2017年10月23日(月)


日経平均が15日続伸 過去最長、与党大勝を好感

 東京株式市場で23日、日経平均株価が15営業日連続で上昇した。
終戦後の1949年5月に東京証券取引所が取引を再開して以来、最長の連騰記録となった。
衆院選で与党が大勝し、政権が進めるアベノミクスや緩和的な金融政策が継続するとの安心感が広がった。
企業業績の拡大に対する期待もあり、外国人投資家を中心に幅広い銘柄に買いが入った。
 日経平均の終値は前週末比239円01銭(1.1%)高の2万1696円65銭で、21年ぶりの高い水準となった。
東京証券取引所第1部の8割の銘柄が値上がりし、1日の上げ幅は15連騰の中で最大となった。
15日間の上げ幅は累計で1340円に達する。
 株高が続くのは日本株を敬遠していた海外の長期投資家が資金を戻し始めているためだ。
相場動向に応じて短期で売買を繰り返す投資ファンドだけでなく、
この日は「海外の年金基金とみられる買いが入っている」(大手証券のトレーダー)との見方が聞かれた。
 衆院選での与党大勝は「政権が長期で安定し、アベノミクスの枠組みも変わらないという市場にとって好ましい状況」
(三井住友アセットマネジメントの市川雅浩氏)と受け止められた。
日本株の保有比率が低かった海外の投資家が
「日本株を持たないリスクを警戒し始めた」(BNPパリバ証券のダグラス・ブッチャー氏)という。
 4〜9月期の決算発表で業績予想の引き上げが増えるとの期待も株高の一因になっている。
 一方で急ピッチの上昇に警戒感も強くなっている。
米連邦準備理事会(FRB)議長人事の行方は世界の金融市場への影響が大きい。
トランプ米大統領のアジア訪問にあわせて北朝鮮が再び挑発を強める可能性もある。
(日本経済新聞 2017/10/23 21:05)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO22594830T21C17A0MM8000/

 


再掲

2017年10月22日(日)日本経済新聞 社説
株価の連騰が企業に促すもの
(記事)

 


日本経済新聞の会員限定記事(冒頭部分のみ)↓

 

日経平均15日連続上昇 「下げ知らずの10月」は続く

 ついに15連騰達成――。23日の日経平均株価は239円高の2万1696円で引け、10月2日以来15営業日連続で上昇した。
下げは9月29日の6円安が最後で、東京株式市場は「下げ知らずの10月」を過ごしている。
 前週末に、1960年12月21日〜61年1月11日の14日連騰という池田勇人内閣が国民所得倍増計画を掲げた高度成長期に並び、
新記録樹立に王手をかけて迎えた23日。
(日本経済新聞 2017/10/23 15:44)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO22583490T21C17A0000000/

 

 日経平均15連騰、景気敏感株に買い 上昇率トップはSUMCO

 日経平均株価は23日までに15営業日続伸した。
この間に上昇した銘柄を調べると世界景気の回復に伴って業績を伸ばす半導体などの景気敏感株と、
人手不足や脱デフレが追い風となる内需株がけん引していた。
あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及など新たな需要が期待される企業も躍進した。
 日経平均に採用されている225銘柄のうち、上昇率が最も大きかったのは半導体素材メーカーのSUMCOだった。
(日本経済新聞 2017/10/23 20:25)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO22594820T21C17A0EA1000/

 



日経平均株価 歴代最長15連騰を記録

日経平均株価は先週末まで14日間続伸。10月は一度も下げていないことになる。
週明け月曜23日も続伸でスタートしている。(収録は23日午前)
昨日の総選挙で与党が圧勝したこと、先週末のニューヨーク株価もまた高くなったことを受け、
本日為替が取引前に一時114円台を付けた。
23日の日経平均株価は、先週末より200円以上上昇して21,700円台でスタート。
仮にこのままの勢いが持続すると今日で日経平均が15日間続伸となる。先週の14日連騰というのは、57年ぶりの記録だった。
それは1960年12月から1961年1月にかけて作られた14連騰という記録。
当時は日本の高度成長期にあたる≪日本所得倍増計画≫が打ち出された時代。
あれから60年近く経過し、これだけ閉塞感のある日本で、当時作った記録を抜いて15連騰するということは
大記録のようにみえるが、実は上昇率を考えると大したことはない。
15日間連騰ではあるが、取引時間中には前日の終値を下回って安くなる場面もあったり、
上昇幅がわずか9円にとどまったこともある。
売り買いが交錯して、おとなしく過熱感のない上昇だった。
新聞も書き立てたが、世の中的にバブルのような高揚感があるかというとそれはない。
逆に言えば、過熱感がない中で、15日間適度に株価が上昇してきたのは健全なのかもしれない。
連続上昇記録というのはどこかで途切れる。
問題は何日も連続して上がるということより、やはり株価の水準そのものが大事。
日本は、21年ぶりの株価水準に戻っているが、この「戻っている」というのが悲しい。
海外の株式市場に目を向けると、アメリカ・イギリス・ドイツ・韓国など世界的に「史上最高値」ということになっている中で、
日本は「史上最高値」になるのははるか遠いことになる。それだけバブルが酷すぎたということ。
だからこそ史上最高値こだわるのではなく、昨日より今日、今日より明日と株価が高くなっていくことを見守っていくことが大事。
(ホウドウキョク 2017年10月23日(月))
ttps://www.houdoukyoku.jp/posts/20299

 



焦点:日経平均が最長の15連騰、与党勝利の安心感 薄い政策期待の影


[東京 23日 ロイター] - 日経平均株価.N225が15日続伸し、連騰記録として最長となった。
21年ぶりの高値水準で推移する中、衆院選で与党が勝利し、
安定政権が継続する見通しとなったことも市場に安心感をもたらしたという。
ただ、連騰期間中に政策期待が高まって日本株に追い風が吹いたわけではないため、
海外勢が買い上がり、日本株が一段高となるためのシナリオは見通せない。

<良好なファンダメンタルズ>
22日に投開票が行われた衆院選で自民・公明両党は465議席の3分の2超を確保し、市場の予想通りに与党が圧勝した。
週明けの日経平均は前週末で一時265円高。
約57年前、高度経済成長期の1960年12月21日─61年1月11日に付けた14連騰を上回り、
歴史的な連続上昇日数の記録を打ち立てた。
だが、海外投資家と接する外資系証券の日本株担当者の声は、いつもと変わらない。
衆院選の大勢が判明しても「海外勢から日本株への影響についての問い合わせはない」と明かす。
事前の世論調査で与党勝利は市場に織り込まれていたこともあるが「政策に対する新たな期待もないようだ」という。
BNYメロン・アセット・マネジメントの日本株式運用部長、王子田賢史氏も
「選挙戦の間に、そもそも市場に政策期待などなかった」と指摘。
「政権の安定や日銀の黒田総裁の留任観測は市場に安心感をもたらしているが、
株価を支えているのは世界的に良好なファンダメンタルズだ」と分析する。

 



<個別物色の域>
今回の衆院選で安倍首相が国民に問いかけたのは、子育て世代の投資拡充に向けた「消費増税の使途変更」。
2019年10月の消費増税実施を前提としているが、
日本経済への影響を市場が警戒する時期までには、まだ時間的な猶予がある。
選挙前に安倍首相は幼児教育の無償化をはじめ、「人づくり革命」での2兆円規模の政策対応を行うことも表明している。
しかし、今回の選挙が憲法改正に追い風となる結果となったことで
「安倍政権が経済政策に軸足を置き続けるのか、見極めが必要」(国内証券)との声も出ている。
23日の株式市場では、保育所運営を手掛けるJPホールディングス(2749.T)など子育て支援関連銘柄が高寄りしたが、
すぐに利益確定売りに押された。
同社株は一時下げに転じるなど、関連銘柄への買いは続かず、かつ個別物色の域にとどまっている。
智剣・OskarグループCEOの大川智宏氏は、衆院選後の株価上昇について
「前週末の米国株の上昇を受けただけ。構造改革的な政策が打ち出され、具現化すれば日本株は大きく見直されるが、
それが出てこない限りは何も変わらない」と話す。
日本経済新聞社が算出する日経平均の予想PER(株価収益率)は
10月20日時点で15.0倍と、今年5月以来の水準を回復した。
北朝鮮情勢の緊迫化などを背景に株価が調整した8月─9月の13倍台後半から上昇し、
アベノミクス相場のPERの平均となる15倍台半ばに接近した格好だ。
一方で「かつてのような政策期待がない以上、バリュエーション面で割高な水準まで許容できるような株高は見込みにくい」
(外資系証券)との声も出ている。

<上昇一服の見方も>
連騰期間中の日経平均の上昇率は6.6%だったのに対し、米ダウ.DJIは前週末まで4.1%高。
直近では日経平均の好パフォーマンスが顕著だが、年初来では日経平均は13.5%高と、ダウの18.0%高に比べ出遅れている。
JPモルガン証券・チーフ株式ストラテジストの阪上亮太氏は「出遅れ修正の過程にある日本株は、
好調な企業業績を素直に反映させれば、年内にTOPIXで1800ポイント程度、
日経平均で2万2000円超の水準までの上昇は可能」と指摘。
半面、来期の日本企業業績は減速見通しがコンセンサスとなる可能性が高いとし、
日経平均も2万2000円台達成後は「上昇基調一巡の公算が大きい」とみる。
12年11月に始まったいわゆる「アベノミクス相場」では、デフレ脱却に向けた大胆な金融政策と
機動的な財政政策、成長戦略の実施による日本経済再生シナリオに、海外投資家が飛びついた。
17年の海外投資家の日本株の買い越し額は、10月第2週までの間、現物・先物合計で累計約1兆4000億円。
年初から売り越し基調が続き、足元ではようやく買い越しに転じたが、
衆院選というイベントを収益機会とみなした「短期筋の日本株買いが寄与した面も否定できない」(中堅証券)との見方もある。
政策期待が薄れる中、海外投資家の買い越し姿勢が続くのか、見極めの局面に差し掛かっている。
(ロイター 2017年10月23日 / 18:12)
ttps://jp.reuters.com/article/kabutocho-idJPKBN1CS0WZ

 


日経平均、史上初の15連騰…56年ぶり

 週明け23日の東京株式市場は、衆院選での自民党圧勝を好感し、
日経平均株価(225種)が、史上初めて15営業日連続で上昇した。
 高度経済成長期の1960年12月21日〜61年1月11日に記録した14営業日を、約56年9か月ぶりに更新した。
終値は前週末比239円01銭高の2万1696円65銭だった。
 今年の最高値を更新し、96年7月以来、約21年ぶりの高値水準をつけた。
 安倍首相の経済政策「アベノミクス」や、大規模な金融緩和などが継続するとの見通しが広がり、投資家心理が強気に傾いた。
円相場が一時、約3か月ぶりに1ドル=114円台まで下落し、業績改善への期待から輸出企業の株式が買われた。
欧米での株高傾向も買い材料となり、東京証券取引所1部に上場する全銘柄の8割超が値上がりした。
(読売新聞 2017年10月23日 20時59分)
ttp://www.yomiuri.co.jp/economy/20171023-OYT1T50157.html

「日経平均株価の推移」

 

「日経平均株価の連続上昇は過去最高になった」


 

日経平均株価についての過去のコメント

2017年9月7日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170907.html

2017年9月9日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170909.html

2017年10月21日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201710/20171021.html

2017年10月22日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201710/20171022.html

 


【コメント】
2017年10月23日(月)、ついに日経平均株価が15営業日連続して上昇した、とのことです。
15営業日連続上昇というのは、日経平均株価の連続上昇記録の新記録とのことです。
ただ、一昨日と昨日のコメントで書いていますように、15営業日連続して上昇した銘柄というのは、
日経平均株価の225の構成銘柄の中には1銘柄もないと思います。
それどころか、一般に、日経平均株価は日本の株式市場全体を象徴し代表するかのような株式指標だと言われていますが、
すなわち、日経平均株価の値動きを見れば株式市場全体の値動きが分かるかのように言われていますが、
日本の株式市場に上場している約4,000社の上場企業の中に、15営業日連続して上昇した銘柄は1つもありません。
株価が実は下落した銘柄もたくさんありますし、また、株価が横ばいだった銘柄もある中で、
日経平均株価だけが15営業日連続して上昇しただけなのです。
投資家というのは常に銘柄単位で投資を行うものですが、
少なくとも投資家の観点から見れば、この新記録達成というのはほとんど意味がないことだ、と言っていいと思います。

 


衆議院議員総選挙も終わったので、次の記事に一言だけコメントを書きたいと思います。


2017年10月21日(土)日本経済新聞
内部留保に誤解? 現預金とは一致せず 衆院線前「課税論」再び
「リーマン」で関心高く
米では「懲罰」で課税
(記事)



企業の内部留保に対する課税が政財界で話題になっているとのことです。
企業の内部留保に対して課税することの問題点については、基本的には記事の解説の通りでよいと思います。
ただ、より本質的には、会計上の「利益剰余金」勘定は実体のない概念上の勘定科目に過ぎない、という点が、
内部留保を課税標準足りえないものとしている理由だと言っていいと思います。
別の言い方をすると、「利益剰余金」勘定というのは、会計上の貸借の調整勘定に過ぎないものだ、と言っていいと思います。
企業が利益を計上したことにより、実質的に増加したのは何かと言えば、一言で言えば「現金」なのです。
貸借対照表上、「現金」勘定は借方なのですが、借方だけが増加しては貸借のバランスが取れませんので、
貸方に「利益剰余金」勘定がくるわけです。
複式簿記上は、「現金」勘定の増加に対応するために事後的に「利益剰余金」勘定を貸方に計上する、というわけでは全くなく、
「現金」勘定の増加と「利益剰余金」勘定の増加とは文字通り同時であるわけです。
仕訳で書けば、次の1仕訳に集約されると言っていいわけです。

(現金) xxx / (当期純利益) xxx

上記の仕訳を直接に切ることは実際にはしないわけですが、精算表を作成する中で、
最後の最後は上記の仕訳に集約される影響を貸借対照表に与える、と言っていいわけです。
法人税法で言えば、一般には「所得」に課税をするとは言いますが、
実際には「増加した現金額」に課税をしているわけです。
「増加した現金額」のことを「所得」と呼んでいるだけなのです。
つまり、当期純利益や所得というのは、「現金額が増加した理由」を表象しているに過ぎないわけです。
他の言い方をすると、当期純利益や所得というのは、「現金額の増加原因」を表してるに過ぎないわけです。
企業は、増資をしても借り入れを行っても現金額が増加しますが、資本金や借入金は所得ではないわけです。
ですから、同じ「現金額の増加」でも、増資をしたり借り入れを行っても法人税は課税されないわけです。
すなわち、「所得」という原因・理由がある場合の「現金額の増加」に対して、法人税が課税されるわけです。
以上のようなことを鑑みますと、率直に言えば、「貸方勘定科目の全てが『現金額の増加』の原因や理由を表している。」、
と言っていいわけです。
会計や企業財務の教科書には、「貸借対照表の貸方は資金の調達源泉を表している。」と書かれていますが、
それは「貸方勘定科目はどのような手段(具体的原因や理由)で資金を調達したかを表している。」という意味なのです。

 


以上の議論を踏まえますと、結局のところ、貸方勘定科目というのは、手段や原因や理由を表しているだけのことであり、
最初に書きましたように、貸方勘定科目は実体のない概念上の勘定科目である、という言い方ができるわけです。
貸方勘定科目というのは、「現金額の増加」の手段や原因や理由の名称を表示しているに過ぎないのです。
話題になっています「利益剰余金」勘定も全く同じです。
「利益剰余金」勘定は、「『現金額の増加』の増加の原因・理由は、当期純利益の計上(所得の稼得)です。」、
と表示しているだけなのです。
貸方勘定科目というのは「現金額の増加」の手段や原因や理由の名称を表示しているに過ぎない、という言葉の意味は、
複式簿記を仕組み・構造を考えれば、「利益剰余金」勘定は「現金」勘定の相手方勘定科目であり貸借の調整勘定だ、
という言い方ができるわけです。
したがって、企業の内部留保に対して課税するというのは、もはや何に対して課税をしているのか不明であるという状態である、
と言っていいわけです。
固定資産税を考えてみましても、固定資産税の課税標準は固定資産であるわけですが、
固定資産というのは借方の勘定科目であるわけです。
法人住民税や外形標準課税といった例外的な税目もないわけではないのですが、
押しなべて、課税標準というのは借方の勘定科目である、と言っていいわけです。
法人住民税も外形標準課税も、資本金(額)が課税標準となっているところがあると言っていいわけですが、
税理論から言えば、完全に間違った課税の仕方であると言っていいと思います。
法人設立や資本金により事業を開始するわけですから、法人が稼得した所得に課税すれば十分であるわけです。
逆から言えば、法人税を納付するために、法人を設立したり資本金を有するようにした、ということではないでしょうか。
また、内部留保(利益剰余金)に課税をするのは所得に対する二重課税ではないか、という見方もあるわけですが、
そのような見方でもよいとは思います(その見方は正しいとは思います)が、
敢えて内部留保(利益剰余金)に対する課税を経済学的に分析してみるならば、
所得に対する課税はフローに対する課税であり、内部留保(利益剰余金)に対する課税はストックに対する課税である、
という言い方ができるように思いました。
現金額は増加していないのに内部留保に課税をするということは、言わばストックに対して課税をするということでしょう。
ただ、その「ストック」(内部留保)というのが、あくまでも実体のない概念上の勘定科目に過ぎないわけなので、
内部留保は課税標準とはなり得ない(課税標準というには実体がなさ過ぎる)、と考えるべきだと思います。

 


それから、記事には、米国や台湾や韓国には「留保金税」がある、と書かれています。
「留保金税」の課税標準は、内部留保ではなく、「税引前の所得−法人税−配当」(各事業年度ベース)、とのことです。
記事によりますと、「留保金税」には配当を促す効果がある、と書かれています。
しかし、この「留保金税」は法人税の理論と完全に・根源的に矛盾する概念の税目です。
なぜならば、法人税の目的はまさに「利益の留保」にあるからです。
法人税を納付することにより、法人は利益を留保できるようになるのです。
税務当局が法人による利益の留保を否定したいのならば、そもそも法人税を廃止すればよいわけです。
そうすれば、自動的に法人の利益の全額が配当になるわけですから。
税務当局が法人に法人税を課税しつつ「留保金税」を導入するというのは、まさに矛盾中の矛盾であると言わねばならないのです。
また、この「留保金税」に関しても、所得に対する二重課税の側面があるという見方ができるわけですが、
「留保金税」はもっと明確に「『ストック』に対する課税である。」、という言い方ができると思います。
その理由は、「留保金税」は、各事業年度ベースの「現金額の増加」に対して課税しているからです。
「現金額の増加」に対する課税であるならそれはフローに対する課税ではないかと思われるかもしれませんが、
ここでは文脈が異なっており、法人税を納付した後の現金額ですので、そのフローは既にストックとなっているわけです。
配当もストックから支払われるものです。
配当というのは、当期純利益というフローが事業上の原資ではありますが、会計上は利益剰余金というストックが原資なのです。
「税引前の所得−法人税−配当」という計算式を見ても分かるように、法人税を境に、フローがストックに変わるのです。
ですので、「留保金税」というのは、ストック(しかも、この場合は実体のあるストック(増加したばかりの現に手許にある現金))
に対する課税である(しかも、その課税標準は現に手許にある現金なので担税力が完全にある税目となる)と言えるのです。
そして、この場合の「留保金」は、二重課税や法人税との矛盾等を度外視すると、課税標準足り得る、ということになるのです。


 


A "retained earnings" account is a kind of adjustment account.
Or rather every account title on the credit side represents a kind of conceptual account.

「利益剰余金」勘定は、一種の調整勘定なのです。
いや正確に言えば、貸方の全ての勘定科目が一種の概念上の勘定を表しているのです。



 

The tax authorities can't levy a corporation tax and levy a tax on undistributed profits too.
The fact that the tax authorities levy a corporation tax on a juridical person exactly means
that a juridical person is permitted to retain its earnings at its own discretion.
In other words, it means that a juridical person is permitted not to distribute its earnings at its own discretion.

税務当局は、法人税を課したら留保金税は課せられなくなる(同時に法人税と留保金税を課するできない)のです。
税務当局が法人に法人税を課するというのは、まさに、法人は利益を自由に留保することが認められている、
という意味なのです。
他の言い方をすれば、法人は、自社の裁量で利益を分配しないということが認められている、という意味なのです。