2018年4月7日(土)



ここ19日間のコメントを踏まえた上で、記事を1つ紹介し、
「市場取引の価格と相対取引の価格の相違点」について一言だけ書きたいと思います。

 


2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

から

2018年4月6日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201804/20180406.html

までの一連のコメント

 


「オークション方式」に関する過去のコメント

2016年3月27日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201603/20160327.html

2016年7月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201607/20160713.html

 


2018年4月7日(土)日本経済新聞
商品市場のイロハ D
相対取引、大半の素材で活用 店売りは値動き大きく
(記事)

 



2018年4月2日(月)に紹介しました計3本の記事と2018年4月1日(日)に紹介しました計8本の記事も
今日のコメントの題材としてコメントを書きたいと思います。
まず、本日2018年4月7日(土)付けの日本経済新聞の記事「商品市場のイロハ」についてですが、
市場取引ではなく相対取引についての解説記事なのですが、記事には聞きなれない言葉が載っているなと思いました。
端的に言えば、記事中にある「ひも付き契約」というのは一般的な言い方をすると「受注生産」のことだと思います。
そして、記事中にある「一般流通(店売り)」というのは一般的な言い方をすると「見込生産」のことだと思います。
「受注生産」とは、顧客から注文を受けてその顧客向けにメーカーが生産をし顧客に直接引き渡す生産形態・販売形態のことです。
「見込生産」とは、顧客から直接注文を受けることはなく、メーカーが需要予測を行った上で汎用品や規格品を生産し、
主に卸売業者(問屋)に引き渡す生産形態・販売形態のことです。
「受注生産」では、メーカーが完成品在庫を抱えることはありません(原材料の在庫や製造途中の仕掛品のみ抱え得る)。
「見込生産」では、メーカーは原材料の在庫も製造途中の仕掛品も完成品の在庫も抱え得ることになります。
「受注生産」では、製造製品の採算性は製造前に明らかになります。
「見込生産」では、卸売業者(問屋)から引き合い(需給関係)次第で、大量の在庫を抱えて赤字になることもあれば、
完成品を全て売りさばくことができ大きな利益を得ることができることもあります。
「受注生産」と「見込生産」には以上のような相違点があるわけです。
また、鉄鉱石や石炭といった原材料を買い手が長期間に渡り安定的に継続して購入したい(売り手からの安定供給を希望する)
という場合には、市場取引ではなく相対取引を行うことになります。
2018年4月2日(月)に紹介しました2018年1月16日(火)付けの日本経済新聞の記事(一目均衡)には、
鉄鉱石の供給・調達に関する長期契約に関連し、「当用買い」という言葉が用いられています。
「当用買い」は、より専門的には「スポット」という用語で表現されるようなのですが、
文脈に即して意訳すると「その場で買える分だけ」という意味合いになると思います。
市場取引の一類型である「スポット取引」には「現物取引」という意味もあるのですが、
「スポット取引」では「現物をその場で買う」のは確かですが、安定供給や長期契約といった概念の反意語としては、
「当用買い」は「その場で買える分だけ」という意味合いになると思います。
どういうことかと言いますと、「市場取引では長期的・安定的に継続して目的物を購入することはできない。」ということです。
端的に言えば、市場取引では、1取引単位(1kgや1トンや1口や1単元等)でしか目的物の購入ができないのです。
他の言い方をすれば、まとめ買いや大量購入が市場取引ではできないのです。
その理由は、買い手が市場で目的物を購入するためには、市場に売り手がいなければならないからです。
市場に目的物の売り手が現れなければ、買い手は目的物を市場で買えないのです(必然的に目的物の購入が単発的・不安定になる)。
また、そもそもの話をすれば、市場というのは不特定多数の取引参加者がいることが前提であるわけですが、
それはどこか「市場では買い手も売り手も小口の取引希望者だ。」ということを意味しているように思うわけです。
つまり、市場にいるのは、「大口かつ少数」の参加者ではなく、「小口かつ多数」の参加者であることが前提だと思うわけです。
簡単に言えば、市場というのは、参加者が目的物を長期的・安定的に購入する・売却することには不向きだと思うわけです。
他の言い方をすれば、市場というのは、参加者が目的物を長期的・安定的に購入する・売却するための場所ではないわけです。
買い手が市場で目的物を購入するためには、買い手の購入希望価格で売却を希望する売り手が市場にいることが必要ですが、
取引希望価格だけであればともかく、取引希望数量まで買い手と売り手との間でぴたりと一致するということはあり得ませんし、
そのようなことは市場が提供する役割を超えることだと言わねばならないでしょう(「価格」に関する「競り」の場を提供するだけ)。
2017年6月29日(木)の日本経済新聞の記事には、鉄鋼原料の長期安定調達(相対取引)に関しスポット市場の価格を値決めに使う、
という趣旨のことが書かれていますが、これは端的に言えば「取引数量」を無視した値決めだと言わねばなりません。
簡単に言えば、「取引価格が決まる前提が市場取引と相対取引とでは根本的に異なる。」のです。
スポット市場の価格は、不特定多数の参加者の中のある1人の相手方と1単位を取引する時の価格であるに過ぎないのです。