2017年2月26日(日)
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2017年2月23日(木)
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2017年2月25日(土)
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【コメント】
2017年2月20日(月)付けの日本経済新聞に相続分野を得意とする税理士法人の全面広告が載っていました。
その広告に「一般的な相続の流れ」という見出しで、文字通り相続の開始から相続税の納付までのフローチャートが載っていました。
その中に気になる項目が載っていまして、それは「被相続人の準確定申告」という手続きです。
「準確定申告」とは、確定申告の必要がある人が亡くなった場合に、
本来の申告者(死亡者)以外の誰かが確定申告を行う手続きのことです。
「準確定申告」を行うのは相続人ではないのかと思われるかもしれません。
しかし、例えば、単純に考えて、結婚もしておらず子もいない人(親も兄弟もいないとする)が死亡した場合は、
手続き上は本来の申告者(死亡者)以外の誰かが確定申告を行う必要がある、ということになると思います。
「準確定申告」を行うのは相続人とは限らない(身寄りが誰もいないなら、公務員が行うことになるでしょう)、と思います。
確かに、死亡者に相続人が誰もいない場合は、その死亡者の財産は死亡後すぐに全て国庫に入ることになりますので、
国庫に入るべき財産の金額という意味では、確定申告を行う意味はあまりないとは思います。
しかし、死亡者が死亡した年度中に稼得した所得額を明確にすることもまた、国として行うべきこと(統計などに用いることができる)
ではないかと思いますので、どうせ国庫に入るから同じだと考えるのではなく、
死亡者に相続人が誰もいない場合であっても、誰かが確定申告の手続きを行うべきであると思います。
国の歳入といっても、その内訳は重要であろうと思います。
例えば、死亡者には身寄りがないために人(死亡者)の財産が国庫に入るのはまさに人の死亡が原因ですが、
準確定申告による歳入は、決して人の死亡が原因ではなく、純粋に人(死亡者)が所得を稼得したことが原因です。
後者は厳密な意味において所得税という歳入ですが、前者は財産の接収という名の歳入になると思います。
死亡者の財産の接収と準確定申告による収入は、全く意味が異なるのです。
準確定申告(本来の申告者(死亡者)以外の誰かによる確定申告)という手続きは、相続とは全く関係がない概念なのです。
昨日2017年2月25日(土)は、現行の規定はどこか被相続人の立場から相続を見ていると書きましたが、
準確定申告は死亡者に立場から行うべき手続きなのです。
この広告では、相続という文脈においてフローチャートが書かれていますので、
相続人が被相続人に代わり準確定申告を行う、ということが頭にあるのだと思います。
それはそれでもちろん正しいわけなのですが、では死亡者に相続人がいない場合は、準確定申告は行われなくてよいのかと言えば、
そんなことは決してなく、国としては「所得税による歳入額」を明確にしなければならないと思います。
先ほどは国の統計に使えると書きましたが、理論的には「歳入の原因」が異なる(だから両者は明確に区分しなければならない)、
という考え方をしなければならないと思います。
相続という手続きにおいて「被相続人の準確定申告」を行わなければならない理由は、
言うまでもなく、相続可能な財産の金額を確定するためであるわけですが、
相続人がおらず相続は行われないという場面であっても、死亡者が稼得した所得額や本来死亡者自身が納付すべき所得税額を
確定させるため、さらに、所得税納付後の死亡者の所有財産の金額を確定させるため、
「死亡者の準確定申告」は行われなければならないのです。
以上の「死亡者の準確定申告」の議論を踏まえた上で、では法人の清算の場合における確定申告はどうあるべきか考えました。
「清算手続き中の確定申告のあり方」について、法理的な観点から考えてみました。
論点を明確にするため、以下の条件を設けました。
【設例】
法人は3月期決算。2016年4月1日に清算手続きを開始。清算手続きの開始と同時に全事業活動を停止(清算に関する事務のみを行う)。
一言で言えば、「2016年3月期の確定申告」は行われなければならないのか否か、という論点になります。
私は以前、「法人が清算手続きに入ったならば、期中に法人が稼得した所得があっても、法人税の納付は行う必要はない、
期中に法人が稼得した所得に関しては、残余財産の分配という形で株主が所得税を負担するようにすればよい。」、と書きました。
この時私がこのように書きました理由は、税務当局から見れば、「法人が稼得した所得」に関しては、
法人自身が法人税という形で税負担をしようが、株主が所得税という形で税負担をしようが同じだ、と思ったからです。
また、例えば、前事業年度の確定申告は完了しているが、清算手続きに入ったのは年度途中であり、
当事業年度の確定申告はまだ行えない(事業年度の末日になるまで法人の確定申告は行えない)、という場面は当然想定されますが、
清算手続きの完了は事業年度の末日になるまで待たないといけないというのはおかしい、といった考えも私の頭の中にありました。
当事業年度中に「法人が稼得した所得」に関しては、残余財産の分配を通じて、株主が税負担をすればよい、と考えたわけです。
今その時の自分の論理展開を思い返してみても、枠組みとしては・概念的にはそのような考え方で間違いではないと思うのですが、
今日の「準確定申告」の議論を踏まえますと、やはりもう少し緻密な手続きを考えなければならないと思いました。
このコメントを書いた時は、法人は「株主の利益」を稼得するための器に過ぎない、という見方に重きを置き過ぎていたと思います。
考えてみますと、「準確定申告」の考え方と同じように、自然人の死亡日に相当する、
法人の清算日(注:清算結了登記日ではありません)を人為的に設ける必要があると思いました。
法人はこの日以降は所得を稼得することはない、という日を設けるわけです。
事業年度の初日からその清算日までの間に法人が稼得した所得に関しては、やはり確定申告は行われなければならないわけです。
「事業年度の初日からその清算日までの間に法人が稼得した所得額」を確定させ、
法人がその間稼得した所得に関する税として税務当局に納付をするべき法人税額を確定させ、
そして法人は税務当局に法人税の納付を行っていかなければならないわけです。
ところが、ここで1つだけ問題があります。
それは、法人は既に清算手続きに入っている、という事実です。
法人は既に清算手続きに入っている以上、法人は法人税の納付を行いたくても行えないのではないか、という問題があるわけです。
清算手続き中の法人が法人税を納付することは、会社財産の流出ではないのでしょうか。
清算手続き中においては、税務当局も債権者の1人、という見方をしなければならないのではないかと思いました。
清算手続き中は、「事業年度の初日からその清算日までの間に法人が稼得した所得」に関する法人税については、
「未払法人税」という会社債務に対する債権者、という位置付けに税務当局は位置するべきなのだと思います。
他の言い方をすれば、法人の「未払法人税」の金額を確定させるために、確定申告の手続きは必要だ、ということになるでしょう。
法人税法上、法人税の納付は事業年度の末日から2ヶ月以内と定められていますが、
清算手続きが何ヶ月かかるか次第では、とても清算日から2ヶ月以内には法人税の納付は完了しない、ということになります。
以上のように考えますと、清算時には、法人は所得を稼得したのだから法人税を支払え、とは単純には言えなくなるわけです。
平時であれば、法人は所得を稼得したのだから法人税を支払え、で済むのですが、
いざ清算手続きとなりますと、債権者は「そもそも私のお金なのだから法人が稼得した所得もまず私への弁済に充てるべきだ。」、
と主張するわけです。
それに平時においても、利息の支払いの結果課税所得がマイナスになれば、法人は法人税を納付しないでしょう。
結局のところ、法人が清算手続きに入る、というのは、それほどまでに会社の財務構造が変わる、と見なければならないわけです。
清算日後、清算人は会社財産を処分(現金化)し、その現金を債権者への弁済に充てていきます。
法人はその現金の中から法人税も支払っていく、という、平時とは全く異なる法人税の支払い方法を行うことになるわけです。
会社の債務状況次第では、実際に納付される法人税額は、本来算出された法人税額よりも少ないかもしれないわけです。
払えないので本来の金額よりも少ない金額だけ納付すればよい、という考え方は税の論理にはないはずです。
会社が清算手続きに入るとは、多分に会社債務の弁済が十分には行われないということをも意味します。
それは、法人税が本来の金額(満額)は納付されない、ということをも意味するわけです。
そうであるならば、清算手続きという場面に関しては、
法人が稼得した所得に関しては、法人の課税所得額の算定手続きを清算手続きからは除外し、
法人が稼得した所得は残余財産の分配(仮にそれが0円ならそれはそれでよい)を通じた株主の所得とする、
と所得関係を整理する方が合理的ではないかと思ったのです。
私は以前、「法人税の存在によって、法人の所得は出資者の所得から切り離される。」と書きました。
法人税がないならば、法人の所得は出資者の所得です。
しかし、法人税が法人の所得を出資者の所得から切り離すのです。
法人税により、法人の利益は法人固有の利益になる(法人税により出資者の利益ではなくなる)のです。
この株式会社における基本概念(利益の帰属主体の問題)が、清算手続きでは崩れるのです。
清算とは法人が法人ではなくなることです。
法人税の納税主体も、法人から出資者へと移行するのではないでしょうか。
この考え方に立ちますと、会社清算時の債務の弁済順位は、「@一般債権者→A残余財産分配請求権者」となります。
税務当局は、法人への出資者である「A残余財産分配請求権者」に対し、
法人が稼得した所得について所得税を支払うよう請求する(つまり課税する権利を持つ)、ということになります。
清算手続きにおいては、法人そのものが消滅するため、法人所得が法人所得でなくなる(出資者個人の所得となる)、
という見方をするべきなのだと思います。
「事業年度の初日からその清算日までの間に法人が稼得した所得」に関し、
言わば擬似的な確定申告書を作成することはできるとは思います。
つまり、「事業年度の初日からその清算日までの間に法人が稼得した所得額」を厳密に算定することはできるとは思います。
しかし、その申告書の作成・法人税額算定と実際の納付とは、清算時には手続きとしては切り離すべきだと思います。
死亡者の所得は死後も死亡者の所得です。
しかし、法人の所得は、法人が消滅するのに伴い、
法人の所得ではなくなる(残余財産の分配を通じ出資者の所得と見なせる)のですから。
The payment of taxes by a deceased natural person and a being-under-liquidation juridical person.
死亡した自然人と清算手続き中の法人による税の支払い