2016年11月20日(日)



2016年11月20日(日)日本経済新聞
ビール系税額 26年統一 ビール1缶22円減 「第三」は消滅へ 激変緩和へ3段階で実施
(記事)


 



【コメント】
この記事を読みますと、いわゆるビール系飲料に課税される酒税額が今後統一されるということで、
要するところこの記事は酒税法の改正(酒税の税制改正)についての記事なのではないか、と思われると思います。
基本的には確かにその通りなのですが、ビール系飲料に関する酒税の改正については、少し多面的な見方をしなければならない
と言いますか、他の税目とは少し異なる「酒類」特有の捉え方をしなければならない(そうでないと、この記事を読み誤る)、
と思いましたので、この記事の内容について一言だけ書きます。
記事には、最終的には2026年にいわゆるビール系飲料に課税される酒税額が統一されると書かれてあり、
それに伴い「第三のビール」が消滅する、と書かれていますが、
実は2026年の税額統一後も「第三のビール」は消滅しません(2026年以降も「第三のビール」は生産され続けます)。
それはどういうことかと言いますと、結局のところ、この記事で言っているのは、
「ビール系飲料3種類に課税される酒税法上の酒税額が2026年に統一される(2026年に同じ税額になる)」という意味であって、
「ビール系飲料3種類」そのものが変更になるという意味ではないからです。
2026年10月以降も、「ビール」、「発泡酒」、「第三のビール」はどれも生産され販売され続けます。
要するに、商品そのものは変わらないのだが、課税金額だけは同じになる、と記事では言っているわけです。
ですので、2026年の税額統一後も「第三のビール」は消滅しないのです。
「いや、今は酒税法の話をしているのではないか。」、と思われるかもしれませんが、それでもこの点の記事を理解する上で重要です。
この点に関しては、記事にも記載がありますので、引用してコメントします。
記事には、酒税法の改正に関して次のように書かれています。

>税額統一にあわせ、ビールの定義も見直す。
>税法上の第三のビールという商品区分を無くし、ビールと発泡酒は残す。
>新たに麦芽比率や原料によって2つの商品を定義する指針を作る。

ここだけを読みますと、「やはり、2026年の税額統一後は『第三のビール』は消滅するということではないか。」、
と思われるかもしれませんが、結局のところはその捉え方は間違いなのです。
なぜならば、2026年以降も、現在酒税法上「第三のビール」として定義されているビール系飲料はやはり生産され続けるからです。
「商品区分」としては表面上「第三のビール」は消滅する(文言としては条文や指針等に出てこなくなる)のですが、
商品者が購入し飲む「商品」としては「第三のビール」は何ら消滅しないのです。
仮に先ほど引用した文に書かれていますように、2026年以降は酒税法上、「第三のビール」という商品区分なくすと考えるのならば、
「発泡酒」という商品区分も2026年以降酒税法上なくす(「発泡酒」もなくしたことと同じ)、という捉え方をせねばなりません。
なぜならば、いわゆるビール系飲料に課税される酒税額が2026年に統一される(言わばビール系飲料の定義が1つになる)からです。

 



もちろん、酒税法上、新たに麦芽比率や原料によって2つの商品を定義することはできるのですが、
それは結局のところ、現行の「第三のビール」を「発泡酒」に含めるといった程度の定義の見直しに過ぎないわけです。
「ビール」もしくは「発泡酒」の現行の定義を広くし(改訂し)、「第三のビール」をどちらかに含める形で、定義し直す、
と言っているだけなのです。
もしくは、現行の「発泡酒」を「ビール」に含め、現行の「第三のビール」を新たに「発泡酒」と定義する、
という定義の見直しもできるのかもしれません(消費者として飲む限り、現行、「発泡酒」は「ビール」により近い気がしますので)。
定義の改訂方法については、私は一消費者に過ぎませんので、麦芽比率や原料まで踏まえた専門的な分類方法は分からないのですが、
要するところ、一消費者として、店頭に並んでいる「商品」としては、
2026年10月以降も、「ビール」、「発泡酒」、「第三のビール」はどれも生産され販売され続ける、
ということだけは分かるわけです。
ですので、酒税法上の定義の見直しはといっても、それは本当に表面的な「商品のくくり方」を変更するだけに過ぎないわけです。
さらに言えば、「酒税法上酒税額が同じ」ということは、乱暴に言えば、
「酒税法上はいわゆるビール系飲料3種類に区別はない」、という意味になるわけです。
ですので、2026年に「酒税法上酒税額が同じ」になるということであるならば、少なくとも酒税法を「課税」という観点から見れば、
「いわゆるビール系飲料3種類は酒税法上は定義は1つしかない。」(少なくとも課税上はそのように捉えることにした)、
という言い方ができるわけです。
したがって、少なくとも酒税法を「課税」という観点から見れば、2026年以降は、
酒税法上は「発泡酒」も「第三のビール」もどちらも消滅する、と言わねばならないと思います。
要するに、どの観点からこの税制改正を見るか、の違いであるわけです。
例えば消費者から見れば、2026年10月以降も、「ビール」、「発泡酒」、「第三のビール」はどれも購入し飲むことができますし、
例えばビール製造会社から見れば、2026年10月以降も、「ビール」、「発泡酒」、「第三のビール」はどれも生産しますし販売する、
という点からこの税制改正を見ますと、現在の「発泡酒」も消滅しないし現在の「第三のビール」も消滅しない、となるでしょう。
いわゆるビール系飲料3種類は、酒税法上も麦芽比率と原料により分類されるということであるならば、
2026年10月以降もそれら麦芽比率と原料に変更はないなのですから、たとえ酒税法のみの話をしているとしても、どちらかと言えば、
「2026年10月以降も、『発泡酒』も『第三のビール』も消滅しない。」という見方をする方が正しいと私は思います。

 



たとえ2026年10月に新指針が策定されようとも、2026年10月以降に、例えば現行の「ビール」と現行の「発泡酒」の中間のような
新ビール系飲料が開発・生産・販売されることは想定されていませんし、また、
例えば現行の「発泡酒」と現行の「第三のビール」の中間のような新ビール系飲料が開発・生産・販売されることは
想定されていないと思います。
仮に、2026年10月以降、ビール製造会社の方で新ビール系飲料が開発・生産・販売されることがあるとなりますと、
その時は、税務当局はさらにビール系飲料の定義を見直さなくてはならない、ということになるでしょう。
この辺りは、実は「酒類」特有の考え方をしていかねばならないところだと思います。
記事の冒頭には、

>政府・与党はビール系飲料にかかる酒税の統一を2026年10月に完了する方向でビール会社と調整に入る。

と書かれています。
国とビール会社(民間)とが税率について調整を行うと聞きますと、官と民の癒着か何かではないかと思われるかもしれませんが、
少なくとも「酒類」に関してはその見方は間違いです。
なぜならば、酒類の製造業者は「酒税法に従った酒類」だけしか製造・販売できないからです。
酒税法は、単に庫出高に基づき課税を行っているだけはありません。
酒類の製造業者が製造する「酒類」そのものについて、定義し規制を行っているわけです。
酒税法の定義にない「酒類」を製造することは、乱暴に言えば密造です。
ですので、ビール会社としても、酒税法の定義に沿った「酒類」を製造・販売していかねばなりませんので、
酒税法が改正されるとなりますと、「酒類」の製造・販売に際して、どうしても国との調整の部分が入るわけです。
国としても、単に酒税率の上げ下げだけではなく、「酒類」の定義といった点から言っても、
「酒類」の円滑な製造・販売のため、酒類の製造業者と調整に入らなければならない部分が実務上生じるわけです。
2026年10月以降も、ビール製造会社は、現行の「ビール」、「発泡酒」、「第三のビール」を生産することができしますし
販売することもできます(2026年10月以降も、製造工程において現行の麦芽比率と原料を見直す必要は全くない、という意味です)。
その意味において、やはり、2026年10月以降も「第三のビール」は消滅しない、と言わねばならないでしょう。
このたびの酒税の税制改正では、いわゆるビール系飲料に課税される酒税額が3種類に分かれているのが今後統一されるということで、
一見抜本的な酒税額の改正であるように見えるかもしれません(確かにビール会社と消費者双方に与える影響は実務上非常に大きい)が、
その実、酒税法の改正(定義の整理)という意味では、極めて表面的な見直しに過ぎない、という言い方ができると思います。
ビール系飲料3種類の製造方法は、何も変わってはいない(2026年10月以降も変わらない)のですから。
「販売する商品そのものが所管の法律に従っていなければならない。」、
この点において、「酒類」は他の商品とは全く異なる規制を受けているのです。
「酒類」の製造・販売は、庫出高による課税関係以前に、「製造」そのものに規制がかかっているのです。
そのような商品というのは、「酒類」の他にはほとんどないと思います(他には「たばこ」の製造・販売くらいでしょうか)。
癒着などという意味では全くなく、「酒類」の製造・販売は、本質的に製造業者と国とが歩調を合わせないといけないわけです。
そうしないと、製造もできませんし課税もできないからです。
「酒類」の製造・販売は、「製造」そのものに酒税法の規制がかかる形になるため、
創意工夫の部分は本質的に限られてしまう、という言い方ができると思います。
その点を鑑みますと、酒税法の改正もまた、本質的に表面的な改正しかできない、という言い方ができるのだろう、と思いました。

 



The liquor tax rates on the respective three beverages are scheduled to be unified gradually,
but products themselves such as "Regular Beer," "Law-malt Beer" and "The Third Beer" will not disappear.

3種類の各飲料に対する酒税率は段階的に統一されていくスケジュールになっていますが、
「ビール」、「発泡酒」、「第三のビール」といった商品そのものは消滅しません。

 

According to the article, the product division "The Third Beer" is scheduled to disappear,
but "The Third Beer" itself will not disappear, actually.
That is, "The Third Beer" products will continue to be produced thereafter.
To put it simply, the definition of beer only will be revised.
After that, we will not call the beer "The Third Beer," that's all.
Let me explain this complex problem for you from another viewpoint.
It means that, on the Liquor Tax Act,
the definition "Law-malt Beer" will also disappear after that, as well as "The Third Beer."

記事によると、「第三のビール」という商品区分は消滅するスケジュールになっているとのことですが、
実は「第三のビール」そのものは消滅しないのです。
つまり、「第三のビール」という商品はその後も生産され続けるということです。
簡単に言えば、ビールの定義だけが変更になるだけなのです。
その後は、そのビールのことは「第三のビール」とは呼ばなくなる、それだけのことなのです。
この複雑な問題について別の観点から説明させて下さい。
酒税法上は、「第三のビール」同様、「発泡酒」という定義もその後は消滅する、ということです。

 


最後に、昨日のコメントについて文法の間違いがありましたので訂正します。
昨日のコメントの中で、

>したがって、「上場廃止の事由」となるのは、本来的には、「虚偽記載」と「不適正意見等」のみなのです。

と書きました。
「『上場廃止の事由』となるのは、本来的には、『虚偽記載』と『不適正意見等』のみ」という点については正しいわけですが、
昨日書きました英文(教科書のスキャンの「ファイル名」)が文法的に間違っていました。
日本語訳の

>仮に金融商品取引法が「ディスクロージャーの法」であるのなら、
>ディスクロージャーに関する事象以外のいかなる事象も上場廃止の事由にはなり得ません。

という日本語訳は正しいのですが、英文が間違っていました。
昨日は、

>If the Financial Instruments and Exchange Act is the "law of disclosure,"
>no event except on disclosure can not be the grounds for delisting.

と書きましたが、can の後の not は不要です。
正しくは、

If the Financial Instruments and Exchange Act is the "law of disclosure,"
no event except on disclosure can be the grounds for delisting.

となります。
"no event except on disclosure "だけで、「ディスクロージャーに関する事象だけが」という意味になろうかと思います。
ですので、「ディスクロージャーに関する事象だけが」「上場廃止の事由となり得る」、と続こうかと思いますので、
can の後の not は不要なのです。
can の後に not がありますと、「ディスクロージャーに関する事象だけが」「上場廃止の事由となり得ない」、
という意味になり、私が主張したい内容と意味が正反対になってしまうと思います。
つまり、昨日の英文では、

”仮に金融商品取引法が「ディスクロージャーの法」であるのなら、
ディスクロージャーに関する事象だけは上場廃止の事由にはなり得ません。”

という意味になってしまいますので、can の後の not は削除していただきたいと思います。