2016年10月21日(金)



公正な情報開示ルール導入へ、範囲など詳細議論=タスクフォース

[東京 21日 ロイター] - 金融庁の「フェア・ディスクロージャー・ルール」を検討する
タスクフォース(座長=黒沼悦郎・早稲田大学法学学術院教授)は、
21日開催した初会合で、日本でも同ルールを導入することで出席委員の賛同を得た。
今後はルールの対象となる情報の範囲やその情報受領者の範囲など、詳細について議論を深める方針だ。
フェア・ディスクロージャー・ルールは、上場会社が未公表の重要な内部情報を第三者に選択的に開示するのを禁じるルール。
この日の会合では、「早急に導入すべき」との発言が大勢を占めた。
ただ、適応の範囲を厳格にし過ぎると、企業による公正で公平な情報の開示を促す本来の狙いが薄れ、
開示の量が減ったり質が落ちる恐れもある。
ルールの対象とする情報の範囲は、欧州で決められているように
「株価に影響を及ぼす情報にすべきではないか」(上柳敏郎・弁護士)との意見が複数示された。
一方、その範囲を議論するなかで、重要事実とは何かの定義の「ガイドラインがあれば(情報の出し手受け手の)双方が
委縮しない」(三瓶裕喜・フィデリティ投信ディレクター・オブ・リサーチ)などの意見も出た。
重要情報を誰が受けた場合にルールが適用されるか、情報受領者の範囲についても、「第三者」として幅を持たせる意見や、
株価に影響を与えると考えられる「市場関係者」とすべき、などの意見があった。
フェア・ディスクロージャー・ルールについて欧米では、企業が、重要で未公表の情報を特定の情報受領者の方に開示する際は、
それが意図的でない場合は速やかに公表しなければいけないなどというルールがある。
日本では、証券会社が、特定の企業の重要な情報を基に顧客の投資判断に影響を及ぼすものを提供して、
株式売買などを勧誘することは禁じられているが、企業自体が開示・提供することを禁じるルールは導入されていない。
(ロイター 2016年 10月 21日 19:09 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/taskforce-idJPKCN12L144

 


【コメント】
今日、金融庁で「フェア・ディスクロージャー・ルール」を検討する会合があったようです。
この点について考えるにあたり、「上場会社が未公表の重要な内部情報を公表した」好例がまさに昨日の深夜ありましたので、
この事例を題材に、「未公表の重要な内部情報の公表が株価に与える影響」について考えてみましょう。


2016年10月20日
任天堂株式会社
家庭用据置型テレビゲーム機の娯楽体験を切り替える「Nintendo Switch」世界初公開
ttps://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2016/161020.html

Nintendo Switch
ttps://www.nintendo.co.jp/switch/index.html


プレスリリースの日付は「2016年10月20日」になっていますが、より正確に言うと、
任天堂株式会社が次世代ゲーム機を公表したのは、「2016年10月20日の23時00分」でした。
上記のプレスリリースと新製品「Nintendo Switch」の商品紹介ページをウェブサイト上の公開したのは
「2016年10月20日の23時00分」であったわけです。
任天堂株式会社は、2016年10月20日の午前に、自社のツイッターを用いて、次のような「お知らせ」を公表しています。

>本日10月20日23時より、全く新しいコンセプトのゲーム機「NX(開発コード名)」の映像を、任天堂ホームページで公開します。
>3分ほどの短い映像ですが、よろしければご覧ください。
ttps://mobile.twitter.com/Nintendo/status/788900045089181696

私も、昨日10月20日の23時過ぎに、新しく公開された「Nintendo Switch」の映像を拝見しました。
任天堂株式会社が昨日公表した新製品「Nintendo Switch」の発表は、
まさに「上場会社が未公表の重要な内部情報を公表した」事例と言っていいと思います。
次期主力製品の発表となりますと、ダイレクトに株価に影響があると言えるでしょう。
昨日の深夜、公開された映像を見て、私は「Wiiの時のような新しい商品が発売されるんだな。」と思いました。
まだどのようなゲームソフトが発売されるのかは分かりませんが、
家の中でのプレイの続きを屋外でもできる、というようなコンセプトなのかもしれないな、と映像を見て思い、
今までにない新しいコンセプトのゲーム機なのだろうと思いました。
それで、この発表が市場に与える影響を考えてみますと、昨日の深夜私は「明日の任天堂の株価は上がるのだろう。」と思いました。
すると、発表翌日の今日、任天堂の株価は次のようになりました↓。
今日の日本経済新聞の電子版の記事と共に紹介します。

「任天堂株式会社の株価の今日の値動き」

 


任天堂株が大幅安 新ゲーム機の評価に戸惑い


 任天堂の株価が久々の逆風に見舞われた。
20日夜に3月発売予定の新型ゲーム機「スイッチ」の映像を公開したところ、翌21日午前の東京株式市場で任天堂株は大幅に反落。
前日比1925円(7.1%)安の2万5025円と約1カ月半ぶりの安値を付ける場面があった。
今回公開した映像では、価格や新型機にあわせたゲームソフトのラインアップといった売れ行きを左右する詳細はわからない。
ただ、市場はひとまず売りで反応した格好。
スマートフォン(スマホ)向けゲーム「ポケモンGO」の人気で息を吹き返した任天堂株だが、
投資家はヒット連発となるかは自信を持ちきれていないようだ。

■約4年ぶりの新型機
 「スイッチ」は2012年発売の「Wii U(ウィー・ユー)」以来、約4年ぶりとなる本格的な新型機だ。
当時の岩田聡社長が開発コード「NX」と呼ぶ新型機の発売計画を明らかにしてからおよそ1年半、
映像公開でようやくベールを脱いだ。
 スイッチの最大の特徴は自宅と屋外の両方で使えることだ。
ゲーム機本体とコントローラーを分離し、自宅で据え置き型として使うほか、携帯ゲーム機として持ち運ぶこともできるという。
公開された映像でもスイッチを使って自宅や外出先の飛行機の上などさまざまな場所でゲームを楽しむ様子が紹介された。
 ただ、自宅でも外出先でも同じ端末を持ち歩くという「新しい遊び方」が浸透するかは未知数だ。
インターネット上では「携帯できるようにしているから、(据え置き型ゲーム機としての)機能は落ちるのではないか」との声も。
ソニー子会社が13日にVR(仮想現実)技術を盛り込んだ新型ゲーム機「プレイステーション(PS)VR」を
発表したばかりとあって、「新鮮味が乏しい」との見方も広がった。
 証券アナリストも「新しいハードの革新性を確認するのは今回の映像では難しい」
(モルガン・スタンレーMUFG証券の長坂美亜アナリスト)との声があがった。

■発想力と創意工夫に期待
 もっとも、期待がすべてはげ落ちたとは言い切れない。
任天堂は20日夜に、ソフト開発などで協力するパートナー企業としてディー・エヌ・エーやカプコンなど数十社を発表。
「スイッチについても、スマートフォン(スマホ)との連携など新しい試みが打ち出される可能性はある」
(ドルトン・キャピタル・ジャパンの松本史雄氏)として、売りに傾けるのをためらう投資家も多い。
 今夏の「ポケモンGO」のヒットでは、任天堂がかつてのように発想力や創意工夫で世界を驚かす力を取り戻しつつある
との評価が広がり、株価は一気に3万円台まで駆け上がった。
その後は2万円台で一進一退が続くが、21日に付けた安値も「ポケモンGO」が人気化する前の6月末と比べれば、
依然として7割強高い水準だ。
今後、ハード以外の部分でも、スイッチを使った新しいビジネスモデルを示して、市場を再び驚かせることができるか。
任天堂の力が試されるのはこれからだろう。
(日本経済新聞 2016/10/21 13:29)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21H9E_R21C16A0000000/

 



何と、私の予想とは正反対に、任天堂の株価は大幅に下落しました。
「どのくらい上昇するのだろうか」とばかり思っていましたから、まさか逆に下落するとは非常に驚きました。
株価自体はその時々の需給関係で決まるとは思いますが、今後の業績の行方も含め、
市場の投資家は、「今後任天堂の株価は下落するだろう」と予想した、という見方をすればよいのだろうか、
と思っているところです。
例えば、新製品「Nintendo Switch」は、製品としては非常にゲーム機としては優れており、
テレビゲームをする購買層からの評価も非常に高く、実際には新製品「Nintendo Switch」は今後よく売れるのだとしても、
株価が2万6千円を超えてさらに上昇する程のインパクトはない、と市場の投資家が投資判断すれば、
結局株価は下落する、という考え方になるのだろうかと今思っているところです。
株価は一体どうやって決まると理解すればよいのだろうか(自分には分からないな)、と改めて思っているところです。
考えてみますと、結局、「株価」そのものは会社の業績とは直結していない概念のものであるわけです。
どれほど会社の業績がよくても、市場の投資家にあるのは「株式を買う」と「株式を売る」の2つの行動パターンしかないわけです。
投資家はできるだけ安く株式を買おうとしできるだけ高く株式を売ろうとするわけですが、
今後株価が上昇すると判断する場合は株式を買い、今後株価が下落すると判断する場合は株式を売る、
という判断しか投資家は行えないわけです。
他の言い方をすれば、投資家は、自分の利益が最大化されるように株式を買い、自分の利益が最大化されるように株式を売る、
という投資行動を市場で取るだけであるわけです。
そうしますと、新製品に対する購買層からの評価や今後の会社の業績の拡大具合ではなく、
「株価そのものの今後の値動き予想」により株価が変動する、ということにならないだろうか、とふと思いました。
新製品「Nintendo Switch」は非常に良い商品であり今後大ヒットするのは間違いないのだが、
これまで株価は非常に高い水準で推移してきたので、投資家は「任天堂株価は今後下がるだろう」と予想した場合は、
結果株価は下落する、ということではないだろうとふと思いました。
他の言い方をすると、「株式の売買」と「新製品の評価や業績の拡大」とが乖離している、
ということではないだろうかと思いました。
例えば、一例として、新製品「Nintendo Switch」の情報を、一投資家である私だけが公表前の10月19日に知ったとしましょう。
市場の投資家が知る前であるに関わらず、私には、新製品「Nintendo Switch」の詳細情報が分かります。
そして、新製品「Nintendo Switch」が今後大ヒットし任天堂が間違いなく過去最高益を記録するであろうことが私には分かります。
しかし、「任天堂株価が今後上昇するのかどうか?」は、やはり私には分からないわけです。
「任天堂株価が今後上昇するのかどうか?」は、私にも任天堂株式会社内部の人にも分からないわけです。
このことは、情報の開示・非開示はほとんど株価に影響を与えない、ということを示していないでしょうか。
市場の投資家の立場に立ってみると、たとえ新製品の評価が非常に高くても、
株価は今後下がるかもしれませんし上がるかもしれないわけです。
市場の投資家の立場に立ってみると、たとえ会社の業績の拡大は間違いないとしても、
株価は今後下がるかもしれませんし上がるかもしれないわけです。
結局、「市場の投資家」にとっては、「株価は今後上昇するのかそれとも下落するのか?」という一点のみが、投資判断要素、
ということなのではないだろうか、と思いました。
「新製品の評価や業績の拡大」は、実は市場の投資家には全く関係がない、という見方ができるように思いました。

 


どんなに新製品が高い評価を受けどんなに業績の拡大が確実視されていようとも、それは市場の投資家にとっては、
株価の上昇を保証するものでは全くないわけです。
ですから、「新製品の評価や業績の拡大」とは無関係に、市場の投資家は株式を買ったり売ったりするのではないかと思います。
そこにあるのは、悪く言えば「思惑」、良く言っても「予想」であるわけですが、
それは「新製品の評価や業績の拡大」に関する「思惑」や「予想」では決してなく、
純粋に「株価の今後の値動き」に関する「思惑」や「予想」だと言わねばならないのかもしれません。
本日、金融庁で「フェア・ディスクロージャー・ルール」を検討する会合があったようですが、
昨日深夜の新製品「Nintendo Switch」の発表と今日の任天堂の値動きを見て、
「『株価に影響を及ぼす情報』とは何か?」の定義すら本質的にできないのではないか、と思いました。
なぜなら、投資家は、「新製品の評価や業績の拡大」とは無関係に、
「今後の株価の予想」のみに基づき、株式の売買を行うからです。
投資家は、「新製品『Nintendo Switch』は今後必ず売れる。これは間違いない。だけど任天堂株価はこれから下がるだろう。
だから俺は任天堂株式を売る。」
と言って任天堂株式を売るわけです。
純粋に「今後株価は上がるのかどうか」だけで、投資家は株式の売買を行うのです。
理詰めで考えてみると、「開示情報」と「投資家の株式の売買」とが完全に乖離しているのだと思います。
理論的には、公正な情報開示のルールの整備や重要で未公表の情報の情報受領に関する議論というのは、
「投資家の株式の売買」とはほとんど関係がないように思えます。
重要な情報が未公表でも投資家には関係がありません。
重要な情報が公表されても投資家には関係がありません。
そこにあるのは、「今後株価は上がるのか?」だけなのですから。
どんなに新製品「Nintendo Switch」が購買層から高い評価を受け今後の大ブレイク(最高益を記録等)は絶対に間違いないとしても、
投資家は純粋に「今後株価が上がりそうな株式を買う」のです。
この投資家行動のことを、かのケインズは「美人コンテスト」と表現したのです。
ケインズがいう「美人コンテスト」では、最も美人(=新製品「Nintendo Switch」、任天堂株式)が優勝するのではありません。
市場の投資家が「コンテストで優勝するだろう」と予想する美人(=今後株価が上がりそうな株式)が優勝するのです。
任天堂株式は、最も美人であったにも関わらず、「美人コンテスト」に負けたのです。
「誰が最も美人か」は分かります。
しかし、「誰が美人コンテンストで優勝するか」は分からないのです。
「美人コンテスト」とは本当に言い得て妙だな、と思いました。
最後に、個人的な趣味になりますが、新製品「Nintendo Switch」について、専門サイトの記事を紹介して今日は終わりたいと思います。

 


Wii U、3DSとの互換性は? 同梱内容は? Nintendo Switchに関する任天堂の回答を公開!


●任天堂の回答を公開!
2016年10月20日深夜に、ついに正式名称などが発表された、任天堂の新ハード“Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)”。
ファミ通.com編集部では、この気になる新ハードについて、任天堂に問い合わせを行ったところ、下記の回答を得た。
回答は、Nintendo Switchの位置づけ、ソフトの下位互換など、興味深い内容になっているため、ぜひ注目してほしい。


Q Nintendo Switchは、Wii Uの後継機という位置づけでしょうか?
A Nintendo Switchは既存の“家庭用据置型テレビゲーム機”の範疇には入らないゲーム機ですので、
   Wii Uの後継機という位置づけは相応しくないと当社は考えていますが、“まったく新しいゲーム機”とはいえ、
  “家庭用据置型テレビゲーム機”であることには変わりありません。

Q Wii Uやニンテンドー3DSタイトルの互換性はあるのでしょうか?
A Nintendo SwitchはWii Uあるいはニンテンドー3DSの後継機ではありませんので、
   Wii Uディスクソフトやニンテンドー3DSカードで遊ぶことはできません。

Q 今回発表された本体、ドック、Joy-Con、Joy-Conグリップはすべてパッケージに同梱されるのでしょうか?
A 商品構成につきましては発売前に改めて各地で発表させていただきますが、Joy-Conがふたつ、
   すなわちJoy-Con(L)とJoy-Con(R)は同梱予定です。

Q Nintendo Switchのカートリッジは新規仕様でしょうか?
A 詳細は発売前に発表しますが、当社は“ゲームカード”と呼んでいます。光学ディスクではありません。

Q 本体のバッテリーの持続時間はどのくらいでしょうか?
A 仕様の詳細は後日発表させていただきますが、電源がない場所でもできるだけ快適にプレイしていただけるよう開発しております。

Q NVIDIA社のリリースにより、Nintendo SwitchにはTegraプロセッサが搭載されているとのことですが、
   スマートフォン向けのタイトルへの対応予定はありますか?
A 現時点ではお答えできません。
(ファミ通.com 2016-10-21 19:20:00)
ttp://www.famitsu.com/news/201610/21118771.html