2016年11月27日(日)



2016年11月27日(日)日本経済新聞
高層マンションの固定資産税 40階、1階の1割高 総務省検討
(記事)






不動産の価格や高層マンションに対する固定資産税の税制改正についての過去のコメント

2016年10月23日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201610/20161023.html

2016年10月24日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201610/20161024.html

2016年10月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201610/20161025.html

 


【コメント】
記事には、税制改正によりより高い階ほど固定資産税が高くなるようにする、という点について、

>40階建てのマンショなら、最上階は1階より10%程度高くする。

と書かれています。
”10%高い”とはこの場合どういう意味なのだろうか、と思ったのですが、記事には40階建てマンションの例が挙げられており、

>1階が約19万円。階が上がるごとに額が増え、40階では21万円になる。

と書かれていまして、”10%高い”とはそういう意味かと意味が分かったところです。
ただ、やはりこのたびの高層マンションに対する固定資産税の見直しは話はそれほど簡単ではないと思います。
現在は何階でも床面積が同じなら税額も同じ、となっているわけですが、
実際には、どの階・どの部屋でも床面積が同じ、ということはないわけです。
実務上の一般的傾向として、高い階ほど販売価格が高い、というようなことは言えますが、
実際には、同じマンション(同一建物・同一棟)の中でも「部屋のタイプ」は複数あるわけです。
つまり、販売されているマンションの中に「部屋のタイプ」(間取りや床面積等)が5つも6つも用意されているわけです。
そして、その間取りや床面積によって、部屋の価格が大きく異なるわけです。
同じ階でも、タイプAの部屋よりタイプBの部屋の方がはるかに販売価格が高く、
また、同じタイプAの部屋なら高い階の方が販売価格が高い、といった具合に販売価格が設定されているわけです。
さらに、10階のタイプCの部屋の方が20階のタイプDの部屋よりも販売価格が高い、ということもあるわけです。
このたびの高層マンションに対する固定資産税の見直しでは、各部屋の床面積は同じであることをどこか前提にしているといいますか、
固定資産税は床面積に比例することを前提にしている(現在はそのような税額の決定方法となっている)わけですが、
実際には、同じ階・同じ床面積でも、部屋の販売価格は南向きか否かや間取りなどにより大きく異なっているわけです。
ですので、結局のところ、床面積や何回の部屋かで固定資産税額を決定するのではなく、
単に「販売価格」(=所有者の購入価格)で固定資産税を決定するようにすればよいのではないかという気がします。
結局、販売価格が資産価値、ということではないでしょうか。
ここは一等地(ネームバリューや人気度が高い)だから販売価格が安くても資産価値としては高い、などという理屈はないでしょう。
理論的には、一等地(ネームバリューや人気度が高い)であることが、資産の販売価格に反映されるはずです。
それから、固定資産税と相続税とでは課税標準が同じであるため、高層マンションの高層階の部屋を購入することが
相続税の節税策として使われている、と記事には書かれていますが、節税効果が高いのは建物を所有することそのことだと思います。
なぜなら、建物は、ただ単に所有しているだけで購入金額の全額が減価償却手続きにより規則的に損金となるからです。


The mere fact that a person owns a building itself is
the most effective countermeasure to reduce the total amount of his taxes.

建物を単に所有しているという事実そのことが、トータルの納税額を削減する最も効果的な対策なのです。

 


税制改正と言えば、酒税も改正点の1つに挙げられているかと思いますが、
酒税について、次の記事を題材に一言だけコメントします↓。


発泡酒は泡と消える? ビールと税率統一へ
(J-CASTニュース 2016/11/27 14:00)
ttp://www.j-cast.com/2016/11/27284207.html

 


酒税に関する過去のコメント

2016年11月20日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201611/20161120.html

2016年11月21日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201611/20161121.html

 


記事の本文は非常に長いですので、コメントの題材として、
日本のビールに課せられる酒税の高さに関する国会での閣僚の発言部分のみ引用します。

>「ビールを外税で売ったら、まず誰も買うやつはおらぬだろうなと思うぐらい。
>あれは内税だからみんなだまされて飲んでいるんだよ。
>外税だったら、何だ、こんなに税金かよと思ったら、飲まぬよ、あんなものと思うぐらい高い、簡単に言えば」

簡単に言えば、「ビールは内税で売っているから売れているのであり、外税で売ったら税額が高過ぎて誰も買わないだろう。」、
というのが発言の主旨になります。
しかし、この考え方は間違いです。
日本のおけるビールに課せられる酒税が諸外国に比べて非常に高いのは確かですが、酒税に外税や内税という概念はありません。
内税と外税の違いは、ビールの価格に酒税が含まれて表示されているのか含まれずに表示されているのかの違いをいいます。
要するに、商品棚に貼ってある値札に、酒税額を含めて表示している場合(言わば総額表示の場合)を「内税」、
酒税額を含めずに表示している場合(言わば本体価格と酒税額をそれぞれ表示している場合)を「外税」、と呼ぶわけです。
「内税」の場合は、酒税額が明示されていないため、消費者からは酒税額がいくらなのか分からない一方、
「外税」の場合は、酒税額が明示されているため、消費者は酒税額がいくらなのか分かる、という違いがあります。
それで、閣僚は国会で先ほど引用した発言をしたのだと思います。
ところが、実は酒税には外税や内税という概念はないのです。
敢えて言うなら、”何税でもない”(外税でもないし内税でもない)と言えるでしょう。
つまり、酒税を外税で表示することもできなければ内税で表示することもできない、と言わねばならないわけです。
なぜならば、理論的には、いかなる場合もビールの販売価格に酒税は含まれていないからです。
酒税は、庫出高により決まります。
販売価格は全く関係ないのです。
ですので、ビールの販売価格に酒税は含まれていないのです。
ビールの製造業者が卸売業者に販売する際の販売価格にも酒税は含まれていません。
なぜなら、酒税はビールの製造業者が負担するものであって、卸売業者や消費者が負担するものではないからです。

 


この点が酒税が消費税とは根本的に異なる点なのです。
消費税は、常に「商品を購入した側」が負担する税です。
「商品を販売した側」は、「商品を購入した側」から単に消費税を預かる(仮受消費税)だけです。
消費税は、「商品を販売した側」が「納付」(注:「負担」ではない)するというだけです。
酒税は全く異なります。
酒税は、常に「商品を販売した側」が、より正確に言えば、常に「製造業者」が、負担する税です。
酒税は、製造業者が負担し、製造業者が納付します。
酒税を、「商品を購入した側」が負担することなどはないのです。
巷の教科書には、酒税は間接税である、と書かれていますが、それは間違いです。
酒税は、負担者と納付者が同じである以上、やはり「直接税」なのです。
ビールの販売価格にはそもそも酒税は含まれていないわけですから、内税表示も外税表示も行いようがないわけです。
酒税法の規定により、ビールの単位当たり(350ml当たり、など)の酒税額は確かに分かります。
ですので、例えば350ml缶であれば「酒税額はいくらいくらだ。」、と酒税額を算出できるように思えるかもしれません。
しかし、その「酒税額」は、実は「製造業者」が負担した酒税額に過ぎないのです。
その酒税額は、消費者には関係がない酒税額なのです。
ですので、ビールの販売価格には酒税は含まれていない、と考えなければならないのです。
これが、酒税には内税表示や外税表示という概念がない理由です。
消費税には内税表示や外税表示があります(消費者が負担するから)が、酒税には内税も外税もないのです。
もちろん、経営上、製造業者は自社が負担した酒税を回収するべく、卸売業者への販売価格に負担額を上乗せしようとするでしょう。
しかし、それは、純粋に商品販売にかかった「営業費用」を販売先への販売価格に上乗せするということと同じなのです。
商品の買い手に分かるのは商品の販売価格のみであって、
売り手の「営業費用」の内訳(商品原価や各種間接費)は分からないわけです。
酒税の場合は、酒税法があるから(酒税法に基づくから)商品の買い手にもその内訳の一部がたまたま分かる、というだけなのです。

 


記事には、酒税の”負担”額について、

>小売価格164円の発泡酒の場合、酒税は47円、消費税12円で、税負担率は36.1%。また、小売価格143円の第3のビールの場合、
>このうち酒税は28円、消費税は11円で、27.0%の税負担率がかかっていることになる(いずれも、350ミリリットル缶)。

と書かれていますが、”酒税額47円”の発泡酒を、例えば40円で製造業者や卸売業者が酒小売店が販売して何ら問題はありませんし、
”酒税額28円”の第三のビールを、例えば20円で製造業者や卸売業者が酒小売店が販売して何ら問題はないのです。
なぜなら、販売価格と酒税額とは関係がないからです。
これらの例の場合、酒類の買い手にとって”酒税の税負担率”は言わばマイナス、ということになります。
一方、消費税理論的には、消費税の場合は、本当に理論的にはですが、
買い手の消費税負担額がマイナス(仮払消費税>仮受消費税)となるような販売というのはできません。
事業者は、必ず「仮払消費税<仮受消費税」となる販売を行わなければなりません。
なぜならば、そうでなければ価値が付加されたとは言えないからです。
商品の価値が増加しないならば消費税理論の根幹が崩れるわけです。
価値が付加されるとは、買い手の消費税の税負担額がプラスだ、という意味です。
そのプラスが付加価値額です。
消費税の場合は、事業者による商品廃棄や値引販売は理論上はできないのですが、
酒税の場合は、事業者による商品廃棄や値引販売は理論上もできます。
その理由は、結局のところ、酒税は税負担の連鎖が製造業者のみで終わっているからです。
一方、消費税は消費者まで税負担が連鎖する形になります。
消費税は消費者まで税負担が連鎖しますので、事業者による商品廃棄や値引販売は理論上はできないのです。
仮に事業者が商品廃棄や値引販売を行った場合は、自己負担、すなわち、その時点でその事業者は消費者という取り扱いになります。
酒税は、製造業者が負担すると始めから決まっています。
しかし、消費税は、結局誰が消費税を負担するかは商品が消費されるまで(言わば「次に販売されないまで」)分からないのです。
消費税では、商品が次に販売されなかったら、その人が消費者なのです。
酒税と消費税は、税体系・課税関係・税の認識方法(誰が税を負担するのかの決定方法)が根本的に異なる、
と言わねばならないのです。