2018年4月18日(水)



ここ30日間のコメントを踏まえた上で、記事を1つ紹介し、ここ3日間のコメントに一言だけ追記をしたいと思います。

 

2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年4月17日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180417.html

までの一連のコメント

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 


2018年4月14日(土)日本経済新聞
中国ネット大手 本土上場に動く テンセント・アリババ・百度など5社 海外と重複容易に 資金調達広がる
政府の監視強化に懸念も
(記事)

日本預託証券(ウィキペディア)
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%A0%90%E8%A8%97%E8%A8%BC%E5%88%B8

預託証券(ウィキペディア)
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%90%E8%A8%97%E8%A8%BC%E5%88%B8

 


3日前の2018年4月15日(日)と一昨日2018年4月16日(月)と昨日2018年4月17日(火)には、
株式会社NTTドコモの事例(米国預託証券のニューヨーク証券取引所における上場廃止)を題材にして、
有価証券を(任意に)上場廃止にした後に発行者が負うべき法定継続開示義務について考察を行ったわけですが、
「米国預託証券」の取り扱いをきっかけにして、非常に数多くの点に新たに気付くことができたと自分で思っているところです。
昨日新たに気付きましたのは、「米国の証券制度では、外国企業の原株式の上場は認められていないはずだ。」という点でした。
外国の企業は、必ずADR(「米国預託証券」)という手法を用いて米国市場での上場を実現するしかないはずだと思いました。
その理由は、米国証券当局が採用している独自の投資家保護制度(「SEC登録」による非米国発行者の擬制制度)にあるわけです。
この点については、昨日のコメントを読んでいただければと思います。
今日は、「米国預託証券」(American Depositary Receipt)(の証券制度上の位置付け)を理解のヒントにして、
「日本預託証券」(Japanese Depositary Receipt)と「中国預託証券」(Chinese Depositary Receipt)について
考察を行いたいと思います。
今日紹介しています2018年4月14日(土)付けの日本経済新聞の記事は、
今現在は中国外の株式市場のみに上場している中国の有力企業が目下中国本土の株式市場への回帰に意欲を示しており、
また、歩調を合わせるかのように中国政府も市場開放や投資金の呼び込みを促進したいとの考えから証券制度の整備を進めている、
という趣旨の記事になります。
記事から重要な部分を引用したいと思います。

>本土回帰を仕掛けたのは中国政府だ。
>アリババや百度は「ADR(米預託証券)」と呼ぶ証券の形をとって米国に上場している。
>政府は中国版の「CDR」を創設する方針を決めた。
>企業は海外上場を維持しつつ、上海や深センの株式との重複上場が容易になる。
>政府は3月末にCDRの概要を発表。
>時価総額が2千億元(約3兆4千億円)以上で、ネットやAI(人工知能)、バイオ医薬などを手掛ける企業が対象になる。

また、2018年3月7日(水)のコメントで紹介しています2017年9月20日(水)付けの日本経済新聞の記事に、
「日本預託証券」(Japanese Depositary Receipt)に関する解説となっています。
この記事から重要な部分を引用したいと思いますし、関連する記事(2017/9/29付の日本経済新聞)を1つ紹介したいと思います。

>JDRは2007年に信託法が改正され発行が可能になった。


日本預託証券 創設10年、第1号は「日本人」 米半導体VBが上場

 米半導体ベンチャー、テックポイント・インクが29日、東京証券取引所の新興企業向け市場「マザーズ」に上場する。
海外株を国内株扱いに変える「日本預託証券(JDR)」の仕組みを初めて利用し注目を集める。
当初は新興国企業の誘致を目的につくられたが、過去10年間にわたり事業会社の活用事例はゼロ。
「過去の遺物」に再び光をあてたのは、米国で活躍する日本人起業家だった。
 「苦節10年、関係者の取り組みがようやく…
(日本経済新聞 朝刊 2017/9/29付)
ttps://www.nikkei.com/article/DGKKZO2167006028092017EE9000/

 



さらに、2018年3月23日(金)のコメントでは、金融商品取引法上定義される「預託証券」(「20号」)とは
「日本預託証券」のことを意味しており、「米国預託証券」(ADR)は金融商品取引法上の有価証券には該当しないと書きました。
「金融商品取引法上の有価証券」(定義)に関しては、2018年3月23日(金)のコメントを再度読んでいただければと思います。
関連する論点(議論をする上で重要な概念です)になりますが、
ウィキペディアの「預託証券」の項目には、世界各国の「預託証券」の具体例として次のような例が挙げられています。

>欧州預託証券(EDR)やドイツ無記名証券(GBC)、ロンドン証券取引所で売買されるグローバル預託証券(GDR)、

端的に言えば、例えば「米国預託証券」は、米国の証券規制に服する「預託証券」である、という意味なのです。
つまり、有価証券に適用される証券規制を単一化したいからこそわざわざ「預託証券」という手法を用いるわけです。
逆から言えば、ある有価証券に適用される証券規制が国毎に異なっていることを各国の証券制度が容認するのならば、
わざわざ「預託証券」という手法を用いる必要はなく、「原株式」の上場で事足りる、という考え方になるわけです。
米国証券当局が非米国の発行者に「原株式」ではなく「米国預託証券」という手法による上場を証券制度上求めている理由は、
米国内に流通する有価証券に関しては米国証券取引法のみが全面的に適用されるようにしたいからなのだと思います。
逆から言えば、非米国の発行者による「原株式」の上場を米国で認めることにしますと、ある同一の「原株式」について、
母国では母国の証券取引法が適用され米国では米国証券取引法が適用される、といった具合に、
1つの有価証券に適用される法律が必然的に複数になってしまうわけです。
米国証券当局としては、米国の証券規制のみで米国に上場している有価証券をコントロール(制御・規制)したい
(つまり、米国内に流通している有価証券について他国の証券取引法の影響を受けないようにしたい)と考えているのだと思います。
その意味では、欧州預託証券(EDR)やグローバル預託証券(GDR)という有価証券は、明らかにおかしな概念なのだと思います。
自国内に流通している有価証券の"jurisdicition"(法域・管轄)を一本化したい(他国の証券取引法(の影響)を排除したい)、
という思惑があって、米国証券当局はわざわざ「預託証券」という手法を導入しているわけです。
「欧州」や「グローバル」では、"jurisdicition"(法域・管轄)が始めから複数・多数であるわけです。
これらの接頭辞が付いた「預託証券」というのは、証券規制の観点から言えば、概念的に明らかに矛盾しているのです。
ウィキペディアにある「ドイツ無記名証券(GBC)」というのは、「Global Bearer Certificates」のことのようです。
「Global Bearer Certificates」は、ドイツ証券取引所(German stock exchange)で取引される有価証券とのことです。
「Global Bearer Certificates」は、ドイツにおける"Depositary Receipt"(「預託証券」)のことを意味しているようです。
「Bearer」(無記名式の)と言葉が用いられている理由は、想像するに、
「原株式」の発行者の株主名簿には「Global Bearer Certificates」の所有者名は記載されないからではないかと思います。
「原株式」の発行者の株主名簿には、「『Global Bearer Certificates』の発行者」の名称が記載されるわけです。
「Global Bearer Certificates」の所有者名は、ドイツ国内の預託銀行が「原株式」の発行者の株主名簿とは異なる名簿を用いて、
「原株式」とは独立した形で管理・把握している、という状況であるわけです。
「原株式」の発行者から見ると、直接的には「Global Bearer Certificates」の所有者名は分からない、
という意味を込めて、"Depositary Receipt"(「預託証券」)は「Bearer」(無記名式の)だ、ということなのかもしれません。

 


ウィキペディアの「日本預託証券」の項目には、
外国企業の株式を日本において上場する際に、当該外国株式を日本の証券取引所に直接上場することが
何らかの事情で困難である場合に「日本預託証券」が用いられる、と書かれてあり、事情の一例として次のように書かれています。

>韓国や台湾では自国企業による現物株の海外上場に対する規制が厳しく、JDRはその代替手段としての役割が期待される。

日本の証券制度が原因なのではなく、母国の証券規制(さらには母国の会社法制や外資規制等)が原因で、
日本の証券取引所に「原株式」を上場させることができない企業(外国企業)も世界の国々の中にはあるようです。
そのような国では、日本の一般投資家ではなく、日本の預託銀行(信託銀行等)が「原株式」を所有することについては
容認をしている(自国企業の原株式の所有者に関する外交上の規制が何かあるのでしょう)、ということなのだろうと思います。
ウィキペディアを読んで、日本の証券当局が外国企業による「原株式」の日本国内上場を認めないのではなく、
母国の証券当局が母国外の証券取引所への「原株式」の上場を認めない、という場合もあるのだなと思いました。
ただ、ここでは話の簡単のため母国の証券規制には障害はない(外国からの母国への投資に制限等はない)としたいのですが、
ここでは「米国預託証券」を例に挙げたいのですが、
米国の証券当局は、非米国の発行者の「原株式」を米国証券取引法で定義するために
「米国預託証券」という手法を手法を用いているわけです。
米国の証券当局は、非米国の発行者の「原株式」を「外国の者の発行するもの」から「米国の者の発行するもの」
に置き換えるために、「米国預託証券」を用いているわけです。
他の言い方をすれば、米国の証券当局は、非米国の発行者の「原株式」の"jurisdiction"(法域・管轄)を
「非米国の発行者の母国の"jurisdiction"」から「米国の"jurisdiction"」へと移管・単一化・一本化・専任とするために、
すなわち、「原株式」の"jurisdiction"を"exclusive"(他国を入れない)にするために、
「米国預託証券」を用いているわけです。
さらに他の言い方をすれば、米国内に流通する有価証券を非米国の発行者の「原株式」から切り離す("separate")ために、
「米国預託証券」を用いているわけです。
米国内の預託銀行が非米国の発行者の「原株式」を所有する限り、
非米国の発行者の「原株式」が米国内で流通することはないわけです。
すなわち、米国内の預託銀行が非米国の発行者の「原株式」を所有する限り、
米国内の投資家の利益が害されることはないわけです。
米国の証券制度から見れば、
非米国の発行者の「原株式」を所有している米国内の預託銀行は"custodian"(管理人、守衛)であり、
米国内の預託銀行に所有されている非米国の発行者の「原株式」は"custody"(保管・監護・拘置)の状態にあるわけです。
米国の証券当局としては、非米国の発行者の「原株式」が米国内に流通してもらっては困るわけです(「原株式」は「囚人」です)。
"custodian"には有価証券の保管の代理人という意味も会計用語としてはありますので、自画自賛ですが言い得て妙だと思います。
米国内の預託銀行は、「米国預託証券」の所有者(=米国の投資家)の代理人(「原株式」の代わりの株主)でもあるわけです。
そして、「原株式」の"jurisdiction"を移管するための手段が、まさに"Registration with the SEC"(「SEC登録」)なのです。


A character "X" in an "X depositary receipt" represents a territory or a jurisdiction (i.e. a "country").

「X国預託証券」の「X」という文字は、法域(すなわち「国」)を表しています。