2018年1月5日(金)


記事を1つ紹介して、ここ数日間のコメントに対し、一言だけ追記をしたいと思います。

 

2017年11月9日(木)日本経済新聞
自社株買い銘柄に資金 業績も評価、買い集める
(記事)


「企業自身は業績予想を行ってはならない。」という点について書いた一昨日のコメント↓

2018年1月3日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180103.html

 

「企業は増資を行ってはならない。」という点について書いた昨日のコメント↓

2018年1月4日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180104.html


 



昨日紹介し忘れた記事になるのですが、自社株買いと株価との関係についての記事を1つ紹介しています。
切り抜きを間違えてしまい、記事の最後が途中で終わってしまっていますが、
「自社株買いや自社株買いの発表が株価に与える影響」という点に関しては、
紹介できている部分だけで十分参考になるのではないかと思います。
自社株買いや増資に関する理論上の結論に関しては、
一昨日2018年1月3日(水)と昨日2018年1月4日(木)のコメントを読んでいただければと思います。
それから、昨日のコメントでは、「株式の取引と資金の移動」について次のように書きました。

>In trading shares, cash flows not "from investors to the market" but "from a buyer to a seller."

>株式を取引する時、現金は、「投資家から市場へ」ではなく「買い手から売り手へ」流れるのです。

株式投資の記事では、「銘柄に資金が流入した。」や「市場に資金が流入した。」といった表現がよく見受けられます。
しかし、資金が「銘柄」や「株式」や「市場」に流入することはありません。
資金はあくまで「投資家から投資家へ」移動するだけなのです。
株式投資では、投資家の一方が買い手、他方が売り手となり、資金(売買代金)が買い手から売り手へと支払われるだけなのです。
おそらく、「ある銘柄の株価が上昇した」ことを「銘柄に資金が流入した。」などと表現しているのだと思いますが、
それはただ単に買い手と売り手が直近の株価よりも高い価格で取引を行った、というに過ぎないわけです。
本質的には、たとえ株式の取引が行われても「株式」そのものは何も変わっていないわけです。
端的に言えば、「株式の本源的価値」は株式の取引では何も変わらない、ということです。
「株式の本源的価値」は、企業の側のみで決まるのです。
むしろ、たとえ投資家間で株式の取引を行っても、「株式の本源的価値」には何らの影響も与えないように、
株式会社では「所有と経営の分離」が行われているのです。
それが株式会社の、すなわち、「所有と経営の分離」という概念の、本質部分だと思います。
ただ、細かいことを言いますと、昨日書きました議論と関連があることなのですが、
自社株買いや増資を行いますと、「株式の本源的価値」そのものが変動してしまうわけです。
昨日は、発行者と投資家との間には、
「ディスクロージャー」では本質的に解消し切れない情報格差がある(投資の判断根拠そのものが相違している)ことを理由に、
主に投資家保護の観点から、「企業は自社株買いや増資を行ってはならない。」と書いたわけなのですが、
今日は、また別の観点から、「企業は自社株買いや増資を行ってはならない。」理由に新たに辿り着きました。
その理由とは、一言で言えば、「株式の取引では『株式の本源的価値』に影響を与えてはならない。」、となります。
端的に言えば、「発行済みの株式の取引を行うことが証券取引である。」ということであるわけです。
自社株買いや増資は、「『株式の本源的価値』に影響を与えてしまう。」という点において、
概念的には、実は「所有と経営の分離」に反する側面がある、という言い方をしてよいのだと思います。
「たとえ投資家間で株式の取引を行っても、「株式の本源的価値」には何らの影響を与えることもない。」、
それが「所有と経営の分離」と呼ばれる概念の本質の1つなのです。

 



Fundamentally, money never flows into the market, and money never flows into shares.
Money only flows either "into an investor (a seller) from another investor (a buyer)"
or "into a company from a new shareholder (i.e. financing by a company)."
In either case, money never flows into a brand.
For a share is merely a symbol of an interest in a company.

本質的に、資金が株式市場に流入するということは決してありませんし、資金が株式に流入するということも決してありません。
資金というのは、「投資家(買い手)から別の投資家(売り手)へ」流入するか、
「新株主から会社へ(すなわち、会社による資金調達)」流入するか、のどちらかしかないのです。
いずれにせよ、資金がある銘柄に流入するということは決してないのです。
というのは、株式というのは、会社に対する権利を表象するものに過ぎないからです。

 


Dealings of a share don't have any effects on the intrinsic value of the share.
That is the reason why a company is not permitted to make share repurchase nor a capital increase.
And, that is one of the essentials of a concept "separation of ownership and management," actually,
at least from a viewpoint of the securities system.

株式の取引は、その株式の本源的価値に影響を一切与えないのです。
それが、会社にとって、自社株買いを行うことが認められない理由ですし、増資を行うことが認められない理由なのです。
そして、それが、実は、「所有と経営の分離」という概念の本質部分の1つなのです。
少なくとも、証券制度の観点から見ればそうなのです。