2017年8月31日(木)



昨日までの一連のコメントに一言だけ追記をします。
今日のコメントも、どちらかと言うと最近の一連のコメント全てに関連のあるコメントになります。
今日は、昨日までの一連のコメントと関連する形で「のれん」と「減損」について書きたいと思います。

 


過去の関連コメント

2017年7月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170725.html

2017年7月27日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170727.html

から

2017年8月30日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201708/20170830.html

までの一連のコメント。

 


「のれん」と「減損」についての記事を紹介しているコメント

2017年8月22日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201708/20170822.html

 


今日は、昨日2017年8月30日(水)のコメントの補足を書きたいと思います。
また、2017年8月22日(火)に紹介している「のれん」と「減損」についての記事についてもコメントを書きたいと思います。
昨日2017年8月30日(水)のコメントは、思いつくままに書いたと言うと語弊がありますが、
伝えなければならないと思った要点だけを書き綴ったコメントになりました。
今日は、補足の意味合いで、プレスリリースや記事等についてコメントを書きたいと思います。
今日も、「私が理論上正しいと考える合併とその会計処理」を前提にコメントを書きたいと思います。
まず最初に、昨日書きました中で一番重要な結論は、
「合併に伴い存続会社がのれんを計上するというのは、理論的には実は間違いである。」
となります。
その理由に関してですが、合併と呼ばれる行為を捉えるに当たり、
@貸借対照表とA株式とに分けて(両者を分離して・両者を独立させて)考えると答えが導けると思います。
他の言い方をすると、@貸借対照表の変動(合併受入)とA株式の取引(合併対価の割当交付)とは理論的には関係がないもの、
と考えると答えが導けると思います。
まず、@貸借対照表について考えてみましょう。
@貸借対照表の変動(合併受入)については、法人格を同一にしたことの結果である、と考えるだけなのです。
一言で言えば、消滅会社の資産・負債・資本がそのまま存続会社の資産・負債・資本になる、というだけなのです。
合併後の貸借対照表が合併後の法人の財務的実態を表している、というだけのことなのです。
合併とは、存続会社による消滅会社の取得でもなんでもなく、ただの法人格の一致(法人格の同一化)に過ぎないのです。
ですから、合併後の存続会社の貸借対照表というのは、
合併前の存続会社の貸借対照表と合併前の消滅会社の貸借対照表の単純合算、というだけなのです。
のれんというのは一般に、取得額と取得した会社の純資産の価額との差額、といった具合に説明されますが、
合併には実はそもそも取得に相当する部分自体がない、と言っていいわけです(合併は取得ではなく法人格の同一化を行うもの)。
したがって、合併においては、のれんの発生のしようがない(のれんという概念自体がそこにはない)と言ってよいわけです。
合併を存続会社による消滅会社の取得などと定義するから、のれん(差額)が生じてしまうわけです。
法人格の同一化という観点から言えば、合併に伴うのれんなど、「自己創設のれん」にしか見えないわけです。
合併に伴い存続会社の資本金額が増加したのは、新株式を対価に取得を行ったからでも何でもなく、
消滅会社と法人格が同一化したからというだけなのです。
合併の結果、消滅会社の資本金額の分、存続会社の資本金額も増加した、というだけなのです。
どこをどのように考えても、のれんに相当する概念の事柄(認識要因等)は合併と呼ばれる行為にはないのです。
「法人格の同一化」、この言葉の意味をとにかく考えていただきたいと思います。
「法人格の同一化」という言葉の意味が分かると、のれんが決して発生しない理由(単純合算になる理由)が分かると思います。

 


ついでに、法務面についても一言だけ書きますと、
今までは合併という言葉は吸収合併という意味であることを前提に書いたのですが、
新設合併と呼ばれる合併方法も会社法上定義されてはいます。
しかし、合併の定義からして、新設合併という合併方法は観念できないものだと言わねばなりません。
なぜなら、新設合併は法人格を新たに作っているからです。
合併というのは、既存の法人格と既存の法人格が一方の法人格に同一化することを言うのです。
新設合併では、合併と同時に新しい法人格を作っていることが概念上問題になるわけです。
合併では、法人格そのものが同一化されますから、例えば、営業の許認可が必要な消滅会社の事業を引き継いで行うためには、
存続会社は改めて許認可を得る必要はない、ということになります。

 



次に、A株式について考えてみましょう。
先ほど、合併とは法人格を同一化することだ、と書きました。
この考え方から、消滅会社株主は当然に存続会社株主になる、ということになり、
そのために、消滅会社株式は当然に存続会社株式に変わる、ということになるわけです。
この時、消滅会社株式そのものは合併と同時に消滅してしまいますので、
手続きとしては、存続会社が新株式を発行して消滅会社株主に新株式を割り当て交付する、という形を取るわけです。
消滅会社株主の立場から見ると、消滅会社株式の換わりに存続会社株式を受け取る、ということになるわけですが、
これは、消滅会社株式と存続会社株式の交換、という見方ができるわけです。
問題は、消滅会社株式何株と存続会社株式何株を交換することにするか、であるわけです。
この株式の交換比率を合併比率と言います。
この問題は、純粋に「株主の納得度」の問題と言っていいわけです。
純粋に、「何株と何株の交換であれば両会社の株主は納得するか?」の問題であるわけです。
例えば、消滅会社株式の価値は存続会社株式の価値の2倍である、ということに両会社の株主が納得・同意をしたならば、
消滅会社株主は、消滅会社株式1株につき存続会社株式を2株受け取る、ということになるわけです。
そして、ここで問題になるのは、昨日も書きましたように、株式の交換は存続会社の貸借対照表に影響を与えない、
ということであるわけです。
合併比率において議論をしているのは、「何株と何株の交換であれば両会社の株主は納得するか?」という点であって、
消滅会社株式の価値・価額はいくらであり、存続会社株式の価値・価額はいくらである、という点ではない、ということです。
もちろん、合併比率を決定するに際して、両株式の価値・価額を算定するということも行うわけですが、
極論すれば、両会社の株主が納得しさえすれば合併比率は何株対何株であってもよいわけです。
この株式の交換は、(手続き上割当交付をするのは存続会社ではあるものの)会社とは独立して行われることであるわけです。
合併の本質はあくまで法人格を同一化することであるわけです。
その法人格の同一化に株主が同意するかだけが、合併比率の議論では問題になるわけです。
その意味において、消滅会社株式の価値・価額はいくらであるかは会社には関係がありませんし、
存続会社株式の価値・価額はいくらであるかも会社には関係がないのです。
消滅会社は消滅してしまったので代わりに存続会社が株式を消滅会社株主に割り当て交付するというだけなのです。
何株割り当てればよいか(合併比率はいくらであるか)は株主の側で決まること、という言い方ができるわけです。
端的に言えば、株式の価額は会社には関係がない、という言い方をしてもよいと思います。
敢えて言うならば、株式の価額は株主にだけ関係があることだ、という言い方をしてもよいと思います。
ですので、消滅会社株式の価値・価額や存続会社株式の価値・価額により存続会社における資本金の増加額が変動する、
ということは一切ないわけです。
合併の現行の会計処理方法ですと、結局合併比率でも存続会社における資本金の増加額が変動することになると思いますが、
「合併比率は純粋に株主の側の話である。」と考えなければならないと思います。
合併比率がなぜ会社の資本金の増加額と関係があるのだ、という話になるわけです。
一言で言えば、法人格を同一化するだけなのですから、合併受入仕訳は消滅会社の貸借対照表のみで決まるのです。
合併受入仕訳が、消滅会社株式の価値・価額や存続会社株式の価値・価額や合併比率で決まるということは一切ないのです。
それほどまでに、合併においては、@貸借対照表とA株式はそれぞれ完全に独立したもの、と捉えなければならないのです。
合併に際し、存続会社は新株式を発行しますが、それは純粋に「消滅会社株式の代わり」になるものとして発行するに過ぎず、
そこに「発行価額」という概念はない(したがって、新株式発行に伴う資本金額の増加などはない)のです。
一言で言えば、合併においては、新株式を発行したから資本金額が増加したというわけではない、という理解が大切だと思います。

 



それから、関連する論点になりますが、
合併では、一般に、債務超過会社は資本充実の要請から合併できないもの、と解されています。
私は以前、この点について、この解釈は正しいと書きました。
例えば、存続会社が債務超過であった場合、存続会社株式の価値はゼロなのだから、
消滅会社の株主に割当交付する合併の対価もゼロということになるのでおかしい、といったことが理由です。
また、消滅会社が債務超過であった場合、消滅会社株式の価値はゼロなのだから、
消滅会社の株主に割当交付する合併の対価がゼロより大きな価値を持つ株式ということになるのでおかしい、
といったことも理由になります。
そして、存続会社における新株式の発行が資本金額の増加と関係があるとするならば(現行の会計処理方法はこの考え方でしょう)、
価値がゼロの株式を発行したのに資本金額が増加するというのはおかしい、といった矛盾も生じることになると思います。
しかし、今日の議論を踏まえますと、債務超過会社同士の合併でさえも理論上は問題はない、ということになります。
結局のところ、貸借対照表の簿価と株式の価値・価額は関係がないのです。
貸借対照表が債務超過であっても、会社が倒産するとは限りませんので、株式の価値・価額はゼロということにはならないのです。
会社の貸借対照表と株式の価値・価額とは関係がないのです。
資本充実の観点は、理論的には、資本の部においては資本取引と損益取引とを明確に区分しなければならない、
という企業会計上の要請と密接に関連があることなのです。
すなわち、配当として社外流出してよいのは損益取引の結果(利益)だけである(払込資本である資本金は流出させてはならない)、
という考え方がその基本にあるのだと思います。
もちろん、債権者保護の観点から言えば、債務超過会社は合併できない、という考え方が出てくるのは分かりますが、
理論的には、債務超過=債務不履行では全くありません。
その意味において、理論的には、債務超過会社でも合併できる、という結論になると思います。
さらに、債務超過会社同士(どちらか一方のみが債務超過でも論点は同じです)の合併の場合も、
今日の議論で見ましたように、結局のところ、「何株と何株の交換に両会社の株主が納得をするか?」だけが問題となりますので、
合併比率に両会社の株主が納得をしさえすれば、債務超過会社同士の合併もできる、という結論になります。
合併の際、存続会社において、新株式の発行と資本金額の増加とは全く関係がありません。
存続会社の資本金額は、(新株式の発行によってでは全くなく)「法人格の同一化」によって増加したのです。
一言で言えば、「合併の場合は、存続会社が新株式を発行しても、その新株式に『発行価額』に相当する概念はない。」のです。
「消滅会社の資本の部の金額÷合併に際し存続会社が発行した新株式数」という計算式(割り算)には、何の意味もないのです。
事の本質を一言で書きますと、

A share has no value in it. (株式に価額はないのです。)

となります。
現在では、一般に、何か株式に価額があるかのように考えられているかと思います。
しかし、実はそれは間違いなのです。
株式にあるのは、「株式数」だけなのです。
「合併比率」も「株式数」で判断・決定を行うものです。
合併受入は会社側の話、合併比率は株主の側の話、というふうに、
@貸借対照表(会社側)とA株式(株主の側)とを区分して(両者を独立させて)合併を捉えなければならないと思います。