い、「定款 閲覧」というキーワードで検索してみました。
すると、数多くの解説記事がヒットしました。
定款の閲覧に関する結論を一言で言えば、「会社法上、株主や会社債権者には定款の閲覧請求・謄写請求権がある。」となります。
定款は、会社法制度上は、社外の利害関係者が閲覧することを前提としているようです。
しかし、紹介している大和総研の解説記事「上場会社の定款の閲覧」を読んで思ったのですが、
旧商法では、定款は社外の利害関係者が閲覧することを前提とはしていなかったのではないかと思います。
旧商法に株主や会社債権者に定款の閲覧請求・謄写請求権があったのかどうかは確認していません(改正の歴史もあるでしょう)が、
理詰めで推論すれば、株主や会社債権者に定款の閲覧請求・謄写請求権はなかったと思います。
なぜならば、株主や会社債権者は、法務局を訪れ登記事項を閲覧することができたからです。
逆から言えば、登記事項は定款の定めの全てを含むものでなければならない、ということが理論上言えるわけです。
定款のことを「会社の憲法」と表現することがありますが、株主や会社債権者は当然に会社の根本規則である「会社の憲法」を
自由に閲覧できなければならない(安全に取引をするために)わけですが、利害関係者への情報開示という観点から言えば、
会社の根本規則である「会社の憲法」は、定款ではなく、登記事項そのものだ、と考えなければならないわけです。
取締役会規約や就業規則等々、会社の内規は会社の内規ということで社内には社外秘の諸規則があってもちろんよいわけですが、
利害関係者に大きな影響を与える根本規則の部分(「会社の憲法」)(資本の状況や組織設計や会社機関等々)は、
登記という形で社会一般に開示をする(縦覧に供する)、ということが求められるわけです。
利害関係者は、登記事項を閲覧した上で、会社と取引を行うことについて判断をすればよいわけです。
登記ということから議論を進めると、昨日も書きましたように、現行の定款そのものを廃止するべき、という結論になるのです。
仮に、「会社の憲法」を本店及び支店に備え置くことを会社法上会社に義務付けるとするならば、
その据え置くべき根本規則は、現行の定款ではなく、登記事項(商業登記簿謄本、登記事項証明書)ということになるわけです。
ただ、登記事項(商業登記簿謄本、登記事項証明書)は、細かいことを言えば公文書(登記官が作成するから)ということになります。
公文書の入手場所は、法理的には、役所(市役所や法務局等)だけということになります。
私人から公文書を交付される、という考え方はないわけです。
したがって、登記事項(商業登記簿謄本、登記事項証明書)は法務局でしか入手できない、という考え方に法理上はなります。
それから、これは厳密に言うと公文書ではないのでしょうが、例えば証券取引法(金融商品取引法)上の有価証券報告書は、
財務局で(財務局でのみ)閲覧ができた(一応今でもできる)わけですが、当時、閲覧手数料はかかったのでしょうか。
というのは、商業登記簿謄本と有価証券報告書は制度上の位置付けが概念的に非常によく似ているな、と思ったからです。
前者は主に債権者保護、後者は主に投資家保護という制度上の違いがあるだけで、
公務員が役所で会社に関する間違いのない情報を利害関係者に提供する、という社会的役割に違いはないわけです。
「この有価証券報告書は間違いなく発行者が作成・提出した有価証券報告書です。」、という社会的保証がそこにはあるわけです。
商業登記簿の閲覧に手数料がかかるのならば、有価証券報告書の閲覧に手数料がかかってもおかしくはないわけです。
逆から言えば、現在ではEDINET上で有価証券報告書は無料で閲覧できるということであるならば、
法務局の情報提供サイトで商業登記簿謄本(登記事項証明書)は無料で閲覧できる、という社会的状態であるべきだと思いました。

 


最後に、昨日の議論の補足をしたいと思います。
今日改めて「発行可能株式総数 絶対的記載事項」というキーワードで検索をしてみたのですが、
改正内容に関する解説や報道等はないのですが、2013年〜2015年の間に会社法が改正されたのは間違いないように思いました。
現行条文上は、一応(消去法的に)、「発行可能株式総数」は「任意的記載事項」という位置付けに整理されるようです。
現行条文上は、「発行可能株式総数」は、第二十七条(絶対的記載事項)にも第二十八条(相対的記載事項)にも該当しない
と解釈される以上、そう整理されるかと思います。
第二十九条が「任意的記載事項」に該当する、ということだと思います。
第三十七条を読みますと、「発行可能株式総数の定めを設けなければならない。」と定められていますので、
「発行可能株式総数」は現在でも「絶対的記載事項」の1つであるとも解釈できるのですが、
「定款の記載事項の種類」という観点から会社法を見ますと、
「定款の記載事項の種類」は第二十七条(絶対的記載事項)と第二十八条(相対的記載事項)と第二十九条(任意的記載事項)
の3種類に分類できるわけです。
「定款の記載事項の種類」という観点から条文を忠実に解釈しますと、
現行の条文上は、「絶対的記載事項」は第二十七条に列挙されている5項目のみ、
「相対的記載事項」は第二十八条に列挙されている4項目のみ、という解釈になると思います。
「相対的記載事項」の項目・範囲に関しては、次のような解説サイトがありました↓。


定款A 相対的記載事項
(会社法の条文と解説Web)
ttp://home.lifeplan-japan.net/index.php?%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E7%9A%84%E8%A8%98%E8%BC%89%E4%BA%8B%E9%A0%85

>相対的記載事項には、変態設立事項のほかに
>○株式の譲渡制限に関する規定
>○株主総会の招集通知を出す期間の短縮
>○役員の任期の伸長
>○株券発行の定め
などがあり、これらを決定した場合は定款に記載しなければ効力が認められません。


しかし、現在の会社法の条文(第二十八条)を見る限り、
「相対的記載事項」にはいわゆる変態設立事項しかない、と解釈できると思います。
定款の記載事項に関する会社法の定めが整理されていない(どちらとも分類不可能なもしくは複数に解釈可能な項目が多々ある)、
ということではないかとも思いました。
もしくは、旧商法の定款の記載事項に関する定めが会社法になって変更になり、新旧法律間で整合性がなくなったなどの理由で、
旧商法の定めを各種解説サイト等では引きずっている、ということだと思います。
簡単に言えば、旧商法の規定では、変態設立事項以外にも「相対的記載事項」があった、ということだと思います。
条文上は、現行の会社法では、「相対的記載事項」は変態設立事項のみとなった(すなわち、限定列挙された4項目のみとなった)、
と整理・解釈するべきだと思います(ただ、会社法の条文が整理し切れていない部分もやはりあるのだろうと思います)。

 



Let's forget "articles of incorporation."
What is truly essential as a rule is not "articles of incorporation" but a "registration."
It is not "articles of incorporation" but a "registration"
that can be said to be a "constitution of a company," actually.
A "registration" is exactly a "constitution of a company.
A "registration" is exactly a fundamental rule of a company.
We should think that a change of a part of a "registration" requires a resolution of a meeting of shareholders.
From a viewpoint of a legal mind, not "articles of incorporation" but a "registration" composes a company.
Under the old Commercial Code, it doesn't use to be necessary for a company to keep "articles of incorporation"
at the head and the branch office, but it is quite natural.
For a stakeholder of a company visits a Local Legal Affairs Bureau and peruses a "registration" of the company there.
A "registration" should naturally include all of the items specified in the "articles of incorporation."

「定款」のことは忘れましょう。
規則として真に本質的なのは、「定款」ではなく「登記事項」の方なのです。
「会社の憲法」だと言うことができるのは、「定款」ではなく、実は「登記事項」の方なのです。
「登記事項」がまさしく「会社の憲法」なのです。
「登記事項」こそが会社の根本規則なのです。
「登記事項」の一部変更のためには株主総会決議が必要だ、と考えるべきなのです。
法律的な考え方から言えば、「定款」ではなく「登記事項」こそが会社を構成している(会社の基礎をなしている)のです。
旧商法下では、会社は本店と支店に「定款」を備え置く必要はなかったのですが、それは当然のことなのです。
というのは、会社の利害関係者は、法務局を訪れそこで会社の「登記事項」を閲覧するからです。
「登記事項」は「定款」に記載される全ての事項を当然に含んでいなければならないのです。

 

A securities report is to a Local Financial Bureau
what a certified copy of a corporate registration is to a Local Legal Affairs Bureau.
The latter document is for the sake of stakeholders in general,
whereas the former document is for the sake of, particularly, investors in the market.

有価証券報告書と財務局の関係は、商業登記簿謄本と法務局の関係と同じです。
後者の文書は利害関係者全般のためのものである一方、前者の文書は特に市場の投資家のためのものなのです。

 

Judging from these various explanations, each provision and the interpretation of the old  Commercial Code
seem still to linger on among the old profound professionals.

これらの様々な説明から察すると、旧商法における各条文と解釈は高齢の学識の深い専門家の間に今なお残っているようだ。