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2017年9月13日(水)



今日は、ここ3日間のコメントに一言だけ追記をします。

2017年9月10日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170910.html

2017年9月11日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170911.html

2017年9月12日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201709/20170912.html

昨日のコメントで、「内部統制制度」について、教科書をスキャンして紹介し、コメントを書きました。
今日も昨日紹介した教科書の記述を題材に一言だけコメントを書きたいと思います。
今日は135ページの記述を題材にしたいと思います。
日本の「内部統制報告制度」(J-SOX法)の特徴について、アメリカの「内部統制報告制度」と比較・対照させる形で、
解説がなされているのですが、重要な記述ですので、135ページの記述を引用したいと思います。

>日本では、監査人による内部統制監査は経営者が実施した内部統制の評価についてのみ行われることとされ、
>アメリカで重視された、監査人が経営者の評価に関係なく監査する、
>いわゆるダイレクト・レポーティングの仕組みは採用されませんでした。
>アメリカでは、ダイレクト・レポーティングにおける責任を意識した監査人が、
>過度に保守的な対応を行って上場企業のコスト負担を押し上げたという指摘がありました。
>日本では、ダイレクト・レポーティングを排除することで、
>経営者と監査人が同じような手続きを二重に行わないようにしているのです。

 


「ダイレクト・レポーティング」という用語が目に留まりました。
「ダイレクト・レポーティング」という用語は、2017年9月10日(日)のコメントと極めて本質的に関係があると思いました。
現在、金融庁では会計監査制度の見直しが議論されているわけなのですが、監査基準の改正を行い、監査法人に対し、
幅広い事業・取引に関して監査法人が評価の過程や理由を監査報告書に記載するよう求めることが検討されているわけです。
現在、監査法人が監査報告書に記載をする対象(「重要な監査事項」)が議論されているわけなのですが、
この点について、新聞記事の記述を再度引用しますと次のようになります。

>収益性の落ちた資産の簿価を切り下げる減損、将来の収益を見越して税金を前払いする繰り延べ税金資産、
>退職給付債務などが対象になる見込み。

現在議論されている中では、やはりのれんと減損が改正後の監査実務に一番大きな影響を与えることになるであろうと思います。
それで、2017年9月10日(日)のコメントでは、
「監査法人の判断・見解が企業の判断・見解と同じであった場合は、監査報告書にはどのようなことを記載するのだろうか?」
といった疑問について、自分なりに答えを出していったわけです。
その中で、そもそも有価証券報告書を作成するのは第一義的に会社本人であるわけなのですから、
「企業の方は、たとえ監査法人からの指摘がなくても、のれんが減損に関しては、
有価証券報告書に(財務諸表の注記事項等に)特段に詳細に判断根拠を記載するようにするべきだ。」
という趣旨の結論に辿り着いたわけです。
監査法人が企業ののれんや減損に関する監査上の判断根拠を監査報告書に詳細に記載するのではなく、
それらについては、監査法人からの指摘や意見の相違の有無に関わらず、企業自身が有価証券報告書に詳細に記載するべきである、
という結論に行き着いたわけです。
それで、以上の議論・結論と「ダイレクト・レポーティング」という用語との関連性についてなのですが、
「『監査法人が』企業ののれんや減損に関する監査上の判断根拠を監査報告書に記載すること」を
まさに「ダイレクト・レポーティング」と呼ぶのではないか、とふと思ったわけです。
逆に、「『企業自身が』自社のののれんや減損に関する判断根拠を有価証券報告書に記載すること」は、
この文脈における「ダイレクト・レポーティング」ではない、と思ったわけです。
「ダイレクト・レポーティング」の主語(誰がレポートするのか?)は、監査人であるわけです。
そして、企業自身が事象や取引について自らレポートをすること(有価証券報告書を作成すること)が
実は本質的・本来的であるわけなのです(企業内容の本来的報告主体は企業自身である、という考え方であるわけです)。
そして、監査人はあくまで企業の報告内容(元来的には財務諸表等、近年であれば内部統制報告書等)に関して
監査をすること(監査報告書を作成すること)が本来的役割であるわけです。
その意味において、監査人の報告は本来は「インダイレクト・レポーティング」(企業内容の間接的な報告)であるわけなのです。

 


簡単に言えば、監査人が企業内容(事象や取引。より具体的には、のれんや減損や繰延税金資産などなど)について
直接に報告をする(自分の意見や見解や判断根拠等を述べる。それらを監査報告書に記載する。)のは、
実は本来的ではないのです。
簡単に言えば、監査人による企業内容に関する報告というのは、実は本来的には間接的なものでなければならないのです。
以上のような監査の基本概念がありますので、
監査人による企業内容の報告(経営者の見解や判断とは無関係の報告、経営者の評価とは関係なく監査したその報告)のことを
わざわざ(やや悪意を込めて)「ダイレクト・レポーティング」と表現しているのだと思います。
2018年9月10日(日) に紹介した2018年9月7日(木)付けの日本経済新聞の記事には、
監査法人の監査姿勢・組織風土に関して、次のように書かれています。

>裏方に徹し、顧客企業の内部情報を自ら出すのはご法度とする組織風土はなお強い。

前後の文脈を踏まえると、この文はややおどけて書かれた感じが受け取れたのですが、
「顧客企業の内部情報を監査人自らが出すのはご法度」というのは、組織風土や顧客との関係に関する話では全くなく、
実は「監査のあるべき姿」であるわけです。
企業の内部情報を出す(開示する)のは、企業自身なのです。
監査人は、企業自身が開示した内部情報を監査する(その意味において、監査は常に「間接的」)だけなのです。
日本に導入された内部統制監査制度では、経営者が作成した内部統制報告書を監査人が監査する、
という位置付けになっていますので、正しい監査方法(あるべき姿に沿った監査)になっているわけです。
翻って、現在金融庁で議論されています監査制度改革について考えてみますと、
これはまさに「財務諸表監査版『ダイレクト・レポーティング』」を推進しようとするものだ、と言わねばなりません。
監査において、「ダイレクト・レポーティング」はご法度なのです。
2017年9月10日(日)のコメントにも少し書いたことですが、2017年9月10日(日)のコメントを書いていて、
議論全体に関して最初はやはり何か違和感を私は感じたわけです。
その違和感というのは、その時は意識しませんでしたが・適切な言葉が思いつきませんでしたが、
内部統制報告制度に関する教科書の記述を借用すれば、「ダイレクト・レポーティング」という概念が原因だったのだと思います。
先ほど「借用」という言葉を使いましたが、実はそもそも、財務諸表監査においても、
「ダイレクト・レポーティング」という用語・概念はあるのだと思います。
会計監査や監査論の教科書・資格試験のテキスト等に、
「ダイレクト・レポーティング」(及びそれと同等の概念)という用語・概念が載っているのかどうかについては分かりませんが、
載っていても全くおかしくはない(むしろ、監査の基礎概念として当然記載するべき用語・概念ではないでしょうか)と思います。

 

Concerning an audit in general, the "direct reporting,"
or reporting straight from corporate contents by an auditor, is prohibited.

監査全般に関して言えることですが、「ダイレクト・レポーティング」は、すなわち、
監査人が企業内容からまっすぐに報告をすることは、禁止されているのです。