2018年4月12日(木)



ここ24日間のコメントを踏まえた上で、記事を3つ紹介し、記事を読んでふと気付いた点について一言だけ書きたいと思います。

 

2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年4月11日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180411.html

までの一連のコメント

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 


2018年4月12日(木)日本経済新聞
中国鉄鋼好況 はや踊り場 米輸入制限、鋼材2割安 過剰設備削減、純利益2.6倍 前期
宝山・河鋼、株価2ケタ安 需給軟化の懸念消えず
(記事)


2018年4月12日(木)日本経済新聞
米スプリントとTモバイル 統合観測、再び浮上 市場は期待、両社の株価上昇
(記事)


2018年4月12日(木)日本経済新聞
ソニー、スポルディファイ株で売却益 ストリンガー氏の置き土産 1000億円、音楽事業に
(記事)

 



今日思いましたのは、一言で言えば、「『投資家が投資判断を行う際の根拠』とは何だろうか?」、という点です。
「投資家はどのようなことを材料・判断根拠として投資判断を行うのだろうか?」、と思ったわけです。
投資家が投資判断を行う際の根拠として最も典型的なのは、発行者による「ディスクロージャー」であるわけです。
最も元来的には、投資家が投資判断を行う際の根拠は発行者による「ディスクロージャー」だけである、
という考え方になるのだろうと思いました。
つまり、発行者は継続的・定期的に「ディスクロージャー」を行うのですが、発行者による新たな「ディスクロージャー」を
吟味することで、投資家は株式の「本源的価値」を再算定しそして投資判断を変更する(買い注文や売り注文を変更する)、
という流れがあるのだろうと思います。
そのこと自体は証券制度の根幹部分でもありますので、何らの異論もないと思うのですが、
今日改めて思いましたのは、コーポレート・ファイナンス理論や証券投資論やおそらくは現行の金融商品取引法でも
所与のこととされている「報道」の証券制度における理論上の位置付け(どのような存在であるとして取り扱うか)です。
理論上は投資家が投資判断を行う際の根拠は発行者による「ディスクロージャー」だけである、と割り切るのは簡単なのですが、
現実的なことを考えますと、
発行者による「ディスクロージャー」のみを根拠に投資家は投資判断を行っているというわけではない
のは明らかと言いますか、むしろ、毎日「報道」に触れ、そしてまた、数多くの様々な専門紙や投資雑誌や業界雑誌等を読んで
知識を増やし、業界や投資銘柄に関する理解を深めていくことが投資家には求められる、とすら現実には言えるわけです。
端的に言えば、現代では、発行者による「ディスクロージャー」以外の投資に関する情報が投資判断の上では重要なのです。
例えば、米国が鉄鋼の輸入制限を発動したとなりますと、鉄鋼業に投資をしている投資家から見ると、
投資先企業の収益が悪化するのは明らかであるわけです。
すなわち、その投資家にとって、投資をしている株式の「本源的価値」の算定額が小さくなるのは明らかであるわけです。
しかし、「米国による鉄鋼の輸入制限の発動」という情報自体は発行者による「ディスクロージャー」ではないわけです。
投資家は、発行者による「ディスクロージャー」以外の「報道」等に接し、「米国による鉄鋼の輸入制限の発動」を知るわけです。
さらに言えば、「米国による鉄鋼の輸入制限」が国際情勢如何では今後撤回される、という可能性も投資家は当然予見するわけです。
しかし、発行者自身に関する情報以外の情報を根拠にするというのは、ともすればギャンブルとなりやすいわけです。
なぜならば、それは「発行者以外のことに関して将来予想をしている」ことになるからです。
発行者による「ディスクロージャー」以外の情報を投資判断の根拠とするのは間違いである、
と考えるのは現代ではやはり間違いであろうと思いました。
「発行者による『ディスクロージャー』のみを根拠に投資家は投資判断を行う。」という理論的前提が成り立つためには、
発行者の競合他社には何らの変動も生じないであったり、法人税率は一切変更されないであったり、
発行者の営業に障害は生じない(許認可の問題が生じたり政策上の制限が加えられたり公正取引規制が課せられる等はない)といった
「発行者の営業環境に変動は一切生じない。」ということが理論上の条件になっているということではないかと思いました。
他の言い方をすると、マイケル・E・ポーターがいう「5つの競争要因」全てに変動はない、
ということが理論上の条件になっているということではないかと思いました。
さらには、マイケル・E・ポーターがいう「5つの競争要因」に加え、
関税の発動や消費税の導入や法人税率の変更や公正取引規制といった大きなマクロ環境(国家的・政策的要因)にも変動は一切ない、
ということが証券投資の理論上の条件になっているということではないかと思いました。
そうでなければ、「発行者による『ディスクロージャー』のみを根拠に投資家は投資判断を行う。」という理論的前提が
成り立たないように思います(極端に言えば、発行者の営業環境に変動が生じることは投資の前提ではないと言えるのだと思います)。
これらは現実には満たされることは絶対にあり得ないといっていい理論上の条件だとは思いますが、
「発行者による『ディスクロージャー』のみを根拠に投資家は投資判断を行う。」という理論的前提が成り立つためには、
これらの条件が満たされていることが必要になるはずだ、と思いました。

 



2018年4月12日(木)日本経済新聞
M&Aへ役員報酬上げ ルネサス、欧米標準めざす 上限20億円、株主は反発
(記事)




2018年3月8日
ルネサスエレクトロニクス株式会社
第16期定時株主総会招集ご通知(事業報告を含みます)※2018年3月13日 訂正反映データ
ttps://www.renesas.com/ja-jp/media/about/ir/event/20180313-notice.pdf

株主総会参考書類
第3号議案 取締役の報酬等の額改定の件
(14/48ページ)

2018年4月2日
ルネサスエレクトロニクス株式会社
臨時報告書
ttps://www.renesas.com/ja-jp/media/about/ir/event/20180410.pdf

2【報告内容】
(3) 決議事項に対する賛成、反対及び棄権の意思の表示に係る議決権の数、
当該決議事項が可決されるための要件並びに当該決議の結果
(2/2ページ)

2018年3月29日
ルネサスエレクトロニクス株式会社
第16期定時株主総会決議ご通知
ttps://www.renesas.com/ja-jp/media/about/ir/event/20180329-resolution.pdf

決議事項
第3号議案取締役の報酬等の額改定の件
(1/2ページ)


 


【コメント】
株主総会では数人の個人株主が反対の声を上げたとのことであり、また、議案への反対票も16%に上ったとのことですが、
ルネサスエレクトロニクス株式会社は、2018年3月29日に開催した定時株主総会で
取締役報酬の総額の上限を年5億円から年20億円に引き上げた、とのことです。
今回の報酬引き上げはあくまで上限のみではあるものの、個人株主の反発を押し切って報酬の上限を引き上げた格好になり、
今後、会社には株主を納得させるだけの高い成長力が欠かせない、と記事には書かれています。
会社法上は役員報酬についてどのように定められているのだろうかと思いましたので、条文を引用してみたいと思います。

(取締役の報酬等)
第三百六十一条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において
「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

会社法第三百六十一条には、原則規定として、「取締役の報酬は株主総会の決議によって定める。」と明確に定められています。
ただ、取締役の報酬等に関しては、事前に定款に定めておくこともできる、と会社法第三百六十一条には定められているわけです。
このたびの事例に即して言いますと、「第3号議案取締役の報酬等の額改定の件」は、「臨時報告書」の文言を引用すれば、
取締役の報酬等の額を年額2,000百万円以内(うち、社外取締役分は400百万円以内)に改定するものであるわけです。
「第16期定時株主総会決議ご通知」によりますと、第3号議案は原案通り承認・可決された、とのことです。
しかし、会社法上は、第3号議案の株主総会決議には瑕疵があり、有効に決議が取られたものとは言えないと思います。
なぜならば、ルネサスエレクトロニクス株式会社のこの第3号議案は、「定款の変更」に他ならないからです。
「臨時報告書」によりますと、この第3号議案は「出席した株主の議決権の過半数の賛成」が可決要件とのことですが、
この可決要件は普通決議の可決要件であるわけです。
会社法上は、「定款の変更」には、普通決議ではなく特別決議が求められるわけです。
したがって、ルネサスエレクトロニクス株式会社では、取締役の報酬等の上限の引き上げは、実はまだ実現していないのです。
一方、会社法の条文上は明確には書かれていませんが、原則規定通り、都度取締役の報酬等の金額を株主総会で定める場合には、
決議要件は普通決議で事足りると自然に解釈できると思います(役員報酬を都度定める場合は、「定款の変更」ではないから)。
この第3号議案には、83.90%の賛成票が投じられていますので、たとえ再投票を行ったところで、特別決議の可決要件を満たす
ことは明らかとは言えますが、会社はあくまで普通決議を取るつもりで議案を提出したわけです(「可決要件」に瑕疵がある)。
「特別決議を可決要件とした決議事項」ということで、この第3号議案を再度株主総会に諮ることが法理上求められると思います。


If the amount of a remuneration for director is prescribed in the articles of incorporation, they should be amended.
In a meeting of shareholders,
not an ordinary resolution but a special resolution can amend articles of incorporation.
That is to say, in such case, an ordinary resolution is not enough, actually.

役員報酬の金額を定款に定める場合には、定款を変更しなければなりません。
株主総会では、普通決議ではなく特別決議により定款を変更できます。
すなわち、このような場合には、実は普通決議では不十分なのです。