2018年1月7日(日)



記事を1つ紹介して、ここ数日間のコメントに対し、一言だけ追記をしたいと思います。

 

2017年9月25日(月)日本経済新聞
中小、忍び寄る資金ショート スタートアップが手助け
日商保 オフィス敷金 半額
トランザックス 売掛債権、早く現金化
黒字倒産、昨年は過半
(記事)



「企業自身は業績予想を行ってはならない。」という点について書いた4日前のコメント↓

2018年1月3日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180103.html

 

「企業は増資を行ってはならない。」という点について書いた3日前のコメント↓

2018年1月4日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180104.html

 

「たとえ投資家間で株式の取引を行っても、『株式の本源的価値』には何らの影響を与えることもない。」、
それが「所有と経営の分離」と呼ばれる概念の本質の1つである、という点について書いた一昨日のコメント↓

2018年1月5日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180105.html

 

完全な「銘柄間の比較可能性」を担保することは現実には始めから不可能なことだ、という点について書いた昨日のコメント↓

2018年1月6日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180106.html

 



昨日のコメントに一言だけ追記をします。
昨日は、「銘柄間の比較可能性」を担保するためには、全業種・全業界で開示内容を同一・共通にするべきであるのだが、
現実には事業内容や業界特性が銘柄毎に異なっている以上、同一・共通の開示内容では情報の過不足が生じてしまうため、
完全な「銘柄間の比較可能性」を担保することは実は始めから不可能なことだ、と書きました。
そして、議論を進めていくを中で、昨日は次のように書きました。

>小売業には、期中の受注額や期末日時点の受注残高という概念が経営上ありませんし、また、売掛金も1円もありません。
>つまり、小売業には「貸し倒れ」という概念はないのです。

小売業は、売掛金の回収が遅れたりできなかったりしたことが原因で倒産することは絶対にないわけです。
なぜなら、小売業は、始めから現金で物品を販売しているからです。
小売業が倒産するとしたら、棚卸資産の過剰滞留(販売不振)が原因ということになるわけです。
逆に、銀行業は、棚卸資産の過剰滞留(販売不振)が原因で倒産をするということが絶対にありません。
なぜなら、銀行業は、始めから物品の販売していないからです(棚卸資産勘定自体が存在ない)。
銀行業が倒産するとしたら、貸出金が返済されないこと(貸し倒れ)が原因ということになるわけです。
さらに、建設業もまた、棚卸資産の過剰滞留(販売不振)が原因で倒産をするということが絶対にありません。
なぜなら、建設業は、発注者から建築物建設の注文を受けてから、建設を開始するからです。
建設業会計で言えば、発注者から建築物建設の注文を受けてもいないにも関わらず、
建設業の貸借対照表に未成工事支出金勘定が計上されることは決してないわけです。
すなわち、未成工事支出金勘定が、工事完成後に現金化されない(建設した目的物を相手方に引き渡すことなく取引が終わる)、
ということは、建設業のビジネスモデル(受注から建設そして引渡しまでの一連の流れ)を鑑みれば、あり得ないわけです。
建設業に、受注不振(顧客から注文がこない)はあるかもしれませんが、実は販売不振はないのです。
建設業において、いわゆる商品(i.e. 棚卸資産勘定=未成工事支出金勘定)が販売されないことは絶対にないのです。
建設業が、滞留在庫や過剰在庫を抱えることも絶対になければ、在庫が売れ残るということも絶対にないのです。
建設業の貸借対照表を見た時、未成工事支出金勘定は将来絶対に現金化(販売)される、と判断しても間違いはないわけです。
つまり、「商品の販売可能性」という点において、建設業と小売業は根源的に異なっているわけです。
以上のような状況がある中で、証券投資という観点から見た場合、
建設業のある銘柄と小売業のある銘柄を比較することなどできないのではないでしょうか。
すなわち、「銘柄間の比較可能性」というのは、同一業界・同一業種の中だけでしか担保できないものだ、と言えるわけです。
今日紹介している2017年9月25日(月)付けの日本経済新聞の記事には、「独自の事業モデル」という言葉が使われており、
記事中の企業では、創業者が自分のアイデアを基にして新たな事業を考え出した、ということなのだと思います。
もちろん、そのこと自体は何ら間違っていないわけです(独創的な企業の株式上場ももちろん何ら問題はないことです)。
しかし、証券制度は「銘柄間の比較可能性」を担保することに必要以上に重きを置くのではなく(それを第一とするのではなく)、
「株式の本源的価値」を明らかにすることに最重点を置くべきだ(投資判断に資するのなら独自の追加的情報開示も認めるべきだ)、
と「ディスクロージャー」(証券制度上の情報開示制度)に関して私は今改めて言いたいと思います。


From a viewpoint of accounting, receivables are cash, but in terms of a settlement, receivables are still not cash.

会計の観点から言えば、債権は現金なのですが、決済という点から言えば、債権はやはり現金ではないのです。