2018年3月23日(金)



ここ4日間のコメントを踏まえた上で、一言だけ追記をします。

2018年3月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180319.html

2018年3月20日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180320.html

2018年3月21日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180321.html

2018年3月22日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180322.html

昨日スキャンして紹介した教科書の「246ページ」の記述(青色の下線部)は間違っているのではないかと思いました。
教科書執筆者は少し勘違いをしているのかもしれないと思いましたので、僭越ながら、私見を書きたいと思います。
まず先に結論を書きますと、金融商品取引法の適用を受ける有価証券として列挙されています「預託証券」(「20号」)は、
この文脈では、「日本預託証券」(JDR:Japanese Depositary Receipt)を指しているわけであり、
アメリカで発行される預託証券である「米国預託証券」(ADR:American Depositary Receipt)は実は該当しない、
という考え方になると思います。
教科書には、「米国預託証券」(ADR)が金融商品取引法上の有価証券に該当すると書かれていますが、それは間違いだと思います。
金融商品取引法上の有価証券に該当するのは、「日本預託証券」だと思います。
「米国預託証券」(ADR)は金融商品取引法上の有価証券に該当しません。
なぜならば、「米国預託証券」(ADR)は米国において発行される有価証券に他ならないからです。
日本国内の投資家や金監督当局の立場から見れば、外国の会社法や関連法律に基づいて発行された株券など(有価証券や証書等)
の預託を受けた者が、日本において発行するものを金融商品取引法上「預託証券」(「20号」)と呼ぶわけです。
教科書でいう(青色の下線部)「株券など」(有価証券や証書等)(すなわち、預託証券の裏付けとなる原有価証券)の根拠法に、
日本の会社法や日本の金融商品取引法は含まれないわけです。
預託証券という文脈では、アメリカの会社法に従って発行された株式は、日本の金融商品取引法上の有価証券に該当しないわけです。
すなわち、預託証券という文脈では、「原株式」は日本の金融商品取引法上の有価証券に該当しないわけです。
しかし、アメリカの会社法に従って発行された株式(原株式)の預託を受けた者が、
当該証券等(すなわち、原株式)の発行された国(すなわち、アメリカ)以外において(すなわち、日本で)発行する預託証券は、
日本の金融商品取引法上の有価証券に該当するわけです(日本で発行されるその預託証券のことを「日本預託証券」と呼ぶわけです)。
簡単に言えば、「原株式」は日本の金融商品取引法上の有価証券に該当しませんが、
「日本預託証券」は日本の金融商品取引法上の有価証券に該当するわけです。
アメリカで発行される預託証券である「米国預託証券」(ADR:American Depositary Receipt)は、
文字通り米国で発行され米国内のみで流通がなされる有価証券ですので、
日本の金融商品取引法上の有価証券に該当しない(そして、米国の一定の証券規制上の有価証券に該当する)わけです。
敢えて言うならば、「米国預託証券」(ADR)は、日本の金融商品取引法上の「外国の者の発行するもの」(「17号」)に該当する
と解釈できなくはないのですが、その解釈は少なくとも「預託証券」という文脈においては本質的ではないと思います。

 



「246ページ」に記載さています預託証券(「20号」)の「注5」が示唆に富み理解のヒントになると思いましたので、引用します。

>金商法に列挙されている有価証券の多くは、日本国内で発行されるものですので、
>その預託を受けて発行国と同一の国(つまり日本)で証書を発行すれば、
>それは論理的には、受益証券発行信託の受益証券(M)に該当することになるでしょう。

そして、「245ページ」の「受益証券発行信託の受益証券」(「14号」)には次のように書かれています。

>Mの受益証券発行信託の受益証券は、信託の受益権を有価証券化したもので、代表的な例としては、
>外国株や外国ETF(Exchange Traded Fund、上場投資信託)、外国指標連動証券であるETN(Exchange Traded Note)
>を受託証券とするJDR(Japanese Depositary Receipt、日本型預託証券)が想定され、東証において上場制度が設けられています。

教科書によりますと、外国株を裏付けとする「日本預託証券」(JDR:Japanese Depositary Receipt)は、
受益証券発行信託の受益証券(「14号」)に該当する、とのことです。
「日本預託証券」は受益証券発行信託の受益証券(「14号」)に該当するという分類方法はもちろん理に適うと思うのですが、
それならば、日本の金融商品取引法に「預託証券」(「20号」)という定義が必要ないと思います。
「預託証券」(「20号」)は、例えば「米国預託証券」を想定しているのでしょうが、
そもそも「米国預託証券」は米国の一定の証券規制に基づき定義される有価証券であるわけです。
日本の金融商品取引法では「米国預託証券」を定義できないはずなのです。
「米国預託証券」は、敢えて日本の金融商品取引法で分類するならば、「外国の者の発行するもの」(「17号」)に該当する、
という捉え方しかできないと思います。
「米国預託証券」を日本の金融商品取引法の適用範囲に含めるのは、「属地主義」でも「属人主義」でもないわけです。
「米国預託証券」を日本の金融商品取引法の適用範囲に含めても、日本の投資家の利益は保護されないわけです。
なぜならば、論理的には、日本の投資家が「米国預託証券」を購入することはあり得ないからです。
例えば、トヨタ自動車株式会社は、東京証券取引所にトヨタ自動車株式会社株式を上場させており、
さらに、ニューヨーク証券取引所にトヨタ自動車株式会社株式のADRを上場させているわけですが、
日本の投資家がトヨタ自動車株式会社に証券投資を行いたいと思った場合、
その日本の投資家は東京証券取引所でトヨタ自動車株式会社株式そのものを購入するわけです。
その日本の投資家はわざわざニューヨーク証券取引所に上場しているADRの方を購入することはしないわけです。
証券会社が顧客に提供しているサービス次第では、日本の投資家もニューヨーク証券取引所に上場している
トヨタ自動車株式会社株式のADRを購入することができるのかもしれませんが(システム上は十分に実現可能なことでしょう)、
日本の投資家によるADRの購入までも日本の金融商品取引法により保護する必要があるのかと言えば、答えは否でしょう。
日本の上場企業であるトヨタ自動車株式会社を例に出したのはかえって話が分かりづらくなった部分もあるかもしれませんが、
日本以外の世界各国の上場企業のADRに関しても、日本人投資家が米国まで赴き現地で購入するもの、という捉え方しかできない
と言いますか、その証券投資はまさに外国市場(現地)に上場している「外国株」そのものへの証券投資と同じだと思うわけです。
なぜならば、その有価証券は、本来的に現地で発行され現地で流通しているからです。
「米国預託証券」は純粋に米国の有価証券なのです。
日本の金融商品取引法は日本の投資家を保護するための法律だ、という点から考えれば、私が何を言いたいか分かると思います。
極論すれば、「米国預託証券」(ADR)は日本と何の関係があるのか、という言い方ができるわけです。
率直に言えば、日本の投資家が「米国預託証券」を購入することは、日本における投資家保護の範囲外のことなのです。
日本にいさえすれば、日本人旅行者がグランドキャニオンに転落することはないのですから。