2018年2月26日(月)
ゲンティン、香港部門の株取引集約
■ゲンティン(マレーシアのカジノ大手) クルーズ船を運営する香港部門が
シンガポール取引所の「メインボード」上場廃止を条件付きで承認された。
ゲンティン香港は同取引所に副次的な「セカンダリー上場」を行っている。
ゲンティン香港は3日、プライマリー上場先である香港取引所のメインボードに株取引を集約すると発表した。
中国からの旅行者をターゲットにした計画を強化する中、北アジアの投資家を取り込むのが狙い。
同社のリム・コックタイ会長兼最高経営責任者(CEO)は今回の決定について、
成長戦略の一環で、取引を1カ所に集めることで香港取引所の株式の流動性を高めるためだと述べた。
1993年創業の同社はスタークルーズやクリスタルクルーズ、ラグジュリードリームクルーズを運営している。
香港部門は2015年に買収したドイツの造船会社ロイド・ベルフトを傘下に持ち、
カジノ運営のリゾーツ・ワールド・マニラの株式を保有している。
同社は東南アジアの投資家を取り込むため、3年前にシンガポールをセカンダリー上場先に選んだ。
リム氏は、拡大する中国市場の需要を満たすために商品ラインを拡大したいと考えており、
香港への株取引の集約は経営資源を集中させるのに役立つと語った。(クアラルンプール=CK・タン)
(日本経済新聞 2017/10/5
23:00)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO21929220V01C17A0FFE000/
日本企業の香港上場における法的な問題点の概要−SBI及びダイナムの香港上場を踏まえて−
(法と経済のジャーナル)
ttp://judiciary.asahi.com/outlook/2012121800003.html
上場規則
(香港IPO倶楽部)
ttps://www.hongkongipo.jp/visitor/ipo_process/
IPO(新規株式公開)についての記事を多数紹介した時のコメント↓
2018年2月20日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180220.html
「証券制度は、投資家が株式を買うことよりも売却することに重きを置いている。」という点について指摘した一昨日のコメント↓
2018年2月24日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180224.html
「証券制度上、会社が『清算期日』を定めている場合は、株式の上場は『募集』や『売出し』の前提ではない。」、
という点について書いた昨日のコメント↓
2018年2月25日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180225.html
>セカンダリー上場とは、既に他の証券取引所に上場する企業が、香港証券取引所に「二次的な」(=
Secondary)上場をする
>ケースであり、他の証券取引所の上場規則等の規制に服することから、
>香港証券取引所の判断で、上場規則等の適用に関し、多くの免除が認められる。
>日本の上場企業が香港証券取引所に上場する場合には、セカンダリー上場となる。
>香港証券取引所の上場規則も、こうしたコーポレート・ガバナンスに関する多様な規制を設けており、
>原則として、上場会社はこうした規制を遵守する義務を負う。
>そのため、香港証券取引所に上場する日本企業は、コーポレート・ガバナンスに関して、
>日本の会社法、金商法及び証券取引所の上場規則等と、香港証券取引所の上場規則等の両方の規制に服することとなる。
>しかし、日本及び香港における規制の導入にあたり、整合性を確保するための調整が行われたわけではなく、
>互いに重複ないし矛盾する点も数多く存在する。
>そのため、香港証券取引所からの免除の取得や、定款等の内部規程の整備等により、
>香港証券取引所の上場規則に基づく規制にどのように対応するかが、香港上場にあたっての実務的な課題となる。
>この点、ダイナムのケースにおいては、プライマリー上場のため、若干の例外を除き上場規則に関する免除は認められておらず、
>ほぼ全ての香港証券取引所の上場規則等の規制を遵守する義務を負うこととされた。
>これに対して、SBIのケースは、東京証券取引所及び大阪証券取引所において既に上場していたため、
>上場規則等の適用に関し、多くの免除が認められた点が異なっている。
一言で言いますと、既に他の証券取引所に上場している企業が香港証券取引所に上場することを
香港証券取引所では「セカンダリー上場」と呼んでいる(香港における上場形態の1つを指している)ようです。
つまり、香港証券取引所に「セカンダリー上場」を行っている、とは言いますが、
例えば、東京証券取引所に「セカンダリー上場」を行っている、とは言わないわけです。
香港証券取引所に特有の上場制度、という言い方ができるのだろうと思います。
ただ、解説記事を読む限りは、香港証券取引所が制度上設けている「セカンダリー上場」には問題が多いようです。
その問題というのは、母国のルールと香港のルールとの間に整合性がない点が多い、ということです。
例えば、香港証券取引所に「セカンダリー上場」を行っている日本企業は、
日本の会社法、金商法及び証券取引所の上場規則等と、香港証券取引所の上場規則等の両方の規制に服することになりますが、
両国のルールの間には重複や矛盾がありますので、実務上は、香港証券取引所の上場規則等の適用を除外する
というような形で「セカンダリー上場」の運用が行われているわけです。
日本のルールを優先して適用することで重複や矛盾が生じないよう調整を図っている、と言っていいわけです。
非常に大まかに言えば、香港証券取引所における「セカンダリー上場」では、株式自体は香港証券取引所に上場しているが、
その株式や上場企業に適用されるルールは、日本の会社法、金商法及び日本の証券取引所の上場規則等、
という枠組みになっているわけです。
「株式の売買の場」(株式市場)は香港なのだがそこで適用されているルールは日本のルール、
という特殊な上場制度が香港証券取引所における「セカンダリー上場」なのです。
香港の投資家は、「セカンダリー上場」銘柄の取引を行う際には、
日本の会社法、金商法及び日本の証券取引所の上場規則等の知識に詳しくなければならないわけです。
株式市場というのは「株式の売買の場」に過ぎない、という見方から言えば、
日本のルールに基づいている銘柄を香港でも投資家が容易に取引を行えるようになるわけなのですから、
「セカンダリー上場」のような上場形態は投資家の利便性の向上に資するとは言えるのだろうと思います。
私は最初、「セカンダリー上場」とは重複上場のことなのだろうか、と思いました。
しかし、解説記事を読みますと、「セカンダリー上場」は重複上場とはかなり大きく意味合いが異なっている、と分かりました。
「セカンダリー上場」は香港のルールを適用しないという形で香港証券取引所に株式の上場を行う、という上場形態ですので、
有り体に言えば、「場所だけを貸している」という状態を香港証券取引所は実現させているわけです。
「セカンダリー上場」は、英語では、「secondary
listing」と表現するようですが、
私には香港証券取引所がデパートの売り場やコーナーをメーカーに貸している様子が頭に思い浮かびましたので、
完全に私案になりますし、香港や英国や英語のネイティブの人に意味が通じるかどうかは分かりませんが、
「セカンダリー上場」は「department
listing」(百貨店上場)と訳すのはどうだろうかと思いました。
香港証券取引所は、新たな投資家(資金供給者)を開拓するために自社株式の取引を行える場所を求めている外国企業に、
株式取引の場を貸している、という様が頭に思い浮かぶわけです。
株式の取り扱いや株式の取引に関しては母国のルールで構いません、と香港証券取引所は外国企業にアピールしているわけです。
メーカーは、デパートの営業時間等デパートが定める一定のルールさえ守れば、
自社製品(化粧品や紳士服等)を自社の販売方法(マーケティング方法)で販売することができる、という百貨店の商法のことが、
香港証券取引所の「セカンダリー上場」制度を見て、私の頭に思い浮かびました。
また、これも証券取引の分野になじむ言葉かどうかは分かりませんが、香港証券取引所の「セカンダリー上場」においては、
株式の取り扱いや株式の取引に香港のルールは適用されない、という意味を込めて、
「extraterritorial
listing」(治外法権上場)と訳すのはどうだろうかと思いました。
外国企業は母国のルールに基づいて香港証券取引所に「セカンダリー上場」を行うことができるので、この訳を考えました。
関連する記事になりますが、ゲンティンについて検索していましたら、次の記事がヒットしました↓。
シンガポール海運大手、TOB後に上場廃止へ
■ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL、シンガポールの海運大手)
同社へのTOB(株式公開買い付け)を進める仏海運大手CMA
CGMは
18日のTOB期間終了後に上場を廃止する意向を示した。
これにより1968年設立のNOLは早ければ7月中にもシンガポール取引所(SGX)から姿を消す。
CMA CGMは6月28日、同社が保有するNOL株の保有比率が91%を超えたと発表した。
同社は保有比率が90%を超えたことで、シンガポールの法規に従い1株当たりの買い付け価格1.3シンガポールドルに
「合意していない株主から残りの全株式を強制的に購入する」権利を行使するという。
公開買い付け期間終了後、強制買収の手続きには少なくとも1カ月間かかる。
CMA CGMはシンガポール政府系ファンドのテマセク・ホールディングスが67%保有していたNOL買収に
33億8000万シンガポールドル(約2580億円)を投じる。
買収手続きの完了と上場廃止により、1968年に設立されたNOLの時代が終わりを告げることになる。
CMA CGMは、NOLが97年に米コンテナ海運大手APL(旧アメリカン・プレジデント・ライン)を買収し、
NOLのコンテナ船のブランド名として受け継いだ「APL」を引き続き継承発展させていくとしている。
APLは太平洋貿易で強力なブランド価値を持っている。(シンガポール=谷繭子)
(日本経済新聞 2016/7/1
21:00)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXLASDX01H25_R00C16A7FFE000/
特に株式の強制取得の場面などでは、株式に適用される法律を知っておかなければならないわけですが、
「セカンダリー上場」では、外国における法律を知っておかなければならないため、
その意味においては、「セカンダリー上場」は投資家にとって負担は大きい、という言い方はできるのだろうと思いました。
I want to express the "secondary listing" at the Hong Kong Stock
Exchange
by the word "department listing" or "extraterritorial listing."
香港証券取引所における「セカンダリー上場」のことを、
私は「百貨店上場」や「治外法権上場」という言葉で表現したいと思います。