2018年5月17日(木)


最近の59日間のコメントを踏まえた上で、株式会社における「委任」について一言だけコメントを書きたいと思います。

 


2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年5月16日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201805/20180516.html

までの一連のコメント

 


現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント

2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 


会社法に関する論点として、定款に記載する「目的」という事項について考えさせられるプレスリリースがありました↓。


2018年5月17日
ブラザー工業株式会社
定款一部変更に関するお知らせ
ttp://download.brother.com/pub/jp/news/2018/180517_2.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



一言で言えば、会社の事業内容に変更は一切ないにも関わらず、さらには、将来的に事業内容の多様化を考えているにも関わらず、
定款に記載する「目的」を減少させる(現行定款第2条(事業目的)の全28項目を14項目に統合・整理する)、という内容です。
提案されている変更案を見ますと、事業内容の種類(条文数)が半分になっており、文言も非常に短くなっています。
また、実務上はほとんどの会社の定款に記載があるのではないかと思うのですが、
「前各号に付帯又は関連する一切の業務」というお決まりの包括表現も定款の「目的」の最後に記載されています。
こうなりますと、定款に記載されている「目的」というのは何を表しているのか分からなくなるなと思ったわけです。
考えてみますと、定款に記載されている「目的」というのは、結局のところは自己紹介(会社紹介)に過ぎないのだろう
と思ったと言いますか、定款の効力としては「目的」に実質的意味はないのだろうと思いました。
定款は会社の根本規則ではあるものの、他の定款の記載事項と比較すると、
「目的」の記載内容はその意味や対象や範囲等の定めが漠然としている(実務上は漠然とならざるを得ない)わけです。
商号があいまいな会社はありませんし本店所在地があいまいな会社はありませんし発行可能株式総数があいまいな会社もないわけです。
定款に記載される事項の中で、「目的」だけがあいまいで幅があり、また、実務上は限定的に定めようがない事柄であるわけです。
取締役と会社との間の委任契約で、事業内容(目的)についても定める形で、会社の現金の使途(投資内容)に制限を課する、
ということを実務上は行う(取締役に委任をする内容・事柄を定款記載の「目的」に限定する)のだろうと思うのですが、
これは株式会社の原理にまで遡る話になるのですが、「委任」と「代理」はどのように異なるのだろうかと改めて思いました。
「委任」と「代理」は非常に類似している概念のものだと思うのですが、
「代理」は「これこれを行ってください。」と「代理」の範囲が極めて明確かつ限定的であるのに対し、
「委任」は一定の範囲の事柄について何か包括的なところがある、という相違点があるように思います。
民法の教科書を読みますと、実務上は、委任者は「委任状」を作成し代理人に「代理」を行ってもらう、
という形になるようですので、基本的には、「委任」により「代理」を実現する、という関係になるのだろうと思います。
しかし、株式会社の場合は委任者が会社という法人ですので、会社を代表して委任状を作成する人が別途必要であるわけですが、
会社のその代表者はまさに受任者その人ということになるわけです。
実務的には、創立総会で選任された取締役が会社の代表者となって委任状(委任契約書)を作成し、
会社を委任者、取締役を受任者とする委任契約を締結する、ということになるのだろうと思います。
自然人の名称としては、委任者と受任者が同じという場面も必然的に生じるわけです。
委任者と受任者が同一人物というのも妙な話であるわけですが、法人と自然人との間の委任ですので、
法律上はおかしくはないわけです。
ただ、会社制度上は、少なくとも株主(出資者)が委任契約の委任者(委任契約書の作成者)になるわけではない、
ということだけは確かであるわけです(株式会社における委任者は会社であるわけです)。

 


以上のようなこと考えていましたら、真の委任者や手続き上の委任者は誰か、という点について整理をするのが難しく、
これは会社設立時にまで話が遡るなと思いました。
それで、会社法の教科書から、会社の設立に関するフローチャートをスキャンして紹介したいと思います。


「株式会社の設立手続き」

実際に法務局に赴き、法務局で設立登記を行うのは、「発起人」ではなく、「設立時取締役」では?
法律上の会社の成立は確かに設立登記の時からだが、
創立総会を期に、一連の手続きの主導者が変わる(発起人が創立総会で消える)、ということでは?
簡単に言えば、会社の代表者が法務局で会社の設立登記をする、ということでは?
発起人は会社の代表者ではない、ということでは?


創立総会で選任をされた設立時取締役は、発起人が作成し公証人から認証を受けた定款を手にして、法務局に赴き設立登記を行う、
ということになるのだと思います。
つまり、発起人が法務局に赴き設立登記を行う、というわけではないのだと思います。
法律上の会社の成立という意味では、設立登記が絶対的であると思うのですが、
会社設立における発起人の役割というのは、創立総会で終わる、ということではないかと思います(創立総会が"critical"(決定的))。
すなわち、発起人は、創立総会の終結をもって、一出資者になる(それ以上設立にも関与しない)、ということではないかと思います。
創立総会後は、設立登記も含めて、会社の業務執行の全般が設立時取締役に委任される、ということではないかと思います。
実務上は、設立時取締役は、定款に記載された「目的」に沿って、会社と役員との間の委任契約書を作成するのだと思います。
ただ、その点について創立総会で発起人が設立時取締役に委任や約束をすることはないので、そこは信頼関係だと思います。

 

The item "purposes" specified in articles of incorporation is no more than a self-introduction.
It has nothing to do with a trust contract between an officer and a company in the final analysis,
and therefore it doesn't bind execution of operations of a company.
Extremely speaking, binding usage of cash of a company contradicts trust.

定款に記載されている「目的」という事項は、自己紹介に過ぎません。
「目的」は、煎じ詰めれば、役員と会社との間の委任契約とは関係がありませんし、
したがって、会社の業務執行を拘束しないのです。
極端なことを言えば、会社の現金の使い方を拘束することは委任と反駁するのです。


Which person actually visits a local legal affairs bureau and actually makes registration of incorporation there,
an incorporator or a director at incorporation?

発起人と設立時取締役のうち、どちらの人物が実際に法務局に赴き実際に法務局で設立登記を行うのですか?