2017年9月14日(木)



今日は、ここ4日間のコメントに一言だけ追記をします。

2017年9月10日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170910.html

2017年9月11日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170911.html

2017年9月12日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170912.html

2017年9月13日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170913.html

一昨日2017年9月12日(火)のコメントで、「内部統制制度」について、教科書をスキャンして紹介し、コメントを書きました。
そして、昨日2017年9月13日(水)は、「ダイレクト・レポーティング」と呼ばれる概念・用語についてコメントを書きました。
今日も教科書の記述を題材に「ダイレクト・レポーティング」について一言だけコメントを書きたいと思います。
今日は一昨日紹介した教科書の136〜137ページの記述を題材にしつつ、
もう1つ別の教科書をスキャンして紹介してコメントを書きたいと思います。
まず最初に、監査論の教科書から、基礎概念になりますが、「監査報告書とは何か?」という点と、
「監査の目的」について監査基準の条文をスキャンして紹介したいと思います。


「監査論の基礎知識 五訂版」 石田 三郎 編著 (東京経済情報出版)

第13章 監査報告書
第1節 監査報告書の本質と分類
「165ページ」 

付録
監査基準
第一 監査の目的
「259ページ」 

 



紹介している「監査論の基礎知識 五訂版」という教科書は、やや古いのですが、2005年5月出版です。
しかし、監査論のそもそもの基礎概念についての教科書ですので、確かに最新の監査基準等には対応していないものの、
今読んでも監査論を学ぶ上では全く問題はない内容です。
それで、一昨日紹介した教科書の136〜137ページ(「ダイレクト・レポーティング」についての記述)を
読んでいただきたいのですが、内部統制報告書監査を行う上では、
「ダイレクト・レポーティング」を採用しようが「インダイレクト・レポーティング」を採用しようが、
実際に監査人が実施する監査実務の分量・負担(所要点検量、所要時間)はほとんど同じである、ということになると思います。
なぜならば、監査人も、経営者が行ったであろうのと同様に、内部統制の有効性を評価しなければならないことに
違いはないからです(どちらの監査方法においても、監査人が実施しなければならない事柄・項目・手続きは全く同じのはず)。
どちらの監査方法を採用しようが、結局、経営者と監査人は同じような手続き(有効性の評価)を二重に行うことになります。
両方の監査方法において違いがあるのは、監査人による「報告」(意見の表明)の部分だけなのです。
簡単に言えば、「ダイレクト・レポーティング」では、
「監査を行った結果、企業の内部統制制度はこうであったのだが、その内部統制制度は有効に機能していると判断できた。」
と監査人は「報告」(意見の表明)を行うわけです。
一方、「インダイレクト・レポーティング」では、
「監査を行った結果、経営者が作成した内部統制報告書は適正であると判断できた。」
と監査人は「報告」(意見の表明)を行うわけです。
一言で言えば、どちらの監査方法を採用しようが、監査人が実施する監査に違いはないわけです。
「ダイレクト・レポーティング」では、企業の内部統制制度の具体的仕組みについて監査人が言及する(報告書を作成する)分、
監査報告書の分量が多くなる(その分監査人にとって所要作業量・所要時間は増える)、というだけなのです。
監査人が実施する監査そのものに違いは全くないのだが、監査のあるべき姿として、「ダイレクト・レポーティング」ではなく、
「インダイレクト・レポーティング」(報告書に対する報告(意見の表明))でなければならない、と昨日は書いたわけです。
それで、今日は監査人が作成する「監査報告書」とは何か、という点について教科書をスキャンし紹介しました。
スキャンした画像の中にもコメントを書きましたので、参考にしていただければと思います。
「ダイレクト・レポーティング」と本質的に関連する議論になりますが、端的に結論を書けば、次のようになります。

○インフォメーション・レポートの作成者 → 経営者
○オピニオン・レポートの作成者     → 監査人

財務諸表がまさにインフォメーション・レポートです。
そして、財務諸表に対する監査報告書がオピニオン・レポートです。
内部統制報告書がまさにインフォメーション・レポートです。
そして、内部統制報告書に対する監査報告書がオピニオン・レポートです。
インフォメーション・レポートに監査人が作成したオピニオン・レポートを付すことで、
インフォメーション・レポートの記載内容は適正であることが保証される、という仕組みに監査はなっているのです。
青色で下線を引いている部分になりますが、教科書には、現在(2005年時点)の財務諸表に対する監査報告書には企業内容に関する
追加的な情報が記載されており、実務上は監査報告書が情報提供の役割を担っている、という趣旨のことが書かれていますが、
2005年の時点で既に監査報告書はインフォメーション・レポート(「ダイレクト・レポーティング」)の側面があったわけです。
現在金融庁で議論されているのは、「監査報告書のさらなるインフォメーション・レポート化」である、と言わねばならないのです。

 



注:
監査人が表明・作成するのは、あくまで、「財務諸表に対する監査意見」、である。
「会社の事象や取引に対する監査意見」ではない。

経営者が作成するのが「インフォメーション・レポート」。
監査人が作成するのが「インフォメーション・レポート」に対する「オピニオン・レポート」。
会社の情報に最も詳しく会社の情報を最も適切に開示できるのは、経営者である、という考え方が背景にある。
監査人は、事象や取引に関する十分かつ有効な監査証拠を会社(経営者)から入手し、
「インフォメーション・レポート」の記載内容が正しいかどうかについて判断をし意見を表明する。
監査を行う中で、監査人がインフォメーション・レポート」の記載内容に疑義を持った場合は、経営者に質問をすることになる。
監査人がその疑義について、直接に意見を表明することはしない。
監査人は「インフォメーション・レポート」は作成しない。
注:監査人が「インフォメーション・レポート」を作成すると、まさに「ダイレクト・レポーティング」になる。

 


An auditor audits a report or a statement prepared by management on the basis of various facts on a corporation.
An auditor doesn't prepare a report on facts on a corporation (or corporate contents) .
An auditor prepares a report on the report or the statement prepared by management.

監査人は、会社の様々な事実を根拠にして、経営者が作成した報告書や計算書類について監査を行うのです。
監査人は、会社に関する事実(すなわち、企業内容)に関する報告書は作成しません。
監査人は、経営者が作成した報告書や計算書類に関する報告書を作成するのです。