2018年3月8日(木)



2018年3月7日(水)日本経済新聞
損保のXLを仏アクサ買収 1兆6000億円
(記事)




Paris Mon Mar 5, 2018
AXA
XL Group Ltd
AXA to acquire XL Group: Creating the #1 global P&C commercial lines insurance platform
ttps://www.axa.com/en/newsroom/press-releases/20180305-AXA-to-acquire-XL-group
ttp://xlcatlin.com/insurance/news/axa-to-acquire-xl-group

 


外国株 銘柄一覧(日本取引所グループ)
ttp://www.jpx.co.jp/equities/products/foreign/issues/index.html

 

YTL Corporation Berhad
ttp://www.ytl.com/

(トップページのキャプチャー)



H29.12.26 15:07
ワイ・ティー・エル・コーポレーション・バーハッド
有価証券報告書  
(EDINET上と同じPDFファイル)

第一部 【企業情報】
第1 【本国における法制等の概要】
1 【会社制度等の概要】
(3/510ページ)

>当社に適用される新会社法の概要は以下のとおりである。


 



京セラ株式会社による米国預託証券のニューヨーク証券取引所における上場廃止について書いたコメント↓

2018年2月27日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180227.html

 

「フォームF4」と呼ばれる開示ルールが日本企業に適用されるのは根本的に間違いである、という点について書いたコメント↓

2018年3月4日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180304.html

 

理論的には、「日本電信電話株式会社株式」そのものをニューヨーク証券取引所に上場させることはできない(ADRのみ上場可)、
という点について書いたコメント↓

2018年3月6日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180306.html

 

「自主的な上場廃止は証券制度上認められるのか?」、そして、「上場有価証券の相対取引は証券制度上認められるべきなのか?」、
という点について書いたコメント↓

2018年3月7日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180307.html

 



【コメント】
一昨日2018年3月6日(火)と昨日2018年3月7日(水)のコメントの続きを書きたいと思います。
まず、昨日は書きそびれたのですが、昨日紹介しました2017年9月20日(水)付けの日本経済新聞の記事も題材にして、
「預託証券」についてコメントを書きたいと思います。
2017年9月20日(水)付けの日本経済新聞の記事は、「日本預託証券」についての解説記事であるわけですが、
ADR(米国預託証券)について理解をする上でも有用かと思います。
記事によりますと、2017年9月29日に東京証券取引所に米国の半導体ベンチャー企業である
テックポイント・インクが上場した、とのことです。
テックポイント・インクは、株式ではなく「日本預託証券」で東京証券取引所に上場を果たしたわけなのですが、
記事中の表を見ますと、投資家にとっては、株式を保有している場合に比べると、
「日本預託証券」の保有では、享受できる権利が一部制限されるようです。
株式と「日本預託証券」の一番大きな相違点が、株主総会に参加できるか否か(議決権を行使できるか否か)、だと思います。
投資家は、株式を保有していれば株主総会に参加できるのですが、
「日本預託証券」を保有していても株主総会には参加できないのです。
その理由は、記事にも書かれていますが、会社の株主名簿上の「株主」は受託会社(預託銀行とも呼びます)だからです。
たとえ預託証券を保有していても、投資家は会社の株主名簿上の「株主」にはなれないのです。
ですので、投資家の立場から見ますと、預託証券ではなく株式そのものを保有できるに越したことはないわけです。
外国株の取り扱いを行なっていない証券会社というのは現在ではほとんどないと思いますし、
外国証券取引口座を開設するのも極めて容易だと思います(日本株の取引口座の開設手続きとほとんど同じだと思います)。
投資家にとって、外国株に証券投資を行なうための実務上のハードルは現在では非常に低くくなっている、と言えると思います。
ただ、理論上ここで問題になるのが、投資家が投資を行なう有価証券はまさに「外国株」という点であろうと思います。
東京証券取引所では、外国企業が株式を直接に市場に上場させることを認めているわけです。
外国企業が株式を直接に市場に上場させることを認めているからこそ、東京証券取引所に「外国株」という証券区分があるわけです。
逆から言えば、「日本預託証券」は証券の分類上は「外国株」ではないわけです。
外国企業が株式を直接に市場に上場させることの問題点としては、外国企業の立場から言えば、
日本市場における投資家保護の観点から、日本語の情報開示が義務付けられる、という点だと思います。
これは外国企業が日本市場に「日本預託証券」を上場させる場合と同じです。
話を一般化して言えば、ある会社が海外の市場に株式や預託証券を上場させる場合は、
「現地の上場企業が服する証券規制と同じ証券規制に服さなければならない。」、ということになるわけです。
上場されるのが株式であれ預託証券であれ、現地においては(現地の投資家にとっては)、同じ上場有価証券だからです。
海外企業であっても、現地の上場企業が服する証券規制と同じ証券規制に服さなければならない、ということは、
投資家に対する情報開示は現地の上場企業が用いるのと同じ言語を用いなければならない、ということです。
すなわち、投資家に対する情報開示は「現地の公用語」(日本なら日本語、米国なら英語)でなければならない、ということです。
投資家保護の観点(現地の証券規制)から言えば、株式と預託証券との間に開示制度上の差異はない、ということになります。
投資家が享受できる権利内容に一部差異はありますが、投資家保護上、株式と預託証券との間に差異があってはならないのです。
会社は、海外の市場に株式を上場させようが預託証券を上場させようが、服しなければならない証券規制は全く同じなのです。
例えば預託証券の上場であれば相対的に簡易な情報開示だけで済む、などということには投資家保護の観点からならないわけです。
また、株式と預託証券のどちらを上場させるにせよ、原株式は現地の会社法ではなく会社の母国の会社法に基づき発行されています。
特に「現地の証券規制に従って発行された有価証券しか現地市場での上場は認められない。」、という観点から言えば、
理論的には「株式を現地市場に直接上場させることは理論的には間違いである。」という結論になります。

 



「株式とは異なり、預託証券は現地の証券規制に従って発行された有価証券である。」という点が預託証券の他ならぬ特長なのです。
株式と預託証券の相違点(発行と適用される法律)をまとめると、次のようになるのではないかと思います。

日本の会社の株式 → 日本の会社法に従って発行(上場の際は日本の金融商品取引法が直接に適用される)
米国の会社の株式 → 米国の会社法に従って発行(上場の際は米国の証券取引法が直接に適用される)
日本預託証券     → 日本の金融商品取引法に従って発行(厳密には信託法だが直接的に日本の金融商品取引法が適用される)
米国預託証券     → 米国の証券取引法に従って発行(厳密には信託関連の法令だが直接的に米国の証券取引法が適用される)

@日本の会社の株式を裏付けとした米国預託証券やA米国の会社の株式を裏付けとした日本預託証券は、結局のところ
原株式の「発行」は会社の母国の会社法に基づいている一方、預託証券の「上場」は現地の証券取引法に基づいているため、
有価証券の取り扱いに関する根拠法に必然的にねじれが生じてしまうという問題点があると思います。
この問題点は、どちらせによ「株式を外国市場に直接上場させる場合」にも当てはまることなのですが、
預託証券という形を取れば問題が生じないというわけではない、という点について指摘をしました。
「株式を外国市場に直接上場させている事例」についていくつか見てみましょう。
まず、今日最初に紹介している2018年3月7日(水)付けの日本経済新聞の記事になりますが、
英国領のバミューダー諸島に登記されている(国籍が英国の、英国の会社法が設立根拠法となっている)XL Group Ltdは、
ADRではなく株式をニューヨーク証券取引所に上場させています。
ニューヨーク証券取引所は、英国と米国とで上場株式の取り扱いに共通点が多いことから、
実務上(投資家保護の保護の観点上)問題は生じないと判断し、XL Group Ltdによる株式の上場を認めた、
ということなのだろうと思います。
しかし、例えば、(上場市場は確かにニューヨーク証券取引所ですが)英国の上場企業であるXL Group Ltdを、
英国法に規定のある「スキーム・オブ・アレンジメント」の手法に基づき完全子会社化することができるのか、
というと、おそらくできないのではないかと思います。
このたびアクサは、「スキーム・オブ・アレンジメント」の手法によりXL Group Ltdを完全子会社化するわけではないわけです。
アクサは、XL Group Ltdと完全子会社化することについて合意をした、と発表しているわけですが、
発表されているプレスリリースには、「スキーム・オブ・アレンジメント」の手法を用いる、とは書かれていません。
「スキーム・オブ・アレンジメント」とは異なる米国法に規定のある何らかの手法に基づき、完全子会社化が行なわれるわけです。
ただ、プレスリリースには次のような記載もあります。

>Completion of the transaction is subject to approval by XL Group shareholders
(この取引の完了には、XL Group株主様からの承認が条件となります。)

イメージとしては、日本法でいうところの「現金を対価とする株式交換」が行なわれるということなのだろうと思いました。
そうしますと、結局のところ、英国法に規定のある「スキーム・オブ・アレンジメント」と同じような手続きが行なわれる、
ということなのだろうと思いました。
その意味においては、英国企業がニューヨーク証券取引所に直接上場していても、投資家保護上の問題点は生じない、
と言えるのかもしれないなと思いました。
ただ、理論上の問題点としては、なぜ英国企業に米国の会社法が適用されるのか、という問題点があると思います。
米国内で「スキーム・オブ・アレンジメント」の手続きが行なわれるのは確かにおかしいのかもしれませんが、
それと同じくらい、理論的には英国企業に米国の会社法が適用されるのはおかしいと思いました。

 



次に、日本取引所グループのウェブサイトで「外国株」を検索していて初めて知ったことなのですが、
「ワイ・ティー・エル」という会社名の、国籍がマレーシアの建設業の会社が
「東京証券取引所市場第一部外国株」に株式を上場させています。
「ワイ・ティー・エル」の場合は、日本預託証券の上場ではなく、株式の上場です。
「ワイ・ティー・エル」の投資家向けのIRウェブサイトを見ますと、英語のサイトしかありません。
一瞬、これでは投資家保護上問題があるのではないかと思ったのですが、
EDINETを見てみますと、日本の上場企業が提出・開示しなければならないのと全く同じ法定開示書類を、
「ワイ・ティー・エル」も日本語で作成し提出・開示していることが分かりました。
少なくとも情報開示の点では何らの問題もないと思いました。
そして、「ワイ・ティー・エル」が「H29.12.26 15:07」に提出した有価証券報告書を見てみますと、
有価証券報告書の冒頭に、会社に適用されるマレーシアの会社法制の概要についての記載があります。
「マレーシアの会社法制に詳しくない投資家の方は弊社株式への投資を控えていただきたいと思います。」、
という警告というと言い過ぎですが、投資家保護上の要望が有価証券報告書の最初に記載されている、というふうに感じました。
上場市場は「東京証券取引所(市場第一部外国株)」ですが、
「ワイ・ティー・エル」にはマレーシアの会社法が適用されるわけです。
しかし、そうしますと、では、先ほどのXL Group Ltdの事例については一体どのように考えればよいのでしょうか。
XL Group Ltdには、英国の会社法ではなく米国の会社法が適用される、ということでしたが。
この点については、理論的には全く説明は付けられないことだと思うしかないと思います。
先ほど私は、ニューヨーク証券取引所は、英国と米国とで上場株式の取り扱いに共通点が多いことから、
実務上(投資家保護の保護の観点上)問題は生じないと判断し、XL Group Ltdによる株式の上場を認めた、
ということなのではないかと書きましたが、詳しくは分かりませんが、
日本とマレーシアとでは上場株式の取り扱いに共通点が多くはない、というようなことなのかもしれません。
実務上(投資家保護の保護の観点上)の問題は現実にはあまり生じないであろうと判断し、
東京証券取引所は「ワイ・ティー・エル」株式の上場を認めはしたものの、
「ワイ・ティー・エル」株式に適用されるのはマレーシアの会社法である、
ということを十分に理解した上で投資家は「ワイ・ティー・エル」株式を購入するようにして欲しい、
と東京証券取引所は考えている、としか説明のしようがないと思います。
「ワイ・ティー・エル」株式の「東京証券取引所(市場第一部外国株)」への上場は、
私が以前書きました香港証券取引所への「セカンダリー上場」に似ているのと言えるのかもしれません。
「ワイ・ティー・エル」に適用される会社法のことを鑑みますと、「ワイ・ティー・エル」株式の東京証券取引所への上場は、
「department listing」(百貨店上場)や「extraterritorial lisiting」(域外上場)であるというふうに感じます。
XL Group Ltdの事例と「ワイ・ティー・エル」の事例とを比較して考えてみますと、
理論的にはやはり「外国株や預託証券の上場は認められない。」という結論になると思います。
会社や会社が発行した有価証券に適用される法律は登記により一意に決まる、と考えるべきなのだと思います。
上場・非上場を問わず、登記(設立登記)の根拠法と同一の国の法律・法令が一意にそして排他的に会社に適用される、
という取り扱いが最も矛盾やねじれが生じない、と考えるべきだと思います。

 


Though XL Group Ltd is registered in the Bermuda islands in the U.K. territory,
it is not its ADR but its stock itself that is listed in the New York Stock Exchange.

XLグループは英国領のバミューダー諸島に登記されているのですが、
ニューヨーク証券取引所に上場しているのは、ADRではなく株式そのものなのです。

 

Whether a company makes its original share or its depositary receipt listed in the oversea market,
it must disclose its information in the local official language in the local market
quite as much as the local listed companies.

会社が外国の市場に上場させるのが株式そのものであろうが預託証券であろうが、
会社は、現地の上場企業と全く同じだけ、現地市場において現地の公用語で情報を開示しなければなりません。

 

Registration is not a decoration.

飾りじゃないのよ、登記は。

 

Registration determines law which is applied to a company.

登記により、会社に適用される法が決まるのです。