2018年3月6日(火)
日本企業が米ニューヨーク証券取引所(NYSE)をはじめとする海外の取引所への上場を取りやめる動きが広がっている。
NTTは9日、NYSEに対して上場廃止を通知したと発表した。4月3日に上場廃止になる予定。
昨年には日本電産やアドバンテストなどもNYSEでの上場を廃止したばかり。
日本企業が海外進出を急いでいた1990年代から2000年代はじめにかけては海外市場に預託証券などを上場する動きが相次いだが、
足元では撤退が加速している。
■パナソニックや日立に続く「撤退」
NYSEに米預託証券(ADR)を上場している日本企業の数は1月末時点で13社。
今回上場廃止を決めたNTTと来年3月に上場廃止する予定のNTTドコモを除くと、残るのはソニーやキヤノンなど11社になる。
NTTが米市場に上場したのは1994年。
この時期には海外での知名度向上や資金調達手段の多様化を狙い、電機や自動車などの主要企業がこぞって上場していた。
しかし、2010年代に入ってからは日電産やアドテストのほかにも、パナソニックや日立製作所、コナミなどが上場を廃止。
続いてNTTも、「証券市場をめぐる環境が変わり、上場を維持する必要性が低下した」と判断した。
NYSEだけではない。英国のロンドン証券取引所(LSE)でも上場する日本企業の数が2000年代の20社超から減少。
今年1月にはANAホールディングスも上場を廃止したばかりだ。
日本企業による海外市場からの「撤退」を後押しする環境の変化は大きく分けて2つある。
■広がる「重複上場」解消の動き
ふたつめは、日本企業による株式以外での海外での資金調達が活発になっていることだ。
ディールロジックの調べによると、2015年に日本企業による外貨建ての社債の発行額は4兆円超と過去20年で最大になり、
2016年も高水準が続いた。
現地で直接、資金調達できる力があれば、海外の株式市場に上場を続けるためのコストを払う必要性は低下する。
一方、海外企業の間でも日本での上場を取りやめる動きが出ている。
東京証券取引所への外国企業の上場第1号のうちの1社だったダウ・ケミカルが2016年に上場を廃止。
今年2月にはバンク・オブ・アメリカ・コーポレーションも上場廃止を申請すると発表した。
東証上場の外国企業の数は1991年のピーク時の127社から5社に減る見込みだ。
市場のグローバル化が加速する中、国内外での重複上場を解消する動きは日本企業のみならず、世界の企業全体に広がりそうだ。
(日本経済新聞 2017/3/9
18:20)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ09HRM_Z00C17A3000000/
2017年2月10日
日本電信電話株式会社
ニューヨーク証券取引所における米国預託証券の上場廃止申請及び米国預託証券に係る取扱いの見直しに関するお知らせ
ttp://www.ntt.co.jp/news2017/1702/170210a.html
(キャプチャー画像)
(キャプチャー画像)
京セラ株式会社による米国預託証券のニューヨーク証券取引所における上場廃止について書いたコメント↓
2018年2月27日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180227.html
「フォームF4」と呼ばれる開示ルールが日本企業に適用されるのは根本的に間違いである、という点について書いたコメント↓
2018年3月4日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180304.html
【コメント】
ちょうど1年前の記事とプレスリリースになるのですが、
日本電信電話株式会社がニューヨーク証券取引所における米国預託証券の上場廃止を行なった、という事例になります。
日本企業によるニューヨーク証券取引所における米国預託証券の上場廃止に関しては、
最近では京セラ株式会社が行なっており(2018年2月26日(月)に開示・発表)、京セラ株式会社の事例を題材にして、
2018年2月27日(火)に投資家保護の観点から見たADR(米国預託証券)の問題点についてコメントを書きました。
その際のコメントの要点(ADR(米国預託証券)の問題点)を一言で書きますと、
「ADR(米国預託証券)の裏付けである株式は、日本の法規に従って発行されている。」という点になります。
ADR(米国預託証券)は、最後の最後は日本の会社法の規定に基づいた取り扱いを受けることになるのです。
そして、日本電信電話株式会社が2017年3月9日に発表したプレスリリース
「ニューヨーク証券取引所における米国預託証券の上場廃止予定に関するお知らせ」を見ますと、
京セラ株式会社が2018年2月26日に発表したプレスリリース
「米国預託証券のニューヨーク証券取引所における上場廃止申請及び米国証券取引委員会の登録廃止申請に関するお知らせ」
に記載内容や文言が極めて似ているなと思いました。
両プレスリリースを比較して気付いた点がありますので、その点について一言だけ書きたいと思います。
日本電信電話株式会社のプレスリリースに記載されている「1.NYSE上場廃止申請を行う理由」を読みますと、
京セラ株式会社の場合同様、日本企業が米国の証券取引所にADRを上場させますと、
@米国証券取引法に基づく開示義務への対応、A米国会計基準による連結財務諸表の作成、
B米国企業改革法の求める内部統制の構築、の3つの情報開示義務が米国の証券規制に基づき課せられることになりなります。
この3つの情報開示義務は、結局のところ、「米国の証券取引所に株式を上場させている米国企業」が遵守しなければならない
証券規制(情報開示義務)と全く同じなのだと思います。
そして、プレスリリースには、近年の動向として「海外投資家の日本市場での株式取引が大幅に増加」と書かれています。
すなわち、例えば米国の投資家が日本市場で日本電信電話株式会社株式を購入することが近年では容易になっているわけです。
日本市場で日本電信電話株式会社株式を購入した米国の投資家は、日本の証券規制を遵守して証券取引を行なっているわけです。
逆から言えば、日本市場で日本電信電話株式会社株式を購入した米国の投資家は、
米国の証券規制を遵守して証券取引を行なっているわけではない(米国の証券規制は日本市場の取引には関係がない)わけです。
2018年3月4日(日)のコメントで書きましたが、「フォームF4」と呼ばれる開示ルールが日本企業に適用されるのは
根本的に間違いであると思いました。
また、ADR(米国預託証券)は米国市場における有価証券の取引であるわけですから、
ADR(米国預託証券)の取引に関して米国の証券規制が課せられるのは当然のことであるわけです。
証券規制は市場単位だ、証券規制は市場ごとに異なる、と考えるべきだと思います。
Each market has its own securities regulations.
証券規制は市場単位なのです。
An ADR is merely securities whose interest corresponds to its original
stock.
An ADR is fundamentally different from its original stock, including
their respective issuers.
An ADR is issued on the basis of the U.S.
securities regulations, whereas its original stock the Japanese Companies
Act.
ADR(米国預託証券)は、原株式と権利内容が一致している有価証券に過ぎないのです。
ADR(米国預託証券)は、それぞれの発行者も含めて、原株式とは本質的に異なったものなのです。
ADR(米国預託証券)は米国の証券規制に基づいて発行されていますが、原株式は日本の会社法なのです。