2018年9月7日(木)



2018年9月6日(水)日本経済新聞
リクルートと日本郵政採用 日経平均、銘柄入れ替え
日経平均35銘柄 みなし額面変更 27日から
(記事)




日経平均株価(日本経済新聞社)
ttps://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225


2017年9月5日
日本経済新聞社
日経平均株価の銘柄定期入れ替え等について
ttps://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/news/21070905J_1.pdf


みなし額面
(日本経済新聞社 指数用語解説 2017年4月21日更新)
ttps://indexes.nikkei.co.jp/atoz/2017/04/par-value.html

除数
(日本経済新聞社 指数用語解説 2017年4月21日更新)
ttps://indexes.nikkei.co.jp/atoz/2017/04/divisor.html

 

第118回 【初心者向けコラム】単純だけど奥が深い「日経平均株価」を知ろう
(楽天証券  足立武志「知って納得!株式投資で負けないための実践的基礎知識」 2012年2月2日)
ttps://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/adachi/adachi_20120202.html

 

みなし額面(みなしがくめん)
(野村證券 証券用語解説集)
ttps://www.nomura.co.jp/terms/japan/mi/A02309.html

 



【コメント】
日本経済新聞社は、「日経平均株価」を算出するに際し、
指標性を維持するために毎年1回(10月初旬)構成銘柄の「定期見直し」を行っているのですが、
業種業界に大きな変動がない場合など、年によっては構成銘柄を入れ替えないこともあるようですが、
今年(2017年)は、大型銘柄の新規上場もあり構成銘柄の「定期見直し」を行い、2銘柄を入れ替えることにした、とのことです。
この記事を読んで私が気になりましたのは、「日経平均株価の連続性」と「みなし額面」という言葉です。
「日経平均株価」と「みなし額面」についての記事をいくつか紹介していますが、解説記事を参考に書きますと、
「日経平均株価」は、構成銘柄225銘柄の株価を単純に足し合わせて225で割ることにより算出するとのことです。
「構成銘柄225銘柄の株価を単純に足し合わせて225で割ること」が日経平均株価算出の基本的な大原則とのことです。
計算式で書くと、「日経平均株価 = 225銘柄の株価合計÷ 除数」、となります。
ただし、銘柄の入れ替えと株式分割と株式併合が行われますので、実際は単純に225銘柄の株価を足して225で割るのではなく、
「みなし額面による調整」と「除数の修正」が加えられた上で、日経平均株価は算出されている、とのことです。
会社により発行済み株式総数には大きな差異があるわけですが、その差異に関しても「みなし額面」により調整する、
という考え方になるのだと思います。
つまり、非常に大まかに言えば、株式時価総額には大きな差異はないと考え(実際には225社間で大きな差異がありますが)、
額面金額が大きいと発行済み株式総数が少なく、額面金額が小さいと発行済み株式総数は多い、と考えているのだと思います。
解説記事には、「発行済み株式総数」に関する記述はないのですが、楽天証券の次の解説を読む限り、要するところ、
指数算出に際し、発行済み株式総数の差異を「みなし額面の調整」により吸収しようとしている、
ということではないかと思います。

>日経平均株価は225銘柄を単純に足し合わせて分子を計算するのが原則です。
>しかしながら、額面の額が50円の銘柄と50,000円の銘柄を同じように足し合わせると、
>50,000円額面の銘柄の株価に日経平均株価の値動きが大きく影響を受けてしまうことになり、好ましくありません。
>例えば、東海旅客鉄道(JR東海)の額面は50,000円、新日本製鉄の額面は50円です。
>東海旅客鉄道の1月27日の株価は646,000円、新日鉄は194円で、東海旅客鉄道の株価は新日鉄の3,330倍です。
>しかし、東海旅客鉄道が新日鉄より3,330倍も価値が高いというわけではなく、両社の額面が異なるために生じている差です。
>もし日経平均株価の計算上、このまま646,000円と194円を分子に足し合わせてしまうと、
>東海旅客鉄道の株価の値動きが新日鉄の3,330倍の影響を日経平均株価に与えてしまうことになってしまいます。
>そこで、計算上は額面を50円に統一させることとして、額面500円の銘柄は株価を10分の1、
>額面50,000円の銘柄は株価を1,000分の1にして225銘柄の合計を出すことにしたのです。

A社の株価の値動きがB社の株価の値動きの何千倍もの影響を日経平均株価に与えてしまうことを避けるために、
「みなし額面」という考え方を日経平均株価では導入しているのだと思うのですが、結局のところ、この文脈においては、
「発行済み株式総数」と「みなし額面」は非常に大きな関連がある事柄だと考えなければならないのだと思います。
私の理解が正しいならば、「みなし額面」という概念で何をしようとしているのかを鑑みますと、
「みなし額面」とは「みなし発行済み株式総数」と表現してもよいのではないかと思います。

 


また、日経平均株価の算出において、「みなし額面」と同じくらい重要となる概念が「序数」です。
楽天証券の解説記事を引用してみます。

>もう1つ、日経平均株価の算出にあたっては「除数の修正」というものが加えられます。
>日経平均株価の誕生当時は、計算式の分母(=除数)は単純に銘柄数の225でした。
>しかし、その後の株式分割や併合、採用銘柄の入れ替えなどによって生じる
>株価変動の影響をなくす必要が生じるようになりました。
>例えば、A社100円、B社400円、C社1,000円の3社があるとすると、この3社の株価の平均は(100+400+1,000)/3=500円です。
>ここでC社が1株を2株にする株式分割を実施すると、C社の株価は理論上1,000円÷2=500円になります。
>すると、3社の株価平均は(100+400+500)/3=333円になります。
>株価が変動せずとも、C社が株式分割をするだけで株価が下がってしまうのです。
>これではおかしいので、C社の株式分割の前後で株価が変動しないように、分母の除数の調整をするのです。
>株式分割前の3社の株価平均は500円でした。株式分割後も同じ500円にするには、除数を2にすればよいことが分かります。
>(100+400+500)/2=500円となりますね。

この解説記事によりますと、2012年1月27日現在、
「除数の修正」を繰り返した結果、日経平均株価の除数は225ではなく「24.966」となっている、とのことです。
では、「みなし額面」と「序数」の違いや関係性についてはどうなのかと言いますと、解説記事には次のように書かれています。

>現在は大幅な株式分割や併合(1株を100株にする株式分割など)の際は、
>除数の修正ではなくみなし額面の変更で対応することが多くなりました。
>分子を調整するか分母を調整するかの違いですから、どちらの方法をとっても同じことです。

分母と分子、どちらで調整しても同じことだ、と書かれてあるのを見て、「それはおかしい。」とすぐに思いました。
割り算では「分母と分子の整合性」が重要なのですが、日経平均株価の連続性を保つのは事実上不可能であると思いました。
まず、「序数」のおかしさ(調整不可能性)について書きます。
日本経済新聞社の「指数用語解説」の「除数」の解説には、「銘柄入れ替え後の新序数」の算出方法が載っていますが、
この等式により算出される「序数」が正しいのは、まさに「銘柄入れ替え時」(入れ替えの瞬間)のみなのです。
「新構成銘柄の採用株価の合計」が変動した時点で(すなわち、構成銘柄225の内、1銘柄でも株価が変動したら)、
その序数には意味が全くなくなるのです。
簡単に言えば、その序数で割り算をすることは理論的に間違っている(分母と分子に整合性がない)、ということになります。
率直に結論を言えば、銘柄を入れ替えてしまうとその前後で指数の連続性は全く保たれない、ということになります。
次に、「みなし額面」のおかしさについてですが、株価を調整するということはできない、としか言ようがないと思います。
「みなし額面」という考え方により株価を調整する(他社と同じ影響度にする)ということは不可能なのです。
一般に(特に法律の条文という観点からは)、株式の額面制度は2001年の商法改正で廃止されたと言われますが、
端的に言えば、会社が法人税を支払い利益の内部留保を行うようになった時点で、株式から額面がなくなったに等しいのです。
現在では、株価形成に旧額面は何ら反映されてはいません(株式の価値と額面とが現在では(法人税導入後は)全く関係がない)。
敢えて言うならば、「額面」ではなく、「発行済み株式総数」により各会社の株価水準に違いが出ている、と言っていいわけです。
一言で言えば、日経平均株価の連続性を保つことは、分母を修正しようが分子を修正しようが、絶対に不可能なことなのです。
好意的に言えば、連続性の観点は度外視し(諦め)、参考となる株価指標だ、という捉え方をすればよいのではないでしょうか。