2016年11月25日(金)



2016年11月23日(水)日本経済新聞
企業情報開示 新規制は必要か 上
木目田 裕氏(西村あさひ法律事務所 弁護士) 法制化よりルール改善を
大崎 貞和氏(野村総合研究所 主席研究員) 市場への情報減少を懸念
(記事)




2016年11月25日(金)日本経済新聞
企業情報開示 新規制は必要か 下
川島 勇氏(NEC 最高財務責任者=CFO) 何をめざすのか明確に
菊池 勝也氏(大和証券投資信託委託調査部長) 対話の場、短期的に混乱
(記事)



「フェア・ディスクロージャー・ルール」に関する過去のコメント

2016年10月21日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201610/20161021.html

2016年10月22日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201610/20161022.html

2016年11月3日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201611/20161103.html

2016年11月7日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201611/20161107.html

2016年11月22日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201611/20161122.html

 


【コメント】
「それを言っちゃあお終えよ。」になりますが、結局のところ、
「株式の譲渡」を行うから、情報開示云々が論点になるのでしょう。
仮に、「株式の譲渡」を行わないとしたら、情報開示のあり方はそもそも論点にならないはずなのです。
なぜなら、「株式の譲渡」を行わない場合は、いわゆる投資判断と呼ばれる部分自体がないからです。
「株式の譲渡」を行わない場合は、いい情報も悪い情報もすべて、今現在の株主が享受し被る、
ただそれだけのことであるわけです。
「株式の譲渡」を行わない場合は、理論上も実務上も、
「フェア・ディスクロージャー」という概念もなければ、インサイダー取引という概念もないのです。
「株式の譲渡」を行わない場合は、理論上も実務上も、
会社の内部情報を経営陣が一部の株主のみに話したとしても、それは何の問題もないことなのです。
なぜなら、会社の内部情報を自分だけが受領したとしても、その株主は文字通り何らの利益も得られないからです。
配当や残余財産の分配が適切に行われる限り、株主はたとえ会社の内部情報を自分だけが受領しても、利益にならないわけです。
たとえ自分だけが会社の内部情報を受領しても、他の株主よりも相対的に有利な立ち位置に立てるわけでもありません。
結局のところ、「株式の譲渡」を行わない場合は、「配当と残余財産の分配が適切に行われること」のみにより、
株主間の利益の平等は担保されるのです。
秘密裏に受領した内部情報を活用して他の株主よりも有形無形のより多くの利益を得るなど、絶対にできないのです。
「配当と残余財産の分配が適切に行われること」は、いかに情報開示を適切に行うかやいかに情報受領者の取引を規制するか、
といった問題に比べれば、はるかに実施は容易なことでしょう。
昨今の議論で言えば、「フェア・ディスクロージャー・ルール」や「インサイダー取引規制」には理論上の絶対的な答えはない
のに対し、「配当と残余財産の分配が適切に行われること」は、もはや論点にすらならないくらい当たり前のことと言えるでしょう。

 


考えてみますと、「株式の譲渡」は何を根拠に行えばよいか分からない、と言いますか、
「株式の譲渡」を行う際の根拠自体が実は理論上不明確であるからこそ、
「フェア・ディスクロージャー・ルール」や「インサイダー取引規制」には理論上の絶対的な答えがないのだと思います。
その一番重要な「不明確な部分」を、「投資判断」という言葉にすり替えているだけなのではないでしょうか。
例えば、私が会社を1人で設立し、会社の株主は私1人(100%所有)、会社の業務執行者も私1人(社長兼従業員)だとします。
会社の業績は順調に拡大し、会社の経営は毎期安定的に推移しているとします。
この時、私は所有している会社の株式を他者に譲渡することにしました。
私は会社の株式をいくらで譲渡すればよいでしょうか?
もちろん、買い手には会社の資産状況や経営状況を十分に精査してもらって、お互いが納得し合意する価格で株式を譲渡します。
売り手である私だけが会社の内部情報を知っている、ということがないように、買い手には十分な開示と配慮をします。
しかし、いくら情報開示に努めようとも、少なくともそこに理論上の絶対的な譲渡価格というのはないわけです。
会社の内部情報を全て知っている売り手である私でさえ、一体いくらで株式を譲渡すれば一番公正なのか分からないわけです。
最後は、「では、この価格でどうでしょうか。」、「はい、ではその価格で株式の譲渡を行いましょう。」、の世界でしょう。
私はこのことを、その一番重要な「不明確な部分」を「投資判断」という言葉にすり替えているだけだ、と表現しているわけです。
以上の例え話から分かるように、「フェア・ディスクロージャー・ルール」だ「インサイダー取引規制」だと言っている
議論そのものが全く無駄だ、とすら言えるわけです。
いくら情報開示をしても答え自体がはじめからないのだから意味がないのです。
会社の内部情報を全て知っている人ですら、いくらで株式を譲渡するのが一番公正か分からないのです。
どれほど詳細に情報開示をされようが、投資家にはなおのこと分かるはずがないでしょう。
結局のところ、「株式の譲渡」を行わなければ、
「フェア・ディスクロージャー」や「インサイダー取引」は始めから全く問題にならないわけです。
逆に、「株式の譲渡」を行う場合は、どのように制度構築をしても(たとえ会社の全ての内部情報を開示しようが)、
「フェア・ディスクロージャー」や「インサイダー取引」の問題は本質的に解決しはしないのです(答え自体が始めからないから)。
昨今の議論では、上場株式(株式の譲渡が前提)が議論の対象となってしますので、
「フェア・ディスクロージャー・ルール」や「インサイダー取引規制」が必然的に論点になるわけなのですが、
そもそも「株式の譲渡」を行わない法制度(会社制度)においては、
「フェア・ディスクロージャー」や「インサイダー取引」は始めから問題にならない、
ということは知っておいてよいことだと思います。