2018年4月17日(火)
2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html
から
2018年4月16日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180416.html
までの一連のコメント
「オークション方式」に関する過去のコメント
2016年3月27日(日)
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2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html
一昨日2018年4月15日(日)と昨日2018年4月16日(月)には、
株式会社NTTドコモの事例(米国預託証券のニューヨーク証券取引所における上場廃止)を題材にして、
有価証券を(任意に)上場廃止にした後に発行者が負うべき法定継続開示義務について考察を行いました。
日本企業による米国預託証券の上場廃止は、概念的には上場企業が任意に自社株式の上場を廃止することに相通じるわけです。
日本の証券取引所では、株式を上場させている発行者は任意に上場を廃止にすることは上場規定上認められていないようですが、
米国の証券制度では、発行者はADRの上場廃止そのものは任意に行えるものの、ADRプログラムの終了は任意にはできない、
という制度になっているようです。
しかし、投資家への売却機会の提供や換金可能性や発行者の清算期日は定められていないといった現実的な観点を鑑みれば、
発行者はADRプログラムを継続しさえすればADRを上場廃止にすることが認められる、というのは論理的ではないと思います。
なぜならば、それは日本の上場企業が日本の証券取引所において自社株式を任意に上場廃止にすることに等しいからです。
2018年4月4日(水)のコメントで書いたことですが、現実的なことを踏まえますと、
投資家が投資を回収する手段は、"Expire
or
exchange."(「満了か交換か」)のどちらかしかないわけです。
株式会社NTTドコモがADRを上場廃止にするということは、
株式会社NTTドコモは米国の投資家から"exchange"(「交換」)という手段を奪うということです。
理論的には、株式会社NTTドコモは、代替的手段として、米国の投資家に"expire"(「満了」)という手段を提供する
必要が出てくるのではないかと思うのですが、その方法としては、
株式会社NTTドコモ自身が米国内に流通しているドコモADRを全て買い取る、という方法くらいしかないのではないかと思いました。
発行者が清算しない限り、株式そのもの(つまり原株式)が"expire"(「満了する」)ということは概念的にはあり得ないのですが、
ADRであれば、発行者が事業を継続したままでも(つまり、発行者が清算しなくても)、
ADRが"expire"(「満了する」)ということは少なくとも米国の投資家にとってはあり得る(概念的に同じ状態になると言える)、
ということになるわけです。
ADRプログラムが終了するとは、概念的には、米国の投資家にとってはADRが"expire"(「満了する」)ということなのです。
本来の意味の残余財産の分配とはもちろん異なりますが、米国の投資家の利益が害されない形で一定額の現金を渡すことで、
発行者はADRプログラムを円満に終了させる(擬似的な"expire"(「満了」)を実現させる)ということが求められると思います。
それから、ADRを1つのきっかけとして、今日もまた1つ米国の証券制度について気付くことがありました。
それは、「米国の証券制度では、外国企業の原株式の上場は認められていないはずだ。」という点です。
例えば、日本企業である株式会社NTTドコモが、ADRではなく、「株式会社NTTドコモ株式」(原株式)を
米国の証券取引所に直接上場させるということは、米国の証券制度では認められていないはずだと思いました。
外国の企業は、必ずADR(「米国預託証券」)という手法を用いて米国市場での上場を実現するしかないはずだと思いました。
これは、例えば、東京証券取引所に外国企業が原株式を直接上場させることが可能な「外国株」という区分が設けられている
ということとは正反対の取り扱いであると思います。
日本の証券制度では、外国企業は、日本の東京証券取引所(の「外国株」の区分)に原株式を直接上場させることもできますし、
JDR(「日本預託証券」)という手法を用いて日本市場での上場を実現することもできる、という制度になっているかと思います。
いずれにせよ、米国の株式市場に上場している外国企業の”株式”は実は全てADR(「米国預託証券」)となっているはずなのです。
なぜこの点に気付いたのかと言いますと、それは"Registration
with the
SEC"(「SEC登録」)です。
つまり、米国の証券制度では、「米国の発行者が発行した有価証券しか上場を認めない。」という制度になっているわけです。
他の言い方をすれば、米国の証券制度では、"non-Amrican
issuer"発行の有価証券の米国内流通は一切認められることがなく、
"American
issuer"発行の有価証券の米国内流通しか認めない、という投資家保護制度が採用されているわけです。
その理由は、米国証券当局は外国の発行者に、より直接的に・正当に米国証券取引法を適用したいからであるわけです。
「外国の発行者」を「米国の発行者」であると擬制するための手段が、
まさしく"Registration
with the
SEC"(「SEC登録」)であるわけです。
「外国の発行者」を米国証券取引法の適用対象とするための手段が、
まさしく"Registration
with the
SEC"(「SEC登録」)であるわけです。
米国証券当局は投資家保護を徹底するために、
「外国の発行者」の取り扱いを「米国の発行者」と同じとしたいと考えているわけです。
米国証券当局は、米国内に流通している有価証券の発行者に対して、統一的・一律的・共通の・同一の規制を課したい、
と考えているわけです(米国内に流通している有価証券の発行者は完全に同一の証券規制に服さなければならないはずです)。
発行者によって適用される証券規制に差異があるというのは、投資家保護の観点から言えば、あってはならないことなのです。
It is true that the fact that securities superficially issued by non-American
issuers are listed in the U.S. stock exchange
must be called
"extraterritorial listing" in a sense, but, at least from a viewpoint of the
U.S. securities system,
or at least from a viewpoint of investor protection
inside U.S., such a type of listing is "territorial listing"
because the
securities above are issued not by non-American issuers but by American
issuers.
For those non-American issuers have already been legally
fictitiously converted into Amrican issuers
by means of "Registration with
the SEC."
確かに、表面上は非米国の発行者により発行されている有価証券が米国の証券取引所に上場しているというのは、
ある意味「域外上場」であると呼ばねばならないわけですが、少なくとも米国の証券制度の観点から言えば、
もしくは、少なくとも米国内における投資家保護の観点から言えば、そのような類の上場は「域内上場」なのです。
なぜならば、米国の証券取引所に上場している有価証券は、非米国の発行者ではなく米国の発行者により発行されているからです。
というのは、それら非米国の発行者は、「SEC登録」という手段により、既に米国の発行者へと擬制的に衣替えしているからです。