2018年5月10日(木)



最近の52日間のコメントを踏まえた上で、「会社制度と証券制度との関係」について、一言だけコメントを書きたいと思います。

 

2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年5月9日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201805/20180509.html

までの一連のコメント

 


現物取引と先渡取引と先物取引の相違点について書いたコメント

2018年3月12日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180312.html

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 

 



昨日は、前半は、土地公有制と税制との関係についてコメントを書きました。
「土地公有制=土地の譲渡益は非課税」であり「土地私有制=土地の譲渡益は課税対象」という関係にある、と書きました。
土地公有制において、土地の所有者が国に土地を返還するという時、
土地の所有者は所得を稼得することを目的に国に土地を譲渡するわけではないわけです。
土地の所有者は、単に土地を国に返還する義務があるからこそ、国が決めた価格で土地を国に譲渡するわけです。
この時、土地の所有者に所得を稼得する意図・目的は一切なく、所有者は現代流に言えば借りた物を返しただけであるわけです。
簡単に言えば、土地の所有者は「借りた時と全く同じ物を返した」(別の物を返したわけではない)という状況であるわけですから、
土地を貸した国は土地の返還時には「貸した時に受け取った物と全く同じ物」を土地を借りた人に返せばそれでよいわけですが、
国としては経済発展の度合いや潜在的な需要状況などに合わせて土地の価格を適宜決めていきたいと思っているわけです。
そうしますと、国家的な大きな視点から見ますと、国としては、特段貸した時よりも大きな金額を借りた人に返したつもりはない、
というような見方になるのではないでしょうか。
マクロ経済的な物価の上昇分を鑑みれば、貸した時の土地の金額と返還時の土地の金額とはイコールだ(同じ物の受渡に過ぎない)、
という見方になるのではないかと思いました。
会計や税務では、本来的にはインフレというのは考慮しない(表面上の・字面の数値で計算を行うのみ)わけなのですが、
土地に関しては、表面上の・字面の数値は異なるものの、変則的な”等価交換”を行ったもの、という考え方になると思います。
また、土地の譲渡益は非課税とすることで、資産形成の一助とするという思惑も別途あったりすると言えると思いますが。
いずれにせよ、借りた人は同じ目的物を国に返したのだから、国としても”同じ物”を借りた人に返した、
という考え方になるのだろうと思いました(国としては、「この金額を返すことで”等価交換”なのだ。」、と)。
国への土地の返還はあくまで”等価交換”であり、また、返還者に所得を稼得する目的はないことから(義務を履行しただけ)、
土地公有制においては土地の譲渡益は非課税であったのだと思います。
土地の国への返還は変則的な”等価交換”であった(”等価交換”なので差額は所得ではない)、と考えるべきだと思います。
額面金額100円の国債を国から100円で償還してもらった、ということと全く同じだと考えればよいと思います。
取得時と比較し返還時には「土地の額面金額が変わった。」、と考えることもできると思います。

 

The difference has not accrued.
The face value of the land has changed.
So, it's just an exchange of equal value.

差額が生じたのではない。
土地の額面金額が変わったのだ。
だから、等価交換に過ぎないのだ。

 


次に、昨日の後半で書きました「譲渡制限付き株式」について一言だけ追記をしたいと思います。
今日の日本経済新聞の一面の最下部の書籍類の広告の欄に、次のような広告が載っていました↓。


2018年5月10日(木)日本経済新聞
週刊 税務通信
(記事)


2018年5月10日(木)日本経済新聞
税経通信 2018年6月号
(記事)



週刊税務通信の今週号(毎週月曜日発行)の「特集」記事は「譲渡制限付株式を活用した事前確定届出給与」ということで、
私は昨日「譲渡制限付き株式」について書いたわけですが、今日広告を見て大変驚きました。
どのような記事なのだろうかと雑誌のウェブサイトを見てみたのですが、サイト上には残念ながら内容はないようでした。

週刊 税務通信(税務研究会)
ttps://www.zeiken.co.jp/mgzn/tusin/

県立図書館や大きな市立図書館に行けば、雑誌を見ることができるのかもしれないなと思いました。
詳しい記事の内容は分かりませんが、見出しから判断しますと、従業員(被雇用者)が給与として受け取る自社株式について
売却期日や売却方法などを予め確定させて税務当局に届出をすると、会社にとっては株式により支払う給与が損金になる、
といったようなことが解説されているのではないだろうかと思いました。
税法分野の話ですので、私が昨日書きましたようなインサイダー取引の懸念を払拭するための事前確定というのは、
記事の解説では論点になっていないのではないだろうかと思います。
つまり、金融商品取引法は論点となっていない解説記事なのではないかと思います。
同じ「譲渡制限付株式」による報酬(給与)でも、論じられている分野は異なっていると思います。
また、税経通信の2018年6月号の特集記事の見出しは、"将来的な「空き家」いつ売却する?不動産譲渡の特例と時期を見極める"、
となっていまして、これは土地ではなく建物部分についての取り扱いの解説なのだと思いますが、
不動産の譲渡ということで、土地の譲渡と一定度の関連がある論点だと思いました。
税法に関する週刊誌や月刊誌がたくさんあるなと思いました。


税経通信 2018年6月号(税務経理協会)
ttp://www.zeikei.co.jp/book/b369737.html





最近よく紹介しています金融商品取引法の教科書に、私が昨日書きましたコメントに関連する論点が載っていましたので
スキャンして紹介したいと思います。
26〜29ページに、経営者や従業員に株式や新株予約権を付与することについて解説されています。
また、昨日は、会社が株式を役員や従業員に報酬として支払うことには、コーポレート・ガバナンス上のメリットはあるのだが、
同時に、証券制度上の決定的なディメリットもある、と書きましたが、
31ページの「【コラム】会社法と上場規則の関係」に非常によく似た内容のことが書かれているなと思いました。
このコラムは、非公開企業であれば問題はないのだが上場企業では認められない行為がある、といった趣旨になっています。
一言で言えば、株式の譲渡が可能な会社では、そうではない会社に比べて、保護を施すべき利害関係者が必然的に増えるのです。

 

「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)


第1章 コーポレート・ガバナンス

1. コーポレート・ガバナンスとは何か
(4) コーポレート・ガバナンスとコーポレート・ファイナンスとの関係
エクイティ報酬と従業員持株会

2. 直接的モニタリング
(1) 議決権行使の仕組
一株一議決権原則の変容
【コラム】会社法と上場規則の関係
【コラム】グーグルの多議決権株式
株主総会と取締役会の権限分担
取締役の選任・解任方法
委任状勧誘制度と経営者支配
機関投資家の役割と株主提案権
「26〜27ページ」 

「28〜29ページ」 

「30〜31ページ」 

「32〜33ページ」

「34〜35ページ」 

「36〜37ページ」 

 


The merits on the corporate governance are one thing. Those on the securities system are another.jpg

コーポレート・ガバナンス上のメリットというものはあるのですが、証券制度上のメリットというのはまた別なのです。

 

Plainly speaking, the principle that sovereignty of a company resides in shareholders contracts
the principle that executing operations of a company is entrsuted to the board of directors.
In other words, the shareholder sovereignty contradicts the management control.

端的に言って、会社の主権は株主に属するという考え方と会社の業務執行は取締役会に委ねるという考え方は反駁するのです。
他の言い方をすると、株主主権と経営者支配は反駁するのです。

 

Ultimately, the ultimate in the ultimate is that a voting right contradicts trust.

究極的なことを言えば、究極の究極は議決権と委任は反駁するということなのです。

 

But, when shareholders found a company, they don't entrust directors
with items which make the foundation of a company change fundamentally,
for example a change of articles of incorporation and corporate reorganization such as mergers.
Therefore, a voting right is actually necessary for secondarily entrusting directors with such matters.
In this context, the term "secondarily entrust" above means "approve of a proposal for a specific item" in practice.

しかし、株主が会社を設立する時には、定款変更および合併のような組織再編など、
会社の基礎に根本的変動を生ずるような事項については株主は取締役に委任をしたりはしないのです。
したがって、そのような事項について取締役に補助的に委任をするために現実には議決権が必要なのです。
この文脈においては、実務上は上記の「補助的委任」は「特定事項のための議案を承認する」という意味になります。