2017年2月27日(火)



2017年2月27日(火)日本経済新聞
京セラ 米預託証券の上場を廃止
(記事)




2017年2月27日(火)日本経済新聞 一目均衡
上場数は逆転したけれど
(記事)



2018年2月26日
京セラ株式会社
米国預託証券のニューヨーク証券取引所における上場廃止申請及び米国証券取引委員会の登録廃止申請に関するお知らせ
ttps://www.kyocera.co.jp/ir/news/pdf/180226_NYSE_j.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2018年2月26日
京セラ株式会社
国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に関するお知らせ
ttps://www.kyocera.co.jp/ir/news/pdf/180226_IFRS_j.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




Form 20-F(京セラ株式会社のIRライブラリー)
ttps://www.kyocera.co.jp/ir/library/20-f.html

 



IPO(新規株式公開)についての記事を多数紹介した時のコメント↓

2018年2月20日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180220.html

 

「証券制度は、投資家が株式を買うことよりも売却することに重きを置いている。」という点について指摘した3日前のコメント↓

2018年2月24日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180224.html

 

「証券制度上、会社が『清算期日』を定めている場合は、株式の上場は『募集』や『売出し』の前提ではない。」、
という点について書いた一昨日のコメント↓

2018年2月25日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180225.html

 

「香港証券取引所における「セカンダリー上場」は、
言わば"department listing"(百貨店上場)や"extraterritorial listing"(治外法権上場)である。」
という点について書いた昨日のコメント↓

2018年2月26日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180226.html


 


【コメント】
昨日は、香港証券取引所における「セカンダリー上場」について書きました。
香港証券取引所における「セカンダリー上場」は、正式には「secondary listing」と表現するようですが、
私は、"department listing"(百貨店上場)や"extraterritorial listing"(治外法権上場)と訳してみました。
今日改めて百貨店のビジネスモデルについてインターネットで調べてみますと、
百貨店のことは「場所貸し業」とよく揶揄される、とまで書かれていました。
百貨店はテナント(主にメーカー)に場所を貸しているだけだ、と批判的に書かれている解説記事もたくさんありましたが、
百貨店という建物(街のランドマーク)において様々な専門的商品を取り揃えていることに商業上の意味があるわけですから、
むしろそれこそが百貨店の事業形態(ビジネスモデル)に他ならない、と言わねばならないと思います。
香港証券取引所に「セカンダリー上場」している銘柄には、様々な国の上場銘柄があるわけなのですが、
香港証券取引所にいけば様々な国の上場銘柄を買うことができる、ということから、
"department listing"(百貨店上場)という訳を考え付いたわけです。
また、香港証券取引所における「セカンダリー上場」では、香港のルールは上場銘柄に適用されないことになりますので、
上場銘柄の母国のルールが適用されるということから"extraterritorial listing"(治外法権上場)という訳を考え付きました。
今日改めてインターネットで検索してみますと、"extraterritorial"には「域外の」という意味・訳出があるようです。
"extraterritorial listing"そしてその日本語訳として「域外上場」という言葉を考えてみたのですが、
日本語としては、「域外上場」という言葉は香港証券取引所における「セカンダリー上場」の実態に即していると自分で思います。
それで、香港証券取引所における「セカンダリー上場」とはある意味対照的な上場形態になるのですが、
日本の上場企業が米国の証券取引所にADR(米国預託証券)を上場させることがあります。
その代表的な例が紹介している京セラ株式会社の米国預託証券の上場です。
プレスリリースによりますと、日本の上場企業が米国の証券取引所にADR(米国預託証券)を上場させますと、大きく分けて、
@米国証券取引法に基づく開示義務、A米国会計基準による連結財務諸表の作成、B米国企業改革法の求める内部統制の構築、
の3つの対応を追加的に行うことになるようです。
日本企業がADR(米国預託証券)を上場させますと、日本の法規制に加え、「米国の法規制に従う。」ということになるわけです。
日本企業がADR(米国預託証券)を上場させますと、米国においては、
「米国の証券取引所に株式を上場させている米国企業」と全く同じ証券規制に服することになるわけです。
これはまさに香港証券取引所における「セカンダリー上場」と対照的な取り扱いであるわけです。
なぜならば、香港証券取引所における「セカンダリー上場」では、基本的には日本企業は日本の法規制に従うだけだからです。

 


昨日のコメントの最後に、香港証券取引所における「セカンダリー上場」の問題点として、次のように書きました。

>特に株式の強制取得の場面などでは、株式に適用される法律を知っておかなければならないわけですが、
>「セカンダリー上場」では、外国における法律を知っておかなければならないため、
>その意味においては、「セカンダリー上場」は投資家にとって負担は大きい、という言い方はできるのだろうと思いました。

端的に言いますと、投資家に対する情報開示を中心とする「投資家保護」の観点から言えば、
日本企業がADR(米国預託証券)を上場させる場合には、米国においては、
「米国の証券取引所に株式を上場させている米国企業」と全く同じ証券規制に服する、と考えるべきであるわけです。
なぜならば、米国の証券規制(証券取引法等)は米国の投資家を保護するためにあるからです。
投資家保護の観点から言えば、「米国の証券取引所に上場している米国企業株式」と「米国の証券取引所に上場しているADR」
との間に、投資家保護の保護の程度(どのような手段で投資家を保護するか等)に差異があってはならないわけです。
以上のことから考えますと、香港証券取引所における「セカンダリー上場」は、
確かに、香港の投資家に他国の多様な上場銘柄を提供する(投資家にとって投資先が多様化する)ことには資するわけですが、
上場銘柄の多様化と反比例するかのように、投資家保護の観点はどうしてもおざなりになってしまうわけです。
香港証券取引所における「セカンダリー上場」銘柄に関して、証券制度上の問題が生じた場合は、
上場銘柄に適用されている法規制は香港の法規制ではないため、投資家の自己責任という部分がでてくるわけです。
香港の証券規制当局としては、トラブルに対応し切れない、ということになるあわけです。
他国の上場銘柄の多様化と投資家保護の観点は、トレードオフの関係にあると言えるわけです。

 



ただ、では、日本企業がADR(米国預託証券)を上場させる場合には、米国においては、
「米国の証券取引所に株式を上場させている米国企業」と全く同じ証券規制に服する、
という考え方を行いさえすれば何の問題も生じないのかと言えば、やはり一定度の問題は生じてしまうわけです。
例えば、昨日紹介した記事にありましたように、「合意していない株主から残りの全株式を強制的に購入する」、という場合、
日本と米国とで同一の規定があれば結果的にまだ問題は生じないと言えるのですが、
日本の法規には買収者にそのような権利が認められているが米国の法規には買収者にそのような権利は認められていない、
という場合ですと、そのような株式の強制取得について矛盾が生じるわけです。
日本の法規に従い、ADRの分も含めた京セラ株式会社株式の全てを強制取得するという時、
米国の法規にはそのような手続きはないとなりますと、
米国の投資家にとってはどのような法規に基づいて株式の強制取得がなされたのか分からない、ということになるわけです。
米国の証券取引所に上場している有価証券が「米国の証券取引所に株式を上場させている米国企業」と全く同じ証券規制に服する、
というのは、米国の投資家は米国の証券規制(そして米国の会社法制)についてさえ知っていれば投資家の利益は保護される、
という意味である(米国の投資家にとっては、米国の一連の法規を知っていることが制度上は必要十分だ)わけです。
端的に言えば、ある国において投資家保護が機能しているとは、その国の投資家は他国の法規は知らなくてもよい、
という意味であるわけです(その国の法規さえ知っていれば投資家の利益は自動的に保護される、と考えるわけです)。
その意味では、ADR(米国預託証券)というのは、最後の最後は日本の法規に従う、という部分がどうしてもあるわけです。
なぜならば、ADR(米国預託証券)の裏付けである株式は、日本の法規に従って発行されているからです。
原資産と言いますか、ADR(米国預託証券)の中心にあるものは日本の法規に従って発行された有価証券(株式)ですので、
ADR(米国預託証券)の取り扱いに関しては最後の最後は日本の法規に左右されてしまうわけです。
この問題点は、投資家に対する情報開示を中心とする証券制度の観点では本質的に解決しないのです。
なぜならば、この問題点は、本質的に会社制度の問題点だからです。

 


The Japanese regulations in general are applied to a "Kyocera Share" itself,
whereas the U.S. regulations in general are applied to an ADR of a "Kyocera Share."

「京セラ株式」そのものには日本の法規制全般が適用される一方、
「京セラ株式」の米国預託証券には米国の法規制全般が適用されるのです。

 

It is true that the U.S. accounting standards are applied to Kyocera's financial statements themselves,
but the Japanese regulations in general are applied to a "Kyocera Share" itself.

確かに、京セラの財務諸表そのものには米国会計基準が適用されているのですが、
「京セラ株式」そのものには日本の法規制全般が適用されているのです。